にしな – これが私の生活なんだ
約3年半ぶりに届けられた、にしなの3rdフルアルバム『日々散漫』。
生活と自然体で向き合ってきた、その日々の結晶を、等身大の言葉でひもとく。








tops ¥10,900 / MELLOW , fringe scarf ¥10,627 / MILLO WOMEN , pants ¥33,440 / ETHOS , necklace ¥6,517・ring(left middle finger) ¥4,510・ring(right index finger) ¥4,270 / NFF ring(right middle finger) ¥12,540・ring(left index finger) ¥12,430・bangle ¥26,950 / MUSEE.ART , shoes ¥27,940 / UDIRE
目の前にあるものを大切にして、地に足をつけていたい
― 前回のアルバム『1999』から3年半が経ちました。どんな時間を過ごしていましたか?
当時も自分らしくやっていたんですけど、より力の抜けた時間を過ごしていました。生活にも音楽にも、よりナチュラルに向き合えていたような気がします。
― ポジティブなイメージですね。
そうですね。まあ、時には嫌なこともあったかもしれませんが、ちゃんと生活をしていたという実感があります。
― ニューアルバムの『日々散漫』からも、より自然体な余裕みたいなものが感じられました。収録曲数も多いからこそ、楽曲の幅広さや引き出しの多さが際立って、性別も、年齢も、音色も、リズムも、ジャンルも、いろんなボーダーを軽やかに超えてくるようで。音楽の自由さや楽しさがすごく伝わってきたのですが、この3年半でより自信のようなものが育まれていったのかなと想像しました。
自分自身がミュージシャンであることを脱ぎ捨てた生活に自然と馴染んできています。「これが私の生活なんだ」という納得感が、この3年半でより生まれてきました。

― アーティストとしてのにしなと、生活者としての自分自身の棲み分けにも変化が?
最初はアーティストとしてどう見えるべきかとか、どう立つべきかみたいなことを考えていたし、すごく模索していました。でも今はどちらの自分も違うけど同じだと感じています。良くも悪くも大雑把な面があるので、そんなこと考えなくていいか、みたいな(笑)。
― にしなさんが自身の現状をポジティブに捉えられているのに加えて、アルバムからは日常を生きる人へのエールや讃歌が息づいているようにも感じました。制作で意識した部分はありますか?
その時々に浮かんだものを書いていったらこうなったという感じです。この3年半の時間とともに自分自身も少しずつ進んでいって、今まで悩んでいた部分もこうやって活きるんだなとポジティブに捉えられてきて。自分自身へのエールとして書いている面もあったかもしれません。
― 3年半前だったら書けなかったな、という曲はありますか?
自分らしいなっていう新曲だと、最後の曲の『Twinkle Little Star』かな。これからどうやって生きていきたいかということが自分の中で見えてきた気がして書いた曲です。
― 未来を見据えて。
そうですね。ミュージシャンに限らず、何の仕事でもそうですけど、これからも上がったり下がったりするけど、目の前にあるものをちゃんと大切にして、地に足をつけていたいなという気持ちで書きました。

― やっぱり生活に根差している感覚があるんですね。他にも思い入れのある曲をピックアップして教えていただきたいです。
『今日も今日とて remix』は、もともとInstagramのブランドキャンペーンで、ストーリーズ用に書いた15秒のすごく短い曲なんです。みんながアカペラでチャレンジできる早口言葉みたいなイメージで作ったんですけど、実際は全然息継ぎも足りないし、ライブでは一生披露できない曲になっちゃって。
でも『日々散漫』というアルバムとはすごく通じる部分があったので、リミックスバージョンにしてもいいんじゃないかなって案がふと浮かんで、ずっとお世話になっているビートメイカーのPARKGOLFさんにやっていただきました。
完成した曲を聴いて、PARKGOLFさんのキャラクターが見える音だなと感動しました。自分自身がほぼ携わらず、全部お願いしたからこそ感じられた音楽の面白さがありましたし、大好きな曲になりました。
― disc2の1曲目で、ハッとさせられる楽曲でした。
ハッとするところに置きたいなと思っていました(笑)。あと、disc1のイントロは終わりに繋げたいなと思って、『Twinkle Little Star』の詩を口ずさんでいます。1人でボイスレコーダーを持って歩きながら、人に変な目で見られないかなと照れながら録った音がイントロになりました。
― 日常感があり、『日々散漫』というタイトルともリンクしていましたね。
ちなみに個人的に好きな曲はありましたか?
― 本当に全曲好きでしたけど、『It’s a piece of cake』から『ねこぜ』の流れが優しくて、かわいくて、ほっこりして、夜中に聴いていて気分がよくなりました。聴くタイミングや場所、誰と聴くかでも変わりそうですね。
ありがとうございます。嬉しいです。

