濱正悟 – なんでもやってみる
芝居は貪欲に研究していくしかない
― 濱さんは小さいころからテレビの世界に興味があり、高校三年生のときにはオーディションを受けたものの落選し、大学に進学したそうですね。
落ちたら大学に行って、青春したいなと思っていたので(笑)。
― その感覚は理解できるんですけど、入学した大学が明治大学なんですよね。いわゆる難関大学のひとつですけど、勉強もかなり頑張らないと入れないのでは?
頑張りました。過去問は、20年分ぐらいやりました。
― 20年分!すごい。そもそも明治大学を目指したきっかけは?
小六から始めたバスケットボールを、高一でやめたんですよね。ほんとは遊びたかっただけなんですけど、やめる理由として勉強と言っておくのが一番良いのかなと(笑)。それでどこを目指してるんだって聞かれたときに、芸能人が多いから「明治大学です」って答えたことが始まりでした。
― 学部はどこに?
商学部です。
― 大学に行って良かったなってことはありますか?
友達ができたことでしょうか。ゼミの先生と食事に行く機会も多くて、授業だけの関係性じゃなくいろんなことを相談できたり、いまだに僕の出演作を観たときにはメールをくれたりするんです。
― 良い関係ですね。
本当に、たまにです。でも、そういうつながりができたことは良かったですね。
― 大学在学中の2015年にオーディションを経てエイベックスに所属されますが、その後も俳優としてキャリアを築くことにかなり苦労されたそうですね。
そうです。
― やはり『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』の宵町透真/ルパンブルー役が決まったことは大きかったですか?
根強いファンがいるスーパー戦隊シリーズに出演させて頂いたおかげで知名度も上がり、業界にも少しずつ認知してもらえました。1年間、レギュラーをやらせて頂くのは大きかったですね。
― でもルパンブルーとはずいぶん雰囲気変わりましたね。今は大人の男になったというか。
確かに(笑)。
― その後、ご自身にとって思い入れのある作品といえば?
どれも思い入れがありますが、特にあげるとしたら、朝ドラ「舞いあがれ!」、よるドラ「恋せぬふたり」、民放連ドラ初主演となったドラマ「何かおかしい」の3作品でしょうか。
― WEBの検索で「濱正悟」と調べると「何かおかしい」って出てきて、やばい人なのかと(笑)。
そうなんですよ。何かおかしいのかなって思われる。(笑)
― そういった作品で、共演者から感銘や刺激を受けることもありますか?
「舞いあがれ!」で主人公を演じられていた福原遥さんからは多くのことを学びました。
― 具体的には?
お芝居に対する集中力がすごくて、直前まで普通に話してるんですけど、始まったらパッと切り替えられるんです。あとは、人間性が素晴らしくて。ご一緒するのは2回目だったんですけど、いろんなことを覚えてくれていて、積極的にしゃべりかけてくれるし、気づいたら福原さんの周りに輪ができてるみたいな。役にすごく近い人間性だったので、お芝居もすごくやりやすかったです。
― そういうすごい俳優になっていくために、濱さん自身が大切にしていることはありますか?
芝居は貪欲に研究していくしかないと思っています。現場によって正解が違うので、普段からいろんな作品を観るのはもちろん、現場で監督と話したことや、すごいと思った芝居を記憶して、自分だったらどうするのかと研究したり。あとはとにかく何事でも、自分で実際にやってみるということを大切にしています。
― 頭だけじゃなくて、身体を使うことも大切ですよね。
スポーツ観戦も好きなんですけど、見てるだけじゃなくて自分でやりたくなっちゃう。今はボルダリングとボクシングをやっています。ある俳優の方がインタビューで、言われてから準備し始めたら遅いとおっしゃっていて。実際、準備期間が短い作品が多いですし、しかも僕のポジションだとさらに短いので。だったら自分にはある程度時間もあるから、いろんなことを先にやっておこうと。たとえば最近はバイクの免許取ったり。そういう自己投資みたいなことは心がけています。
― 始まってから準備するんじゃなくて、始まる前から準備している。
じゃないと間に合わないことが多いと思うんです。そして結果的に、人間的としても深みが出てくるんじゃないかなって。
ー お話を聞いていると本当に真摯にお芝居に取り組んでいて、その上フィジカルも強いし、強みがいっぱいあるなと思うんですけど、逆に弱みってなんでしょう?
物理的なことでいうと、すごい乾燥肌で(笑)。あとは夏が来たらすごい汗かいちゃう。
― あはは。でも地味に大変ですね。
そうなんです。くせ毛なので、次の1分後のカットで髪型が全然つながってないよ、みたいな。
― ご自身の中で、理想とする俳優像はありますか?
