髙石あかり × 伊澤彩織 – 日常と非日常
シリーズ第3弾となる映画『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』の公開を控え、ドラマ『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』も放送中と、いま大きな注目を集める “ちさまひ”の魅力に迫った。
世界が認めたアクション映画
― お2人がW主演を務める映画『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』の公開に先立ち、7月にはニューヨーク・アジアン映画祭で、最も優れたアクション映画に贈られる「ダニエル・A・クラフト賞」を日本映画として初受賞されました。
髙石あかり(以下、髙石):1位なんですか?
― 1位ですね。おめでとうございます。
髙石:えー、ちょっと待って!
伊澤彩織(以下、伊澤):信じられないですね。恐れ多いなあ。
髙石:伊澤さんは謙虚なんだよな、本当に(笑)。
― 今回、ニューヨークの映画祭での受賞となりましたが、これから海外作品にもどんどん挑戦していきたいという思いもあるのでは?
伊澤:アクションそのものが非言語コミュニケーションなので、言語が通じなくてもパッションで通じ合えるところもあって。だから海外の人にもたくさん観てもらいたいし、自分も海外の人たちとやってみたいという気持ちはあります。
― 今回の受賞が日本映画として初ということは、日本のアクション映画がアジアレベル、世界レベルで認められた第一歩とも捉えられますよね。
髙石:(アクション監督の)園村(健介)さんの力だね。
伊澤:世界に見つかってしまった。
髙石:やばいですね。
― 園村さんのすごさというのは、どういった部分に感じますか?
伊澤:リズム感と空間の使い方が独特で、複雑な構成だけど動きはシンプル。
髙石:泥臭さもありながら、ポップな笑いも起こるアクションの組み立て方の幅が広すぎて。アクションの中でも、日常と非日常のギャップが感じられるんですよね。
伊澤:1つのアクションシーンの中で起こる感情の変化まで考えられていて、物語を動きに落とし込むような感覚があります。
髙石:確かに思考が見える。まひろはこうやって銃を取りに行こうとしたけど無理だったからこう立ち回ったんだなとか。
伊澤:一つひとつの動きに全部意味があって、整合性が取れていながら普通の動きじゃ満足せず、おもしろさを足してくれているんですよね。
― アクションシーンの撮影で、園村さんからよく言われることはありますか?
髙石:「殺しに行け」と。だから撮影が始まる前に2人で「殺す、殺す、殺す」と奮い立たせて、って書けないかもしれないけど(笑)。
伊澤:私は「アイレベル、アイレベル」ってよく言われる。
髙石:アイレベル?
伊澤:アイレベル、目線の高さをちょっと下げると股関節が緩む。
髙石:へー。
伊澤:股関節の動き方とか、立ち回りの移動とか、個々に考えていると頭がぐちゃぐちゃになっていくから、そういう時は目線のことしか考えない。
髙石:中指を意識しろっていうのと同じですよね。中指を意識したら全部がつながってくるからって。でも『2』のときは確か中指だったのに、途中から薬指に変わったような。
伊澤:園村さんは身体の研究を毎年毎年アップデートしている人だから。中指を意識するときと薬指を意識するときで本当にわずかな違いがあって、それが大きな結果につながる。だから、大キープも出る。
― 大キープ?
髙石:OKなんだけど、奇跡が起こるかもしれないからもう1回やろうというときが、大キープ。
伊澤:キープがあるからリラックスしてもう1回全力でって思えるから、意外といいのが出たりする。大キープ好きなんだよな。
みんな限界を超えていた
― 本作でとくに大変だったシーンはありますか?
