日常の素材が思いがけない視覚的リズムを描き出す|ISSEY MIYAKE × We Make Carpets特別展
イッセイ ミヤケの作品ではなかったことへの驚き
ISSEY MIYAKE GINZA|CUBEで再会したことで判明したのは、ミラノで目にしたインスタレーションを手がけたのはオランダの「We Make Carpets」という創作集団だったということ。「We Make Carpets」は身の回りにある日用品を素材とし、複雑でありながらも調和のとれた空間を満たすカーペットのようなインスタレーションを生み出し、それらは世界各国の名だたる美術館にも展示されているという。
「Skewer Carpet 2」は約60,000本の竹串が土台となったスポンジの上に並べられている。ISSEY MIYAKE / MILANで初めて目にした時はイッセイ ミヤケらしいクリエーションだと思い込んでいたのだが、実はブランド自身の作品ではなかったことが驚きだった。まさにクラフトマンシップと呼びたくなるような制作過程はイッセイ ミヤケの服づくりに通じるからだ。
ミラノデザインウィークの期間中、ISSEY MIYAKE/MILANに展示されていた「Skewer Carpet 2」。© ISSEY MIYAKE INC. Photography: Valentina Sommariva
日用品が整然と配置されることで生まれる非日常の景色
ISSEY MIYAKE GINZA|CUBEでの特別展「Fold and Crease (Extended) – 折るごとに、重ねるごとに広がるかたち – 」は、2024年4月にミラノのISSEY MIYAKE / MILANで発表された「Fold and Crease」の続編となり、既存作に加えて新作も展示されていた。
全ての作品に共通しているのは見慣れた日用品が秩序をもって配置され、色彩やパターンをまとい、思いがけない視覚的リズムを描き出していること。「日常の素材による非日常的な景色をこの機会に体感してほしい」と案内してくれた担当者は話してくれた。
イッセイ ミヤケといえば並々ならぬ素材へのこだわりと、どのブランドも試みてこなかったような斬新なアプローチで服を生み出してきた。「We Make Carpets」はイッセイ ミヤケの服づくりに宿るクラフツマンシップやレファレンスから着想を得て今回のインスタレーションを制作したという。本作品においても、素材そのものが明確な意味を持ち、斬新かつクラフツマンシップを感じる手法で制作されている。
衣服デザインとアートでジャンルは異なれど、両者のクリエーションが呼応しているのは一目瞭然だった。
イッセイ ミヤケの服と呼応するような繊細な表情を持つインスタレーション。約60,000本の竹串には色付けが施されているが全て手作業だという。© ISSEY MIYAKE INC.
表現したかったテーマは「見過ごされていた美しさ」
会場では「We Make Carpets」のメンバーも迎えてくれたので「どうしてカーペットなのか」とストレートな質問をぶつけてみると、「ネイチャー」という答えが返ってきた。解釈として正解なのかわからないが、カーペットはウールなどの「天然素材」で織られることが多く、さらに普段の暮らしに「自然」と存在するものということなのだろう。
インスタレーションは竹串やまち針など大量生産される日用品を素材としているが「ひとつひとつを見ても美しいし、それらが大量に集まることで新たな美しさが創造される。日用品として消費されるだけで見過ごされていた美しさに気づいてほしい」というのが理由だそうだ。一般的に希少な一点物は高価とされ、大量生産品は価値が劣るとされるが、プロダクトのもつ生活への役割、造形美、機能美という観点からすれば優劣はつけ難いのかもしれない。
日々無意識に使用していたり、素通りしてしまうような身近なものや情景を「美しい」と感じられるようになったら、毎日の暮らしはきっと豊かになるはず。そう考えさせられた特別展だった。
ベースのスポンジに刺されているのは服づくりに不可欠なまち針。シルバーとゴールドの2色の針が開いたり閉じたりすることで、表情が細かく変化する。© ISSEY MIYAKE INC. Photography: Valentina Sommariva
特別展「Fold and Crease (Extended) —折るごとに、重ねるごとに広がるかたち—」
会期:2025年3月15日(土)- 4月 27日(日)
営業時間:11:00 – 20:00
場所:ISSEY MIYAKE GINZA | CUBE
東京都中央区銀座4-4-5
電話:03-3566-5225
- Edit : Shun Okabe(QUI)