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ART/DESIGN

ポジティブな感情になれるような踊りを届けたい ー バレエダンサー 二山治雄

Oct 29, 2024
気鋭のダンサーが勢揃いしたガラ公演「BALLET TheNewClassic」に2回目の出演となったバレエダンサーの二山治雄。
近年は<Chika Kisada>のショーでも踊りを披露するなど他業界での活躍も目覚ましい。
「バレエの存在を広めることが自分なりの社会貢献」という二山に新たな挑戦などについてガラ公演直後に話を聞いた。

ポジティブな感情になれるような踊りを届けたい ー バレエダンサー 二山治雄

Oct 29, 2024 - ART/DESIGN
気鋭のダンサーが勢揃いしたガラ公演「BALLET TheNewClassic」に2回目の出演となったバレエダンサーの二山治雄。
近年は<Chika Kisada>のショーでも踊りを披露するなど他業界での活躍も目覚ましい。
「バレエの存在を広めることが自分なりの社会貢献」という二山に新たな挑戦などについてガラ公演直後に話を聞いた。
Profile
二山治雄
バレエダンサー

日本人史上3人目となる、ローザンヌ国際バレエコンクール金賞受賞者。しなやかさの中で魅せる研ぎ澄まされたテクニックは、パリ・オペラ座をはじめ、世界中から圧倒的な支持を集めている。

型にはまりすぎず自分なりの解釈で役を演じる

—二山さんは7歳でバレエを始められたと伺いました。バレエと出会ったタイミングやバレエを始めた頃のご自身を取り巻く環境はどんな感じだったのでしょうか。

6歳の時に「いいなぁ」と思っていた女の子が保育園にいて、その子がバレエをやっていたので同じことをやってみたいと思ったのがきっかけです。すぐにバレエ教室を見学したのですが、親からは「小学一年生になったら始めていいよ」といわれました。僕は姉が三人いるのですが歳が離れていたこともあり甘やかされていたと思います。7歳からバレエ教室に通えたのも、好きなことをやらせてあげようということだったんだと思います。

ー2014年にスイスのローザンヌで開催された世界最高峰のバレエコンクール「第42回 ローザンヌ国際バレエコンクール」では優勝されました。バレエを現在まで続けてこられた理由をどのように考えていますか。

続けてこられた理由についてはいつも考えているのですが、流れでここまで来ちゃったというのもありますし、辞める理由が見つからなかったというのもあります。結局は他にやりたいことが特にあったわけでもなく「バレエが好きだった」ということに尽きると思います。ローザンヌもダメもとぐらいの気持ちでしたが参加したら賞をいただいて(笑)。その副賞としてスカラシップをいただいたので、そこが一番の分岐点だと思います。最初はプロになろうとは全く思っておらず、ローザンヌを経て留学したことで、プロの道へ進む決心が生まれました。

ーローザンヌの舞台で披露した『ディエゴのためのソロ』で初のコンテンポラリー作品だったと伺いました。ローザンヌでの挑戦が自身の踊りに与えた影響を教えてください。

ローザンヌに出る前の一年間はまだ高校生で普通に学校に通っていましたが、バレエに力を注いでいて、平日は夜の1時、2時くらいまで、休日は10時間くらい練習に打ち込んでいました。その時期があったからこそ、今ここまで踊れているのだと思います。それだけバレエに集中できたということは、周りに支えてもらったということで、僕のために時間を割いてくれて、一緒に積み上げてくれた先生の影響が大きかったです。

ーご自身の表現について特に力を入れて取り組んでいることはありますか。

基礎を大切にして踊ることです。クラシックでもコンテンポラリーでも基礎があるからきれいな作品になります。例えば人形でも骨組みのようなベースがあり肉付けをしていくことで姿が出来上がりますが、バレエも一緒で土台となる基礎が崩れていたら、そこに肉付けしても良い作品にはなりません。あとは誰かの真似をしないようにしています。クラシックの作品では、お客様の頭の中ですでに役のイメージというものができていますが、僕は演じるにあたりやるべきことはやりますが、あえて既存の役の型にはめず、僕なりの役を演じれば良いんじゃないかなと思っています。コンテンポラリーの作品では、役がないことが多いので、踊りで人物像を描くうえでは、僕の個性を生かせるような表現に注力しています。

何も覚えていない舞台ほど大きな達成感がある

ー今回「BALLET TheNewClassic」の公演で披露した『白鳥の湖』のオデットのヴァリエーションでは、浮遊しているような軽やかさの中に芯の強さを感じました。ご自身の身体表現の特徴や強みについて、どのように捉えていますか。

身長も低く、身体のラインもきれいではないので自分では体格的に恵まれているとは思っていません。それでも自分の強みにつながることは常に磨いていこうと思っています。若い頃は「ジャンプを高く飛べばいい」、「たくさん回ればいい」というところにフォーカスしていました。今はそれが浮かないようにしています。あくまで一つの作品なので、踊りのなかで音を外してまで「そこまで高く飛ぶ必要があるのか」、「そこまで回る必要があるのか」と考えるようになっています。

ー今回のように全く新しい作品を踊るうえで、ご自身の中でどのようなプロセスがあるのでしょうか。

それについては答えはないです。作品によっても変わりますし、振りも本番まで変わり続けます。正解がないから良いというのもあります。自分がどのように踊ったかも含め何も覚えていない時ほど達成感があります。それだけ作品に入り込んでいるということなので、毎公演そこまで持っていきたいと思っています。そのためには練習期間と研究が必要です。「自分でどれだけやってきたか」、「どういう思いでやっていたか」ということがすごく大事だと考えています。

『白鳥の湖』のオデット photo by fukuko iiyama

ーRakuten Fashion Week TOKYOで行われた<Chika Kisada>2023年秋冬コレクションのショーや、過去に角野隼斗さんとご一緒された<DIOR BEAUTY>のイベントをはじめ、二山さんは今ファッション業界などでも注目されています。他業界で注目されていることをどのように感じていますか。

バレエだけじゃない世界が見られることはとても楽しいです。現在はフリーで活動していますが、フリーだからこそ新たな分野にも挑戦しやすいというのはありますが、僕の根本はやはりバレエなのでそこはブラさず大事にしています。いろんな業界を見れることは自分にとっても勉強になるので怖がらずに何に対しても積極的であろうと思っています。基本的にネガティブな人間なので、以前はオファーをいただいてもお断りしていたんです。

ーオファーを受けるようになったのは何かきっかけがあったのでしょうか。

新型コロナウイルスが蔓延し始めたことでフランスから日本に戻ってきたのですが、その際に少しだけバレエを離れたことで自分を見つめ直す時間が生まれました。その時にバレエに対しての向き合い方をあらためて考え、様々なことに挑戦していこうという気持ちになったんです。自分が新しいことに挑戦することで世の中にバレエの存在を広めることができ、それは自分なりの社会貢献になるのではないかと思いました。

 

ー最後に今後の展望を教えてください。

舞台に立つということは観てくれるお客さんがいるということ。なのでお客さんに喜んでもらえるダンサーでありたいです。また、一人でも多くの人にそういうポジティブな感情を与えられるダンサーになれるよう頑張っていきたいです。

  • Photograph : Masamichi Hirose
  • Edit & Interview : Yukako Musha(QUI)
  • Text : Yukako Musha(QUI) / Akinori Mukaino

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