人間だけのことを考えていたらダメだよなと考えさせられた（鈴鹿）

― 映画『ChaO』はアンデルセンのおとぎ話『人魚姫』をベースに、鈴鹿さん演じる人間の青年・ステファンと、山田さん演じる人魚王国のお姫さま・チャオが紡ぐラブストーリーとなっています。完成した作品をご覧になった感想を教えていただけますか？

鈴鹿央士（以下、鈴鹿）：観ているうちに、ファンタジーな世界観にどんどん引き込まれていきました。絵もすごく魅力的で、キャラクターもスッと入ってくるんです。笑えて、感動できて、いろんな感情をもらえる、世代問わずいろいろな人に届く映画になっていると思います。

人間と人魚が共存していくのを観て、実際の世界でも人間だけのことを考えていたらダメだなと考えさせられるところもあって。

― 人間同士でさえ、性別や人種、国の違いなどでわかり合えないこともありますからね。

山田杏奈（以下、山田）：チャオがただひたすらまっすぐに愛情で動くことで、人間界と人魚界がつながっていく。純粋な気持ちが世界をつないでいく希望を見せてもらいました。

― とにかくチャオがチャーミングでした。

鈴鹿：本当にかわいかったですよね。以前、ドラマで共演したのが5年ぐらい前だったので、「あれ？こんな声だったっけな」って（笑）。

山田：監督から「とにかくかわいくしたいです」と言われたのでがんばりました（笑）。声のトーンを高めにして、あとは私のできる限りのかわいい声というイメージで。

― 山田杏奈史上一番かわいい声が聞けるかもしれない。

山田：かもしれません。だったらいいなと思います。

― 鈴鹿さんはステファンの声を演じる際に、どんなことを意識しましたか？

鈴鹿：ステファンはちょっと抜けているところがあるキャラクターですが、映画の中での成長を声でも表現したいなと。でも僕にそんな技術はないので、ちょっとずつ変えながら、何度も繰り返し録っていきました。

― 監督とも相談しながら、かなり細かく調整していったんですね。ちなみに普段のお芝居では、「声」とどのように向き合っていますか？

鈴鹿：僕は台本を読んだときに頭の中で聞こえてくる声の高さや口調、スピードを参考に、「こんな感じかな」と。ただすごく声にフォーカスすることはあまりないですね。

― 役作りにおいて、声色を作ることはないのでしょうか？

鈴鹿：あまりないです。でも役が役の中で何かを演じているとき、嘘をついているようなときは意識します。

― 山田さんは声で意識していることはありますか？

山田：私も台本を初めて読んだときに脳内再生されるしゃべり方を覚えておくようにしています。声でだけで表現する作品をやらせていただいてから、あらためて声の大切さに気付かされましたし、気持ちが動いても思った以上に声に乗っていないんだなって、自分の想像とのギャップを感じたので。とはいえ、お芝居をするときは気持ちがあって、その上で走っていることなので、テクニカルになりすぎるのも良くないですよね。

― 今回、お互いの声優としてのお芝居に触れて、驚いたことや感心したことはありますか？

鈴鹿：意識したとおっしゃっていましたが、本当にかわいい声をされているんだなと思いました。その中でも、笑った声が特に魅力的だなと。

山田：ありがとうございます。私は率直に、「すごく上手」って思ったのが最初で。央士くんの声が乗ることによって、ステファンがちょっと頼りないけど、すごく良い人だということが伝わってきましたし、チャオを演じるうえでも本当に助けてもらいました。

満足できるとしたらやめるときなのかもしれません（山田）

― おふたりは24歳、25歳と同世代ですが、20代半ばは仕事も人生も“これから”が見えてくるタイミングだと思います。今、どんなことを考え、この先どんな俳優・表現者になっていきたいですか？

鈴鹿：現場を重ねるごとに後悔したくないという思いは強くなっていくけど、完成した映画やドラマを観ると「あのときこうすればよかったな」と思うことばかりで。でもそれがあるからこそまた次の作品に向き合えるし、もっと頑張ろうと思える。その火を絶やさず、ずっと続けていける人でいたいなと思います。

今7年目なのですが、これまでひとつのことをこんなに長く続けたことはなかったですし、続けられていることがすごく幸せです。誰かの人生に影響を与えられる力を持った映画やドラマを、みんなで作り上げる世界が大好きだから、もっと頑張ろうという気持ちが日に日に増しています。

山田：私も火を絶やさないようにしたいという思いはすごくあって。きっと自分が出た作品に完全に満足できることは一生ないですし、もし満足できるとしたらやめるときなのかもしれません。気づけば人生の半分以上、仕事をしていることになるんですけど、今も「次の作品はこうしよう」「これしたい」「あれしたい」と楽しみながら続けられて、それが仕事になっていることに喜びを感じています。

この仕事を始めたときにチーフのマネージャーさんと、「30歳まで続けられていたらいいね」と言っていたんです。今はなんとか30歳までできそうという先行きが見えてきて、すごくワクワクしています。ひとつノルマクリアみたいな。

鈴鹿：やめないでください（笑）。

山田：やめないよ（笑）。これから歳を重ねることでできる役もどんどん出てくると思うので、それもすごく楽しみですね。

Profile _ 鈴鹿央士（すずか・おうじ）
2000年1月11日生まれ、岡山県出身。高校2年生の2016年に、エキストラとして参加していた映画の現場でスカウトされたことをきっかけに、2018年にはファッション誌「MEN’S NON-NO」のオーディションでグランプリを獲得し、専属モデルに抜擢。2019年に映画『蜜蜂と遠雷』でスクリーンデビューを飾ると、その後もドラマ『ドラゴン桜』（TBS/21年）や『silent』（CX/22年）など映画・ドラマ問わず話題作に多数出演を果たす。
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Profile _ 山田杏奈（やまだ・あんな）
2001年1月8日生まれ、埼玉県出身。2011年に『ちゃおガール2011★』オーディションでグランプリを受賞し、芸能界入り。その後は女優としてのキャリアもスタートさせ、2018年には映画『ミスミソウ』で初主演に抜擢。以降も映画『ひらいて』（21年）、『山女』（23年）やドラマに多数出演。『山女』では第15回TAMA 映画賞最優秀新進女優賞を受賞し、多彩な演技力が一躍注目を集める。映画『ゴールデンカムイ』（24年）や『正体』（24年）での好演により、日刊スポーツ映画大賞・助演女優賞、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。また、『正体』では日本アカデミー賞優秀助演女優賞も受賞している。10月24日 W主演映画『恋に至る病』、2026年 主演映画『NEW GROUP』の公開が控えている。
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Information

映画『ChaO』

2025年8月15日（金）公開

声の出演：鈴鹿央士　山田杏奈
シシド・カフカ、梅原裕一郎 / 三宅健太 / 太田駿静 土屋アンナ
くっきー！　山里亮太
主題歌：「ChaO!」倖田來未（rhythm zone）
監督：青木康浩
キャラクターデザイン・総作画監督：小島大和
美術監督：滝口比呂志
音楽：村松崇継
演出：古屋勝悟
色彩設計：成毛久美子
撮影監督：中島隆紀
音響演出：笠松広司
アニメーション制作：STUDIO4℃
配給：東映

映画『ChaO』公式サイト

©2025「ChaO」製作委員会