いますぐPUNKにDIVEせよ | ディスクユニオンスタッフが教える、かけがえのない音楽 # 12
連載第12回目となる6月のテーマは「いますぐPUNKにDIVEせよ」
各ジャンルを担当する音楽マニアならではの深い知識と独断と愛情にあふれるリコメンドを楽しんでほしい。ここで見つけたディスクユニオンの“推し“が、あなたにとってかけがえのないライブラリーになることを願いつつ。
YOU HAVE YOUR PUNK,I HAVE MINE、これが僕のEMO 「FOUR MINUTE MILE」
recommend by 商品部 パンク担当 石谷さん
愛犬の換毛期が凄まじすぎて、掃除機付きブラッシングマシーン導入を検討中。
アーティスト名:THE GET UP KIDS
アルバム名:FOUR MINUTE MILE(1997 / DOG HOUSE RECORDS)
スタッフのおすすめコメント:
密かに片想いしていた1個上の先輩と付き合うことができ、浮かれてた19歳の頃。家族が寝静まった夜中、こっそり家を抜け出し親の車を勝手に拝借して、毎日のように片道30分かけて会いにいく若さが成す生活。持ち始めたばかりのPHSで到着したことを伝えると、部屋着にマフラーをまいた彼女が寒そうにしながら小走りで車にやってくる。どこに行くわけでもなく、ただただ止まった車の中で馬鹿な話で笑ったり、喧嘩したり、あんな事やこんな事、冬場には窓が曇るなんて事もしばしば。あっという間に過ぎていく時間。
そんな中。2年程たった頃。大好きで大好きでしかなかったが為に、彼女には自分よりもっとふさわしい人がいるんじゃないかという、今では到底考えつかない青さ故の思考回路に陥り別れを決意。いつもの助手席に座る彼女は泣きじゃくり、嫌われるよう悪者を演じるも演じきれず、振り切るように彼女を降ろし、車を走らせる。カーステから流れる“NO LOVE”。“I don’t want you love me anymore”に我慢できず路肩で停車。
90年代のEMOやキンセラ兄弟を中心としたシカゴ音響がなければリバイバルも糞もなく、様々な解釈、語彙も生まれなかったのです。定番を格好良いと言えない風潮はどこにでもあるし、EMOとはなんぞやなんてのはどうでも良いのです。YOU HAVE YOUR PUNK,I HAVE MINE。これが僕のEMOです。
2TONE SKAムーブメントの全盛期のサントラ「DANCE CRAZE」
recommend by 商品部 パンク担当 / 笹野さん
パンクとレゲエとソウルとアイドルとヴィジュアル系と漫画が好きです。
アーティスト名:V.A.
アルバム名:DANCE CRAZE(2023 / CHRYSALIS)
スタッフのおすすめコメント:
SKAという言葉は知っていても、なんとなくスチャスチャしてるリズムなことは知っていても、じゃあ結局なんなの?という人がほとんどかと思います。そんな人にもオススメなのがこちら。1970年代にイギリスで燃え上がった2TONE SKAムーブメントの全盛期に公開されたライブムービーのサントラです。とにかくコレさえ聴いとけば!というBEST的内容。代表的バンドがほとんど収録されてます。ジャケも最高。これこそ2TONE SKA。そのまんまです。オシャレさ、かっこよさ、新しさ、美メロさ、そして忘れちゃいけないのがその中に薫る、何とも言えないいなたさ!これがSKAの味わい深い魅力かと思います。
個人的にはMADNESSが大好きですが、この中から自分に合ったバンドを追うも良し、キラー曲ばかり聴くのも良し、ファッションやカルチャーを深堀るのもまた良し。自由に、好きな時に好きなだけ楽しめる、満足度の高さ。こちらは2023年リイシューの、超巨大ポスターがついたデラックスエディション。どうせならこの大迫力のアートワークも込みで楽しんでください。
結局ここに帰ってくる、唯一無二のRANCID「AND OUT COME THE WOLVES」
recommend by 商品部 パンク担当 / 笹野さん
パンクとレゲエとソウルとアイドルとヴィジュアル系と漫画が好きです。
アーティスト名:RANCID
アルバム名:AND OUT COME THE WOLVES(1995 / EPITAPH)
スタッフのおすすめコメント:
