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綾瀬はるか × 大沢一菜 – それぞれの宇宙

Nov 7, 2024
2人が旅するのは、ちょっと奇妙で、不思議で、やさしい世界。
映画『ルート29』に出演する、綾瀬はるかと大沢一菜へのインタビュー。

綾瀬はるか × 大沢一菜 – それぞれの宇宙

Nov 7, 2024 - FILM
2人が旅するのは、ちょっと奇妙で、不思議で、やさしい世界。
映画『ルート29』に出演する、綾瀬はるかと大沢一菜へのインタビュー。

本当にハルがそこにいるみたい

― 綾瀬さんと大沢さんの関係は、それぞれが本作で演じたのり子とハルの関係と重なる部分があるように感じました。綾瀬さんはもともと、大沢さんが主演した映画『こちらあみ子』が大好きだったそうですね。

綾瀬はるか(以下、綾瀬):初めて会った時は、「わあ、あみ子がいる!」って思いました。すごい成長しているなと。実際に話してみると、すごくシャイでかわいくて、釘付けになって見ていました。

― 一緒に過ごしていく中で、なにか変化はありましたか?

綾瀬:仲良くなっていくと、すごく子どもらしいところと、かっこいいところ、やさしいところがどんどん見えてきて。今回、一菜ちゃんが演じたハルに近い子だなと思いました。

― 綾瀬さんのお話を聞きながらすごく嬉しそうな表情をされていますが、大沢さんは綾瀬さんとお会いしていかがでしたか?

大沢一菜(以下、大沢):前からテレビで観ていた方なので、初めはとても緊張しました。きれいだし、かわいいし、絶対やさしいだろうなって。実際に会ってみたら、やっぱりやさしかったし、すごくかわいかったです。

― どんな風に打ち解けていきましたか?

大沢:撮影の合間に、カエルやトンボ、カニをつかまえて。一緒に行動したり、動いたりしながら仲良くなっていきました。

― お芝居をしていて、すごいなと感じた瞬間はありましたか?

大沢:綾瀬さんは目が魅力的。セリフがなくても目力で気持ちが伝わってくるところがすごくかっこいいなって思いました。

綾瀬:それこそ一菜ちゃんも、目力がすごかったです。ハルが画面に映っている姿を見ると絵の力が強くて、監督とも「いい顔してますね」って話をしていて。もう本当にハルがそこにいるみたいで、演じているようには見えませんでした。

― 必要以上のコミュニケーションをとることをしないのり子と、風変わりな女の子ハル。それぞれの役を、どのように捉えて演じていきましたか?

綾瀬:最初に監督が、「のり子は若い時に自分がいいと思って言っていたことを大人たちに勘違いされたことがあって、人と積極的に関わりを持つのをやめている」という背景について話をしてくれたんです。そういった背景がありながらも、決して暗いというわけではなく、自分の中に宇宙がある人なんだと。

― その監督の言葉から、のり子について考えていったんですね。

綾瀬:はい。監督からは「あまり演じようとせずに、綾瀬さんのままでいてください」とか「そんなに伝えようとしなくていいです」というお話もありました。これまでは演技をして積み重ねていくような経験が多かったので、そういうことを全部そぎ落としてなるべく“無でいる”ことが、最初はなかなか難しかったです。

― これまでのお芝居にはない感覚だった?

綾瀬:10代のころは、こういうときもあったなと思い出していました。演じながら作っていく役とは全然違う、ただそこにいるというお芝居や、自分の延長にいるような役を演じるのは、少し懐かしい感覚がありました。

― 大沢さんはいかがでしたか?

大沢:まず脚本を読んだ時に、監督は自分をキャラクターにしてハルを書いているなと思いました。

― 大沢さん自身がモデルとなった役ということで、お芝居に影響はなかったですか?

大沢:演じやすい部分もあったけど、完全に同じなわけではないから、自分とは違う部分のことを考えて、集中して演じようと思っていました。

― 自分と違う部分とは?

大沢:脚本を読んでいたときに、きっとハルは、1人で生きていけるようになりたいのかもしれないなって思ったんです。そういうところから想像を広げて役に反映していきました。

― のり子とハルが初めて出会うシーンは、すごく引き込まれるものがありました。

綾瀬:そうそう。最初に一菜ちゃんがニョキッって現れたときの顔を見て、めちゃくちゃインパクトがあるなって思いました。

大沢:自分は、本物(の綾瀬さん)がいる、目の前にずっといるっていうことしか考えていなかったです(笑)。そこで、綾瀬さんはすごく目が魅力的だなと思いました。

 

だんだん溶け合っていくような感覚があった

― 本作を観たあとに、「奇妙なものや不思議なものに触れることでしか得られない生の実感がある」という森井監督のコメントを読んで腑に落ちるものがありました。お二人が生の実感、生きているという感覚を得られるのはどんなときですか?

綾瀬:シンプルに体調を崩したときですかね。たとえば風邪をひいて、だんだんと治っていく過程で、今身体の中で戦っていて熱が出ているんだと感じられるので。一菜ちゃんは?

大沢:友だちとスケボーしているときに、暑すぎてカルピスを飲んだとき。すごく生きてるなって実感します。

― すごくおいしく感じますよね。

大沢:あと、寒い外からあったかい部屋に行ったときとか、お風呂に入ったときも。

綾瀬:たしかに!

撮影中はどうでしたか? 役として心が動かされた瞬間はありましたか?

