「マティス 自由なフォルム」が2024年2月より、国立新美術館にて開催
本展は、20世紀最大の巨匠の一人、アンリ・マティスが1940年代より精力的に取り組んだ「切り紙絵」の作品にスポットを当てたもの。マティスの切り紙絵に焦点を当てた展覧会は日本初となる。本来は2021年に実施予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期となっていた。
5つの構成で展示
マティスの仕事のなかでも、切り紙絵にスポットを当てた展覧会を開催するのは日本初のこと。長く絵画の制作に取り組んできたマティスが最後に選んだ「切り紙絵」の作品はもちろん、切り紙絵に至るまでの作品群を、ニース市マティス美術館の協力のもと展示する。
ニース市マティス美術館展示風景 2022年
©Succession H. Matisse pour l’œuvre de Matisse Photo: François Fernandez
「どうして色彩の魔術師・マティスは最後に切り紙絵を選んだのか」「絵画との違いはどこにあるのか」などについて、考察しながら見られるのが魅力だ。
展示会は以下の5つで構成されている。
1.色彩の道
2.アトリエ
3.舞台装置から大型装飾へ
4.自由なフォルム
5.ヴァンスのロザリオ礼拝堂
1章 色彩の道
「色彩の道」ではマティスの故郷であるフランス北部で描かれた作品、またフォーヴィスムの時代に移行するころに制作された作品を展示。マティス自身が「私の最初の絵画」と称した《本のある静物》などが見られる。
2章 アトリエ
「アトリエ」では自身のアトリエで、女性をはじめとしたモチーフをよく描いていた時代の作品を展示している。《赤い小箱のあるオダリスク》をはじめ、《ロカイユ様式の肘掛け椅子》に関してはモデルとなった椅子も展示される予定だ。
アンリ・マティス《赤い小箱のあるオダリスク》1927年 油彩/カンヴァス 50×65cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
3章 舞台装飾から大型装飾へ
「舞台装飾から大型装飾」では絵画以外のマティスの仕事を紹介。衣装デザイン、壁画、テキスタイルなどに関する作品を展示する。これらの作品に関する準備として、既に切り絵の技法が用いられていた点にも注目したい。
4章 自由なフォルム
「自由なフォルム」が本展の本丸ともいえる部分だ。切り紙絵の技法を用いた作品を中心に紹介している。代表的作例である《ブルー・ヌードⅣ》のほか、約4メートル×約8メートルの大作《花と果実》などが見られる。
アンリ・マティス《ブルー・ヌード IV》1952年 切り紙絵 103×74cm
オルセー美術館蔵(ニース市マティス美術館寄託) ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez
5章 ヴァンスのロザリオ礼拝堂
「ヴァンスのロザリオ礼拝堂」では、マティスの最後の大仕事ともいえる、1948年から1951年のロザリオ礼拝堂の建設に関する作品、資料が展示される。
当日は礼拝堂の光の移り変わりを体感できるよう、デジタル技術を用いたインスタレーションも行われる予定だ。
マティスはなぜ切り紙絵にたどり着いたのか
本展の見どころは、なんと言っても「マティスがなぜ切り紙絵にたどり着いたのか」についての示唆を得られるところだろう。
近年、世界的にマティスの「切り紙絵」の側面に注目が集まっている。2014年にロンドンのテート・モダンで開催された展示では、同館初となる来場者数50万以上を記録。その後、ニューヨーク近代美術館(MoMA)に順回し、やはり大好評を博している。
「生涯にわたって色彩を追い求めた画家が、なぜ切り紙絵というメディアに到達したのか」というストーリーに深みを感じる展示会だ。
2023年4月から8月にかけて東京都美術館で開催された「マティス展」で、改めて日本で再注目されているなか、さらにマティスの思考に踏み込める機会となるだろう。
マティスが切り紙絵をはじめたことについては、「大病を患い、車いすでの生活を余儀なくされていたから」という意見もある。しかし決して、それだけではない。
制作中のマティス 1952年頃 ©photo Archives Matisse / D. R. Photo: Lydia Delectorskaya
- Text : ジュウ・ショ