QUI

FILM

馬場ふみか – 大切なのは、答えよりも、考えること

Mar 1, 2023
俳優・モデルとして活躍する馬場ふみかの最新出演映画『ひとりぼっちじゃない』。King Gnu・井口理が主役のススメを演じたことでも話題を集める本作で彼女が演じる宮子は、捉えどころのない魅力でススメの心を翻弄する。他のだれかと向き合い、理解しようとすることは、こんなにももどかしく、怖くて、苦しい。

馬場ふみか – 大切なのは、答えよりも、考えること

Mar 1, 2023 - FILM
俳優・モデルとして活躍する馬場ふみかの最新出演映画『ひとりぼっちじゃない』。King Gnu・井口理が主役のススメを演じたことでも話題を集める本作で彼女が演じる宮子は、捉えどころのない魅力でススメの心を翻弄する。他のだれかと向き合い、理解しようとすることは、こんなにももどかしく、怖くて、苦しい。

ホラーとは違う人間の怖さがある

― 昨年出演された映画『恋は光』に続いて、本作『ひとりぼっちじゃない』も恋愛をテーマにした作品となります。恋愛映画の面白さって、どんなところにあると思いますか?

友達の恋愛の話を聞くのってめちゃくちゃ面白いじゃないですか。恋愛映画は、それに近いものがあると思います。

― 完成した作品をご覧になっていかがでしたか?

予告編は恋愛映画というよりもホラー映画のようでしたけど、ホラーとはまた違う人間の怖さがあるというか。初めて観たときは「なんという映画なんだ……!」と感じました。あと、自分が現場で見ていなかったときの井口(理)さん演じるススメが少し怖かったです(笑)。

― 観終えたあと、会話や行動についてあれこれ考えてしまう不思議な作品でした。原作や脚本を読まれた時から、あの空気感は浮かび上がっていたんですか?

いつも原作や脚本を読む時は、自分の頭のなかで映像化する癖があるんですけど、今回は全然違いました。理解が難しかったり、どうやって撮るんだろうという疑問がたくさんあったり。実際に撮影が始まってから、「こうなるんだ」と驚きながら進んでいきました。

― 馬場さんが演じた宮子という役は、どのように捉えていきましたか?

いまだに思っているんですけど、“宮子は本当に存在するんだろうか”って。

― おお。

幻かな?とか、妄想かな?とか。宮子はススメの頭のなかに住んでいる存在なのかな?って思う部分がすごくたくさんありました。

― どんなに近づいても捉えられない儚さがありました。

(伊藤ちひろ)監督からは、「とにかく宮子はゆっくり喋る人で、口が常にちょっと開いている」と言われていて。ヌケ感のある顔というか。逆に、ようちゃん(河合優実さん演じる蓉子)は、少しムッとしていて口がずっと閉じているイメージなんですよね。

― その対比、面白いですね。

これまでは、ゆっくり喋る役って演じてこなかったんです。どちらかというと、まくし立てるように喋ったり、べらべら喋ったりする役が多くて。なので、日々ゆっくり喋ることを試みていました。

― 話すスピードって、意識しないとわからないですよね。

自分がちょっとゆっくり喋っていると思っていても、たぶん他の人からしたら普通なので。

 

オープンだけど、その先が閉じている

― 井口さん演じるススメは、宮子に狂おしいほど惹かれていきますが、彼女の魅力はどんなところにあると思いますか?

始めは宮子のことが全然わからなかったんです。優しくてふんわりとした雰囲気で、ベージュの洋服とかを着てフェミニンな感じなんですけど、実はそれだけではない一面もあって。

― そこなんですよね。

相手を受け入れているようで、受け入れてないというか。

― はい。

そういう部分が宮子の中にあることは感じていたんですけど、監督が思い描いていた宮子のイメージはまた少し違うところもあったんです。今回は本読みや衣装合わせの時間がたっぷりあったので、監督と話を重ねていくなかで宮子という人物を感じとっていきました。

― 監督の考える宮子像というのは?

オープンなんだけど、その先が閉じているというか。入れるところはたくさんあるんだけど、奥の方はすごく閉まっているみたいな感じ。

私にもたぶんそういうところはあると思っていて。壁をつくるタイプで、すぐに人と仲良くなることは得意ではないので。

― 壁の開き具合やタイミングって難しいですよね。環境や相手にもよりますし。

もちろん大人なので、当たり障り無く人に接することはできますけど(笑)。一緒に仕事をしたり共演したりして、すごくすてきだなと思っても、それ以上の仲になることはなかなか無いですね。なので、プライベートで会う人はすごく限られています。

― 今回共演された井口さんとの関係性は?

