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ART/DESIGN

天王洲で日本と海外のアートシーンをつなぐ|TENNOZ ART WEEK 2024レポート

Jul 9, 2024
2024年6月27日(木)から7月15日(月・祝)の期間、天王洲アイルでアートイベント「TENNOZ ART WEEK 2024」が開催されている。ウォーターフロントの風景も美しい天王洲エリアで、国際水準のアートが楽しめる本イベントの様子をレポートする。

天王洲で日本と海外のアートシーンをつなぐ|TENNOZ ART WEEK 2024レポート

Jul 9, 2024 - ART/DESIGN
2024年6月27日(木)から7月15日(月・祝)の期間、天王洲アイルでアートイベント「TENNOZ ART WEEK 2024」が開催されている。ウォーターフロントの風景も美しい天王洲エリアで、国際水準のアートが楽しめる本イベントの様子をレポートする。

TENNOZ ART WEEKとは

「TENNOZ ART WEEK」は、今年で2回目となる国際文化観光の促進を目指すアートイベント。舞台となるのは、ギャラリーやミュージアム、画材の専門店など多くのアート施設が並ぶ天王洲エリアだ。国際水準のアートフェア「Tokyo Gendai(東京現代)」にあわせて開催され、2023年には国内外のアートコレクターを中心に約1.4万人が訪れた。

2回目となる今回は、国内外で活躍する現代アーティスト・束芋と3人のインディペンデントアニメーション作家による新作映像インスタレーションを展示するほか、WHAT MUSEUMでのガイドツアーやナイトミュージアム、ストリートマーケットなども展開される。

束芋 新作映像インスタレーション 「触れてなどいない」

寺田倉庫G3-6Fで展開されるのは、束芋と3人のアニメーション作家による新作映像インスタレーション展示「触れてなどいない」だ。束芋は、独自の視点と鮮やかな色使いで、観る者に強い印象を与える映像インスタレーションを制作する日本の現代アーティスト。今回、寺田倉庫の倉庫空間で、本来は持ち込みを禁止された水や生物などをアニメーションを通して持ち込む体験型インスタレーションを発表した。公演は、広大な倉庫空間を舞台とした25分間の回遊型映像インスタレーションと、55分間の4アーティストそれぞれの映像作品の上映で構成されている。

インスタレーションでは、鑑賞者は光と音を頼りに空間を歩き回り、壁面や床面に映し出される映像を体験していく。明快なストーリーは存在せず、次の展開の想像がつかないまま、光に誘導されながら4名のアニメーションが融合した作品が展開される。それは、映像を鑑賞するというよりも、鑑賞者自身が舞台の中に入り込む体験のようだ。

TENNOZ ART WEEK 2024「触れてなどいない」展示風景 Photo by Takanori Tsukiji

また、会場を進んでいくと、現実空間にあるテーブルや電球が映像内に登場したり、現実とアニメーションの世界が入れ子になるような表現も。徐々に現実と映像の境界が曖昧になり、鑑賞者は、アニメーションの世界へと没入していく。現実には存在し得ないアニメーションならではの表現が施されつつも、現実世界にその“存在”が感じられる。

TENNOZ ART WEEK 2024「触れてなどいない」展示風景 Photo by Takanori Tsukiji

インスタレーション後半では、広大な空間で同時多発的に映像が展開され、一度に全ての映像を捉えるのが難しくなっていく。映画館のようなスクリーンでストーリーをもった映像を観るのとは異なり、鑑賞者の位置や鑑賞方法によって異なる受け取り方になるかもしれない。

TENNOZ ART WEEK 2024「触れてなどいない」展示風景 Photo by Takanori Tsukiji

なお、今回、束芋とコラボレーションしたのは、束芋が国際審査員を務めた 2023年の「新千歳空港国際アニメーション映画祭」の入賞作家である、Josh Shaffner、Lea Vidakovic、Stephen Vuilleminの3名だ。

インスタレーションに続き、別室で、束芋の2006年の映像作品《公衆便女》のほか、コラボレーションした3名の映像作品が上映される。個別の映像を観ると、色彩の豊かなイラストレーションを用いた映像から、写実的なコマ撮りアニメーションまで、その作風は大きく異なっている。

今回の作品は、束芋が3名のアーティストに声をかけ、「アニメーションで倉庫内に異質なものを持ち込む」ことをテーマに決め、各々に提案を行いながら制作されたという。表面的な見え方としては異なる作家が出会い、影響し合いながら創り上げられたこの作品は、アーティスト同士がつながり、寺田倉庫の空間と映像、そして鑑賞者と作品、鑑賞者同士の相互作用によって生まれた。

なお、会場入り口ではハンドアウトと共に小さなメッセージカードが配布される。そのメッセージカードによっても鑑賞体験は変化して感じられるかもしれない。

 

WHAT MUSEUM 「感覚する構造 – 法隆寺から宇宙まで -」 ガイド付きツアーとナイトミュージアム

映像インスタレーションの会場の隣にあるWHAT MUSEUMでは、現在、建築の「構造デザイン」に焦点を当てた展覧会「感覚する構造 – 法隆寺から宇宙まで -」を開催中だ。4つのテーマで建築の構造の世界を紹介する本展。現存する世界最古の木造建築「法隆寺五重塔」から宇宙で活動を行うための構造物まで、時間と空間を超えて構造デザインの世界を体験できる展示となっている。

