Find you — starring Yui Sakuma
どう立ち向かうか。
佐久間由衣。
26歳、女優のリアル。
Interview with Yui Sakuma
佐久間由衣インタビュー
— 映画『君は永遠にそいつらより若い』で、佐久間さんは主人公のホリガイを演じていますが、脚本を最初に読んでどのように感じましたか?
脚本より先に原作を読ませていただいたとき、私にも心当たりのある部分がありました。ホリガイの、コンプレックスを抱えていたり、うまく社会と馴染めなかったり、喋りながら空回って頭のなかがぐちゃぐちゃだったりする部分とかが、すごく理解できたんです。
人それぞれ、何を抱えているかはわからないじゃないですか。『君は永遠にそいつらより若い』はそういうところにフォーカスを当てた作品だと感じたので、丁寧に、大切に演じていくことが許されるのであれば、ぜひ挑戦したいと思いました。
— ホリガイに共感した部分を役に取り入れていったのでしょうか?
そうですね。いまは(女優という)職業でいかせているので肯定できる部分は多いんですけど、昔は身長が大きいことで目立ちたくないのに目立ってしまったり、それで猫背になったりすることもありました。自分が持っているものによって性格が構成されていると思うので、そういうところにヒントをもらいながら演じていきました。
— イノギ役の奈緒さんの印象はいかがでしたか?
人としてすごく面白い方なので、いつもいろんなことを聞いていました。「こうであるべきだ」みたいなことを主張はしないんですけど、自分の確固たる哲学のようなものを持っていて。こんなことを考えているんだ、こんな風に考えているんだと、知れば知るほど、掘れば掘るほど面白いんです。
— 劇中ではさまざまな社会問題も扱われますが、佐久間さん自身はニュースや世の中の出来事に敏感なほうだと思いますか?
あまり敏感ではないと思うんですけど、ある程度のことは耳に入れるようにしています。ごくたまにですけど、探求心を持って事件のことを調べる衝動に駆られることもあって。いろいろ情報を調べたうえで、「なぜその人はそういう風になってしまったんだろう」と想像しています。
というのも、お仕事でいろんな役柄と向き合っていくうちに、世の中で絶対的な悪として裁かれるようなことにも何か理由があるはずだと思うようになって。その悪の背景にはどんな環境があって、なぜそういうことを起こしたのか、一方的な視点で終わらせないようにしています。
— そうして調べたり考えたりすることが、演技の奥行きや広がりにつながってくるのでしょうか?
そうなったらいいなと。そしてそれはお芝居のなかだけでなく、日常にも繋がって結びついていく気がしています。
— さまざまなことに触れて、いままでにない感情や感覚を抱くことをどのように捉えていますか?
ゲームに勝ったみたいな感じになります。またひとつ新しいステージに進めたような感覚というか。新しい景色とか、自分一人だったら絶対に生まれないような感情とか、それがエネルギーになっている気がします。もともとすごくポジティブな性格だからかもしれないですけど、ゲームをクリアしてレベルアップしていくような感覚です。
— ポジティブな考え方で素敵です。自分のなかで葛藤することはないですか?
あります。でも、いつも何を大切にするかを考えています。自分を大切にするのか、目的に重きをおくのか。そうすることによって、その葛藤が無駄なものにならないと思うので。
— いろいろな人と接する機会も多いと思いますが、最近影響を受けた人は?
ドラマ(『彼女はキレイだった』フジテレビ系列)でご一緒した小芝風花さんですね。年齢は私より年下なんですけど、すごくしっかりされていて、男前で頼もしくて、明るくて。でも普遍的な価値観を持っているので、一緒にいて引っ張ってもらえるというか、良い刺激をいただいています。あと、最近自力をつけたいなと思っているんですけど、小芝さんはそう思わせてくれたきっかけの人なんです。
— なぜ“自力”をつけたいと?
自分がいま立てているのは、監督や共演者の皆さんに助けてもらって、引っ張ってもらっているからという気がしていて。それはすごく幸せなことだし、人に恵まれているなって思うんですけど、いろんな人と出会っていくにつれて、自分も誰かにとってそうでありたいと考えるようになってきたんです。
自分の中でたくさんの選択肢をアイデアとして持って提示できるような、引き出しというか自力みたいなものをつけていきたいなって、20代後半になって思うようになりました。
— なるほど。
でも自力って、きっと覚悟なんですよね。いろいろな人と仕事をしていると、覚悟を感じる瞬間がたくさんあるんです。ただグーっと歯を食いしばるような凝り固まった覚悟ではなく、しなやかに真心を込めて演じていきたいなと思っています。
— 佐久間さんはいま26歳ですが、26歳というのは女優としてどんな年齢だと思いますか?
大人1年生みたいな感じですね。20代前半は恵まれていて気づかなかったけれど、20代後半になってちょっと変わっていきたいなって思うようになりました。大人としてはとっても未熟で、学校でいうと新米教師って感じかな。女優としては、そういう立ち位置にいる気がしています。
— 女優のお仕事をはじめた頃のことを思い出すときはありますか?