伊澤:私はアクションが『2』より3倍ぐらい増えていて、アクション自体のテーマもガラッと変わったので、自分にできるんだろうかという不安はありました。
とくに終盤で“ちさまひ”が1つの標的に向かって全力で戦うのはすごく貴重でしたし、やりたかったことだったので、それができたのはすごくうれしかったです。だけど、やっぱり大変でしたね。
― すごい戦いでした。
伊澤:そこにいる全員が殺しのプロだからこそ、お互いなにをしようとしているかがわかるので安易に手を出せない。私はその数秒がものすごく好きで。
髙石:でもめっちゃ高度で。
伊澤:ドキドキしたね。接触がないのにすごい緊張感があって。私、練習のときからドキドキしてた。
髙石:私は緊張感がないと近づきすぎちゃうから、「今の殺されてるよ」みたいな(笑)。その絶妙な距離感が難しかったですね。
― 史上最強の敵、冬村かえでを演じたのは池松壮亮さん。やっぱり苦労されていましたか?
伊澤:だいぶ身体に負担をかけさせてしまったと思います。ラストファイトの撮影は12時間ぐらいぶっ続けで、その前日も戦っていて。どうやって乗り切ったんだろうと思うぐらい、みんな限界を超えていたと思います。
髙石:序盤でアクションシーンを撮り終えたんじゃないかというぐらいの密度でした。
伊澤:3日目ぐらいにオープニングファイトを撮り終えて、「1本映画撮ったわ」って思ってたもん。
髙石:伊澤さんの苦労を一番近くで見てきましたが、そんなの関係なく、試写を観たときになんておもしろいんだって。みんなに早く観てほしいって強く思いました。
伊澤:オープニングファイトのあとのあかりちゃん、本当にすごいんですよ。CGだと思うぐらいの奇跡の涙。段取りのときから結構泣いてたよね。
髙石:髙石あかりが泣いているのか、ちさとが泣いているのかわからないぐらい泣いちゃって。監督に「泣いていいんですか?」って聞きに行ったんです。
そしたら、監督ですらちさとがこの場で泣いていいのかどうかわからないと。わからないままやりました。
― 3作目ということもあって、役と自分がより近くなってきているんでしょうね。
伊澤:ちょうど昨日も話していたんですけど、『1』『2』『3』、ドラマとやっていくうちに2人とも人格形成して、それをスイッチできるようになったと思う瞬間もあって。
髙石:人に見せていない部分も伊澤さんにはだいぶ見せてきて、お互いにそういう時間をちゃんと重ねてきているなというのは深く感じます。
どんなに悪業を働いてもかまわない
― ちさととまひろは見た目のバランスもいいですよね。金髪ショートと黒髪ロングって、すごくキャッチーで。もともとお2人がそういうヘアスタイルだったんですか?
伊澤:いえ、『ベイビーわるきゅーれ』が作られるきっかけになった『ある用務員』という映画に出演する際に、阪元(裕吾)監督から金髪ショートにしてほしいと言われて。それから年に1回金髪ショート人生が始まりました。
今は金髪で認識されるようになってきたので、金髪じゃないときは結構「誰?」って言われることが……。
髙石:私はたぶん黒髪だったので、そのままで。ちょうど前髪もありとなしで、対照的な見た目で自分もすごく好きですね。
― お2人は何年間も一緒に活動されていますが、実際に仲良しなんですか?
伊澤:ビジネスだと思われてる(笑)。
髙石:家に行ったこともありますよ。でも友達を超えてます。
伊澤:家族でもないし、カテゴライズされないんだよね。なんでも受け入れてくれるんじゃないかと思っているので、仲良しです!