ずっとKing Gnuのメンバーとして見ていましたし、ライブにも行っていたので以前から知っている存在ではありました。共通の友人もいてお会いしたこともあったんですけど、あまり喋ったことはなかったです。今回の現場では役者としての井口さんで、ステージのうえに立って歌っているKing Gnuの井口さんとはまた感じが違いました。

― 井口さんは本作へのコメントで「ススメとの出会いが自分にもたらしたものはとても大きかった」と書かれていたので、この作品に対して深い思い入れがあったんだろうなと感じていました。

すごく集中力の高い方でしたね。気付いたら、すっとススメになっている。一緒に撮影するシーンが多かったので、撮影の合間は当たり障りのない世間話もしましたけど、撮影が始まるときにはすごく集中されているなと感じました。

― 井口さんとススメがシンクロするような?

映画のなかで、ススメが不思議な動きや表情をするときがあるんですけど、「今、井口さんですよね?」と思う瞬間が時々あって。ススメを井口さんが演じている意味合いを、自然に受け止められました。

― ススメと宮子の関係についてはどう感じましたか?本作の宣伝コピーには「純愛と狂気の物語」とありましたが。

広い視野で見てみると、こういうこともあるんじゃないかな……って思いませんか(笑)?受け入れているようで受け入れていない人、そんな人に寄っていく人、そして関係性が変わって離れていく人もいますよね。

― なるほど。

ただ、宮子の部屋の中だけで特別な時間が流れていたのだなあと。

 

余白を残して、役と向き合う

― 舞台を観に行ったあとに、ススメと宮子の階段での会話が印象的でした。ふたりの考え方や価値観が見えるシーンというか。

あのシーンは映画の中でも数少ないというか、唯一と言ってもいいほど、宮子が感情的になって自分の思っていることを話すシーンなんです。いつもは誰かが怒っていても、「うん、うん」って、聞いているんだか聞いていないんだか、みたいな感じなんですけど。

― 確かに。宮子の意志が感じられた気がしました。

“宮子”が出ているシーンだからこそ、撮影も大変で。監督の中では明確に画が見えていて、そこへのこだわりがあったんだと思います。

― その時に宮子が言っていた「面白いとは違うけど、考えちゃった」という言葉が印象的だったんです。「考えてしまう」ことって「面白い」よりも奥にある感じがして。

わからないから、考えるんですよね。答えが見つかったからといって、それが正解とは限らないですし。きっと、答えを見つけることよりも、考えることが大切なんだろうなと思っています。私も考えることが仕事ですし、これは何だろう?と考えることが常なので。

― さまざまな作品で役と向き合うときも、考えることがたくさんありそうです。

自分なりに「こういうことかな?」と考えて、とりあえずやってみることが多いですね。違っていたら指摘をいただくので、その都度修正していきます。「絶対にこれしかできない」という準備はせず、少し余白を残しておくようにしています。

もちろんお芝居は、相手とのやり取りもあるので、相手の動きによっても変わりますし。意外なボールが飛んでくることもあるので、その時々で対応できるようでありたいなと思っています。

 

 

 

Profile _ 馬場ふみか(ばば・ふみか)
1995年生まれ、新潟県出身。2014年に映画「パズル」で女優デビュー。2015年に「仮面ライダードライブ」で敵女幹部・メディック演じて話題となり、「黒い暴動♡」で映画初主演を務める。主な出演作に、映画「劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」、「恋は光」、「AWAKE」、ドラマ初主演となった「深夜のダメ恋図鑑」、「3Bの恋人」、2022年「やんごとなき一族」。主演ドラマ「夫を社会的に抹殺する5つの方法」が放送中!女優業に加え、女性ファッション誌『non-no』専属モデル等、幅広く活動の場を広げる。
Instagram Twitter

jumpsuit・shoes / FETICO (THE WALL SHOWROOM 03-5774-4001), earrings / Charlotte Chesnais(EDSTRÖM OFFICE 03-6427-5901)

 


 

Information

映画『ひとりぼっちじゃない』

2023年3月10日(金)公開

出演:井口 理 (King Gnu)、馬場ふみか、河合優実
監督・脚本:伊藤ちひろ
企画・プロデュース:行定 勲
原作:伊藤ちひろ「ひとりぼっちじゃない」(KADOKAWA刊)

製作:「ひとりぼっちじゃない」製作委員会

映画『ひとりぼっちじゃない』公式サイト

© 2023「ひとりぼっちじゃない」製作委員会

  • Photography : Keiichiro Nakajima(SIGNO)
  • Styling : Aya Ishida
  • Hair&Make-up : Conomi Kitahara
  • Art Director : Kazuaki Hayashi(QUI)
  • Text : Sayaka Yabe
  • Edit : Yusuke Takayama(QUI)