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巷では流れないだろうシティポップ | ディスクユニオンスタッフが教える、かけがえのない音楽 # 15

Oct 2, 2024
首都圏を中心にしながら、名古屋、大阪まで、音楽CD・レコード店を展開し、ビギナーからマニアまで多くの音楽ファンの絶大な支持を集める「diskunion(ディスクユニオン)」。ロックやソウル、ジャズ、JPOP、クラシックなど、さまざまなジャンルごとに精通したスタッフが在籍するのもディスクユニオンの大きな魅力になっている。ここではそんなマニアックなスタッフたちが毎月のテーマに沿って、おすすめのアーティストの作品を紹介していく。

連載第15回目となるテーマは、「巷では流れないだろうシティポップ」

各ジャンルを担当する音楽マニアならではの深い知識と独断と愛情にあふれるリコメンドを楽しんでほしい。ここで見つけたディスクユニオンの“推し“が、あなたにとってかけがえのないライブラリーになることを願いつつ。

巷では流れないだろうシティポップ | ディスクユニオンスタッフが教える、かけがえのない音楽 # 15

Oct 2, 2024 - MUSIC
首都圏を中心にしながら、名古屋、大阪まで、音楽CD・レコード店を展開し、ビギナーからマニアまで多くの音楽ファンの絶大な支持を集める「diskunion(ディスクユニオン)」。ロックやソウル、ジャズ、JPOP、クラシックなど、さまざまなジャンルごとに精通したスタッフが在籍するのもディスクユニオンの大きな魅力になっている。ここではそんなマニアックなスタッフたちが毎月のテーマに沿って、おすすめのアーティストの作品を紹介していく。

連載第15回目となるテーマは、「巷では流れないだろうシティポップ」

各ジャンルを担当する音楽マニアならではの深い知識と独断と愛情にあふれるリコメンドを楽しんでほしい。ここで見つけたディスクユニオンの“推し“が、あなたにとってかけがえのないライブラリーになることを願いつつ。

ベトナムのホーチミンで見つけたPhùng Khánh Linh「CITOPIA」

recommend by 商品部 ロック担当 池部 幸太さん
主にモーラムやルークトゥンのレコード、カセット、CD、USBなどフィジカルの収集と現行シーンのYoutubeディグ、アジアにまつわる現場調査を行う。

アーティスト名:Phùng Khánh Linh
アルバム名:CITOPIA(2022 / Hãng Đĩa Thời Đại (Times Records))

スタッフのおすすめコメント:

2024年ベトナム調査の際に現地(ホーチミン)のレコード店で発見した作品です。リリースは2022年。まさかベトナムにこんなにもCITY POPな作品が現行でリリースされているなんて誰が想像できたでしょう?

竹内まりや「プラスティック・ラブ」からの影響を公言するベトナム女性SSWフン・カイン・リン自身が作曲、米国のナッシュビルで録音した10曲を収録した2022年セカンド・アルバム。ベトナム版ウィキペディアにかなり詳細な経緯が記載されていますが、大量のデモ曲をもとに制作された楽曲群はどれも素晴らしい仕上がり。MVを含め、ビジュアル面からのアプローチも隙無し。

「巷では流れないだろう」・・・といいつつも、この作品が日本各所でプレイされることを心より望みます。この記事をみたみなさん、拡散お願いいたします。日本ではディスクユニオンのみの取り扱いですが、卸流通も行っていますのでお気軽にお問合せください。CD/LP/カセット有。

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80年代のCITY POP経て、打ち込み音楽全盛期を迎えた90年代に生まれたからこそのクオリティ、ONE STEP COMMUNICATE「小さな真夏を口移す」

recommend by 商品部 日本のロック・インディーズ担当 四元 里穂さん
日本大学芸術学部在学中。so niceに憧れ日芸フォークソング俱楽部に入るも、ギターが下手すぎてバンドをクビに。今は聞き専です。

アーティスト名:ONE STEP COMMUNICATE
アルバム名:小さな真夏を口移す(1994 / NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン)

スタッフのおすすめコメント:

“CITY POP”と聞くと、何となく1980年代を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。1990年代は「渋谷系」が都会的でお洒落な音楽として台頭していたと思いますが、このグループは90年代に活動していたにも拘わらず、80年代CITY POPのようなキラキラとした海岸を思い出させてくれます。
ONE STEP communicateは1994年にデビューをして1997年に解散したユニットグループです。3年という短い活動期間ですが、アルバムを3枚、シングルを5枚リリースしています。
中でも私が一番好きな曲はデビューアルバムでもある「ONE STEP COMMUNICATE」に収録されている「小さな真夏を口移す」です。
80年代CITY POPのようなキラキラとした爽快感溢れるメロディと歌詞に、90年代ならではの軽やかな打ち込みのリズムがマッチしています。
この曲には、80年代のCITY POP全盛期を経て打ち込み音楽全盛期を迎えた90年代に作られたからこそ完成した、唯一無二のクオリティが感じられます。90年代の楽曲がCITY POPの文脈で語られることは少ないですが、いろいろ掘ってみると素晴らしい出会いがあるかもしれません。

