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うらじぬの × ファーストサマーウイカ – これで良いんだ、大丈夫だよ

Aug 4, 2023
映画『炎上する君』に出演する、うらじぬのとファーストサマーウイカへのインタビュー。
正解のない問いに迷いながらもまっすぐに放たれた言葉たちは、思いやりに満ちていた。
誰かとわかりあうこと、ここから自由になることに、絶望と希望を抱えた君に届きますように。

うらじぬの × ファーストサマーウイカ – これで良いんだ、大丈夫だよ

Aug 4, 2023 - FILM
映画『炎上する君』に出演する、うらじぬのとファーストサマーウイカへのインタビュー。
正解のない問いに迷いながらもまっすぐに放たれた言葉たちは、思いやりに満ちていた。
誰かとわかりあうこと、ここから自由になることに、絶望と希望を抱えた君に届きますように。

良かれと思って発した言葉で相手を傷つけていたかもしれない(ウイカ)

― お二人は初共演とのことですが、仲が良さそうですね。お互いの素敵だと思うところを、ひとつずつ教えてもらってもいいですか?

うらじぬの(以下、うらじ):ウイカさんはこれ言われるの嫌かもしれないけど、本当に気を使える方なんですよ。しかも「気を使われてるな〜」って伝わることなく、自然にできるところが素敵だなと。

ファーストサマーウイカ(以下、ウイカ):気を使える人間が好きだし、気を使えない人間が好きじゃないのもあるかもしれない……という嫌な性格でもあるんですけど(笑)。たとえば現場が円滑に進むようにとか、1分でも巻いて終わって皆早く帰れるようにとか、そんなことから気を使うことに繋がっているのかも。

うらじ:それがすごいんですよ。

ウイカ:うらじさんは、相手に無理をさせない人だと思いますね。たとえば私のようなタイプだと、それこそ「こっちも気を使わなきゃ」という圧を与える可能性があるわけです。そして私は、その圧を与えている自負があります(笑)。
逆にうらじさんは役者としても、人としてもフラットで、接する人を自然体にしてくれるマイナスイオン的な存在。ただやさしいだけじゃなくて、愚痴みたいなこともちゃんと聞いて、同じだけの質量で返してもくれる。柔和というか、人に無理をさせない人だなと感じました。

― 一緒にいて疲れないというか、すごく居心地が良さそうですね。

ウイカ:心地良く感じる人が大半なんじゃないかな。その人の体にフィットした状態で支えてくれるような……ヨギボーみたいな人です(笑)。

― 作品を拝見して、お二人が演じた梨田と浜中が傷つき、怒る姿は、多くの女性が共感でき、自分たちが肯定されているように感じるだろうなと思いました。役を演じるにあたって大事にしたことは何でしょうか?

うらじ:自分の思いを詰め込まないように、偏ってしまわないように心がけました。今そこで起きている物事に対して、(自身が演じる)梨田として本当に驚いて、本当に悩むことが作品のためになるんじゃないかなと思って。

― ウイカさんはいかがでしょう? 梨田の親友、浜中を演じましたが。

ウイカ:この作品を観たときに、私、もしかしたら言葉で人を傷つけている側だったかもしれないって思うシーンがあったんですね。それこそ気を使って、良かれと思って発した言葉で相手を傷つけたこともあるかもしれないと。観てくれたみんなが、自分の判断基準は大丈夫か、ラベリングをしていないかって咀嚼しやすい状態で提示できるように、余白を持っていたいなとは思っていました。

― うらじさんは作品をご覧になって、どんな感想を?

うらじ:やはりハッとさせられることが多かったです。確かにいつから脇毛は見せちゃいけないものになったのか、そう思わせてきたものってなんだったんだろうとか。お笑い芸人のシーンで、確かにいじりの域を超えているけど、私もしたことがあるかもしれないとか。そういう日常に溶け込んでいる現実に気づかされる、観る人によって感じ方が変わる作品だなという印象を受けました。

― 「いじり」か「いじめ」か、その境界ってすごく曖昧で、最近はメディアでもよく話題に上がりますよね。メディアに出る側の人間として、そこの線引きをどういうふうにつけていますか?

