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南沙良 × ゆりやんレトリィバァ – 自分の“好き”と向き合う

Feb 16, 2026
自身の体験をもとに初の映画監督を務めたゆりやんレトリィバァと、主演としてそのエネルギーを全身で引き受けた南沙良。
映画『禍禍女』は、好きだという感情が呼び起こす狂気を、ホラーとして、そして極めて人間的な物語として描き出す。情熱と挑戦に満ちた映画作りの舞台裏を振り返るとともに、自分自身の“好き”という気持ちへの向き合い方について語った。

南沙良 × ゆりやんレトリィバァ – 自分の“好き”と向き合う

Feb 16, 2026 - FILM
自身の体験をもとに初の映画監督を務めたゆりやんレトリィバァと、主演としてそのエネルギーを全身で引き受けた南沙良。
映画『禍禍女』は、好きだという感情が呼び起こす狂気を、ホラーとして、そして極めて人間的な物語として描き出す。情熱と挑戦に満ちた映画作りの舞台裏を振り返るとともに、自分自身の“好き”という気持ちへの向き合い方について語った。

 

 

 

 

 

 

 

Sara Minami:blouse ¥84,700・denim pants ¥75,900 / MSGM (aoi 03-3239-0341), belt ¥28,600 / LEUR LOGETTE (BOW INC 03-6427-1590), leather pearl choker ¥57,200 / Sapir Bachar (Filg Showroom 03-5357-8771), pierce ¥35,970・ring ¥67,650 / Kalevala (kalevalashop.jp)

 

ゆりやんレトリィバァが映画監督に

― 本作はゆりやん監督自身の恋愛をもとにして作られたそうですね。

ゆりやんレトリィバァ(以下、ゆりやん):そう言っていたんですけど、よく考えたら恋愛じゃなくて、片思いやったと最近気づきました。

好きな人が「連絡返してくれた」とか、「ちょっと遊びに行けた」とか、「でも何か返信遅くなってきた」とか、「あれ、違う人と遊んでる」とか。それを自分の中では恋愛やと思っていたけど、人から見たら全く何も起きてなくて。結局、片思いが禍禍しくなっていただけでした。

その禍禍しい気持ちを作品に?

ゆりやん:自分のことを振った人や、振り向いてくれなかった人がいかに間違っていたかを教えてやると。でも、できあがった作品を観たら自分が間違ってました。

― 自分の作品に、自分自身が教えられた。

ゆりやん:そうなんです。今も生まれ変わったわけではないですけど、好きな人の都合も考えて接していけるようになりたいなとは思っています。

― そもそも映画を撮ることになったきっかけは何だったのでしょう?

ゆりやん:映画が好きで、映画監督になりたいですとテレビで言っていたら、プロデューサーの髙橋(大典)さんが「やりましょう」と声をかけてくださったのが5年くらい前になります。

それで自分が熱を持って喋れることを映画にしようとなって、いろいろ私の恋バナをしていたら「もうそれ、ホラーですよ」と(笑)。ホラー映画を撮ることが決まりました。

― 映画を作るうえで、最初からご自身で監督を務めたいという思いがあったのでしょうか?

ゆりやん:映画監督がどういう仕事かも全く知らず、ただ目立ちたかったんです。

でも映画作りの話がスタートしたくらいから、Netflixの『極悪女王』で白石和彌監督と茂木克仁監督のもとお芝居をさせていただいて、私はなんて恐れ多いことを言ってしまったんだって。

― 実際に初の映画監督を務めてみていかがでしたか?

ゆりやん:めっちゃ楽しかったです。もちろん、「自分はこれをやりたい」という意見を持つことは、勇気がいることでもありますが。

台本を作るときは自分だけがなんとなく分かっていたらいいんですけど、現場では皆さんに全部を説明して、全部を判断する必要があって。そのたびに自分は一体何をやりたいのか、何が好きなのか、自分自身に問いかけるのは新鮮でした。

南さんから見た、ゆりやん監督の仕事ぶりはいかがでした?