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シティポップの最果てであり、実験音楽の要素もある要注目の作品、K. Yoshimatsu「Marine Crystal」

recommend by 商品部 物流担当 稲垣 吉人さん
気になったものは何でも試しに聴く者です。メタル、パンク、プログレ、フリージャズ、サントラ、実験音楽など。一番好きなミュージシャンは浅川マキ。

アーティスト名:K. Yoshimatsu (吉松幸四郎)
アルバム名:Marine Crystal(1985 / Villa Blanca,2022 / Jet Set)

スタッフのおすすめコメント:

広島市在住の映画・映像・音楽制作家で1980~1985年頃の期間、実験的かつオブスキュアなテープ作品を40作以上リリースしていた同氏が1985年にテープでリリースし、2022年にレコードで再発された作品がこちら。巷で流れないだろうという題目を聴いた時この作品が真っ先に浮かびました。

その内容は宅録/DYI感覚が溢れまくるローファイなプロダクションながら、涼やかで明快なメロディが通り抜け、小粋なスラップベースの表現がコシのあるリズムを作り出し、ドラムは打ち込みでローファイな質感を際立たせています。ときおり終末/黄昏感のある物悲しいメロディの他、シティポップには似つかわしくないポストアポカリプスの要素を多分に含んだ歌詞など、印象深さを残す技ありの仕事の数々も冴えており、単なる風変わりな作品だけには収まらない魅力を兼ね備えています。

5曲目や7曲目の墜ちていくようなメロディ運びなどは細野晴臣氏が在籍したグループ、Apryl Foolの失われた母なる大地(パートII)を思わせる破滅メロディです。捉え方によっては余りにも早すぎたVaporwaveのような捉え方も出来るかもしれません。シティポップの最果て足り得る内容であり、実験音楽の要素もある要注目の作品です。

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韓国R&Bの名プロデューサー JINex のアルバム「BUTTERFLY」

recommend by 商品部 ソウル/R&B担当 山本 奈緒さん
SOULとR&Bを中心に担当。韓国R&B/K-POPが特に好きです。韓国タイトルのお取り扱い商品を充実させていきます!

アーティスト名:JINex
アルバム名:BUTTERFLY(2023/SSE PROJECT)

スタッフのおすすめコメント:

2020年代以降はシティポップも定番人気で以前のような爆発的な盛り上がり方をしてはいないものの、世界各国にシティポップを感じる音楽が多発しているように思います。

今回挙げさせていただくのは韓国のJINexというプロデューサーのアルバム。2021年からこの名前でプロデュース業をはじめ、この年には現代の韓国シティポップの代表的なプロデューサーBRONZE所属レーベル8BALLTOWNのリミックスコンテストで優勝。

JUE、NODY CIKA、MRSHLL、SUMMERSOUL、HORIMなど韓国R&B好きな方なら一度は聴いたことのあるシンガーのプロデュースも行っています。そんなJINexが2023年満を持してリリースしたファーストアルバムが『BUTTERFLY』。沢山のR&Bシンガーが参加し、全体的にNJSやSLOW JAMな楽曲が90’Sを感じさせる最高な1枚でおすすめなのですが、JADEが歌う「Aqua」はビートこそ重ためなものの、歌や雰囲気は極上のCITY POP!

まだ巷で耳にする事はあまりありませんが、ハイブリッド型なCITY POP、しかも韓国語というこちらの楽曲を是非チェックしてみて下さい!

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ヤシの木や海といった王道City Pop的タッチに中華要素が融合、舒大卫「DIZZY BOY」

recommend by 商品部 ラテン / ワールド / アジア担当 TTさん
アジア圏ですと、中華圏、韓国、タイ、インドネシアのフィジカルを収集、ユニオンでのアジアンミュージックの取り扱いも徐々に増加中。現地ディグという名のグルメ旅をよくしています。

アーティスト名:舒大卫 DAVID SHU
アルバム名:DIZZY BOY (2021 / INDEPENDENT)

スタッフのおすすめコメント:

中国発のシティポップとして大きな話題となった一作、李行亮(Li Hang Liang)『悠長假期 (ロングバケーション)』に続くネクストブレイク!ヤシの木や海といった王道City Pop的タッチに、中華要素がしっかり入っておりこれは間違いがないやつだと、ジャケ買いで買ったのがはじまり。おそらくDiskunionで購入していただいた方の中にもジャケで購入していただいた方もいるのではないでしょうか。