「お芝居初めてなんです」っていう共演者の方と出会ったときです。その無垢さにすごく痺れるというか。経験していくことによって、良いこともあれば失われていくこともあると思っているので、その失われた部分に気づいたときには初心を思い出します。
— キャリアを重ねることで失われることというのは?
ドキドキすることです。緊張して怖いなって不安になったり、その不安をかき消すためにいろいろ調べたりすることも大切だと思うので。初めてのことに飛び込む気持ちや、自分はまだまだ下っ端だっていう気持ちを忘れずに持ち続けていたいです。
— 初心を思い出したときにやることはありますか?
昔の出演作品を観返します。「あのときもっとああしておけばよかったな」と感じることも、自分がステップアップしている証拠。「昔の自分、一生懸命頑張っていて可愛いな」って、昔の自分からエールを送られるような感覚です。
— ものごとを前向きにとらえられるんですね。それでも生きづらさを感じるときもありますか?
あります。SNSが出てきたことによって、10代~20代前半の子とはまた少し感覚が違っているんだろうなと思っています。私は、あまりSNSをうまく使えていない子の方が共感してしまうというか……。
— それはなぜでしょう?
(SNSをうまく使えていないと)才能があってもスポットライトが当たりづらいし、「自分を見て」って言わないと見てもらえない時代なのかなって思うんです。
『君は永遠にそいつらより若い』にも、スポットライトを当ててあげないと見つけてもらえないような子たちが出てきます。私はそういう人たちを見つめていてあげたいなと思っています。
— 『君は永遠にそいつらより若い』では日常に潜む暴力や哀しみも描かれていました。佐久間さんは、世の中の悪意とどのように対峙していますか?
想像して、敵を知ることでしょうか。もしかしたらその人は、いまあまり良い状態じゃないかもしれないし、すごく大変な状況かもしれないなとか。面と向かって受ける攻撃や、世の中のことに対するちょっとした不安などは、なぜそうなっているのかという相手の素性を想像することで、どんどん感情が落ち着いてくる気がしています。
でも私はポジティブなところがあるので、「本当につらいことがあったら次は良いことがある」って信じながら日々を生きています。
— では最後に、この映画をどんな人に観てほしいですか?
学生はもちろん、社会人として日々闘っている人たちにも響くものがあると思っています。日常って、いろいろなことを見過ごしてしまうことが多く、立ち止まることすら許されないようなこともありますよね。この映画のなかには、きっとだれもが感じたことのある瞬間がたくさんあるので、一生懸命走り続けている人に観ていただきたいです。
あと、誰かがいなくなったとき、みんな現実を受け入れようとするけど、受け止めなくても良いんだよって思うんです。生きていくことを選択すれば、その先にはきっと小さな幸せが待っているはずなので。そんなささやかなエールを送れる作品になっていたら嬉しいです。
Profile _ 佐久間由衣(さくま・ゆい)
1995年3月10日生まれ。神奈川県出身。2014年女優デビュー。15年「トランジットガールズ」(CX)でドラマ初出演にして初主演を務める。NHK連続テレビ小説「ひよっこ」(17)ではヒロインの親友役を演じ一躍脚光を浴び、結婚情報誌「ゼクシィ」の10代目CMガールに抜擢。同年「明日の約束」での演技で、10月期コンフィデンスアワード・ドラマ賞の新人賞を受賞する。初主演映画『”隠れビッチ”やってました。』(19/三木康一郎監督)では第32回東京国際映画祭で東京ジェムストーン賞を受賞。近作に『あの日のオルガン』(19/平松恵美子監督)、『劇場版ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』(19/野口照夫監督)、『殺意の道程』(21/バカリズム脚本、住田 崇監督)など。20年12月~21年1月にかけて出演した舞台「てにあまる」(演出:柄本 明)では初の舞台ながら堂々たる熱演で話題を呼び、好評を博した。最近はNHK土曜ドラマ「ひきこもり先生」や、現在放送中のカンテレ・フジテレビ系連続ドラマ「彼女はキレイだった」に出演中。
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Information
佐久間由衣さん出演
映画『君は永遠にそいつらより若い』
2021年9月17日(金)より、テアトル新宿ほか全国順次公開
芥川賞作家・津村記久子作品、初にして待望の映画化に、佐久間由衣、奈緒をはじめ気鋭の若手俳優たちが挑む。
監督・脚本:吉野竜平
原作:津村記久子『君は永遠にそいつらより若い』(ちくま文庫)
出演:佐久間由衣、奈緒、小日向星一、笠松将、葵揚、森田想、宇野祥平、馬渕英里何、坂田聡 他
© 「君は永遠にそいつらより若い」 製作委員会
- Model : Yui Sakuma(PLATINUM PRODUCTION)
- Photography : Kenta Karima
- Styling : Naomi Shimizu
- Hair&Make-up : Yuko Aika(W)
- Art Direction : Kazuaki Hayashi(QUI / STUDIO UNI)
- Text : Sayaka Yabe
- Edit : Yusuke Takayama(QUI / STUDIO UNI)