南沙良(以下、南):本当に素敵でした。ゆりやん監督が熱意を持って取り組んでくださるから、私を含めた現場の皆さんも、より面白い作品にしたいと強く思えました。

私自身も初めての挑戦が多かったですが、本当にゆりやん監督がいなかったらここまでできませんでした。

ゆりやん:こんなにめちゃくちゃな役で大丈夫かなって……。

南:最初、台本ではそこまでだとは思わなくて。作っていくうえで、結構すごいことになっていったんですけど(笑)。

ゆりやん:たしかに台本だけ見たら、動きも書いてないし。騙された(笑)。

 

エネルギーがぶつかりあった撮影現場

― お二人は本作が初対面だったんですか?

ゆりやん:実は「ドラゴン桜」(2021)に先生役で出させてもらったときに、沙良さんも生徒役でいらっしゃったんですけど、私はほんまに自分のことに必死で、全く教室内が見えてなかった(笑)。

だから今回、沙良さんに「はじめまして〜」とか言っちゃって。そんなまわりが見えてないやつに、「こういうお芝居してください」とか指示されたくないですよね。

― 今回ご一緒して、お互いにどんな印象を受けましたか?

ゆりやん:沙良さんとは、撮影前からお話しさせてもらう機会を多くいただいて。(南さん演じる上原)早苗のイメージを共有したり、撮影を進めるうえでどうやってコミュニケーションを取っていくかを相談したり。

最初は可憐な方という印象やったんですけど、話していくうちに、いろんなことにしっかり向き合ってくださる方やなって。人としての生々しさ、人間味みたいなものを感じました。

― 南さんが感じた、ゆりやん監督の印象は?

南:私は、最初の印象とそこまで変わらなかったですね。撮影前にゆりやん監督のインパクトのある恋愛話を聞かせていただいて、ゆりやん監督だからこそ『禍禍女』が生まれたんだなと(笑)。

早苗に最初はあまり共感はできなかったのですが、それでも気持ちが理解できる部分もあって。まずしっかりお話する時間をいただけたことがありがたかったです。

― 早苗を演じる際に、どんなことを大切にしましたか?

南:常にエネルギーを忘れないことです。ここまで全てのシーンでエネルギーを使う作品もあまりないので。エネルギーをずっと維持することって、一番難しいような気がしていて。そこは本当に大変だったなと思います。

― とくに記憶に残っているシーンはありますか?

南:たとえばミュージカルシーンとか。どういう感じになるのか想像もつかなかったので、まずゆりやん監督にやっていただいて。ゆりやん監督がやってくださったものを踏まえて、私がこれをどうやって落とし込めばいいのかなというのは難しかったです。

ゆりやん:私が芸人としてやってきたコミカルに見える動きをそのまま完コピしても、それはしょうもないと思うんです。普段ダンスをしない沙良さんとしてやってもらうことが良くて。踊り慣れていない人がおもいっきり踊っている感じが生々しくて、早苗の役にもぴったりでした。

アオイヤマダさん(望月瑠美)との喧嘩のシーンも、本当はリズムよく叩きあったり、キャットファイトをやったりする方が見応えがあるんですけど、絶対に喧嘩し慣れていない二人だから、あれぐらいがちょうどよくて。あんまり練習しないようにしてもらいました。

 

それぞれの“好き”との向き合い方

― 本作では“好き”という気持ちが募ることで狂気じみていく様子が描かれていました。お二人とも多彩な表現を手掛けられており、恋愛に限らず好きなことがたくさんあると思うのですが、ご自身に芽生える“好き”という気持ちと、今はどういうふうに向き合っていますか?

ゆりやん:私は、自分自身を好きになるようにしています。今までは禍禍女のように人に割いていたエネルギーを、自分に向けてみる。自分が今、何をやりたいのか自分に相談して、正直に生きていく。より自分の内側にフォーカスしている感じがします。

― 自分の心の声を聴いて、自分でちゃんと応えてあげるような?

