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ART/DESIGN

渋谷PARCOでアートを通じて多様な価値観と出会う|「P.O.N.D. 2024 – SIDE BY SIDE/となり合う、広がる。」レポート

Oct 11, 2024
2024年10月4日(金)から10月14日(月)まで、パルコ主催のアート&カルチャーイベント「P.O.N.D.2024 - SIDE BY SIDE/となり合う、広がる。」が開催されている。今年で5回目を迎える本イベントでは、アーティストと鑑賞者の中に新たな視点とインスピレーションを生む場となるべく、エキシビションやパフォーマンスなどのイベントが展開される。
本イベントを訪問し、今注目の13名のアーティストと6名のコントリビューターにお話をうかがった。

渋谷PARCOでアートを通じて多様な価値観と出会う|「P.O.N.D. 2024 – SIDE BY SIDE/となり合う、広がる。」レポート

Oct 11, 2024 - ART/DESIGN
2024年10月4日(金)から10月14日(月)まで、パルコ主催のアート&カルチャーイベント「P.O.N.D.2024 - SIDE BY SIDE/となり合う、広がる。」が開催されている。今年で5回目を迎える本イベントでは、アーティストと鑑賞者の中に新たな視点とインスピレーションを生む場となるべく、エキシビションやパフォーマンスなどのイベントが展開される。
本イベントを訪問し、今注目の13名のアーティストと6名のコントリビューターにお話をうかがった。

ARTCULTUREの祭典「P.O.N.D.」とは?

渋谷PARCOを拠点に、多様なアーティストたちが集結するアート&カルチャーイベント。

今年は「SIDE BY SIDE/となり合う、広がる」をコンセプトに、13名のアーティストによるエキシビジョンを展開。自分とは異なる考え方を持つ人と肩を並べ、同じ視線に立ってみる。他者との内なるコミュニケーションを通して、今よりもさらに視界が広がっていくような空間を目指している。

渋谷PARCOエントランス

また、初の試みとして、音楽やファッションなど、さまざまなカルチャーシーンで活躍する6名の「コントリビューター」を迎える。彼らが推薦するアーティストが展示に参加することで、多彩な視点や感性が取り入れられた展示となっている。

「P.O.N.D. 2024 – SIDE BY SIDE/となり合う、広がる。」をレポート

本展は渋谷PARCOの4Fにある「PARCO MUSEUM TOKYO」と1Fのエントランスで展示が行われ、入場は無料だ。
アートエキシビジョンで展示を行う13名のアーティストにお話をうかがった。展示の順路に沿って紹介する。

スクリプカリウ落合安奈(美術家)

渋谷PARCOエントランスでは、スクリプカリウ落合安奈が、2015年から続くプロジェクト型の作品《This Side of The Other Side》を展開する。

《This Side of The Other Side》/ スクリプカリウ落合安奈

『海が人の前に壁のように立ち上がっている写真作品は、海のもつ「人々の移動を阻む壁」と「時間や空間を超えてものを運んだり、出会わせたりする」という、2つの特性をビジュアルとして表現した作品です。』

《This Side of The Other Side》/ スクリプカリウ落合安奈

『その向かいにある大きな海の写真の前で撮影していただくと、同じ場所に立っているような体験型の作品になっています。本来は出会わなかった人々が、時間を超えて、イメージ上でつながりを経験できる作品なので、体験いただけたら嬉しいです。』
Instagram:@ana_scripcariu_ochiai

渋谷PARCOの4F「PARCO MUSEUM TOKYO」では、12名のアーティストの展示が行われている。

PARCO MUSEUM TOKYO

yoh murata(アーティスト)

会場入り口で展開されるのは、床に並んだ複数の街の風景写真に、プロジェクターで映像を投影した作品《Relay》だ。

《Relay》/ yoh murata

『写真に映像を投影するという手法で制作を行っており、今回は写真をモーターで動かしてその上から静止画を投影しています。
写真が動くことで生じる像のズレによって、時間のズレや記憶の揺らぎ、過去の回想をするときのピントが合わないような感覚などを、直感的に表現できればと考えて制作しました。』
Instagram:@yoh_murata

王 之玉(アーティスト)