髙石:だってこの前、伊澤さんが言ってくれたのが、私がどんなに悪業を働いたとしても……
伊澤:全然かまわない。
髙石:お互いにそう思っています。
― ちさととまひろと一緒じゃないですか。
髙石:一緒ですね。
伊澤:あかりちゃんは私の安定剤です。
― 最後にあらためて、お2人が考える『ベイビーわるきゅーれ』の魅力を教えてください。
髙石:やっぱりちさととまひろのキャラクター性ですね。ポップなアニメっぽい部分もすごく観やすいなと思いますし、日常とアクションのギャップを楽しんでほしいです。
伊澤:今回の『3』で、日常を好きでいられることが一番うれしいということを強く感じられました。自分の日常も“ちさまひ”の日常も、より愛おしく思えるというか。みんな日常を愛そうねというところが見どころです。
Profile _ 髙石あかり(たかいし・あかり)
2002年12月19日生まれ、宮崎県出身。2019年に女優活動を本格化。その後も映画をはじめ、数々のテレビドラマへの出演を重ねている。2021年の映画初主演作『ベイビーわるきゅーれ』(阪元裕吾監督)が大ヒット。2023年には、『わたしの幸せな結婚』(塚原あゆ子監督)、『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』(阪元裕吾監督)などでの演技が評価され第15回TAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞。近年の主な作品は『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』(小林啓一監督)、声優として参加した『きみの色』(山田尚子監督)がある。映画『スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナルハッキングゲーム』(11月1日/中田秀夫監督)、映画『私にふさわしいホテル』(12月27日/堤幸彦監督)の公開が控えている。
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jacket ¥48,400・skirt ¥44,000・tights ¥7,150・necklace ¥25,300 / ODAHKA (S&T 03-4530-3241), boots ¥33,000 / ALM. (https://almofficial.com), ear cuff ¥23,100・ring on right index finger ¥19,800 / DELPHINE CHARLOTTE PARMENTIER (H.P.FRANCE hpfrance@hrgrp.com), ring on right middle finger ¥22,000 / NUUK (grapevine by k3 03-3464-5354)
Profile _ 伊澤彩織(いざわ・さおり)
1994年2月16日生まれ、埼玉県出身。日本大学芸術学部映画学科に入学後、映画『RE:BORN』(17/下村勇二監督)の研修生オーディションに合格し、アクショントレーニングを開始。アクション部として『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』(共に 21/大友啓史監督)、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(23/チャド・スタエルスキ監督)などでスタントを務める他、ゲーム『祇:Path of the goddess』(24)ではアクションコーディネーターを務めるなど多方面で活動中。『ある用務員』(21/阪元裕吾監督)で俳優デビューし、『ベイビーわるきゅーれ』(21)で第31回日本映画批評家大賞新人女優賞(小森和子賞)を受賞。『ベイビーわるきゅーれ2 ベイビー』(23/共に阪元裕吾監督)や『オカムロさん』(22/松野友喜人監督)、『ネメシス 黄金螺旋の謎』(23/入江悠監督)、『almostpeople』【長女のはなし】(23/石井岳龍監督)などに出演している。
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cardigan ¥64,900・bustier ¥143,000・skirt ¥52,800・necklace ¥31,900 / ODAHKA (S&T 03-4530-3241), shoes ¥27,500 / ALM. (https://almofficial.com), ear cuff ¥6,380・bangle ¥9,790 / HER NOISE (https://www.instagram.com/hernoise/), ring on right index finger[bottom] ¥13,700 / SERGE THORAVAL (H.P.FRANCE hpfrance@hrgrp.com), ring on left hand middle finger ¥19,250 / NUUK (grapevine by k3 03-3464-5354), Other stylist’s own
Information
映画『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』
2024年9月27日(金)より、新宿ピカデリーほか全国公開。
出演:髙石あかり、伊澤彩織、水石亜飛夢、中井友望、飛永 翼(ラバーガール)、大谷主水、かいばしら、カルマ、Mr.バニー、前田敦子、池松壮亮
監督・脚本:阪元裕吾
アクション監督:園村健介
音楽:SUPA LOVE
主題歌:女王蜂「狂詩曲」(Sony Music Labels Inc.)
挿入歌:忘れらんねえよwithちさと&まひろ(fromベイビーわるきゅーれ)「そっか、自由か。」(Bandwagon/UNIVERSAL MUSIC)
©2024「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」製作委員会
- Photography : Yuka Ono
- Styling : Kenshi Kaneda
- Hair&Make-up : Aya Sumimoto
- Art Director : Kazuaki Hayashi(QUI)
- Edit&Text : Yusuke Takayama(QUI)