レーベルで聴くスタイル | ディスクユニオンスタッフが教える、かけがえのない音楽 # 5
連載第5回目となる11月のテーマは「レーベルで聴くスタイル」
各ジャンルを担当する音楽マニアならではの深い知識と独断と愛情にあふれるリコメンドを楽しんでほしい。ここで見つけたディスクユニオンの“推し“が、あなたにとってかけがえのないライブラリーになることを願いつつ。
ロンドンのクラブカルチャーに沿った作品を数多く発表するレーベル「RHYTHM SECTION INTERNATIONAL」
recommend by ハウステクノ担当 猪股 恭哉さん
ハウステクノ担当バイヤー。ディスクガイドHOUSEdefinitive改訂版に参加。
おすすめレーベル「RHYTHM SECTION INTERNATIONAL」から是非聞いてほしいアルバムを紹介。
アルバム名:MIDNIGHT IN PECKHAM(2015)
アーティスト名:CHAOS IN THE CBD
スタッフのおすすめコメント:
繊細で美しいメロディと、ジャズのエッセンスをブレンドしたディープハウス傑作がこちら。レーベル史上恐らく最大のセールスを記録したと思われます。発表当時から売れに売れ、定期的にリプレスされているほど不動の人気を誇る一枚です。さて、リリース元のRHYTHM SECTION INTERNATIONALについて。近年、カルチャーの発信地として注目が集まっている南ロンドンのペッカムを拠点とし、ハウスやソウル、ジャズ、ロック、エレクトロニカといったロンドンのクラブカルチャーに沿った作品を数多く発表。主宰のブラッドリー・ゼロはDJかつ音楽キュレーターでもあり、そのセンスは世界中から信頼を集めています。レーベルが始まって約10年、良質な作品をカタログにそろえている中で、カオス・イン・ザ・CBD以外で特に注目すべきアーティストは、カマール・ウィリアムスの別名義ヘンリー・ウー、ジョーダン・ラカイのハウス・プロジェクトであるダン・カイ、メルボルンのニュージャズ・バンドの30/70、エクアドルのスロウテクノ・プロデューサー、ニコラ・クルズ、レーベル初期の代表的アーティストのビートメイカー、アル・ダブソン・JRは間違いない内容。直近では、スコットランドのニューカマー、ウォレスの「Ripples」が熱量のあるダンスミュージックを披露し、アフター・パンデミックのクラブカルチャーにレーベルの存在感を示しました。
80年代より40年近くにわたり確固たる歴史を築く、ベルギー発祥のレーベル「R&S」
recommend by 商品部門商品部 ハウステクノ担当 子安 菜穂子さん
ハウステクノweb担当。90年代よりANiIIIIiiiKii名義でDJとしても各地で活動中。
おすすめレーベル「R&S」から是非聞いてほしいアルバムを紹介。
アルバム名:IN ORDER TO DANCE 4.0(2023)
アーティスト名:V.A.
スタッフのおすすめコメント:
「レーベルで聴くというスタイルもあるんです」ということで、元来アンダーグラウンドなフィールドから派生しているテクノハウス/ダンス・ミュージック。アーティスト達が多くの変名を使い分け活動する匿名性が魅力という側面もあり、そしてそれらをリリースするレーベルも千差万別だったりします。アーティスト自らが主宰していたり、詳細不明の人物によるレーベル名のスタンプだけが押された怪しげ感満載のネタもの&ホワイト盤数百枚プレスのみの一発屋的レーベルだったり。”謎”の部分が多い分レーベルごとの特性や嗜好等は殊更顕著に出やすい為か「レーベル買い」「レーベル聞き」「レーベルチェック」をするリスナーは多く、各レーベルによって大まかなコーナー分けがされた商品棚はクラブ・ミュージック系専門のレコード店では比較的よく見られる光景です。
そういった膨大な数存在するレーベルの中、80年代より40年近くにわたり確固たる歴史を築き、時にアンダーグラウンドのクラブ/ダンスの枠を超えたヒットを出しながら現在も精力的に活動を展開しているレーベルのひとつが、フェラーリの跳ね馬マークでお馴染みのベルギー発祥・R&S RECORDS。同様の老舗としてあげられる英WARP、故CASPER POUNDが宰したRISING HIGHと並び、90年代”テクノ”3大レーベルと称されていたR&Sは、日本では”KEN ISHIIを発掘したレーベル”としても広く知られています。1992年にAPHEX TWINの歴史的デビュー作「Selected Ambient Works 85-92」(あのロゴのアレ)をサブ・レーベルAPPOLOから世に送り出し、デトロイト・テクノ第一世代JUAN ATKINSのMODEL 500のファースト・アルバム「Deep Space」、JOEY BELTRAM「Energy Flash」、CJ BOLLAND「Camargue」、JAYDEE「Plastic Dreams」等等等、数々の特大クラシックを擁し、現在まで続くテクノの歴史においてもその功績は計り知れない名門。 2000年に一度倒産してしまいますが、2006年に拠点をロンドンに移して復活。その後もJAMES BLAKEやLONEを輩出するなど、その選択眼は全く衰えておらず、現在もUKベース系や最先端のフロアともリンクする現役感ある作品の数々を展開しています。これまでの豊富なタイトルの中から過去名作のリイシューも都度行っており、過去/現在を交えた絶妙なバランスをキープしているところも魅力のひとつです。
間もなくレーベル40周年を迎える今年2023年、このR&Sを代表する名コンピレーション「IN ORDER TO DANCE」が復活(シリーズ最初のリリースはVol.1は1989年!)、レーベル創始者RENAAT VANDEPAPELIEREがA&Rをつとめた本作は新世代アーティストが世界各地より集結したやはり”らしい”1枚となっています。
ディガー魂をくすぐるレーベル「Stones Throw」とJ. coleが設立したレーベル「Dreamville」
recommend by 商品部門商品部 ヒップホップ担当 高橋 央さん