PUNKとは何なのか、長く生きててもいまだに分からない自分が中学の頃に出会った衝撃、それがRANCIDでした。深夜のラジオから流れてきた「RUBY SOHO」、イントロのギターから盛り上がるリズムとグルーヴ、そこになんとも言えない味わいのティムのボーカル。それぞれのコーラス。上手いとかそういうのじゃなくて、なにかこう、人間味を感じるというか、訴えかけてくるものがあるというか、今までにない新しい世界を知った感覚でした。
そのあとバンド名と曲名をメモしてCD屋で購入したのが名盤3rd「AND OUT COME THE WOLVES」です。SNSがなくてもネットがなくても、楽しい思い出が何もなくてもこの作品に出会えただけで私の中学生活は完全に勝ちでした。その次に買ったのが2nd「Life Won’t Wait」これがまた素晴らしかった。出会いから30年経ってもこれを超えるものはない、というか、SKAとかREGGAEという言葉を知るより先にここで学んだと思います。もちろんRANCIDはどのアルバムもそれぞれに最高です。なんやかんやあっても結局ここに帰ってくる、みたいな、唯一無二とはそういう存在だと思わせてくれる最高のバンドです。残念ながら今廃盤になってるものが多いですが、30周年記念のリイシュー心から期待してます。
背中をブチ蹴られたような気分になること間違いなし「DAMAGED」
recommend by 商品部 パンク担当 佐藤さん
6月6日生まれの29歳。最近気が狂いそう。水無灯里ちゃんが好きです。
アーティスト名:BLACK FLAG
アルバム名:DAMAGED(1981 / SST Records)
スタッフのおすすめコメント:
中学生だったときひたすらに激しい音楽を探し求めていた時期があり、地元の某有名レンタルCD屋の中をフラフラしていたら出会ったのがこのBLACK FLAGの「Damaged」。その当時の私はメタルコアばかり聴いていて、ハードコア・パンクのことはよく知らなかったので、激しい音楽と言えば”ダウンチューニング(ギターのチューニングを低くセットして必然的に通常より低く太い音を出す手法)”だとばかり思っていたのが、このアルバムで覆されました。
まず自分の生まれる前に発売された音楽をそれまでほとんど聴いてこなかったというのもあり、「ハードコアパンクって思ったより音軽いな」というのが最初に抱いた印象でしたが、ほかの”古いバンド”たちとは何かが違う。なんだかよくわからないけどカッコイイ!という違和感を初めて体験したのです。その違和感の正体はおそらくこのバンドの持つ真の怒りや悲しみ、そして信念が醸し出すものなのかもしれません。いま心の中が怒りで満ち溢れていて、しかもそれが反抗期的なアレではなくもっと弱々しく鬱屈とした何かに苛まれている人、もっと言うと自分のことを弱いヲタク野郎だと自認する人はまず、“Rise Above”や“Six Pack”を聴いてみてください。なんだか気持ちが励まされる…というか背中をブチ蹴られたような気分になること間違いなしです。
そしてBLACK FLAGといえばボーカルのヘンリー・ロリンズ。かつて小汚いライブハウスでこんな荒んだ音楽をやっていた彼も、今では俳優やTV番組の司会者といった顔を持ち、すっかり有名人になっているそうです。さすがハードコアをプレイしていただけあってタフな人生を送っています。聴いたことない方はぜひ、このアルバムをきっかけに“ハードコア(固い芯)”を体感してみてください。アディオス。
“クリシュナコア”を知るキッカケとなった「PERFECTION OF DESIRE」
recommend by 商品部 パンク担当 松原さん
趣味はプロレス観戦。マイブームはジンジャーエール(最近飲めるようになった)
アーティスト名:SHELTER
アルバム名:PERFECTION OF DESIRE(1990 / REVELATION)
スタッフのおすすめコメント:
学生の頃、ディスクユニオンのPUNKコーナーで何となく手に取ったのが青い肌の女性がジャケットに描かれたCD。華やかなアートワークに目を奪われたが、もともと日本のバンドを好んで聴いていた自分は海外のバンドに手を出す事にどうもハードルの高さを感じてしまって買うには至らなかった。が、何となく頭から離れず、バンド名も覚えていたため家に帰って調べてみる。どうやらヒンドゥー教の神様クリシュナを信仰したハードコアで“クリシュナコア”っていうらしい。へぇ~面白い!その情報だけでのめり込んでいった。何かの縁だし聴き始めるなら1stからだよねってネットで探して買ったのがコチラの「PERFECTION OF DESIRE」。
