夏子 – 映画は景色を変える
お芝居にはピュアさが必要だと思う
― 映画のタイトルが『Good News,』なんですけど、まず最近のグッドニュースからお聞きしていいですか?
少し前にお仕事でゲッターズ飯田さんにお会いしたんですけれども、その時に私のラッキーカラーがピンクだっていうことを教えてもらって。いままでピンクを意識したことなかったんですけど、それからピンクのものばかり選ぶようになって。自分の選択肢の中にピンクという色が増えたっていうのが、私の中のグッドニュースです。
そして今回の『Good News,』を改めて観返してみたら、ピンクがテーマになった作品で。
― 確かに。ピンクのレンズのサングラスが印象的に使われていました。
あぁ、もしかしたら私にとってお守りみたいな存在になる作品なのかなぁと。
― きれいに落ちましたね(笑)。
落ちましたね、いま。
― 劇中には「嘘をつけない人のほうが女優向いているらしいよ」というセリフがありましたが、夏子さん自身は嘘つくことってありますか?
嘘、ついちゃいますね。
― どんな嘘を?
例えば、家族から「これ食べたでしょ?」って聞かれて「ううん、食べてないよ」とか(笑)。
― 反射的に。
そういう小さな嘘は結構ついてるかも。下手でバレてるかもしれないですけど。
― でも、嘘が下手な方が女優に向いているんじゃないかっていう。その言葉の裏にある意味ってなんだと思いますか?
相手からの投げかけに対して、素直に反応できるっていうことじゃないでしょうか。そのピュアさみたいなものは、お芝居に絶対必要だと思うので。渡辺大知監督もそういう意図でセリフを書かれたんじゃないかなと思っていました。
― 「嘘つくのと演技するのってどう違うと思う?」ってセリフもありましたけど、お芝居している時には嘘をついている感覚はまったくない?
私はわりと信じ込めるタイプです。舞台でも「目の前が海です」と言われたら信じられちゃいます。
― すごい。それってどうやってもっていくんですか?
もうぐっと信じ込むだけですね。
― 渡辺監督とは今回が初対面でしたか?
そうですね。最初、私は完全に役者さんだと思ってて。音楽をされていたり、監督をされていたり、本を書かれていたりしていることを今回はじめて知って、すごい多才な方だなと。
― 夏子さんがミユキを演じるにあたって、渡辺監督からはどんな演出がありましたか?
監督自身が役者さんなのもあって、撮影前の時間を丁寧にとってくださいました。あと、気持ち悪くないかとか。
― というと?
役者に対して、セリフを言うことに気持ち悪さはないか、ちょっとでも引っかかることがあったら教えてとか。役者にすごく寄り添った演出をたくさんつけてくださいました。
― 自分の役柄ならこういうこと言わないよねと感じることってよくあるんですか?
『Good News,』ではなかったですけど、動きとかはやっぱり現場に行ってみないとわからないこともたくさんあって。例えばベッドに横になるシーンがあれば、そのベッドの大きさがどうだとか。渡辺監督はご本人も役者さんだからこそ、このくらいの大きさのベッドでやるよっていうイメージなどを事前に細かく伝えてくださいました。
― 同じ俳優として、やりやすさがあったようですね。
すごくやりやすかったです。
― ミユキの恋人、コータローを演じた藤原季節さんも初共演?
はじめましてでした。
― そうなんですね。共演していかがでしたか?
藤原さんは本当にピュアな方。それこそコータローのような。少年の魂を持った方ですね。
― 本当に真っ直ぐな印象で、お芝居好きということが見ていて伝わってきますよね。いろいろお話もされましたか?
藤原さんの方が年上ですが、すごく気さくにお話してくれました。お蕎麦屋さんの話とか。
― お蕎麦屋さんの?
撮影が岐阜県の飛騨市で。冬場に撮ったので相当寒くて、蕎麦屋で飲む熱燗の話とかして心からあっためていました(笑)。
― 飛騨での撮影いいですね。美味しいもの食べたのかなぁと。
いや、あんまり外にも行けない時期だったので。飛騨市の方から日本酒の差し入れをいただいたので、みんな各々部屋で飲んでいたと思います。
ルールを決めないことがルール
― できあがった作品をご覧になった感想を教えてください。
コータローが事件に巻き込まれるパートは撮影もまったく見ていなかったので、そっちは壮絶だったんだなと、わくわくしながら観てました。
15分ってあっという間だと思うんですけど、すごく濃厚に感じました。脚本も読んでいたし半分ぐらいは出演しているのに、知らない部分がたくさんあって。観終わった後にすごい遠いところまで来ちゃったなって。
― その感覚わかります。最初と最後は同じピンクなのに、もうまったく違う景色になっている。15分の作品に作り手の熱量が凝縮されているし、『MIRRORLIAR FILMS Season3』として9本集まると観るだけでも結構圧倒されちゃいますよね。その熱量というか、作る側も観る側も惹きつける映画の魅力って何だと思いますか?