立体作品《Rebis》は、大谷石の台座の上に立つ天使のような風貌のFRP製の彫刻作品だ。

《Rebis》/ 王 之玉

『錬金術からインスピレーションを得て制作した作品です。両性偶有の“完璧な存在”というキャラクターで、陰と陽、男と女、太陽と月など、全てを持った人の形を表現しました。柔らかい人の肌や、ウロボロスの硬い質感、ふわふわとした羽根、凹凸のある大谷石など、質感についてもこだわって制作しています。』
Instagram:@aprilsekaiii

LOVEDAVID(アーティスト)

実写とアニメーションを組み合わせた映像作品《The Itchings (2024)》とあわせ、リサイクルTシャツにペイントを施した作品などが壁一面に展示される。

《The Itchings (2024)》《print01-25》/ LOVEDAVID

『「The Itching(かゆみ)」というタイトルは、私自身に馴染みのある感覚をもとにしています。例えば“もっと知りたい、でも時には知りたくない”といった感覚です。映像の中では、現在/過去/未来の私がすべて同じ世界に存在しています。私たちが“置き去りにしてきたもの”や“希望しているもの”を認識したら、どのように見えるのだろうか?という考えからスタートした作品です。』
Instagram:@lovedav.id

黒田 零(写真家、映像作家)

《耳を凝らして暗闇を聞く、目を澄まして音を見る》は、写真と映像から構成される作品だ。

《耳を凝らして暗闇を聞く、目を澄まして音を見る》/ 黒田 零

『写真作品は、視覚情報のない夜の森や、多くの音が響くダンスクラブといった、聴覚などの感覚が過敏になる瞬間を撮影して、ひとつの作品に構成したものです。写真自体が暗いですが、よく見えない場所で集中してものを捉えようとする時と同じような感覚を使って観ていただけたらと思います。映像作品は、衝撃的な出来事が起こったとき、言いたいことはたくさんあるのに言葉が言えない時に感じる、“言わなきゃ”というプレッシャーと、“言えなさ”や“もどかしさ”を、映像で表現した作品です。撮影した当時のドイツでの肌感覚も反映されています。』
Instagram:@rei_0_brei

黒瀧藍玖(作家)

金属製のフレームに織機のように規則的に糸が並び、その中にビニールチューブで人の形の立体を構成した《Human 0》と、《Dot#03》の2作品が展示される。

《Human 0》《Dot#03》/ 黒瀧藍玖

『テキスタイルデザインを専門としています。今回展示しているのは繊維構造を使った立体作品です。人間のモチーフの作品を通じて、ミクロ/マクロの視点の移動や認識の違いを見たいと考えています。例えば、自分たちの体はひとつの塊とも、多数の細胞の集まりとも認識できますよね。捉え方ひとつで、ふだんみているものの観え方が大きく変化するようすを表現したいです。』
Instagram:@aikur0

Kou Nishikawa(アーティスト)

樹脂製の複数の小さなオブジェ《skate object》と、そのオブジェを舞台にフィンガースケートボード(指スケ)を行う写真《finger skate》で構成される。

《skate object》《finger skate》/ Kou Nishikawa

『街中でのスケートボード禁止が増えていますが、スケートボードの魅力は街のオブジェクトを使う部分にあると考えています。そこで、一歩引いたツールである「指スケ」の縮尺でそれらを再現し、トリックに使われる部分の素材を変える事で、スケートボードをしない人にもスケートボードを通した想像的な遊びや見え方を共有する事を目指して制作しました。』
Instagram:@kouketsuatu

Nils Junji Edström(フォトグラファー)

日常の風景を切り取ったような2枚の写真プリント《Untitled》を展示している。

《Untitled》/ Nils Junji Edström

『当初は12〜14枚の写真を展示する予定でしたが、壁の大きさや壁そのものを額縁の一部として考えるようになりました。また、作品と額の間にあるバランスやその微妙な関係性を探るうちに、結果的に2枚の作品が最も効果的だと感じ、当初の構想よりもミニマルな展示に落ち着きました。作品と額のバランス、そしてその間にある「波長」について、スケールを小さくし、写真の構図や被写体の距離を少し取ることで、新たな対比が生まれます。この2枚の作品の間であえて「バランスを崩す(破調)」ことで、空間に独特の緊張感や余白を感じさせる展示にしたいと考えました。』
Instagram:@nils_junji