ゆりやん:そうです。そして嫌だったら嫌ですと、直接言う。

― 自分の心に正直だからこそ、映画もお笑いも音楽もすべて、中途半端にならず突き詰められるんでしょうね。

ゆりやん:計画性は全然ないので、そのぶん集中しようとは思っています。

― 南さんは、自分の“好き”という気持ちにどう向き合っていますか?

南:私の好きは、昔からいつも軽率で中途半端なんですよね。突き詰められないし、好きでい続けることも難しい。飽きちゃうことがすごく多くて、好きになりきれないタイプです。だからこそ、自分の好きをもっと大事に扱いたいなということは、ずっと思っています。なかなかできてはいないんですけど。

ゆりやん:でも文章めっちゃうまいんですよ。刺さる。

南:とんでもない(笑)。ありがとうございます。

― では最後に、完成した作品をご覧になった感想を教えてください。

南:撮影期間中はとにかく一生懸命でしたし、もっと面白いものにしたいという思いが強くありました。でもこれまで自分の芝居で、納得したことや満足したことが一度もなくて、今回もやっぱり自分のことは観たくないなと。だけど、それでもずっと目が離せなくて、ずっと観ちゃう。本当にあっという間に時間が経ちました。

ゆりやん:ありがとう。

― さきほどもミュージカルの話が出ましたが、いたるところに面白いアイデアがちりばめられていて。

南:お芝居をしているときもすごくエネルギーを使いましたが、観たときもすごく長いサウナに入ったような満足感が。

― きっとどんな方でもハマる要素が見つかる作品だと思うので、ぜひみなさんも一度体験していただきたいですね。感想を語り合いたくなる映画だと思うので。

二人:よろしくお願いします!

 

Profile _ 南沙良(みなみ・さら)
2002年6月11日生まれ、東京都出身。三島有紀子監督作品『幼な子われらに生まれ』(17)で俳優デビュー。初主演映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(18)の演技力が高く評価され、報知映画賞、ブルーリボン賞ほか、数々の映画賞を受賞する。これまでの主な出演作に、『この子は邪悪』(22)、「ドラゴン桜」(21・TBS)、「鎌倉殿の13人」(22・NHK)、「光る君へ」(24・NHK)、『愛されなくても別に』(25)など。今年に入り、『万事快調〈オール・グリーンズ〉』(26)では主演を務め、香港映画『殺手#4』(キラー・ナンバー4)は今春、『マジカル・シークレット・ツアー』は6月19日に、それぞれ全国公開待機中。
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Profile _ ゆりやんレトリィバァ
1990年11月1日生まれ、奈良県出身。関西大学文学部卒業。大学在学中の2012年に吉本興業NSCに35期生として入学。「NSC大ライブ2013」で優勝し、首席で卒業する。2017年、女芸人No.1決定戦「THE W」第1回大会で優勝。2019年にはアメリカのオーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』に挑戦し、大きな注目を集める。2021年、R-1グランプリ優勝。Netflixドラマ『極悪女王』で主演を務めるなど、女優としても活躍の場を広げ、その他にもアーティスト活動や、トレーニングウェア「YURYUR(ユーユー)」のディレクションなど幅広く活躍中。2024年に活動拠点をアメリカに移す。
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Information

映画『禍禍女』

2026年2月6日(金)全国公開

出演:南 沙良、前田旺志郎、アオイヤマダ、髙石あかり、九条ジョー、鈴木 福、前原瑞樹、平田敦子、平原テツ、斎藤 工、田中麗奈
監督:ゆりやんレトリィバァ
脚本:内藤瑛亮
音楽:yonkey

映画『禍禍女』公式サイト

©︎2026 K2P

  • Photography : Hiyori Korenaga
  • Styling for Sara Minami : Marie Takehisa
  • Hair&Make-up for Sara Minami : Asuka Fujio
  • Text&Edit : Yusuke Takayama(QUI)

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