さっき言ったことと重複しちゃうんですけど、映画館に行く前と行った後では見える景色が絶対に変わってくる。劇場を出て日常に帰った時にも、映画で観た自分の知り得ない世界が自分のどこかに残っているように感じます。そんな他では体験できないことが、すごく人を惹きつけ続けるんじゃないかなと思いますね。
― そうですよね。映画ってモノの見方をガラッと変える魔法みたいなところがありますよね。夏子さんは映画を観るのも演じるのも好きですか?
はい、好きです。
― お芝居を始めたきっかけはなんですか?
もともと映画はすごく好きで映画館にはよく通っていたんですけど、芸能だったりお芝居だったりを自分がやることには興味がなくて。声をかけてもらったことがきっかけでこの世界に入ってお芝居を始めることになりました。
― デビューはファッション誌の『SEDA』でしたよね。それもスカウトですか?
そうですね。『SEDA』の専属モデルをしていた時は事務所にも所属してなくて、本当にただの大学生だったんですけど。写真苦手なのに何してるんだろうと思いながらやっていました(笑)。またそこからご縁があって声をかけていただいて今があるので、人の縁ってすごいなって思っています。
― 『SEDA』で活動されたのは1年ぐらいですか?
『SEDA』はすぐに休刊してしまったんですよね。半年も経たないぐらいかな。
― 現在もモデルとしても活動されていますが、ファッションは好きですか?
ファッションは好きです。モデルの仕事でいろんな服を着させていただくのも楽しいですね。服ってお芝居にも繋がると思いますけど、自分に一番大きい影響を与えてくれるものかもしれないと思っていて。その日パンツを穿くのか、スカートを穿くのかだけで気分が全く変わってくるので。どういう気分になりたいかで服を選んでいます。
― どんな服が好きですか?
服が好きとか言いながら、最近はワンピースしか着てないです。楽だから(笑)。
― またこれから特にワンピースが気持ちいい季節ですよね。服はどこで買うんですか?
好きなセレクトショップがあって、そこでばっかり買っていますね。
― お店の名前は?
参宮橋の「Havane(アバヌ)」っていうショップです。
― 結構買いますか?
昔はたくさん買っていたんですけど、最近は考えるようになって。
― 必要なものを?
そうですね。本当に必要なものって何だろうと。服を買うのは本当に少なくなりました。
― ご自身のファッションスタイルでこだわりはありますか?
ワンピースでそこまで深く考えたことはないですね(笑)。
― では話をひろげて、生きる上でこだわり、モットーはありますか?
ルールを決めないっていうルールです。
― ルールを決めない?
例えば洋画しか観ないってルールを決めちゃうと、自分の守備範囲が狭まってしまうとか。こだわりを持ち過ぎない、私はこれが好きってなり過ぎないことですかね。
― 自分の可能性を狭めないことって大事ですよね。夏子さんはそういうことを意識しているから、人との出会いを生かせるのかもしれないですね。
そうありたいなと思っています。
― では最後に、今後どういった女優になっていきたいか、ビジョンがあれば教えていただきたいです。
それこそ柔軟でありたいなと思っています。なにが来ても対応できる、新しいことにひるまずいつでもガーッとつっこんでいける準備ができている女優でありたいなと思っています。
― 挑戦したいことはありますか?
いろんなことに手を出すのが好きなので、いままでもボクシングをやってみたり、ダンスをやってみたり、最近は日本舞踊を習い始めたり。試したいことはまだまだたくさんあります。
Profile _ 夏子(なつこ)
1996年9月3日生まれ、東京都出身。1996年9月3日生まれ、東京都出身。モデルとしてデビュー後、2016 年にドラマ「世にも奇妙な物語」で女優としての活動を開始。近年では、ドラマ「アイゾウ 警視庁・心理分析捜査班」で主演を務め、「ミステリと言う勿れ」や「逃亡医F」、「湯上りスケッチ」などにもゲスト出演。以降も複数の公開待機作が控える。
Instagram
Information
映画『MIRRORLIAR FILMS Season3』
2022年5月6日(金)全国公開
監督:井樫彩、Ken Shinozaki、野崎浩貴、林隆行、松居大悟、村岡哲至、山田孝之、李闘士男、渡辺大知
出演:善雄善雄、奈緒、夏子、二宮芽生、平野虎冴、藤原季節、南沙良、村岡魯檀、吉村界人、レイン・フラー
©2021 MIRRORLIAR FILMS PROJECT
- Photography : Yuki Yamaguchi
- Styling : Otake Maki
- Hair&Make-up : Suzuki Mikiko
- Art Direction : Kazuaki Hayashi(QUI / STUDIO UNI)
- Text&Edit : Yusuke Takayama(QUI / STUDIO UNI)