にしなという人間の感情の破片を感じてもらえたら嬉しい
― 近年の音楽は、1曲単位で聴かれることが多いですよね。『日々散漫』も1曲1曲が力のある楽曲ですが、それを今の時代にアルバムとしてまとめて出すことの意味をどのように捉えていますか?
私は中学生くらいまではアルバムで聴いていた世代ではあるんですけど、やっぱりスマホを持つようになってからは買わなくなったので、アルバムを作るという行為に対しての思い入れがもともとはすごく少なかったんです。
でも3枚も出させていただいて、今はストーリーを持ってアルバムに向き合うミュージシャンってかっこいいなという気持ちがすごく湧いてきています。
今回も自分の中ではストーリーがあるんですけど、どちらかというと1曲ずつ作っていった結果として完成したアルバムで。それはそれで良さがありますが、次はもっとアルバムというものの意味を考えて作ってみたいなという気持ちがあります。
― 本作も“散漫”と名付けられてはいますが、アルバムとしてのまとまりが感じられる構成で、いい意味で聴きやすさもありました。そもそもアルバムのタイトルにはどんな思いを込めたのでしょうか?
アルバムを作ることになり、収録する曲を聴いていく中で “日常的な側面”と“混沌とした側面”、日々と散漫の2つの柱がある気がして。1枚目の『odds and ends』が英語で、2枚目の『1999』が数字、3枚目は漢字という流れもいいなと思って『日々散漫』に決めました。
― 気が早いですけど4枚目は何になるか楽しみです。
この流れでいったら、ひらがなかカタカナ、それか思い切って韓国語ですかね(笑)?
― これから聴いてくださる方に、本作をどのように受け取ってほしいですか?
私が日々を生きる中にできてきた曲たちなので、みなさんの日常や思い出の中に曲が馴染んでいってくれたらいいな。にしなという人間の感情の破片を感じてもらえたら嬉しいです。

― 今回のアルバムは「すてき盤」「たっぷり盤」「おてごろ盤」の3種類がありますね。
はい。それこそアルバムを作る意味を考えたときに、そもそもCDじゃないと聴けない人もいるじゃないですか。たとえば、ご年配の方など。そんな方が手を出しやすいように、「おてごろ盤」はなるべくコストを下げて、手に取りやすい価格を追求しています。
― 「おてごろ盤」は、21曲が1枚にまとまって税込2,500円という。
一方で、今の時代にアルバムを作る意味としてグッズ的な側面があったらいいなと思い、「すてき盤」「たっぷり盤」では私が好きなこと、やりたいことをデザイナーさんにシェアしてパッケージに落とし込んでもらいました。
― 「たっぷり盤」にはワンマンライブ「MUSICK」の映像が収録されたBlu-rayもついてきます。『日々散漫』のリリースに合わせて、同名のツアーもスタートしますが、ライブの意気込みをお聞かせください。
3年半ぶりのアルバムなので、こんなに新曲を持って挑めるライブはすごく久しぶりで緊張もあります。でも新しい自分の側面が表現できると思うので、より自分のことを知ってもらえるライブにできたら嬉しいです。あとはまだまだ赤ちゃんの曲たちを、お客さんと一緒に育てて、楽しい時間を共有できたらいいなと思っています。