例えば、「A 伝統建築と木造の未来」の章では、《法隆寺五重塔》や《東大寺 大仏殿》といった、歴史ある木造建築から、2025年の大阪・関西万博の「大屋根リング」まで、1300年の間の木造建築の変化をたどることができる。

「C 構造デザインの展開」では、建築から離れ、構造デザインを建築以外の領域に展開した事例を紹介。建築の構造が、アウトドア用のテントから、ファッション、アートまで幅広く活用されている。

「D 宇宙空間へ」では、地球上の建築の考えを応用し、月に人が滞在するための月面構造物など、まさに今研究開発が行われている宇宙のための構造が展示されている。小さく運搬して大きな構造物へと展開する機構もさまざまな模型で紹介される。

本展は8月25日まで開催されているが、「TENNOZ ART WEEK 2024」期間中には、展覧会企画担当者による特別ガイドツアーも開催される。また、営業時間を特別延長するナイトミュージアムを開催。ゆったりと展示を楽しむことができる。

 

4500色を取り扱う画材ラボから ギャラリーめぐりまで 天王洲エリアを散策

天王洲エリアには、ほかにも多くのアート関連施設がある。例えば、画材の専門店「PIGMENT TOKYO」には、絵具や筆といった、数多くの画材が取りそろえられている。中でも、壁一面に並ぶ顔料は圧巻だ。こちらでは、初心者用のキットなども販売されているほか、「水彩絵具づくり」や「岩絵の具で花を描く」といったワークショップも定期的に開催されている。

また、日本を代表するアートギャラリーが集積した国内最大級のギャラリーコンプレックス・TERRADA ART COMPLEXには、2つの建物に19のギャラリースペースがある。7月6日(土)には、TENNOZ ART WEEK のイベントとして、開館時間を20時まで特別延長し、フロアごとに異なるテーマでセレクトした日本産のお酒とともに展示を楽しめる「TAC GALLERY NIGHT(Cocktail Party)」も開催された。

Photo by Takanori Tsukiji

多くのギャラリーが入居しているので、気軽に複数のギャラリーをまわり、お気に入りのギャラリーやアーティストを探すことができる。

イベント中はキッチンカーも登場

TENNOZ ART WEEK 2024期間中の週末には、運河沿いのボードウォーク上でSTREET MARKETも開催される。7月13日~15日には、キッチンカーが並ぶ予定だ。

Photo by Takanori Tsukiji

また、天王洲エリアには、国内最大級のMURAL PROJECT「TENNOZ ART FESTIVAL」の作品として、計18箇所に壁画や立体アート展示が行われている。「TENNOZ ART MAP」も配布されているので、天気のよい日には、こうした作品群を巡るのも楽しい。

「TENNOZ ART WEEK 2024」は2024年7月15日(月・祝)まで開催されている。運河沿いの開放的な空間でゆったりと1日かけてアートを楽しみたい。

【開催概要】
束芋 新作映像インスタレーション 「触れてなどいない」
会場:寺田倉庫G3-6F(東京都品川区東品川2-6-10寺田倉庫G号
日時:7月5日(金)~7月15日(月・祝)11:00~21:00
入場:一般 2,000円、学生(高校生・大学生・専門学生) 1,500円、子ども(小中学生) 1,000円
※本チケットには、WHAT MUSEUM鑑賞券が含まれます
※事前予約制
※学生チケットをご購入された方は学生証の提示が必要です
※安全上の理由から小学生以上の方のみの入場可能、中学生以下の入場は保護者の同伴が必要となります
チケット予約:https://artsticker.app/events/33365

TAW2024 WHAT MUSEUM 「感覚する構造 – 法隆寺から宇宙まで -」ガイド付きツアーとナイトミュージアム
●企画担当者によるガイド付きWHAT MUSEUMツアー「感覚する構造 – 法隆寺から宇宙まで -」(日英同時通訳あり)
会場:WHAT MUSEUM(東京都品川区東品川2-6-10
日時:7月6日(土)10:00~11:00、7月13日(土)10:00~11:00
定員:各回16名
入場:一般 2,500円 (建築倉庫の入場料込)※事前予約制
●ナイトミュージアム
日時:7月6日(土) 11:00~21:00(最終入館20:00)
7月7日(日)、13日(土)、14日(日)、15日(月・祝)11:00~20:00(最終入館19:00)
入場:通常料金
上記プログラムは公式チケットサイト(https://ticket-what.warehouseofart.org)よりご予約ください
展示の詳細は公式サイトをご確認ください

STREET MARKET
会場:天王洲アイル第三水辺広場 ボードウォーク (東京都品川区東品川2-1-18
開催日:7月6日(土)11:00~21:00、7月7日(日)11:00~18:00、7月13日(土)11:00~20:00、7月14日(日)11:00~20:00、7月15日(月・祝)11:00~18:00
入場:無料
※7月13日~15日はキッチンカーのみとなります

  • Text : ぷらいまり。
  • Photograph : Kei Matsuura(STUDIO UNI)
  • Edit : Seiko Inomata(QUI)

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