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栗原颯人 × 日高由起刀 – 世界を変える

Oct 4, 2024
決して遠くない未来の日本を舞台に、変わっていく社会に翻弄される高校生たちを描いた映画『HAPPYEND』。
スクリーンデビューとなる本作でW主演を果たした栗原颯人と日高由起刀が今、表現者として選び取る未来とは。

栗原颯人 × 日高由起刀 – 世界を変える

Oct 4, 2024 - FILM
決して遠くない未来の日本を舞台に、変わっていく社会に翻弄される高校生たちを描いた映画『HAPPYEND』。
スクリーンデビューとなる本作でW主演を果たした栗原颯人と日高由起刀が今、表現者として選び取る未来とは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一致団結して作り上げた映画

― 今回、初の映画出演にあたって、どういった心構えで挑みましたか?

栗原颯人(以下、栗原):(自身が演じた)ユウタは僕自身とすごく近しい部分があって、ある程度自然体でいこうとは思っていました。でも、セリフを自分の言葉にするのは難しかったです。

― うまくいったなと思える瞬間も?

栗原:ほとんどうまくいったと思うんですが、やっぱりこの言い回しが難しいなというところもあって。そういうセリフは(空音央)監督と相談して、言いやすいように語尾を調整することもありました。

― 日高さんは撮影に向けてどのような準備を?

日高由起刀(以下、日高):僕は在日韓国人の役で、僕の祖母が韓国と台湾の人ということもあって、そういったバックグラウンドや日本で生活していく外国人の考えなどについて勉強していきました。

演技の面では初めてなので、何が正解で何がダメなのか不安な部分もあって。でも監督が自分の感覚をすごく尊重してくれたので、いろいろ相談しながら(自身が演じる)コウという役を確立していきました。

― 栗原さんと日高さんは本作が初対面?

栗原:そうです。

日高:オーディションで初めて会いました。

― お2人をはじめ部活の仲間たちが本当の友達みたいで、その関係性は映画にとってかなり重要な要素でしたよね。

栗原:現場に入っていたのが1か月半ぐらいあったのですが、みんなで一緒に頑張ろうという気持ちでやっていました。毎晩誰かの部屋に集まって本読みをして、途中からは本読みをするためというより集まって話したいという感じで、本当に仲良くなりました。

日高:もともと友達だった人たちと作り上げた映画じゃないかってぐらい。撮影の現場以外にも監督がワークショップを設けてくださったり、僕らもモデルの仕事をやっていたので共通の知り合いがいたり、最初から仲良くなるんだろうなとは思っていました。

― 現場の雰囲気はかなり良さそうですね。

日高:すごく良かったです。

栗原:みんな温かくて。

日高:学校に行くような感じ。自分たちも初めての映画でしたし、監督も長編劇映画は初めてだったので、みんなで作り上げようと一致団結してすごく楽しく撮影できました。

― その仲間の中でも林裕太さんは事務所の先輩で、芝居の経験も豊富なので心強かったんじゃないですか?

栗原:本当に助けられました。

日高:たくさんの現場を経験してきた先輩なので、「こういうセリフはどう言えば良いの?」とか、「この感情をどういう表情で表せばいいの?」とか、見て盗んだり、直接聞いたり。とにかく心強かったです。

― 劇中でも潤滑油的なキャラクターで。

日高:かわいい顔してますよね(笑)。

栗原:怒られるぞ(笑)。

― とくに思い出深いシーンがあれば教えてください。

日高:終盤に生徒たちが座り込みをしているシーンで、コウがキンパの差し入れを持っていって、朝方に学校から出ていく。問題は全然解決していないし、すべてがうまくいったわけではないけど、在日韓国人として自身のアイデンティティにずっと悩んでいたコウにとっては、その悩みから少しすっきりできた部分があったんですよね。やっていて本当に感情が入りましたし、表情に出しやすかったので印象に残っています。