ケビン・リー(アーティスト)

大判のカラフルな油彩作品《日曜日のセントラル、香港》は、彼の出身地である香港の街をモチーフに描いたものだ。

《日曜日のセントラル、香港》/ ケビン・リー

『香港独特の風景を作品に展開しています。香港はイギリスの植民地で、インドネシアとフィリピン出身の家政婦が多いのですが、日曜日には彼女たちが街中に集まったりしていて、今回はその風景をモチーフに描きました。左側に描かれた男性は、ボディガードの恐らくインドネシア人で、広東語で話しています。母国語ではない言葉を話さなければいけないところにも一種の暴力性を感じており、そういったテーマも含んだ作品です。』
Instagram:@kebin_ilu3000

Dawoon JUNG(版画家)

大判の版画《室内にいる男》と、それに対面する形で、小さな版画作品《七匹のいぬ》が展示されている。

《室内にいる男》/ Dawoon JUNG

『《室内にいる男》は、モノタイプという1枚だけしか刷ることができない版画の形式を通じて、物として唯一無二の作品を持つことの意味や、それに付随する感情ついて探究した作品です。一点物の作品は特別感を醸し出しますが、一方で「物寂しさ」も感じることがあります。

その作品と向き合っている犬小屋の額に入っている《七匹のいぬ》は、銅版画のため複数枚刷ることができ、希少性はなくなりますが、常に一緒にいてくれる存在としての可能性を考えて作りました。犬の絵を持ち歩いて散歩するようすを想像すると前向きな気持ちになります。』
Instagram:@dawoonjungdown

奥村美海(アーティスト)

《Polyphonic Palimpsests》は、文字などのモチーフが描かれた多様な形状の木製パネルを組み合わせ、立体的に構成した作品だ。

《Polyphonic Palimpsests》/ 奥村美海

『自分や人が描いた筆跡やドローイング線など、文字や線を絵画の中に持ち込むことで、絵画自体の三次元性や空間性を捉え直すような作品を制作しています。今回は、自分が日常的に集めている文字や、家族が描いた文字を用いて作品を制作しました。今回の作品の中には、視覚に障害が出てしまってほとんど文字を書かなくなってしまった祖父が数年前に書いた文字などもあり、レイヤー構造の中にイメージだけでなく、時間もなっている状態を作ろうとしています。』
Instagram:@okmrmnm

Camelostrich(アーティスト)

3Dグラフィックツールで描かれた映像作品《Pure Pain》や、そのプリントを立体作品にした《Granpa 1》など、計6点の作品でインスタレーションを展開する。

《What for? (Chinese Restaurant Skaters)》《Granpa 1》《Granpa 2》/ Camelostrich

『中国で過ごした16年間の学生時代の記憶に根ざし、一貫して「ノスタルジア」をテーマに制作を続けています。COVID-19により学生時代を奪われたことをきっかけに、忘れていた記憶を呼び起こし、作品に落とし込み始めました。完成した作品が私自身の癒しとなることに気づき、その後も忘れていた記憶をたどりながら制作を続けています。』
Instagram:@camelostrich

佐野虎太郎(アルゴリズミック・ファッションデザイナー)

《GENERATIVE FASHION ENGINE》として、迫力あるサイズの人体の像と衣服とともに、AIと協働したその制作過程も映像で展示している。

《GENERATIVE FASHION ENGINE》/ 佐野虎太郎

『ファッションデザインにおける“新しい人体像”を探求する試みです。例えばコルセットなど、古くから人間は、機能性を犠牲にしてまでも“美しい身体”を追求してきました。そういった人間の営みを参考にしつつ、人間の新しい“美しい身体”とはどんなものかを探求した作品です。手法としては、大規模言語モデル(LLM)を用い、AIとの対話から未来にあり得るかもしれない身体のストーリーの仮説をつくりました。そこから3Dモデルを生成し、デザイナーがその身体のための服を制作しています。』
Instagram:@_kotaros_