「恋せぬふたり」っていうドラマに出演させて頂いたときに、高橋一生さんが部屋と台所の間にあるすだれをうまく使ってお芝居をされていたんですが、それが台本にまったく書いてない誰も思いつかなかった動きで。段取り、テスト、本番って3回段階があるんですけど、段取りのときにもう完成されていて、すごいなと。
― 本当に現場で作り上げるというか、ライブで作っているんですね。
現場で初めて間取りや何が置いてあるかなどを知ることが多いので、そこでパッと見て、本当に自分の家かのようにふるまえる。しかもそれが1話か2話で、最初にそのお芝居ができることに驚き、現場も一気に活気が出て。そういう瞬間を自分から作れる俳優、作品をより良くしていける俳優を目指していきたいです。
― その盛り上がりを想像するとしびれます。
まず言葉が出ないです。食らっちゃって。
― ファンタジスタですね。ワンプレーですべてが変わる。
確かに、急にシュートを決めて形勢が逆転しちゃうみたいな。そういう次元が違う人がいっぱいいて、ずっとおもしろい作品に出演されているから憧れます。僕もそういう人たちに近付きたいと、探求中です。
着たいものを着ることが楽しい
― 現在放送中のドラマ「何曜日に生まれたの」。プライム帯の連ドラでは初のレギュラー出演ということで、おめでとうございます。
ありがとうございます。
― 野島伸司さんが地上波の連続ドラマを5年ぶりに描き下ろしたことでも話題です。どんな作品でしょう?
飯豊まりえさん演じる黒目すいという引きこもりの女の子が主人公で、すいのお父さんが漫画家なんですけど、連載打ち切りを告げられてしまうんです。でも編集部からベストセラー作家の原作で描くなら掲載すると提案され、その作家の条件は娘のすいを題材にすること……そこから物語が始まります。
― 濱さんの役どころは?
僕が演じる城崎健人は、すいが引きこもった理由につながる10年前の高校時代、仲良しのサッカー部の6人組のうちの1人です。
― 物語のキーマンになる役だそうですね。どんな人物だと捉えましたか?
サッカー部の6人組のムードメーカーでキャプテン。気づいたらみんながまわりにいるような愛され系。おちゃらけているけど、一番みんなのことを見ているんじゃないかな。でも心に陰っている部分もあって、一番幸せになれないんじゃないかなとも思ったり。
― ご自身と重なるところもありますか?
ふざけているときのテンションは似ているかも。そんなに作らず、自分に近いところを広げて演じようと思っています。
― 現場の雰囲気はいかがでしょう?
プライムタイムも初ですし、野島伸司さんの脚本で、野島さんとよくご一緒されているプロデューサーの方、監督の方とご一緒させて頂いていて身が引き締まります。ですが、現場は和気あいあいとした良い雰囲気です。
― 今回、役作りで髪をブリーチされましたが、似合う服も変わりそうですね。
もともと黒が多かったんですけど、白が似合わなくなったような気がします。
― 普段はどういった服装が多いですか?
いろんな人から「黒ばっか着てるんじゃないよ」って言われて、いろいろ試した結果、やっぱり黒に戻ってきています。でも今日、ファッションシュートして、服をもっと楽しみたいなと思いました。
― なるほど。ではファッションにはどんな力があると感じますか?
自己表現ですかね。着たいものを着ることが、やっぱり楽しいですよね。
― 服にはその人らしさが出てきますよね。お芝居の衣装合わせでも意見を言うこともありますか?
あります。着こなし方とか、小物をつけるとか、そんなことでも役のキャラクターを出せると思うので、そういった話はします。
― ドラマ「何曜日に生まれたの」で演じる城崎だったら、バイクの修理屋さんでヤンチャ風だったり?
ツナギを着ているのでちょっと汚したり、タオルをかけたり、そういうことはしていますね。
― 好きなブランドやショップはありますか?
靴ならCAMPERやUNITED NUDE。服はYohji Yamamoto、Ground Y、ISSEY MIYAKEとか。あとは古着ですね。
― モードに古着をミックスする感じなんですね。秋冬はもうなにか買いましたか?
暑くてそんな気分にならないですが、渋谷のTUNAGI JAPANという古着屋で柄シャツを何着か買いました。
― 濱さんのワードローブで、思い入れのあるアイテムは?
たしかスーパー戦隊シリーズが決まってお給料が入ったときに、Yohji Yamamotoで黒のシルクのセットアップを買いました。
― また記念になるような仕事のタイミングで、大きな買い物ができるといいですね。ちなみに最近は、なにをしているときが一番楽しいですか?
仕事ですかね。もっと仕事をしていたいです。
― 良いですね、今はどんどん新しい世界が広がっている感覚があるのでは?
そうですね。ゆっくりですけど、ちゃんと階段を登っているとは思うので頑張ります。
Profile _ 濱正悟(はま・しょうご)
1994年8月22日生まれ、東京都出身。
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Information
ドラマ「何曜日に生まれたの」
ABCテレビ・テレビ朝日系にて、毎週日曜よる10時から放送
放送終了後、TVer・ABEMAで見逃し配信
TELASA・U-NEXTにて第1話~最新話まで見放題配信
出演:飯豊まりえ 溝端淳平 / 井上祐貴 YU 若月佑美 片山友希 濱正悟 /早見あかり ・ シシド・カフカ 陣内孝則
脚本:野島伸司
音楽:福廣秀一朗
主題歌:The Hollies「Bus Stop」
企画・プロデュース:清水一幸
プロデューサー:南雄大、松原浩、柴田裕基、難波利昭
制作プロデューサー:奈良井正巳
演出:大塚恭司、岩本仁志、松原浩
制作著作:ABCテレビ
©︎ABCテレビ
- Photography : Taiki Kasuga
- Styling : Shohei Miura
- Hair&Make-up : Miho Emori
- Edit/Text : Yusuke Takayama(QUI)
- Edit : Miwa Sato(QUI)