― 物語の中でコウが大きく一歩踏み出した瞬間でしたね。

日高:はい、あそこですごく変わったと思います。

栗原:僕はコウとの喧嘩のシーンですね。その前まで現場でもずっとしゃべっていたんですが、ちょっとしゃべるのをやめようと。気持ちを作るのに一番エネルギーを使いました。あんなに仲が良かったのに、こんな言い合いをすることになるんだって、すごく感慨深かったですね。

― 芝居ならではのしんどさですよね。

栗原:怒るだけなのに、自分の感情とユウタの感情が入り混じって、泣きそうになっちゃって。

― 自分の本当の感情がにじみ出ているから、腹が立ちすぎて泣けてくる。

栗原:そうなんです。

日高:あそこのカメラが引きというのも良いよね。寄りじゃなくて。

栗原:他のシーンよりまわりに何もないからこそ、いろいろ感じやすくなったのかも。

 

運命の選択と感情の選択

― 本作で得たもの、感じたことがあれば教えてください。

日高:僕はいろんな選択を迫られる場面が多くて。友情を取るのか、自分の将来を取るのか、どういう選択をしても後悔しないでやっていくというのはなかなか難しいですよね。そういった人生においての選択について、改めて考えさせられました。

自分もいろんな選択を経て今ここにいるわけなので、人生の大きな選択はしっかり考えたほうが良いんでしょうけれど、考えても意味がない気もします。いずれにせよ、自分はまわりに恵まれてきたなとは思いました。

― 栗原さんが得たものは?

栗原:初めての映画だったというのもあって、感情の選択にすごくいろんなバリエーションがあるなと感じました。

ラストの(ARAZIさん演じる)トムがバスで行っちゃうシーンで本当は僕が大号泣するはずだったんです。でも考えているうちに、ユウタは吹っ切れて成長するだろうと思って笑ったんです。そういういろんな感情の選択肢を、今後の演技にも活かせていけたらなと思います。

― 確かにあそこで泣いているのか笑っているのかで、シーンの意味や今後のユウタのありようも大きく変わってきそうです。

栗原:後付けですけど、あのシーンで『HAPPYEND』というタイトルがすごく合うなと思いました。

― 現代の若者のリアルな感性や、未来に向けての課題を描いている作品でもありますよね。これからの時代を担っていく2人は、未来に対してどんな理想を抱いていますか?

栗原:コウみたいに、社会について考えることは、僕らの同世代にもあって良いんじゃないかなって。僕自身は、自分が楽しいことだけやっていたいというユウタのキャラクターと近いんですけれど、大人になっていくにつれて社会と切っても切り離せない部分が出てくるし、俳優として社会性も意識しなきゃいけない。自分も含めて、1人でも多くの人が社会について関心を持てる未来になったら良いなと思います。

日高:本作でもそうですけれど、まわりの目を気にして自分自身の考えを表現しづらい時代になっているなと。SNSが普及して、後ろ指を指されることも多いですし、そういう生きづらさはある。

若い人たちが何かを目指し始めても、それがまわりの目や意見で潰されちゃうというのは、夢を追いかける自分としてもやりづらいなと思うので……そこは僕が変えます(笑)。

栗原:でも本当に、まわりの目を気にしないで、のびのびとした生活を送れる社会を、ひとりひとりが意識できるようになったら、ちょっとでも良い未来になるんじゃないかな。

360度、24時間すべてが監視される『HAPPYEND』の世界は、SNSが普及した現代のメタファーでもあると思ったんですけど、基本的に減点しかないというのも嫌ですよね。ゴミを拾ってプラス100点とかはないから

日高:そういうふうに、全員が悪いところだけを拾っていく傾向は絶対にありますよね。出る杭は打たれるじゃないですけど。

栗原:見えない人を叩けるようになった時代だからこそすごいネガティブな空気が漂っているなと思うので……それを僕が変えます(笑)。

 

自分だからできる表現を

― お2人それぞれのパーソナリティについてもお聞きかせください。これまでの人生を振り返って、自身のアイデンティティに大きな影響を与えた物事といえば、何が思い浮かびますか?

