リバイバルヒットの謎 | ディスクユニオンスタッフが教える、かけがえのない音楽 # 20
連載第20回目となるテーマは、「リバイバルヒットの謎」
各ジャンルを担当する音楽マニアならではの深い知識と独断と愛情にあふれるリコメンドを楽しんでほしい。ここで見つけたディスクユニオンの“推し”が、あなたにとってかけがえのないライブラリーになることを願いつつ。
時を越えて共鳴する、“16歳の痛み”と“初恋”のメロディ「First love」
recommend by ディスクユニオン下北沢店 谷 雄大さん
’90s辺りの日本のカルチャーが好きです。
アーティスト名:宇多田ヒカル
アルバム名:First love(1999/東芝EMI)
スタッフのおすすめコメント:
もはやリバイバルという枠を超えた不朽の名曲…。2022年にNetflixオリジナルドラマとして『First Love 初恋(主演 佐藤健/満島ひかり)』が全世界で配信。配信されるや否や国内では空前の初恋ブーム。7インチ発売時には多くのレコード屋が盛り上がった。勿論私もその一人。そのドラマのインスパイア元であり主題歌となるのが『宇多田ヒカル/First love』。先述のドラマで初めて知ったという若い方も多くいると聞き、時代の流れを感じる(私もFirst love発売年と同じ’99年生まれだが…)。
冒頭の歌詞『最後のキスは タバコの flavor がした にがくてせつない香り』これを宇多田は当時16歳という若さで思いつくのだからその才能に関してはもはや説明不要(16歳の頃の私は部活や山・川遊びに勤しんでいた)。しかし、若干16歳の少女が描く初恋の傷みや苦しみが時を超えて、今時の若者には刺さったのかもしれない。今日、多数の若いアーティストが国内チャートを賑わせてはいるが、宇多田ヒカルの『First Love』のような甘く切ない世界観やリアルな心情をハイレベルな楽曲として提供できるアーティストは一体どれほどいるのか。
SNSが発達し、情報過多な現代。デートや遊びもスマホひとつあれば済ませれる。’90年代のような恋愛はもう存在しないかもしれないが『First Love』を聴く事でしか得られない特別な感情・現代では感じることの出来ない“当時の空気感”を求め、多くの若者が宇多田ヒカルの声に耳を澄ましているのはリバイバルした一つの理由である事は間違いない。
“ズレ”と“異質さ”が輝きに変わる時、リバイバルで再評価された違和感の美学「玉姫様」
recommend by ディスクユニオンお茶の水駅前店 櫻 流瑠美さん
普段はテクノを中心に民族系・神秘的な音楽を聴いています。
アーティスト名:戸川純
アルバム名:玉姫様(1984年/¥・E・N RECORDS)
スタッフのおすすめコメント:
このアルバムを好きになったきっかけは、SNSであった。最近「好き好き大好き」という曲が流行っていたらしくそのリバイバルの波に乗り、このアルバムに出会った。
まず戸川純の歌声は唯一無二で聴いた人の心をつかんで離さない。特にこのアルバム玉姫様の歌詞や歌声は格別である。最後の曲「蛹化の女」は上品で穏やかな曲調であるが、どこか寂しげな印象の曲だ。「自分は周りの人と少しズレているのかも」と感じるような人たちの存在や感情を肯定してくれるような不思議な温かさを感じる。その他の曲も、戸川純さんにしか表現できないような魅力的な作品が沢山詰まったアルバムです。ぜひ聴いてみてください。
リバイバルの中心にあり続ける、J-POPの原点にして名曲の“源泉”「Songs」
recommend by 商品部門 物流担当 稲垣 吉人さん
気になったものは何でも試しに聴く者です。メタル、パンク、プログレ、フリージャズ、サントラ、実験音楽など。一番好きなミュージシャンは浅川マキ。
アーティスト名:シュガー・ベイブ
アルバム名:Songs(1975年4月25日/NIAGARA ⁄ ELEC)
スタッフのおすすめコメント:
50周年です、半世紀です。今さら何をか言わんやと言われかねない程の歳月ですが、そんな時間の風雪に耐え、今もなお再発される作品。JPOP~シティポップの金字塔、シュガーベイブのアルバム。今日これを書いている4月25日が誕生日となります。リバイバルという現象は、その中心になれるような力を持つ作品が存在していると起きやすくなる(スラッシュメタルであればBig4の80年代作品。)…と考えているのですが、この作品はその中心足り得る作品でしょう。10,20,30,40周年盤の他、様々に形態を変えてリリースされる程に支持を集めるその内容。
このアルバムに絡んだ各関連メンバーのソロや数々の作品も名作級の出来であり、リバイバルに繋がる力の源泉であると言えます。また、同年リリースの括りであればティンパンアレーのキャラメルママや、鈴木茂のバンドワゴン、吉田美奈子のMinako、ハイファイセットのセルフタイトル、ブラウンライスの旅の終わりになども挙がる事でしょう。
藤原ヒロシと大沢伸一が描いた、再評価されるべき2000年代の奇跡「LOST CHILD」
recommend by 商品部門 SP・BP 小泉さん
ディスクユニオン関連で何かございましたらお気軽にご用命ください。
アーティスト名:藤原 ヒロシ+大沢 伸一feat.クリスタル・ケイ
アルバム名:LOST CHILD(2001年/Sony Music)
スタッフのおすすめコメント:
不意にテレビから流れてきたメロディに、一気に2000年代の記憶が駆け巡った。
歌っていたのは当時の記憶にあるクリスタル・ケイではなく、俳優・満島ひかりがこの曲をカバーし、2025年のRECORD STORE DAYに合わせて7インチレコードをリリースしたとのことだった。
もちろん、カバーバージョンも新たな解釈が加えられていてとても素敵に仕上がっている。ただそれでもやはり、原曲を初めて聴いたときの衝撃には敵わない。
物悲しさを纏った三拍子のリズム、クリスタル・ケイの美しいファルセット。当時、この楽曲はポップスの枠を超えさまざまなジャンルで一目置かれていた印象がある。さらに藤原ヒロシと大沢伸一という布陣による作詞作曲も、当時の自分にとっては少し背伸びをして向き合うような、そんなお洒落さも好きだった。
あらためて2025年にこの楽曲に触れ、リバイバルされたことの嬉しさと、リバイバルされるべき楽曲の力を思い知らされた。
「DIVE INTO MUSIC.」に込められた想い
世界中どこにいても同じ音楽を楽しむことができる今の時代に、ディスクユニオンは違和感を感じています。なぜなら、本来音楽というものは、ひとりひとりが自らの手で触れて、自らの脚で探して出会うべきものだからです。だからこそ私たちディスクユニオンは、見たことのない曲、聴いたことのない世界を求め、音楽の海へ飛び込んでいきます。そしてこの想いを「DIVE INTO MUSIC.」というスローガンに込め、お客様と共有して参ります。
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- Edit : Yusuke Soejima(QUI)