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ART/DESIGN

クリエイティブ・ユニット AAAQ – 作品という“アンサー”から新しい“クエスチョン”を生む

Oct 11, 2024
「AAAQ(エーキュー)」はプロダクトデザイナー/プロデューサーの都淳朗と、UIデザイナーの太田壮によるクリエイティブ・ユニット。日本最大級のデザイン&アートフェスティバル「DESIGNART TOKYO 2024」において、若手クリエイター支援プログラム「UNDER 30」に選出された注目のクリエイターだ。

もともとは千葉大学大学院の同級生で、現在は各々で異なる会社に勤める傍らユニットでの活動も精力的に行っている。そんな彼らにユニークな作品を生み出す方法と「DESIGNART TOKYO 2024」で発表する新作についてきいた。

クリエイティブ・ユニット AAAQ – 作品という“アンサー”から新しい“クエスチョン”を生む

Oct 11, 2024 - ART/DESIGN
「AAAQ(エーキュー)」はプロダクトデザイナー/プロデューサーの都淳朗と、UIデザイナーの太田壮によるクリエイティブ・ユニット。日本最大級のデザイン&アートフェスティバル「DESIGNART TOKYO 2024」において、若手クリエイター支援プログラム「UNDER 30」に選出された注目のクリエイターだ。

もともとは千葉大学大学院の同級生で、現在は各々で異なる会社に勤める傍らユニットでの活動も精力的に行っている。そんな彼らにユニークな作品を生み出す方法と「DESIGNART TOKYO 2024」で発表する新作についてきいた。
Profile
AAAQ
クリエイティブ・ユニット

プロダクトデザイナー/プロデューサーの都淳朗・UIデザイナーの太田壮によるクリエイティブ・ユニット。千葉大学大学院を修了後、2021年に発足し、東京を拠点に活動。AAAQ(エーキュー)は“Answer(答え)を作って作って作って、新しいQuestion(問い)を生む“というフィロソフィーの元、感性と研究に基づく制作を行う。
HP
Instagram:@aaaq_design

ほどよい違和感を大切にした作品

二人が創作活動を行うのは「日本橋地下実験場」という、都さんが勤める株式会社コネルのビルの地下にある空間。 プロトタイピングに特化した実験的なスペースには、3Dプリンタやレーザーカッターなどの装置が並び無数のプロトタイプが制作されていた。

QUI編集部(以下 QUI):実験室のような、ワクワクするスペースですね。今までどのような作品を制作してきたのでしょうか?

都:例えばこれは《リバースけん玉》という、従来のけん玉の「球と皿」「剣と穴」の役割を入れ替えた作品です。実は、けん玉の発祥はフランスなんです。そしてこの現在のけん玉として普及している「日月」という形は広島で1916年にできました。

左:太田壮 右:都淳朗

QUI:今のけん玉が誕生してからまだ100年程しか経っていないんですね。

都:そうなんです。なのでけん玉の形はまだまだ発展途上だなと思い、歴史を調べながら次の点を打つとしたら何ができるかを考えた結果、従来のけん玉の役割を逆転させてみました。普通のけん玉って剣先に挿すのが一番難しいのですが、リバースけん玉はそこに挿すのが一番簡単なんです。全く意図せず、結果的に技の難易度も通常のけん玉と逆転したんです。

《リバースけん玉》

太田:あと、この作品は「TOKYO MIDTOWN AWARD」という“繋がり”がテーマのデザインコンペで準グランプリをいただきました。二人でブレストする中で最初は「人と人との繋がり」をベースに考えていましたが「そういえばけん玉も繋がりだね」という話になったんです。その繋がりを逆転させることで身の回りにある“繋がり”に目を向けるメタファーになるのでは?という着眼点もありました。

QUI:いろんなものが逆転しているんですね。よく知っているけん玉の見た目なのに、全く違ったものになっているなんて面白いです。そちらにあるハンコのようなものは何ですか?

太田:これは《ごめんなサイン》という作品で「訂正印」がキャラクターとなって気持ちを伝えるハンコです。「シヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティション」というコンペで審査員賞をいただきました。

《ごめんなサイン》

QUI:訂正印が謝っている様子がユーモラスで、受け取ったら笑顔になっちゃいそうです。
《リバースけん玉》も《ごめんなサイン》も見たら思わず人との会話が生まれそうなプロダクトですが、そういった部分も意図してデザインされているんでしょうか?

都:結果的にそうなっていますね。誰もが知っているけど「なんだか少し違和感あるぞ」という作品が多く、その“ほどよい違和感”みたいなのは大事にしていますね。

普段は忘れられてしまっている部分を表面に出していく

QUI:他にはない印象的な作品ばかりですが、そうした発想はどこから生まれるのでしょうか。例えば「モノ(モチーフ)」や「現象」、「コンセプト」だったら、どこから考え始めますか?

都: まず面白いモチーフや現象を見つけて、二人とも「これなんか面白そうだね!」となったら、次にその歴史や技術を調べていくことが多いです。その歴史の延長線上を考えてみたり、そこに新しい技術を組み合わせたらどうなるか、などを調べて深掘りするのに多くの時間をかけています。

太田:《ごめんなサイン》の場合は、コンセプトの部分が大きいかも知れません。「訂正印」自体はモノですが、訂正印を押す行為の中には謝罪の気持ちが入っていますよね。そんな見落としがちな心の機微をプロダクトにできないかと考えました。「モノ」がスタートでも「概念」がスタートでも、それを深く理解し普段は忘れられてしまっている部分をうまく表面に出していくというアプローチが多いです。

都:前提を疑ったり深掘ったり、さらにはその存在意義も疑ってみることを大事にしています。

思想が対立するからこそ生まれる新たなアイデア

QUI:「AAAQ(エーキュー)」というユニット名もユニークですが、どういった由来なのでしょうか?

