YU – 今まで行けなかった場所へ
最新の出演作となる映画『みーんな、宇宙人。』のエピソードを中心に、表現することへの思いを語ってもらった。
脚本を読んで感じた「絶望と希望」
― 映画『みーんな、宇宙人。』は、ファッション誌「NYLON JAPAN」の創刊20周年を記念した作品です。YUさんは「NYLON JAPAN」にどのような印象がありますか?
以前から、攻めたファッションが載っているイメージがありました。日本に来てからいろんな企画に出させていただきましたけど、すごくファッショナブルな雑誌ですよね。
― 映画の中の服装もみなさんおしゃれでしたよね。独特の世界観で、いろんな捉え方ができる作品でしたが、まずは脚本を読んだ時の感想を教えてください。
「どんな作品になるんだろう?」というのが率直な感想でした。あと、僕のシーンはわりと重めだったので、演じている自分を想像して、正直少し不安な気持ちもありました。
― 役を演じるときは、いつもどんなことを大切にしていますか?
演じる役にもよりますが、その役の人生を考える時間でしょうか。役に寄り添って一緒に作っていくイメージです。台本に書いてある意味を理解することはもちろん、役に対する理解を深めることを大切にしています。
― 今回はどのように演じていきましたか?
僕が脚本を読んで感じたのは「絶望と希望」でした。(自身が演じた)リュウは絶望を抱えて生きているんだけど、モジャとの会話の中で少しずつ変化が起こっていく。そして最後には「人ってまだ大丈夫なんだな」「生きているだけで大丈夫なんだ」と、少しだけ希望が生まれる。脚本には具体的なことや細かい内容は書かれていなかったので、そんなことを想像しながら演じていきました。
― リュウと同じように、YUさん自身も何かで絶望や後悔を抱えることはありますか?
人生って何をしても、後悔の連続だと思うんです。誰かと話をしたときも「これ言っておけばよかったな」とか、仕事でも「もうちょっとできたはず」みたいな。後悔の連続で僕は生きています。
― 後悔は引きずりますか?
いや、あんまり引きずらないです。引きずってもしょうがないので、後悔しても反省と復習をして次に進むようにしています。あと、寝るとリセットされて忘れちゃうことが多いんです(笑)。気持ちを切り替えるのも得意な方なので、次の日まで持ち越すことは少ないですね。
― 物語の鍵を握る謎の生物「モジャ」は、どんな存在として捉えましたか?
人間を滅ぼしに来た宇宙人。だけど、モジャたちも人と接していくことで何かを感じているんですよね。不思議な存在でした。
― モジャのセリフには、核心をついてくるようなものもありましたよね。
僕のシーンでは、「過去は変えられない」とか「人生はやり直しがきかないから素晴らしい 」というモジャのセリフがあるんです。普段言われたら何とも思わないかもしれないんですけど、リュウとして演技をしながらそのセリフを聞いた時にはハッとするものがありました。
― もしモジャと実際に会話できるなら、どんな話をしてみたいですか?
「人ってしょうもないよね」って聞いたら、どんな言葉が帰ってくるのかな。「いや、そんなことないよ」って言ってくれるのか、「しょうもないよね、ストレス社会で生きているしね」みたいなことを語りだすのか、気になります。
― 完成した作品を観た感想はいかがでしたか?
試写で観るまでは、自分以外のシーンがどうなっているのか気になっていたんですけど、すごかったですね。この独特な世界観を成立させるのってすごく難しいと思いますし。こういう作品を体験できる機会もなかなかないと思うので、出演できてよかったです。
― これから『みーんな、宇宙人。』をご覧になるお客さんにメッセージをお願いします。
この作品は観る人によって感じるものがそれぞれ違うと思うので、深く考えすぎずナチュラルに観て、楽しんでいただければと思います。
演技と音楽の仕事のバランス感
― YUさんは、大学進学のタイミングで台湾に移住されてお仕事を始められましたが、もともと演技や歌うことに興味があったのでしょうか?
はい。昔からこのお仕事に興味があったので、語学の勉強と、表現の世界に触れてみたくて台湾へ行きました。
― 演技や歌を学んでく中で、自分自身と向き合うこともあったと思うのですが、改めて気付いたことはありましたか?