コントリビューターからのメッセージ

さまざまなカルチャーシーンで活躍するコントリビューターから、P.O.N.D.の企画意義についてメッセージをいただいた。

KOM_I(歌手、アーティスト、俳優)
過小評価されていると誰かが思ったアーティストが集められてるのかも!と思いました。毎年やっているから、広告の仕方や展示方法も含めて、結果的に、時代を定点観測することにもなっているかも。』
Instagram:@kom_i_jp

Jun Inagawa(アーティスト)

『となり合う、広がる。外も中も情報だらけで、カオスに流されそうになりながら孤独を感じる今の世の中。未知への恐怖やカオスを受け入れ、新しい「自分」を探す旅人たちがパルコに集い、寄り添い合い、支え合う、そして異なる価値観やインスピレーションを共有し、みんなで大きな円を描く。そうすればきっと自分は自分でいいのだと受け入れられます。みんながいるから大丈夫だと思えるとても温かい場所です。』
Instagram:@theprivatejundelicreel

Jeeyoung Lee(『CHALKAK MAGAZINE』ディレクター)

P.O.N.Dは、文化・芸術の分野において先駆的な存在であるPARCOが、「未来的視点から見た現代性」を体現する有望な若手アーティストを紹介する、重要な展覧会です。本展は、最新の文化芸術のトレンドとPARCO独自の美学を垣間見る機会を提供しています。参加アーティストたちの純粋で情熱的な作品は、鑑賞者の想像力を刺激し、彼らが今後生み出すかもしれない未来の創造や世界への「予告編」として興味深いものとなっています。』
Instagram:@chalkak__magazine

Lisa Tanimura(『Cult* Magazine』編集長)

『ファッション、アート、音楽といったさまざまな分野で活躍する方々が一堂に会する領域横断的な展示は、サブカルチャーと密接に接続しながら新たなカルチャーを生み出してきたセゾン文化の流れを汲むPARCO MUSEUM TOKYOという場所ならではだと考えています。』
Instagram:@cultmagazinetokyo

髙橋義明(東葛西 1-11-6 A 倉庫 借主・モデル)

『初回の企画説明の際に、実行委員会が選んだ作家と6名のコントリビューターが推薦した作家がグループ展をするとお聞きして、どんな人たちが集まるのか想像できなくて新鮮でした。企画側もそれを楽しんでいるような感覚があって、展示方法も僕たちと同じ目線で相談に乗ってくれて、こちらも気持ちよく新しいことにチャレンジできました。それはきっと5回目を迎えたP.O.N.Dも、新しい企画にチャレンジし続けてるからなのかもしれませんね。』
Instagram:@efag.css

原ちけい(インディペンデントキュレーター / ライター)

『若手のアーティスト・クリエイターの創作的な活動をサポートする場として、様々な実験的なきっかけにこの機会がなればと思います。この場所が位置する渋谷という街と同じく、様々な文化が雑多に触れ合い、解け合いながら表面を築いていくことで、新陳代謝が絶えず続いていくのかなと想像します。』
Instagram:@parti9le

PARCOが主催するART&CULTUREの祭典「P.O.N.D. 2024 – SIDE BY SIDE/となり合う、広がる。」
PARCOの担当者は、本展について以下のように語った。

『今回はコントリビューターとして、多種多様なカルチャーシーンで活躍されている方々に参画いただき、そのミックス感やエネルギーがアートという軸を通じて広がるイベントになりました。ひとつの作品でも観る人によっては感じられる感性が全く違うと思うので、そこを楽しんでいただきたいと思っております。』

本展でアートを通じたさまざまなカルチャーと価値観との出会いをぜひ楽しんでいただきたい。

 

P.O.N.D.2024 – SIDE BY SIDE/となり合う、広がる。
会期:2024年10月4日(金)~2024年10月14日(月・祝) 11:00-21:00
会場:渋谷PARCO(1F 正面エントランス / 4F PARCO MUSEUM TOKYO)
住所:〒150-8377 東京都渋谷区宇田川町15-1
公式サイト
Instagram:@p.o.n.d.official

  • Photograph : Yohei Ohno
  • Text : ぷらいまり。
  • Edit : Seiko Inomata(QUI)

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