バイヤー。HIP HOP/R&B/JAPANESEの作品を紹介。
おすすめレーベル「Stones Throw」から是非聞いてほしいアルバムを紹介。
アルバム名:MADVILLAINY “2LP”
アーティスト名:MADVILLAIN
おすすめレーベル「Dreamville」から是非聞いてほしいアルバムを紹介。
アルバム名:MIRRORLAND “2LP”
アーティスト名:EARTHGANG
スタッフのおすすめコメント:
ジャケ買いや年代買い、はたまたプロデューサー買い等、一種のレコード購買欲の唆り方も様々ですが、それと並列する形で唆らせるのが“レーベル買い”であります。「とにかくお気に入りのレーベルのレコードは掘りまくり全て揃える!」といったた己から己への謎の強迫観念に駆られる不思議な魅力があります。かのStones Throwを例に挙げると、「STH-〇〇」の様に“レーベル名の略称+番号”が品番として表記される事でカタログ化欲も高まりディガー魂をくすぐる一旦を担っていると言えるでしょうか。
またサブスクリプション世代のリスナーでも、同レーベルメイトの作品への参加/相互客演が頻繁に行われるので、新たな楽曲や新たなアーテイストを知る事のできる絶好の機会と言えるでしょう。また、J. coleが設立したDreamvilleを例にとると、「J. coleはこんなスタイルが好きなんだ」「かなり昔から目を付けてレーベルへ受け入れていたけど、今考えると見る目あるな…」といった、お気に入りのアーテイストへの新たな発見に巡り合えます。
自由自在に選べる時代だからこそアーティスト単位で聴くなんてもったいない。お気に入りのアーテイストを軸に“レーベル”単位で横断してみてはいかがでしょうか。幅や世界観をグッと拡がり、まだまだあなたの奥底に潜むヒップホップ愛に気づかされるかもしれません。
アイドルシーンの中で突き抜けた音楽性のグループを数多くリリースするレーベル「Lonesome Record」
recommend by 商品部門商品部 J-POP卸担当 山本 生さん
週末はインディーズバンド、アイドルなどのイベントを開催している。
おすすめレーベル「Lonesome Record」から是非聞いてほしいアルバムを紹介。
アルバム名:Camellia(2023)
アーティスト名:RAY
スタッフのおすすめコメント:
これまでにクラブミュージックを大胆に取り入れその独自なサウンドでファンを増やし続けている“situasion”や圧倒的なパフォーマンスで昇り続ける実力派アイドルユニット“Ringwanderung”などアイドルシーンの中で突き抜けた音楽性のグループを数多くリリースするLonesome Recordから「圧倒的ソロ性」と「『アイドルx?????』による異分野融合」をコンセプトとする新時代のアイドルグループ”RAY”待望の3rdフルアルバム。
本作は今のグループの音楽性、ステージングを物語るような爽快感のあるPOPな名曲揃い。そして青木ロビン(downy、zezeco)が制作し中尾憲太郎(Crypt City、勃殺戒洞、ex.NUMBER GIRL)がベース、BOBO(MIYAVI、TK from 凛として時雨等)がドラム、ケンゴマツモト(THE NOVEMBERS)がギターを務めたタイトでエッジーなオルタナ曲「火曜日の雨」などバンドシーンにも響く曲もだが、管梓(エイプリルブルー)が制作した「フロンティア」などエレクトロシーンにも刺さる曲も多く、RAYというグループが確実に次のステージに上がったことを感じさせる名盤となっている。アイドルシーンの中で唯一無二の存在感を放つLonesome Recordから目が離せない。
新世代ポストパンク&ジャズファンクバンド“SAULT”を手掛ける、UKのレーベル「Forever Living Originals」
recommend by 商品部門商品部 Soul / R&B / Rare Groove バイヤー 駒木野 稔さん
Kissing Fish Records主宰。ライターとして『レア・グルーヴ A to Z』、『和モノ A to Z』などに寄稿
おすすめレーベル「Forever Living Originals」から是非聞いてほしいアルバムを紹介。
アルバム名:HEAVEN(2023)
アーティスト名:Cleo Sol
スタッフのおすすめコメント:
『Forever Living Originals』とは話題の新世代ポストパンク&ジャズファンクバンド“SAULT”を手掛ける、Dean “Inflo 1st” Josiahを首謀とするUKのレーベル。SAULTはメンバーが非公開だったり、99日間しか聴けない作品や一挙5作品を同時リリースしたりと、謎が多く破天荒なグループとされています。Infloはプロデューサーとして、ADELEやMICHAEL KIWANUKAの作品で名を馳せましたが、自身のレーベルアーティストである、Cleo SolやLittle Simzの作品での手腕が、彼の真骨頂だと言えます。SAULTも然ることながら、私的にはCleo Sol作品がリリースされるたびにいつも圧倒され、しばらくは何も手につかなくなる状態が続いてしまう程に惚れ込んでます。今後も本レーベルの一挙手一投足から目が離せません。
「DIVE INTO MUSIC.」に込められた想い
世界中どこにいても同じ音楽を楽しむことができる今の時代に、ディスクユニオンは違和感を感じています。なぜなら、本来音楽というものは、ひとりひとりが自らの手で触れて、自らの脚で探して出会うべきものだからです。だからこそ私たちディスクユニオンは、見たことのない曲、聴いたことのない世界を求め、音楽の海へ飛び込んでいきます。そしてこの想いを「DIVE INTO MUSIC.」というスローガンに込め、お客様と共有して参ります。
diskunionHP:https://diskunion.net/
公式youtube:https://www.youtube.com/@diskunion_official
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