ウイカ:バラエティ番組とかで、(いじりを)自分から言わないようにすることはできるんですけど、人が言ったことに対して同調で笑うことも今はもう良くないですよね。一方で例えば誰かが容姿いじりをしてるときに、「そんなんおもしろくない」って過剰に反応してしまう自分も嫌だったりするわけですよ。いじりをどう受け取るかは本人が決めることなのに、勝手にかわいそうだよって思うことがラベリングになってしまう。もちろん感覚がアップデートされずに鈍感であることは良くないけど、敏感すぎるとハラスメントに対するハラスメントみたいな、堂々巡りになっていきますよね。
この映画も、そんな現時点で私たちが抱えるモヤモヤ感を表現した作品だと思うんです。なんかよくわかんないと評価する人もきっといるんですけど、その人たちに向けても、「この作品を作った人や、この作品に心動かされる人もいる」という、その「いる」ということを知らせるための一歩でもあるのかなって。

うらじ:ウイカさんのおっしゃる通りで、私は反ルッキズムに対しても難しいなと思っていて。昔は「おもしろい顔だ」みたいなことは、その方と私の関係性の上で成り立つコミュニケーションだったんです。でも今は、あの子が傷ついているはずだからやめましょうって。その言葉に傷つくよ、みたいな(笑)。
反ルッキズムの取り組み自体はすごく良いと思っているんです。ただ急ピッチだからどうしても、行き過ぎたり制御しすぎたりすることもある。だからどんどんトライアンドエラーを繰り返していくためにも、考えるための足場を作っていくことが今は大事なんだなって。『炎上する君』という作品が、そういう役目を果たしてくれると良いなと思っています。

― 本当にハラスメントに対する世間の感覚って、すごい勢いで変化しているのを感じますよね。

ウイカ:その変化が良い方向なのかどうかというところも含めて、我々は多面的に描きたいと思っていて。観る人が今どこに立っているかによっても、見え方が違ってくるんですよ。感覚がアップデートされている人なら「わかるよ」って思うかもしれないけど、まだ感覚が10年前にいる人からしたら「なに言ってんだ」と思うかもしれないですね。それこそ数年後また変わっていると思う。

 

 

お互いを怖がらずに認めていくことが一番大変で大切(うらじ)

― ふくだももこ監督からはどんな演出が?

うらじ:撮影に入る前にはみんなで台本について話したり、原作から変わった部分のすり合わせをしたりすることはあったんですけど、撮影に入ってからは梨田と浜中が完璧に存在してくれているから、そのまま思うことをやってくれれば良いよと。丸投げしているわけでなく、すごく信頼してくださって、やりやすかったです。

ウイカ:3日間という短い撮影期間の中で、完全アドリブのダンスシーンから始まって、役者としては手探りの瞬間というのが少なからずあったんですけど、そこに対して監督が涙ながらに「ありがとー」「そうやんなー」って、役と対話してるみたいな(笑)。それを見ていると、自分たちの感覚も間違ってないんだなと思えました。

― あのダンスシーン、アドリブなんですね。すごい。

ウイカ:梨田と浜中のパッションに、我々自身も重ね合わせました。

うらじ:もう二度と同じ踊りはできない(笑)。

― 男女問わず、誰が観ても考えさせられる映画だとは思うんですけど、とはいえ女性に向けた部分が多い作品かなと感じました。日本ではまだフェミニズムへの抵抗感が強く、性役割を求められる場面が多いのも事実ですよね。そんな現実に対して、いま女性たちはどのように立ち向かえばより楽しく、より自由に生きられると思いますか?

うらじ:当たり前であることについて考えることが、自分を勇気づけてくれるかもしれません。女性である自分が男性と同様に仕事をして活躍していること、それは与えられたものではなく当たり前なんだ、これで良いんだ、大丈夫だよって。
この作品でも、梨田は「君はなにも悪くない」と叫んでいますけど、それは誰かが言ってくれても良いし、自分自身に対して言ってあげても良い。女性に限ったことではないかもしれませんが、生きるうえで自分を肯定していくことが大事だよなって思います。

