バレエダンサーでありモデルでもあることで見据える未来 ー スウェーデン王立バレエ団 プリンシパル 三森健太朗
スウェーデン王立バレエ団でプリンシパルを務めるダンサーでありながらモデルとしての顔を持ち、二刀流だからこその唯一無二の存在でありたいとも語る三森に、辿り着きたい理想の姿などについて話を聞いた。
確実で軽やかなテクニックを武器に、同団日本人男性初の最高位に’22年昇格。バレエダンサーとモデルの2つの顔を持ち、舞台上でも唯一無いの存在感を放つ。
モデルとしての動きにもダンサーの姿が現れる
ー三森さんはバレエダンサーとモデルの二刀流で活躍されていますが、それぞれのキャリアのきっかけを教えてください。
バレエは兄弟がやっていたことから4歳で始めたのですが、ずっと続けていたらいつの間にかプロになっていたという感じです。モデルについては新型コロナウイルスが蔓延していた時期に時間が空くようになったのでカメラマンの友人と写真撮影してインスタグラムにアップしていたらモデル事務所の方の目に留まって声をかけてもらいました。
この投稿をInstagramで見る
ーバレエダンサーとモデル、それぞれの活動が互いにどのような影響を与えていますか。
バレエがモデル、モデルがバレエに与える影響は大きいと感じています。「ちょっと動きをつけて」とモデルに指示するとその動きは大体同じだけど、僕はダンサーでもあるので他のモデルとは全く違う動きをするので撮っているほうも楽しいとフォトグラファーの方から言われたことがあります。動作によって服の見せ方、見え方も変わってくるのでダンサーでもある自分だからこそのモデルの在り方だと思っています。
ー三森さんはスウェーデン王立バレエ団のプリンシパルとしても活躍されています。多忙を極める毎日だと思いますがモデル活動とどのように両立していますか。
プリンシパルだからこその働き方ではあるのですが、主役を演じる舞台では日によってキャストが変わるので、毎公演出演する必要がありません。また、リハーサルも早く終わる日などもあるので、そういう時にモデルの仕事を入れるようにしています。
ーバレエダンサーとしてのキャリアの中で一番大きな決断はどのようなものだったのでしょうか。その決断が現在どのように活きていますか。
バレエ学校時代、就職活動の最後の年で本来ならオーディションを受けなければいけない時期にヘルニアの手術をしました。手術しなければ治らないことはわかっていたのですが、時期が時期だったので大きな葛藤がありました。その一年後に現在のバレエ団と出会ったのですが、あの時の決断のおかげで今があると思っています。
ダンサー兼モデルとして理想の姿を追い求めたい
ーご自身の踊りにおいて大切にしていることを教えてください。
自分が楽しむことを忘れない。自分が楽しくないと観ているほうも楽しくないと思います。
ー「BALLET TheNewClassic」には初出演でした。海外で活躍される方、バレエ団に所属されている方などキャリアも異なるダンサーが一堂に集まった革新的な舞台で得られたものはありますか。
踊り方などは舞台上で間近で目にすることで吸収できたことは多かったのですが、今回は舞台上ではない部分での気づきも多くありました。例えば舞台への準備に対して入念な方もいれば、パパッと短時間で済ます方もいて、こんなに違いがあるのかと学びにもなりました。
『ロミオとロミオ』 photo by fukuko iiyama
ー今回のように全く新しい作品を踊るうえで、ご自身の中でどのようなプロセスがあるのでしょうか。
作品によってプロセスは様々ですが、今回踊った『ロミオとロミオ』に関してはストーリーがあっての踊りだったので細かい描写の表現に注力しました。「なんでこの表現になるのだろう」と一つひとつの表現を崩していき、不自然な動きがないように組み立てました。
ー個人として、ダンサーとして、モデルとしての今後の展望を教えてください。
ダンサー兼モデルという方は僕以外にもいますが、「健太朗にしかできないよね」と言われるような存在になりたいです。現時点ではやりたいことが具体的なわけではないですが、いただいたお仕事と真剣に向き合っていくなかで、自分の理想としている姿に辿り着けたらいいなと考えています。
- Photograph : Masamichi Hirose
- Edit & Interview : Yukako Musha(QUI)
- Text : Yukako Musha(QUI) / Akinori Mukaino