太田:「A」がアンサーのA、「Q」がクエスチョンのQです。次々と作品を出すことで“アンサー”を世の中に提示していき、そこから新しい“クエスチョン”を生むことを理念に創作活動していきたい、という意味が込められています。

QUI:デザインと聞くと一般的には、まず課題があってそれに答えを出すというアプローチだと思っていましたが、それとは逆の発想でアンサーからクエスチョンを見つけるんですね。

都:二人とも思い立ったらすぐに作っちゃうタイプなので「Q&A」というよりも「A&Q」なんじゃないかなと。あとは、こういうものづくりをずっと“永久”にやっていけたらいいなという願かけ的な意味もあります。

QUI:ものづくりをずっと続けていきたいって素敵ですね。
都さんは「プロダクトデザイナー」太田さんは「UIデザイナー」という異なる肩書きですが役割分担はあるのでしょうか?

都:明確な分担はなく、オーバーラップしてやっている部分が多いです。けど思想的には割と対立しがちです。笑

太田: そうですね。笑 時にはバチバチやったり、互いに歩み寄ったりしながらうまくやっています。

都:僕たちは会社でも個人でも“ものづくり”をしていますが、そうしたなかで自分だけでは出ないようなアイデアを見つけられることが二人でやるメリットかなと思っています。

身の回りに潜む美しい力の世界を想像する 新作《Visible Stress》

QUI:「DESIGNART TOKYO 2024」では新作を発表されるとうかがいましたが、どのような作品でしょうか?

太田:《Visible Stress》という作品です。今はまだプロトタイプの段階ですが…

QUI編集部:すごい!立体的なプラスチックの中に鮮やかな色が見える作品なんですね。

都:これは「PET」というプラスチックの素材を使った作品です。熱で柔らかくしたPETシートを型に押し付けて、バキュームで吸うことで変形させる「真空成形」という製法で、様々な形をつくっています。成形したPETシートを偏光板で挟んでバックライト越しに観ると「光弾性」という性質を見ることができます。変形する時にかかった力が色で可視化されているんです。

太田:こうやって素材が受けた力を色で観る「光弾性」という方法は昔から応力解析とかに使われてきた手法なんですよ。「真空成形」という成形方法もコンビニで売っているお弁当の蓋とか、サラダの容器とかを作るのに昔から使われている方法です。

QUI:それぞれの手法は昔からあるものや身近なものですが、それを組み合わせると全然違ったものが見えてくるんですね。

都:この「光弾性」という現象を知った時に、真空成形を掛け合わせることでまだ見たことのない“テクスチャー”ができるんじゃないかと考えました。

太田:そこで、葛飾にある「株式会社ラヤマパック」という会社を訪問したところ「うちの技術でこういう挑戦ができるんだったら」と、この「卓上真空成形機V.former」という機械を借りたり工場ラインを使わせていただいたり、全面的に協力していただいています。現在は3Dプリンタで型をつくり、それをもとにシートのサイズや厚みの条件、熱のかけ方など色んな組み合わせを検証しています。

QUI:この部屋の中にも本当にたくさんの型があって、無数の実験を繰り返して製作されている様子が伝わってきます。
この型にはモチーフがあるのでしょうか?

太田:この型を“何か意味のある形状にするか”どうかによって作品の意味が変わってくるので、けっこう議論しました。その結果、今回は“光弾性と真空成形の組み合わせの魅力と幅の広さが伝わる感覚的に美しい形状”を追求したいと考えました。今後はここから色々と広げていく余白も感じています。

都:「光弾性」という古い測定技術と「真空成形」という身の回りにあふれている工業的な手法を使って、芸術性の高いものを作るというチャレンジですね。これはアートですが、型があるので複製もできるんです。真空成形の工場の方とも今後やってみたいことの話を色々しているので、今後の発展を期待しています。

QUI:まだまだ新たな展開が生まれそうですね。

太田:そんな部分も「AAAQ」のポリシーと繋がっていて「こういう表現もあるんだよ」というひとつの“アンサー”を見せた上で、見た人が「これ、あんなことにも使えるんじゃない?」と思ってもらえるのが“クエスチョン”かなと思います。

QUI:《リバースけん玉》や《ごめんなサイン》とは全く違ったアプローチに見えましたが、こちらの作品も観たら思わず会話が生まれたり、新しい「Q」も生まれそうな作品ですね。そしてなんといっても、本当に美しい作品で、角度によって観え方が変わるのも面白いです。会場で完成作を観るのが楽しみです!都さん、太田さんありがとうございました。

AAAQ「Visible Stress」展示会場
会場:東京ミッドタウン
住所:東京都港区赤坂9-7-1 Galleria 2F, front of Aēsop
会期:10/11(金)〜11/4(月・振休)
詳細情報はこちら

DESIGNART TOKYO 2024
テーマ:「Reframing 〜転換のはじまり〜」
会期:2024年10月18日(金)〜10月27日(日)の10日間
エリア:表参道・外苑前・原宿・渋谷・六本木・広尾・銀座・東京
公式サイト

  • Text : ぷらいまり。
  • Photograph : Junto Tamai
  • Edit : Seiko Inomata(QUI)

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