― 梨田の言葉には僕もしびれました。

うらじ:なかなか、ああやって真正面から言ってもらうことってないですからね。

ウイカ:私は、受け入れるということを広げていくことも大事だと思います。手先が器用だから美容師になったとか、足が長いからモデルになったとか、生まれ持った特性を伸ばしてそれを生活に活かしていくというのは至って当たり前のことですよね。
だから、女性が女性性を使って仕事をすることも、私は悪ではないと思っていて。女性として生まれた特性を使って生活することに誇りや喜びを感じている人に対してまで「自分を軽んじないで」とか否定しても、「いや違うねん、好きでやってんねん」ってなるわけで。もちろん嫌がっている人は助けてあげる社会であってほしいけれど、前向きにやってる人は後押ししてあげられるようになっていけば、物事は多様性を持って広がっていくんじゃないかなと思います。

― 周りの声に影響されて、自分自身を卑下するようにはなってほしくないですよね。

ウイカ:水着の写真をSNSに上げて、セクハラ的なコメントをされて不快な気分になることはあるわけです。でも、だったら載せるなよっていうのは違くないかと。そこは強く思いますね。

― ちなみに男性側にどう振る舞ってほしいか、女性の立場から思うことはありますか?

うらじ:難しいですね……。でもお互いを怖がらずに認めていくことが一番大変で大切な気がしています。男女というのも、生物学的なものと、精神的なものでは話が変わってくるわけで。男女である前に、心を持った生き物だということを念頭に置けばいろいろと解決することもあるんじゃないかな。

 

 

Profile _

左:うらじぬの
千葉県生まれ。青年団無隣館2期生となり平田オリザ氏の元で学び、その後劇団子供鉅人に入団。その後、映像作品にも出演し、コメディからシリアスまでその独特な存在感で強烈な印象を残す。 2023年4月にはひとり芝居「押忍、わたしたち」を自身で企画した。舞台出演に、劇団子供鉅人作品、維新派、ままごと、財団江本純子、夏の日の本谷有希子、二兎社など。映像の出演作品に、テレビ東京「フルーツ宅配便」(2019)、TBS「病室で念仏を唱えないでください」(2020)、テレビ朝日「あのときキスしておけば」(2021)、日本テレビ「ブラッシュアップライフ」(2023)、Netflix『全裸監督 シーズン2』(2021)など。

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右:ファーストサマーウイカ
大阪府出身。2013年に「BiS」メンバーとしてメジャーデビュー。翌年解散後、2019年まで「BILLIE IDLE®」のリーダーとしてライブを中心に活動した。現在ではバラエティやドラマ、ラジオなど多岐にわたり活躍している。最近の主な出演作は日本テレビ「ファーストペンギン!」(2022)、NHK「超人間要塞ヒロシ戦記」(2023)、テレビ朝日「unknown」(2023)、映画『私はいったい、何と闘っているのか』(2021/監督:李闘士男)などがある。23年7月期テレビ朝日火曜21時「シッコウ!!~犬と私と執行官~」、2024年大河ドラマ「光る君へ」清少納言役での出演が控えている。

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lace bustier ¥110,000 / SHIROMA (SHIROMA), embroidery dress ¥11,990 / LEMON (LEMON 050-1184-9183), sheer tops ¥12,100 / bed shimokitazawa (bed shimokitazawa 03-6804-8350), other / stylist’s own.

 


 

Information

映画『炎上する君』

2023年8月4日(金)より、渋谷シネクイント、シネ・リーブル梅田ほか全国順次公開

出演:うらじぬの、ファーストサマーウイカ
脚本・監督:ふくだももこ
原作:西加奈子「炎上する君」(角川文庫/KADOKAWA)
劇中歌:ゆっきゅん『DIVA ME』 エンディング曲:ゆっきゅん『NG』
音楽:池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ)

映画『炎上する君』公式サイト

©LesPros entertainment

  • Photography : Hiyori Korenaga
  • Styling for Nuno Uraji : Maruri Kawakami
  • Styling for First Summer Uika : Iyo Kondo
  • Hair&Make-up for Nuno Uraji : Haruka Kato
  • Hair&Make-up for First Summer Uika : Eriko Yamamoto
  • Art Director : Kazuaki Hayashi(QUI)
  • Text&Edit : Yusuke Takayama(QUI)

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