日本流のクラフトマンシップに、未来を託す
一方で重要なプロダクトを任されることは、日本にしかできないことがあるという証しだと称賛する声もある。
日本の技術が海外から高く評価されるのは今に始まったことではないが、テクノロジーが進化し続ける現代においてもその状況が変わらないのは簡単に代替できるものではないからで、それは単に技術力の問題だけではなく、モノづくりと真摯に向き合う日本人ならではの勤勉さ、丁寧さ、頑なさも関係しているのだろう。
日本におけるクラフトマンシップとは、「技術」ではなく「魂」なのだ。
技法や製法だけでなく日本のクリエイティブも世界的であるということは証明されていて、ジブリは世界中の大人も子供も夢中にさせ、多くの夢と愛を与えている。
それでもラグジュアリーという美的感覚においてはヨーロッパが格上という風潮があるのも事実だ。
現代ではファッションや家具といったヨーロッパがお家芸とする分野で世界を目指し、世界と肩を並べようと奮闘する日本企業やブランドが数多く存在する。
世界的なブランドを日本から生み出そうという動きが活性化しているようにも感じるが、そこで日本流のクラフトマンシップが最高の武器になることは間違いない。
01 「ブルガリ ホテル 東京」に日本の家具ブランドとして唯一採用。福岡発のブランド、リッツウェルとは
2023年4月にオープンしたブルガリ ホテル 東京。
約400㎡の広さを誇る「ブルガリ スイート」をはじめとした全98室を有し、インテリアデザインを手がけるのはイタリアの建築設計事務所ACPV ARCHITECTS アントニオ・チッテリオ・パトリシア・ヴィエル。モダンラグジュアリーを極めた空間の中、マクサルト、フレックスフォルム、B&B イタリアといったイタリア高級家具と並んで、日本ブランドの家具が採用されている。
そのブランドがリッツウェル(Ritzwell)だ。
国際的な家具見本市「ミラノサローネ」の常連としても知られ、世界から注目されるリッツウェルとは、いったいどんなブランドなのか。代表でありデザイナーの宮本晋作氏に、その歩みや信念をきいた。
02 世界と肩を並べるためのクラフトマンシップ|JAXURY委員会 代表理事 前野隆司
日本の技術をリスペクトしている、そう口にする世界のラグジュアリーブランドは少なくない。海外デザイナーが理想とするプロダクトを実現させるために、日本の職人とコラボレーションすることも珍しいことではない。
そんな世界に誇るべき日本のクラフトマンシップを正当に評価し、国内外に発信するために設立されたのが「JAXURY委員会」。今回、委員会の代表理事を務める前野隆司さんに日本のモノづくりがもっと世界に認められるために何が必要なのか、意見を伺った。
03 世界のどこにもないオリジナルでありたい|PETROSOLAUMデザイナー 荻野宗太郎
10数年前、QUI 編集部スタッフのひとりが代官山のセレクトショップlift(リフト)で出逢った一足のダービーシューズ。当時は大学生だったため高価すぎるほど高価であったが、ひと目惚れで購入を即断。
それがペテロオラウムだった。社会人となった現在も愛着は薄れることなく大切に履き続けているが、本人曰く「初めて目にしたとき、なぜあれほどまでに強く惹かれたのか」。
ペテロオラウム流のクラフトマンシップがそうさせたのかもしれないと、gallery一畳十間にて開催されたEXHIBITIONの空間の中で、デザイナーの荻野宗太郎さんに靴づくりに込めた想いを伺った。
04 漆に見出した日本のクラフトマンによるエレガンス|maison2,3
プランニングディレクターの水野浩行さんとクリエイティブディレクターの江幡晃四郎さんが2019年に発足させたユニットmaison 2,3(メゾン トゥ コンマ スリー)。
QUI編集部が取材に足を運んだ2023年の展示会「TIME」で発表された漆塗りのバッグチェーンは新鮮でカッコよく、歴史ある和の伝統工芸を身近に感じさせてくれるプロダクトだった。
「日本の美は西洋に負けていない」という言葉も印象的だったmaison 2,3に、その真意を伺った。
05 スタイリストが愛する日本のクラフトマンシップ、こだわり抜かれたアイテム5選
大量生産されたもので溢れる今欲するのものは、クラフトマンシップが随所に散りばめられたアイテム。
歴史、技術、古き良きものを現代にアップデートする挑戦。
効率重視で生産されているものより、人間に寄り添いながら、手が加えられているものを意識的に手に取るようにしている方も多いはず。
本記事では、クラフトマンシップを愛するスタイリスト三浦翔平さんが、こだわり抜かれたアイテムを厳選して紹介。長きにわたる愛着と、次の時代に繋がるもの作りを学んでいく。
- Photographer : Marco Reggi