綾瀬:のり子にとって、ハルみたいな子と出会ったのはきっと初めてで、でも気づいたらハルには心を開くようになっていく。ハルはのり子の心にするりと入ってきてくるんですよね。ハルの何気ないひと言や行動に対してすごく愛情が湧くというか、だんだん溶け合っていくような感覚がありました。

― なぜハルは、閉じていたのり子の心に入っていけたのでしょう?

綾瀬:たぶん、ハルが素直でありのままだったからだと思います。嘘がなかったから、信頼できたんじゃないかな。

― 大沢さんは撮影中、どんなときに心が動かされましたか?

大沢:心が動かされたというか、ちょっとびっくりしたのは、(河井青葉さん演じる)中井先生がキックボードで帰っていたことです。

綾瀬:奇妙だったよね(笑)。

大沢:ちょっとびっくりした。車とかバイクとかじゃないんだと思って(笑)。

綾瀬:ずっと楽しそうに私たちの周りを周ってたよね。「あははは」みたいな感じで(笑)。

大沢:転んだら痛いだろうなと思いました。

― そういった奇妙な演出やシーンについて、監督からなにか説明はありましたか?

綾瀬:なかったよね。

大沢:なかったです。

では、その奇妙なできごとをどう受け止めていったんですか?

大沢:自分で素直に感じようと思っていました。

綾瀬:現実的に「なんだろう?」って考えると、いろいろ不可解に感じることもあると思うんです。でも、そういう世界なんだと思ったら、自然に受け入れられるというか。そもそも、のり子もハルも風変りなところがあるし、きっと映画に出てくるそれぞれの人に、それぞれの宇宙があるんだろうなって。

― 多様性など現代的なテーマにもリンクしそうですよね。最後に、お二人が感じた本作の魅力を教えてください。

大沢:脚本で読んでいたときは不思議な人たちが出てくるなと思ったんですけど、いざ映画を観るとみんなかわいいなって思うんです。ポツンと立っていたり座っていたり、お尻を突っつかれてもなにも気にしなかったり。そこが魅力です。

綾瀬:私は、のり子がハルに出会えて本当によかったなって思いました。ハルは決して言葉数が多いわけじゃないんだけど、話す言葉一つひとつがすごくやさしい。きっと、一緒に旅をする中で、のり子のちょっとした寂しさみたいなものをどこかで感じ取っていたんじゃないかな。ハルみたいに、自分だけの大きい宇宙をちゃんと感じて生きていることってすごく魅力的だなと、この作品を通して感じました。

 

Profile _ 綾瀬はるか(あやせ・はるか)
1985年3月24日生まれ、広島県出身。2000年、デビュー。04年に『雨鱒の川』で長編映画初主演をはたす。同年、ドラマ「世界の中心で、愛をさけぶ」(TBS)でゴールデンアロー賞新人賞を受賞。以降、「白夜行」(06/TBS)や「ホタルノヒカリ」シリーズ(07、10/日本テレビ)など多くの主演ドラマが話題を集める。08年、『僕の彼女はサイボーグ』、『ザ・マジックアワー』、『ICHI』、『ハッピーフライト』と4本の映画に出演し、第32回山路ふみ子映画賞新人女優賞や第21回日刊スポーツ映画大賞主演女優賞を受賞。09年に映画『おっぱいバレー』でブルーリボン賞主演女優賞も受賞している。13年にはNHK大河ドラマ「八重の桜」で主演を務めた。15年『海街diary』で毎日映画コンクール、ヨコハマ映画祭の主演女優賞を受賞。その他の出演作に、ドラマ「JIN/仁」シリーズ(09、11/TBS)、「義母と娘のブルース」シリーズ(18~24/TBS)、『はい、泳げません』(22)、『レジェンド&バタフライ』(23)、『リボルバー・リリー』(23)などがある。

 

Profile _ 大沢一菜(おおさわ・かな)
2011年6月16日生まれ、東京都出身。22年の映画『こちらあみ子』で応募総数330人の中からオーディションで選ばれ、主人公のあみ子役でスクリーンデビューを飾った。同作で第36回高崎映画祭最優秀新人俳優賞を受賞する。その後、ドラマ「姪のメイ」(23/テレビ東京)でもタイトルロールのメイ役で主演。宮藤官九郎が企画・監督・脚本を担当した配信ドラマ「季節のない街」(23/Disney+STAR)ではホームレスの少年役で出演した。また、俳優業にとどまらず、23年、NTT東日本「ミライはどこから来るの?」のCMに出演するなど、その個性あふれる存在感が幅広いジャンルで注目を集めている。さらに、24年にはRM(BTS)2ndソロアルバム『Right Place,Wrong Person』に収録されている“Domodachi (feat. Little Simz)”のMVにも出演。世界中から多くの注目を集めている。

 


 

Information

映画『ルート29

2024年11月8日(金)より全国公開

出演:綾瀬はるか、⼤沢⼀菜、伊佐山ひろ子、高良健吾、原田琥之佑、大西力、松浦伸也、河井青葉、渡辺美佐子、市川実日子 監督・脚本:森井勇佑
原作:中尾太一「ルート29、解放」(書肆子午線刊)

映画『ルート29』公式サイト

©2024「ルート29」製作委員会

  • Photography : Kenji Otsuka
  • Styling for Haruka Ayase : Mayumi Nishi
  • Hair&Make-up for Haruka Ayase : Masako Ide
  • Styling for Kana Osawa : Mihoko Tanaka
  • Hair&Make-up for Kana Osawa : Go Utsugi
  • Art Director : Kazuaki Hayashi(QUI)
  • Text : Sayaka Yabe
  • Edit : Yusuke Takayama(QUI)