音楽とともに歳をとっていきたい
― 最後に少し、音楽以外の質問もさせてください。
もちろんです。
― 音楽だけでなく、日常生活も調子いいですか?
そうですね。最近は学生のころの友だちにも会ったりしてて。昔からの友達に会うと自分が今いるライフステージがより客観的に感じられて、大人になったなーっていう気持ちになっています。
― 髪も伸びましたしね。
伸びました。
― 伸ばしているんですか?
めっちゃ切るか、もっと伸ばすか迷っていて。『ドレスコード』のMVで髪を結んでいるんですけど、もう一案で髪をバッサリ切るっていうのもあって悩んだ結果、いろんな人から「いや、もったいないからまだ伸ばそう」と。で、放置していたらこんなに伸びました。
― この先どうするかは未知数?
長いのも楽しみつつ、でもいつかはバッサリいきたいと思います。
― 最近、興味があることはなんでしょう?
やりたいのは登山です。
― 何かきっかけが?
登山のギアってかっこいいなってところから始まって、それを周りに言っていたら登山している人が結構いて。山の上でしか見えない景色があるということなので、私も今年こそやろうと思っています。まずは高尾山からですね。

― 曲作りは今も絶え間なく続けているんですか?
全然、絶えています(笑)。絶えまくりなんですけど、ふとした時に書いたり弾いたりはしてます。曲のかけらができても、1曲ができあがるまでに時間をかけちゃうタイプなので、放置していたら2、3年が経っていることもあります。
― でもその間、ちゃんと自分の生活を送っていることが音楽に昇華されていそうです。
悪く言うとサボっているのかもしれないですけど、よく言うとやりたくない時にはやっていないので、音楽が楽しいっていう気持ちはずっとあります。
― 音楽が仕事だけになっちゃったら超つらいですよね、きっと。
やっぱり好きだっていう気持ちが一番大切だなっていうのは感じています。
― 音楽は好きですか?
好きです。
― 音楽以外じゃ代えられないものでしょうか?
私はルールに縛られるのが好きじゃなくて。他のものづくりも好きなんですけど、音楽って本当に自由で、別に何も必要じゃないし、脳みそがあればできるじゃないですか。鼻歌だけでもできる手軽さとか、誰でもできるっていうラフさが自分に合っているのかなって最近思います。
― 将来的に音楽とどう付き合っていきたいか、ビジョンがあれば教えてください。
ともに歳をとっていきたいなとは思っていて。やっぱり今の年齢と10年後で感じることは違うし、おばあちゃんになって感じることも違う。おばあちゃんになったら何を歌っているんだろう、熟成された歌を歌っているのかなとか。声も、書くことも、メロディーも、そのときの自分がしっかり反映されている音楽ができたらいいなと思っています。

Profile _ にしな
新時代、天性の歌声と共に現れた新星、「にしな」。やさしくも儚く、中毒性のある声。どこか懐かしく、微睡む様に心地よいメロディーライン。無邪気にはしゃぎながら、繊細に紡がれる言葉のセンス。穏やかでありながら、内に潜んだ狂気を感じさせる彼女の音楽は、聴く人々を徹底的に魅了する。Spotifyがその年に注目する次世代アーティスト応援プログラム「RADAR:Early Noise」に選出。ゆっくりとマイペースにリスナーを虜にしてきた彼女の声と音楽が、静かに、そして、より積極的に世の中へと出会いを求めに動き出す。最重要ニューカマー、「儚さと狂気」を内包する才能が、ここに現る。
Instagram X
Information
にしな『日々散漫』
2026年3月18日(水)リリース
「ホットミルク」「春一番」「クランベリージャムをかけて」「シュガースポット」「bugs」「It’s a piece of cake」「plum」「ねこぜ」「わをん」「つくし」「weekly」「輪廻」「パンダガール」ほか、新録8曲を含む全21曲を収録。

- Photography : Keta Tamamura(TABUN)
- Styling : Erika Nakanishi
- Hair&Make-up : Eriko Yamaguchi
- Text&Edit : Yusuke Takayama(QUI)