2曲目「幻想中華街」は、中華の要素と融合したCity Popチューン。どこか現実にありそうで実際には存在しなさそうな、しかし我々日本人が想像してきた・ジャパニーズ・チャイナ・テイストとして歌ってきた中華のイメージともまた異なるような、そんな空気感がどこかに漂っている。途中で中華料理の名前が差し込まれたり、広東語で歌うシーンなどがあるので、ネタ曲としてもDJプレイで使いやすいかもしれない。例えば、細野晴臣『トロピカルダンディ』、YMO『イエローマジックオーケストラ』、などエキゾティックでオリエンタルなムードを持つアルバムであったり、その他『チャイナタウン』と名を冠する楽曲と一緒にかけてもウケそうだ。

中国らしさ×City Popということで、8曲目「肥肠爱你(I Love You So Much)」という楽曲も紹介したい、李行亮がShall We Danceをモジって「Shall WeChat」と歌ったように中国の文化が密接に関わってくる楽曲が今作にも収録されています。「肥肠爱你(I Love You So Much)」もまた言葉遊びが面白く、「肥肠(豚のホルモン)」が英題のSo Muchに該当する「非常(Fdei Chang)」とほぼ同じ発音で(*正確には声調が異なる)文字遊びを行いダブルミーニングを持ったタイトルとなっているんです。現地で中華料理を食べたことのある方ならこの曲に愛着が湧くような内容です。食べたことないかたはぜひたべてみてほしいです~

最後は、ジャケに記載のある「杭州特産」から紹介する現地のシーンのご紹介。杭州とは浙江省の省都であり、たまに「くいしゅう」なんて呼ばれる都市のことである。上海の近くにあり、湖が綺麗なスポットとしても知られます。大雑把に中国の音楽シーンを分けるとロックやパンクが多いのが北京、Hiphopや民謡がアツいのが四川、シューゲイズやインディポップ、CityPopをするアーティストが多いのが上海・浙江の音楽シーンとなっており、CheesemindやPeach Illusion、ZOO GAZERなんかがおすすめ。さらには彼は、台湾の洪申豪ともつながりがあるらしく、この辺をお好きな方はぜひ聞いてみてほしいです。


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時代の残り香として価値の高い一作、改めて再評価されるべき野田幹子「ローズ・セ・ラ・ヴィ 」

recommend by 商品部 ヒップホップ担当 池松 俊祐さん
HIPHOP/R&BのWEB業務を担当しています。

アーティスト名:野田幹子
アルバム名:ローズ・セ・ラ・ヴィ (1991 / ソニー・ミュージックレコーズ)

スタッフのおすすめコメント:

昨今のシティポップや初期J-POP再発掘ブームに端を発する「え?こんなモノまでが?」と驚いてしまう再発・初アナログ化の風潮に対して、どういう訳かそのラインナップに一向に加わらない野田幹子の諸作の中から、何故かデュシャンの変名をタイトルに冠したアルバム『ローズ・セ・ラ・ヴィ』を選盤。

ガールズ・ポップとして語られることが多い野田幹子ではあるが、87年デビューという時代背景もあり、前作収録の「バスルーム・レイン(お風呂で泣いてスッキリする曲)」など、シティポップと呼べる曲が無かったわけではない。そんな彼女が7作目にしてガッツリとその方角に舵を切った本作は、一部のファンからは「路線変更」と見なされてしまったが故に、その評価は決して高くはないものの、バブル景気と共に泡と消えていったと言われるシティポップにおいて、91年リリースでのこの内容は時代の残り香として価値の高い一作であると言えよう。

2曲目「With You! (Re-mix Version)」を筆頭とした、歌詞も含めてド直球なシティポップ・ナンバーの数々に対しての、きらびやかなデジタル・シンセの音色が生楽器と混ざり合う編曲は、全盛期であった80年代初期シティポップでは得ることのできない味わいがある。特に5曲目の「ファイナル・コール」の出来栄えは素晴らしく、どう考えても当時から10年近くは古い曲調の上で、数々の隠れ名曲を支えた鳥山雄司と松原正樹の両名によるツインギターが咽び泣く名曲。

2024年8月発売のシティポップ・コンピ『CITY POP GROOVY ’90s -Girls & Boys-』に、本作12曲目の「淡い季節のサングラス」が収録されるといった動きもあり、ここに来て本作を始めとした野田幹子再評価の機運が高まる気配は無きにしも非ず!「巷では流れないだろう」から「巷で流れるかも?」に変わりつつあるこのタイミングで、チェックしてみては如何でしょうか?


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「DIVE INTO MUSIC.」に込められた想い

世界中どこにいても同じ音楽を楽しむことができる今の時代に、ディスクユニオンは違和感を感じています。なぜなら、本来音楽というものは、ひとりひとりが自らの手で触れて、自らの脚で探して出会うべきものだからです。だからこそ私たちディスクユニオンは、見たことのない曲、聴いたことのない世界を求め、音楽の海へ飛び込んでいきます。そしてこの想いを「DIVE INTO MUSIC.」というスローガンに込め、お客様と共有して参ります。

diskunionHP:https://diskunion.net/
公式youtube:https://www.youtube.com/@diskunion_official
instagram:https://www.instagram.com/diskunion/

前回の記事はこちらから
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