こんなにも緊張するんだ……ということに改めて気付きました(笑)。めちゃくちゃ臆病なんです。人見知りですし。ライブの時もマイクを持つ手が緊張で震えることがあって。
― どう克服していったんですか?
たぶん、“慣れること”だと思います。今でも何かの始まりは毎回すごく緊張してしまいますし。新しい作品の撮影のワンカット目とか、ライブやレコーディングの1回目とか。いつか緊張をしなくなるのかなとも思うんですけど、それはそれで嫌だなと(笑)。
― その緊張がいい作用を生んでいる可能性もありますよね。
はい。緊張するところも含めて、僕なので。
― 逆に、リラックスできるのはどんな時ですか?
自分に入り込んでいる時ですね。楽曲の歌詞は僕が書いているので、歌に入り込んでいると緊張しません。あとで映像を見ても、いい表情で歌えているような気がします。
― 現在は演技と音楽の2軸で活動をされていますが、それぞれに違う面白さがありますか?
音楽ではわりと孤独になる瞬間が多いんですけど、演技はチームで動くことが多いのでワイワイできる。そのバランスをとりながら、どちらも楽しんでいます。
― これからも国内外問わずいろんな場所で幅広く活動を?
はい。いろんな作品を通して、今まで行けなかった場所にも行けるチャンスがあると思うので、頑張ります。
― やってみたい仕事はありますか?
報われないラブストーリーに出たいです。あまりうまくいかなくて傷つくようなラブストーリーを観るのが好きなので、実際に演じてみたいです。
― プライベートでは漫画やお酒など好きなことがいろいろとあるそうですが、今ハマっているものは何ですか?
最近、無性にお刺身が食べたくなる時があって。
― お刺身……!
お寿司やお刺身を食べる時は、よく日本酒と合わせるんです。そこから日本酒についていろいろ調べていたんですけど、「日本酒、深!」って思って。なのでこれから、僕の中で日本酒が流行る可能性があります。
― お酒って歴史も興味深いですよね。
以前、少しお酒の勉強をしていたんですけど、ウイスキーもワインもすごく深いんです。最近、ソムリエの資格を取った方とワイン飲む機会があって、ワインの歴史について教えていただきながら、改めてお酒って面白いなと思いました。結局お酒のことですね(笑)。
― 気になったことは、探求するタイプ?
そうですね。たとえば、お寿司やお刺身だったら日本酒、イタリアンならワイン、という感じで、お酒と食の組み合わせを学んだりして。やっぱり好きなことって、ある程度知識があった方が楽しめると思うんです。
Profile _ YU(ユー)
1995年1月3日生まれ、愛知県出身。大学進学を機に、台湾へ移住し、2018年に台湾の芸能事務所の研修生となり、語学・芝居・音楽を学び、2021年放送の「We Best Love 永遠の1位」「We Best Love 2位の反撃」にて、ジョウ・シューイー(周書逸)役を務め、初主演でドラマデビュー。同作の挿入歌も担当し、ミュージシャンとしても活動している。2021年8月から日本での活動も開始。
Instagram X
jacket ¥59,400・pants ¥36,300 / MASU (MASU 03-6419-7028), earrings ¥20,900 / MIRAH (STUDIO FABWORK 03-6438-9575), shoes ¥69,000 / both (both tokyo 03-6712-6466), tank top / Stylist’s own
Information
映画『みーんな、宇宙人。』
2024年6月7日(金)より全国ロードショー
出演:兵頭功海、菊地姫奈、西垣匠、三原羽衣、草川拓弥、YU、関本巧文、詩歩、冬由、儀間咲彩、佐々木穂高、栗山かほり、麿赤兒 ほか
監督・脚本:宇賀那健一
プロデューサー:戸川貴詞(NYLON JAPAN編集長)
©みーんな、宇宙人。
- Photography : Shunto Sato
- Styling : Yoko Irie(SIGNO)
- Hair&Make-up : KATO(TRON)
- Text : Sayaka Yabe
- Edit : Yusuke Takayama(QUI)