私の愛する、偏好ビートルズカバー曲!| ディスクユニオンスタッフが教える、かけがえのない音楽 # 4
連載第4回目となる10月のテーマは「私の愛する、偏好ビートルズカバー曲!」
各ジャンルを担当する音楽マニアならではの深い知識と独断と愛情にあふれるリコメンドを楽しんでほしい。ここで見つけたディスクユニオンの“推し“が、あなたにとってかけがえのないライブラリーになることを願いつつ。
Yuri Morozov 「Anthology Volume.1」 recommend by 山中 明さん
recommend by ディスクユニオン新宿ロックレコードストア 山中 明さん
レコード・バイヤー / ライター / エセ漫画家
2003年より(株)ディスクユニオン所属。バイヤーとしてレコードを追い求める日々のかたわら、レコード文化の発展に寄与すべく各種媒体にてコラムや漫画を執筆中。著書に『アナログレコードにまつわるエトセトラ』、『ソ連ファンク 共産グルーヴ・ディスクガイド』、編著に『PSYCHEDELIC MOODS』などがある。
おすすめアーティスト名:Yuri Morozov
アルバム名:Anthology Volume.1
2020 / Credo InLumen
スタッフのおすすめコメント:
西洋文化が鉄のカーテンに遮断されていたあの頃のソ連において、作詞、作曲、演奏、そしてスタジオ・ワークの全てを自らの手で手掛けた例外的鬼才がいた。本作は2020年に限定300枚のみリリースされた、共産アンダーグラウンド・スーパースター、「赤きシド・バレット」ユーリ・モロゾフによる初期音源集。これらの音源はひっそりと隠匿されていたリール・テープから発掘されているが、あの時代、あの国で「自由」を行使する対価として、当時の彼はKGBの監視下に置かれることとなる。
のちに彼は極彩色のサイケデリック・ミュージックを体得し、共産圏におけるロックの求道者としての道を歩むが、初期音源集となる本作では簡素な自作曲の弾き語りや、西側ロックのカヴァー曲が含まれている。もちろん、The Beatlesは彼の重要なインスピレーションの源泉であったが、本作に収められた「You Never Give Me Your Money」のカヴァーはとりわけ興味深い。当局からの追跡を逃れ、地下室で録音された独白文がごとき本曲は、音楽史に遺された数多あるThe Beatleカヴァーの中でも、最も暗鬱でヒロイックなカヴァー曲のひとつといえよう。
SPANKY WILSON 「LET IT BE」recommend by 黒須 遊さん
recommend by 商品部門商品部 SOUL担当 黒須 遊さん
20代からディスクユニオンに所属 / サックス奏者の一面ももつ。
おすすめアーティスト名:SPANKY WILSON
アルバム名:LET IT BE
1975 / MOTHERS RECORDS
スタッフのおすすめコメント:
フィラデルフィアのフィメール・ソウル・シンガー “SPANKY WILSON” による珠玉の “LET IT BE” カヴァーをご紹介。イントロのホーンアレンジ、恐らくコントラファゴットとフルートの伴奏で静かなはじまり、ナイヤビンギを思わせるリズムが祈り、祝祭を連想させる。そこからドラマチックにコーラスとティンパニ、ブラスが鳴り響き怒涛のオーケストラアレンジへ突入、そんなゴージャスな演奏に負けない”SPANKY WILSON”の歌声はスモーキーでソウルフルで力強い。極めつけはゴスペル隊が全ての人を肯定し背中をそっと押す。涙無しでは聴けない最高の1曲。
高橋幸宏「EGO」recommend by 杉本 博士さん
recommend by 商品部門商品部 日本のロック/POPS担当 杉本 博士さん
日本の古いロックを担当。2023年はレジェンド音源の充実復刻の当たり年!
アーティスト名:高橋幸宏
アルバム名:I EGO
1988 / 東芝EMI
スタッフのおすすめコメント:
当時、約2年ぶりにリリースされた高橋幸宏ソロ・アルバムの冒頭を飾るのが、ビートルズ・カバーとなる「TOMORROW NEVER KNOWS」。
テクノロジーが発達したはずの現在の耳で聴いても、打ち込みと生演奏の融合具合は絶妙で、ソリッドな質感のサウンドがいまだにインパクト大のアルバム。
幕開けが追っかけコーラスで構成されていたり、間奏で自らシンセサイザーにディストーションを掛けて逆回転ギター風のソロを披露したり、独自のアレンジでリスペクトが表現された世界観はYMO時代の「PURE JAM」(1981年)を彷彿とさせ、中期以降ビートルズのサイケデリック的な要素が、幸宏さんを通じて中期以降YMOにも影響を与えていたことも、このカバーバージョンを通じてあらためて見えてくるように思うのです。
当時のインタビューで、同曲について「レノン=マッカートニ―の曲の中で一番ジョージ・ハリスンぽい」と評していた幸宏さん。ちょっぴり屈折した想いも抱えたビートルズへの独特の愛情表現にも、当時高校生だった私は大いに唸ったものでした。1月に天国に旅立たれた高橋幸宏さん。生前最後と思われるご自宅での写真にはジョージ・ハリスンのポスターが貼ってありました。
DANGER MOUSE「GREY ALBUM」 recommend by 高橋 央さん
recommend by 商品部門商品部 ヒップホップ担当 高橋 央さん
バイヤー。HIP HOP/R&B/JAPANESEの作品をご紹介。
おすすめアーティスト名:DANGER MOUSE
アルバム名:GREY ALBUM
2004 / Not On Label
スタッフのおすすめコメント:
ヒップホップにおいて”カバー曲”という概念を考えた場合、やはりその括りとしては”Remix”や”Mush Up”がそれに当てはまるでしょうか。そう捉えた場合、色んな意味で外せないのはやはりDanger Mouseのこちらですね。
1968年リリースで世界的にも歴史に残るセールスとなったBeatlesによる通称「White Album」と、Jay-zによる2003年リリースの名盤「Black Album」を、”Remix”&”Mush Up”したその名も『Grey Album』。Jay-zのアカペラとWhite Albumから大胆にサンプリングしビートをMush Upした、今の時代から見ると大きな物議を醸した当時よりもさらにセンセーショナルに感じる今作。
サンプリングにより軽々とジャンルの壁を越えた名作×名作の生み出すヒップホップの持つ魅力や爆発力、そしてとてつもない危険度が充満したある意味ヒップホップ史に名を残す作品です。
(双方の許可の無いままプロモ用としてCDが限定生産された当時の一連の騒動は各自ご確認を、、、)
「DIVE INTO MUSIC.」に込められた想い
世界中どこにいても同じ音楽を楽しむことができる今の時代に、ディスクユニオンは違和感を感じています。なぜなら、本来音楽というものは、ひとりひとりが自らの手で触れて、自らの脚で探して出会うべきものだからです。だからこそ私たちディスクユニオンは、見たことのない曲、聴いたことのない世界を求め、音楽の海へ飛び込んでいきます。そしてこの想いを「DIVE INTO MUSIC.」というスローガンに込め、お客様と共有して参ります。
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