再生してみて、えっ…こんな感じなの!?と思った。宗教をモチーフとしているということから、もっとこう、不気味でおどろおどろしいものを勝手に想像していたのだが思っていたよりもかなり聴きやすい。ミドルテンポを主体としキャッチーでグルーヴ感のあるリフ、ボーカルRay Cappoの歌っているのか語り掛けているのかわからないような歌唱。なんかクセになってきたところで7曲目の“Shelter”。サイレンのようなリフが轟く中、後ろから説法のようなものが聴こえてきてなんじゃこりゃとぶっ飛んだ。こういう曲もあるんだ。もう一回最初から、と余韻に浸る暇なくリピートしてみる。
てな感じで、今まで何回聴いたかわからないくらいリピートした。SHELTERとの出会いはCappoがかつて在籍していたYOUTH OF TODAYをはじめに、108、PREMA、AGNI HOTRAといった他のクリシュナコアなどの海外のバンドを知るキッカケとなった。もしあのときCDを手に取っていなかったら、大げさだけど人生変わってたかも?自分の直感は大事だと思わされました。
世界中のポップパンク/メロディックパンクバンドに影響を与えたレジェンド DESCENDENTS「EVERYTHING SUCKS」
recommend by 商品部 パンク担当 土田さん
サークルピットは歩くもの、という信念を持っています。
アーティスト名:DESCENDENTS
アルバム名:EVERYTHING SUCKS(1996 / Epitaph Records)
スタッフのおすすめコメント:
世界中のポップパンク/メロディックパンクバンドの多くが偉大な影響元として挙げるレジェンド“DESCENDENTS”。1978年から活動する彼らはその音楽ジャンルの元祖とされるバンドです。同ジャンルの現行のシーンには広がりのあるメロディや曲展開を駆使し、他ジャンルからの影響も反映された音楽を鳴らすバンドが多いですが、元祖である彼らの楽曲はまさにハードコアパンクとポップなメロディが合体したという文字通りそのままの音楽性。キャッチーなメロディやフレーズを持ちつつも、くどさを完全に排除した猪突猛進のスタイルはあまりにも痛快。そこに乗っかる時に真面目で時にしょうもなく、時に人生哲学までをも歌う歌詞も大きな魅力です。
本作『EVERYTHING SUCKS』は活動休止を経て復活した1996年リリースの5枚目のアルバム。DESCENDENTSは名実ともに名盤と言える作品が多くありますが、最近の音楽に触れている人でも聴きごたえのあるであろう太くタフな音質のこちらを個人的にはオススメします。怒りに満ちた『Everything Sux』から最後の大名曲『Thank You』まで、一切の隙がありません。
昨年10月の来日公演はまるで夢のような名曲のオンパレードかつ全く衰えていない圧巻の演奏で、会場の熱気も私の感情もとんでもないことになっておりました。結成から45年以上経っても地に足付けた活動を続ける最強のバンド、是非一度触れてみてください。
「DIVE INTO MUSIC.」に込められた想い
世界中どこにいても同じ音楽を楽しむことができる今の時代に、ディスクユニオンは違和感を感じています。なぜなら、本来音楽というものは、ひとりひとりが自らの手で触れて、自らの脚で探して出会うべきものだからです。だからこそ私たちディスクユニオンは、見たことのない曲、聴いたことのない世界を求め、音楽の海へ飛び込んでいきます。そしてこの想いを「DIVE INTO MUSIC.」というスローガンに込め、お客様と共有して参ります。
diskunionHP:https://diskunion.net/
公式youtube:https://www.youtube.com/@diskunion_official
instagram:https://www.instagram.com/diskunion/
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