玉城ティナ – 人を信じたい
映画『窓辺にて』に出演する玉城ティナへのインタビュー。
愛嬌とデリカシーのなさは共存しうる
― 『窓辺にて』もそうですが、今泉監督が描く世界には何かが欠けたりずれたりしている人が多いですよね。
そうですね。
― 人間誰しもそういうものかもしれませんが。でも、映画に出てくるキャラクターは欠けている部分さえ愛嬌に感じられて、そういうのってうらやましいなと。
私も愛嬌が自然に身についている人には憧れます。自然体で世渡り上手みたいな。私は誰かと話したあとに、愛嬌を出すバランスって難しいなとか考えちゃうときがあるので。
― どれぐらいにこやかに振る舞えばいいのか、ちょっと計算してしまうような?
そういうときもあります。本当は相手がどう思うか、ひとつひとつのラリーを想像せずに話せたらいいのですが。
― それはある種のデリカシーのなさでしょうか。
愛嬌とデリカシーのなさという言葉は対極ですけど、共存もしうるのかなと。
― 正直者というのが近いかもしれないですね。本作でも「正直であること」がひとつの鍵になっているように感じました。
稲垣(吾郎)さんが演じられたフリーライターの市川さんが一番体現していると思うんですけど、「言わなくていいこと」も言ってしまう自分の中の正義みたいなものが、キャラクター全員にあるんですよね。恋愛映画としては珍しいかもしれないですけど、実際の恋愛ではありふれている、みんなが身に覚えのある題材だと思います。
― たしかに。玉城さんは「言わなくていいこと」を、どういうふうに処理していますか?
私、結構言うんです(笑)。仕事では余計なことは言わずに効率よくやったほうがいいと思うんですけど、普段の生活においては言ってしまうタイプです。
― 玉城さんが演じられた高校生作家の久保留亜と感覚が近いかもしれないですね。彼女も言葉にすればわかりあえると信じているところがある。
人を信じたいという気持ちは近いと思います。留亜は奔放そうに見えて、セリフには幼さからくる素直さが感じられて。そういう世間の目と実際の彼女のギャップも、私自身が感じていることと重なる部分がありました。
― 監督からはどんなリクエストがありましたか?
ほとんどなかったです。以前はお芝居に対してコメントがないということに対して不安もあったんですけど、それはもう大丈夫ってことなんだろうと最近は受け止められるようになってきました。
― 無言は信頼のあらわれだと。キャスティングに自信があるから、現場で俳優に任せる部分が大きいのかもしれません。
そうだといいんですけど(笑)。
カメラの前での不思議な関係性が楽しい
― 稲垣吾郎さんとの共演シーンが多かったですが、稲垣さんって実際どういう人なんだろうって、すごく興味があります。
私もそう思って初日は緊張していたんですけど、やわらかくて温厚な印象で、もちろんわかりやすく冗談を言ったりするかたではないんですけど(笑)。稲垣さんが現場の真ん中で軸として立たれているからこそ成り立つ空気感を感じました。
いろいろお話もさせていただいたんですが、演技プランなど深い話をするというよりは、あくまで円滑に仕事をするためにお互いを理解し合っているような感覚がありました。
― 『窓辺にて』は、好きという感情そのものについて深く掘り下げた作品ですが、玉城さんは人を好きなるってつまりはどういうことだと思いますか?
全然わかんないです(笑)。
― でも、だれかを好きだなと思うことはきっとありますよね。でもそれがどういう心の働きなのか……。
好きになるまでの気持ちの動き方は、好きになる人によっても違うだろうし、友人に対しての好きとか、恋人に対しての好きとかいろいろある。だから好きってどういうことって、考えても答えは出ないですよね。ただ、きっと理解してもらえるはずという期待みたいなものから、男女間の恋愛感情が始まることはある気がしています。
― 男女に関わらず、玉城さんは他人のどういうところに惹かれますか?
やりたいことをやれている人でしょうか。仕事に限らず、自分がしていることに対して誇りを持って話せる人。周りにもそんな人が多いかなと思います。
― 今回18歳の役を演じられましたが、ご自身が10代のときにやっておいてよかったこと、やったほうがよかったなと思うことはなんでしょう?
10代は海外も含めてとにかくいろんなところに行っていました。よく「10代は多少無茶してみよう」みたいなアドバイスがありますが、20代になってくるとその意味がわかるというか、本当に体力がなくなってくる(笑)。知らないままやってみることとか、10代だから許されるいろんな特権を無視することなく使ったほうがいいんじゃないかなと思います。
あと年齢はあまり関係ないですけど、わからないことはちゃんと聞いておいたほうがのちのち楽だったりするので、早めに聞くというのも大事ですね。
― 俳優という仕事でやりがいを感じることはありますか?
脚本家さんが書いたセリフをしゃべるんですけど、普通のコミュニケーションとかでは得られない、カメラの前での不思議な関係性みたいなものが楽しいです。
― カメラを向けられているときが?
本番からカットがかかるまでが一番楽しいです。
― では最後に、今作で得たものと今後の目標について教えてください。
今回は10代の役柄をやらせてもらって、改めて自分の10代を振り返ることができましたし、過去が昇華されたように感じました。自分の過去を利用できることもこの仕事の特権なので、ひとつ使えてよかったです。
演技面でも長回しでワンシーンワンカットみたいな撮影方法をあまり経験したことがなかったので、いい緊張感が得られました。また今後、他の作品でもこの経験を役立てることができればなと思います。
Profile _ 玉城ティナ(たましろ・てぃな)
1997年10月8日、沖縄県出身。2012年講談社主宰オーディションの初代グランプリでデビュー、ViVi最年少専属モデルに。2014年女優デビュー後、『Diner ダイナー』(19)、『惡の華』(19)、『AI崩壊』(20)、『ホリックxxxHOLiC』(22)、『グッバイ・クルエル・ワールド』(22)などに出演。ASF2『物語』(22)では脚本と監督を務めた。2023年1月には映画『恋のいばら』の公開を控える。
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one-piece dress ¥97,900 / CO|TE(IZA 0120-135-015)、boots ¥10,500 / CHARLES & KEITH(CHARLES & KEITH JAPAN)、necklace Stylist’s Own.
Information
玉城ティナさん出演映画『窓辺にて』
2022年11月4日(金)より全国公開
出演:稲垣吾郎、中村ゆり、玉城ティナ、若葉竜也、志田未来、倉悠貴、穂志もえか、佐々木詩音/斉藤陽一郎、松金よね子
監督・脚本:今泉力哉
©2022「窓辺にて」製作委員会
- Photography : Madoka Shibazaki
- Styling : Ruri Matsui
- Hair&Make-up : Takako Imai
- Text&Edit : Yusuke Takayama(QUI / STUDIO UNI)