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ART/DESIGN

周囲に喜びを与えることが私の喜び|ロメロ ブリット

Apr 3, 2024
日本での個展のために28年ぶりに来日したROMERO BRITTO(ロメロ ブリット)。「happy art movement」を提唱し、現在のポップアートシーンで最も注目を集めている彼の作品には「笑顔になれる」、「幸せな気持ちになれる」という声が世界中から寄せられている。ロメロ ブリットについて「思いやりと楽天主義」と評した世界有数のメディアもあったが、それも納得できるほど話せば話すほど飾らない人柄に惹きつけられるインタビューだった。

周囲に喜びを与えることが私の喜び|ロメロ ブリット

Apr 3, 2024 - ART/DESIGN
日本での個展のために28年ぶりに来日したROMERO BRITTO(ロメロ ブリット)。「happy art movement」を提唱し、現在のポップアートシーンで最も注目を集めている彼の作品には「笑顔になれる」、「幸せな気持ちになれる」という声が世界中から寄せられている。ロメロ ブリットについて「思いやりと楽天主義」と評した世界有数のメディアもあったが、それも納得できるほど話せば話すほど飾らない人柄に惹きつけられるインタビューだった。

周囲に伝播した「LOVE」や「HAPPY」を追求した作風

—小さい頃から絵を描いていたんでしょうか。

絵を描くことは小さい頃からずっと大好きでした。その頃は新聞紙がキャンバスでしたね。

—将来はアートの世界に進む、絵を描くアーティストになるというのは最初から決めていたことですか。

ロメロ:絵を本業にすることは最初は考えていませんでした。ティーンエイジャーの頃の夢は外交官だったこともあり、法学部に進学したんです。ただドロップアウトをしてしまって(笑)。アーティストになることを真剣に考えるようになったのはそこからですね。

—ロメロさんの作品はアートに馴染みがない人でも強く惹きつけられますが、最初から現在のような色鮮やかな作風だったのですか。

最初からすべての作品がカラフルだったわけではないです。ただ、アーティスト活動を続けていくうちに多くの人をアートでハッピーにさせたいという思いから自然と現在のような作風になりました。

—多くの人をアートでハッピーにしたいと思うようになったきっかけなどはあるのでしょうか。

絵を描くことは自分にとって幸せなことでした。ハッピーな気持ちになれるから絵を描き続けていたのですが、むしろ作品を見た周囲の方たちがどんどん喜んでくれるようになったんです。

—ロメロさんの幸せの感情が周囲にまで伝播したような感じでしょうか。

そうかもしれないですね。「LOVE」や「HAPPY」を常に追求して絵を描いていたのですが、気がつくと周囲の人たちが同じような感情を共有してくれていました。それによってアーティストとしての自分の役割や価値を見出せた気がします。喜びを与えることへの喜びです。

アートとの触れ合いはクリエイティブな思考を刺激する

—ご自身の作品に対してへの評価としていちばんうれしい言葉はなんでしょう。

「幸せな気持ちになれます」と言ってもらえたらうれしいですし、日常の中で私の作品と触れ続けることでその方の人生が少しでも楽しくなってくれたらと思います。

—世界中のギャラリーや美術館で作品が展示されていますが、作品への評価は国によって異なったりしますか。日本では作品に対してどのような声が多いですか。

世界のどこに住んでいても「幸せの感情」というのは同じものだと思います。なので特に日本独特の評価というのは感じたことはないですね。

—日本人はアートを難しく考えがちのような気もするのですが、もっとポジティブに楽しむためのアドバイスはありますか。

アートはすべての人々が気軽に楽しめるものだと思うので、自分としてもそれをもっと伝えていきたいという思いはあります。絵だけではなく、音楽だってアートですから、そう考えれば身近なものですよね。週末に展示会を訪れたら、そこでインスピレーションを得て会社でのクリエイティブにもつながるかもしれません。アートと触れ合うことでクリエイティブな思考が冴えていくはずです。

—コラボレーションにも積極的なのはクリエイティブの広がりを意識してのことでしょうか。

一人でも多くの方に私の作品に触れてもらって、楽しんでもらいたいんです。ファッションであったりキャラクターであったり、ジャンルを問わずにコラボレーションすることでその機会が増えるはずです。住んでいる場所や環境によって、誰もが簡単にミュージアムに足を運べるわけではないですからね。