日高:両親の存在がすごく大きいなと思います。僕は中高で陸上競技をやっていて、それを両親がずっと応援してくれていたんです。普段は感情を表現するのが苦手な父親も試合のときはすごく大声を出して応援してくれたり、母親も料理や生活面でサポートしてくれたり。でも僕は、俳優業やモデル業に専念するために陸上競技を断念してしまいました。

表では「がんばって」と言ってくれてはいましたけれど、今思い返すと相当悲しい思いをさせてしまったのかなと。だからこそ両親を喜ばせたいというのはありますし、応援してほしいからこそがんばらなきゃいけないなと思っています。

栗原:僕はやっぱり友達の影響が一番大きかったですね。シングルマザーというのもあって、母親が仕事で家にいないことがよくあったり、母親とぶつかる機会も多かったり、そういうとき友達にすごく支えられたなと。友達って一生ものだなと感じています。

― 『HAPPYEND』の仲間みたいに、誰かの家に集まったり。

栗原:本当にそうです。誰かの家に行ったり、誰かと朝まで一緒にいたり。

― そもそもお2人ともモデルとして活躍されていたなかで、俳優を志したのはなぜでしょう?

栗原:俳優を始めたきっかけは本作なんですけれど、モデルを始めて2か月ぐらいのタイミングでオーディションの話をいただきました。

― そこから本気でやりたいと思ったのは、お芝居がおもしろかったから?

栗原:もっといろいろやってみたいという思いが強くて。自分とは違うタイプの役とか、いろんな作品に出て影響力のある人間になりたいなと思いました。

日高:僕もモデルを始めて2か月ぐらいでオーディションを受けて、本作でスクリーンデビューさせてもらいました。

モデルと違ってその人間にフォーカスして映像を作っていく仕事なので、自分のすべてを見られているような感覚があって、だからこそ誰かに大きな影響を与えられる仕事だなと思って。俳優をやっていて、いつかどこかの誰かに良い影響を与えられたら、自分の人生においてすごくうれしいことだと思います。

― 目指す俳優像はありますか?

日高:音楽でも絵画でも、有名な方の作品って名前を見なくても「この人の作品だ」ってわかる。僕も「この演技といえば日高由起人だな」と言われるような表現者になっていきたいですね。

― 良い意味で色があるというか、キャラクターが立っている俳優に。

日高:そうです。俳優をやっていない方から、「この人はこういう演技をするよね」と認識されるのはすごく誇らしいことだと思います。

栗原:僕も理想の俳優像がはっきり見えているわけではないんですが、やっぱり「自分がやるから良い」と思ってもらえる俳優になりたくて。演じるキャラクターになりきるだけじゃなくて、僕にしか出せない色を求められる俳優になりたいです。

 

Profile _ 栗原颯人(くりはら・はやと)
1999年12月29日生まれ、新潟県出身。抜群のスタイルを活かしモデルとして活躍。多数のCMやMVにも出演中。オーディションで大抜擢され、本作でスクリーンデビューを果たす。特技はボクシングと卓球。

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Profile _ 日高由起刀(ひだか・ゆきと)
2003年9月30日生まれ、大阪府出身。韓国語が堪能で、日本と韓国の2拠点でモデルとして活躍中。演技未経験ながら本作のオーディションで大抜擢され、スクリーンデビューを果たす。特技は陸上。

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Information

映画『HAPPYEND』

2024年10月4日(金)より、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開。

出演:栗原颯人、日高由起刀、林裕太、シナ・ペン、ARAZI、祷キララ、中島歩、矢作マサル、PUSHIM、渡辺真起子、佐野史郎
監督・脚本:空音央

映画『HAPPYEND』公式サイト

© 2024 Music Research Club LLC

  • Photography : Kenta Karima
  • Styling : Taichi Sumura(COZEN inc)
  • Edit&Text : Yusuke Takayama(QUI)