—コラボレーション活動はアートの裾野を広げるためでもあるんですね。

例えばですが現在はモナリザの前に立ったことがない人でも、モナリザがどういう作品なのか、アーティストはどういう人物なのか、調べることである程度の情報を得ることが可能です。私がコラボレーションをした作品をきっかけに、私について興味を持ってくれる方もいるかもしれません。そうやってアートに関心のある方がどんどん増えていくとうれしいです。

ひとつの大きな幸せよりもいくつもの小さな幸せを望む

—「happy art movement」を提唱するロメロさんにとっては現在の作品、作風というのはある程度の完成形のようにも感じるのですが。

もちろんこのまま変わらない部分もあるはずですが、完成形だとは思っていません。常に模索している状態ですよ。幼少期の頃は貧しい環境で育ったこともあって、初期の作品には負の感情のようなものが投影されていたこともあります。それを一切やめたのが1980年代のことで、「底抜けに明るい」作風にすることで自分自身がどんどんハッピーかつポジティブになれたんです。周囲からもどんどん褒めてもらえるようになり、そこから現在のような絵のスタイルが確立されたんです。


—ロメロさんの作品と「負の感情」というのはまったく結びつかないです。

自分が年齢を重ねたり、アーティストとして経験を重ねていくうちに、心の痛みや暗い部分をうまく咀嚼してハピネスに転換できるようになったんでしょうね。幼少期に絵を描いていた頃は、そんなことはまったくできませんでしたから。

—作品によって世界中の人々を笑顔にしているロメロさんですが、ご自身が笑顔になれる瞬間はどんなときですか。

私の作品に触れて人生が楽しくなったというメッセージをもらったときが笑顔になれる瞬間かもしれないですね。私自身は大きなひとつの幸せは望んでいません。小さな幸せが集まって、それが大きな幸せになっていくことのほうが望みです。

—28年ぶりに来日ということですが、待ち望んだ日本のファンにあったら伝えたいことはありますか。

28年ぶりですが30歳に見えるでしょ(笑)。まず最初に「お会いできてうれしいです」と伝えたいですね。来日したことで新しいファンやコレクターが増えてくれたら「happy art movement」がさらに広がっていくことにもつながるので、そうなるといいなと思っています。

—本日も作風とリンクするようなカラフルな装いですが、どのようなファッションが好きですか。

もちろんカラフルなファッションは好きですよ。28年前に日本で個展を開催したときには三宅一生さんも来てくださったこともあって<ISSEY MIYAKE(イッセイミヤケ)>も好きです。あとは<Yohji Yamamoto(ヨウジヤマモト)>も。自分でファッションブランドもやっていますので、皆さんとお会いできるときにはいつものこのスタイルでお待ちしています(笑)

 

-ROMERO BRITTO(ロメロ ブリット)来日展

会期:2024年4月2日(火)〜4月7日(日)
場所:伊勢丹 新宿店 本館6階 催物場
住所:東京都新宿区新宿3丁目14-1
主催:新宿伊勢丹店
共同開催:ホープベア株式会社
協賛:株式会社セガ/日本ゼオン株式会社

ロメロ ブリット 在廊日時
4/2(火) 午後3時~午後4時
4/4(木)、6(土)、7(日) 午後3時~午後5時

-ROMERO BRITTO(ロメロ ブリット)とは

1963年ブラジルのレシフェに生まれ、幼い頃から新聞紙などをキャンバスに独学で絵を学ぶ。1983年にパリでマティスやピカソの作品に出会い、キュービズムとポップを融合させた鮮やかでアイコニックなスタイルを生み出す。
ニューヨーク・タイムズは彼の作品を「思いやりと楽天主義、愛に溢れた作品」と評す。1988年にマイアミに移り住み、その翌年にはアンディ・ウォーホールやキース・ヘリングと並んでアブソリュート・ ウォッカの「Absolut Art」に選出。
Audi、Bentley、Disney、Evian、さらには2010年のFIFAワールドカップのオフィシャルポスターアートを手がけるなど、数多くのコラボレーションを実現。第46回のスーパーボウルでは、シルク・ド・ソレイユと組んでハーフタイムのショーを演出している。2024年4月にはロメロのオフィシャルフィルムが公開予定。

ロメロブリット instagramはこちら

  • interview & text : Akinori Mukaino
  • Photography : Kaito Chiba
  • edit : Yusuke Soejima

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