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前田敦子 × 伊藤万理華 – 年齢もジャンルも超えてゆく

Oct 15, 2022
映画、ドラマ、舞台とボーダレスに活躍し、いま多くの監督や演出家から熱い視線が注がれる女優、前田敦子と伊藤万理華。映画『もっと超越した所へ。』で初共演を果たした二人が向き合う、演じること、恋すること。

前田敦子 × 伊藤万理華 – 年齢もジャンルも超えてゆく

Oct 15, 2022 - FILM
映画、ドラマ、舞台とボーダレスに活躍し、いま多くの監督や演出家から熱い視線が注がれる女優、前田敦子と伊藤万理華。映画『もっと超越した所へ。』で初共演を果たした二人が向き合う、演じること、恋すること。

二人だけの世界を大放出している(前田)

― 映画『もっと超越した所へ。』、とても面白かったです。展開や編集に引き込まれて、不思議なエネルギーをもらえました。

前田敦子(以下、前田):ありがとうございます。根本(宗子)さんが書く作品は本当にパワフルで、脚本を読むだけで気分が上がります。映画は、根本さんがこれまで作りあげてきた作品や繋がりが一気に開放される感じに仕上がっていて、根本ファンとしても嬉しかったですね。

伊藤万理華(以下、伊藤):そもそも舞台作品の映像化は難しいと思っていたので少し不安もありました。でも現場で撮影セットのすごいクオリティに感動しましたし、そのセットで演じられたことが嬉しかったです。作品の完成が楽しみでした。

― おふたりは作品で共演するのは今回が初めてですよね。お互いのお芝居を見ていかがでしたか?

前田:(伊藤さん演じる)美和は一番テンションが高い役だったので、終始かわいかったです。

伊藤:(前田さん演じる)真知子とあっちゃんは、どこか繋がっている部分があるように感じました。その繋がりが終盤の爆発力を生んでいたような気がして。あと、やっぱり私はあっちゃんの声が好きだなと。

前田:えー、嬉しい。

伊藤:あっちゃんの声でセリフを言われると、よりえぐられるというか言葉に力を感じました。美和が言って欲しかった言葉を真知子が全部まとめて言ってくれた!みたいな。

― 確かに。真知子の言葉には説得力がありました。

前田:よかったです。今回、自分の出ている作品を観るのがちょっと恥ずかしかったので。

伊藤:えー!

前田:この作品は、それぞれのカップルのパーソナルなところを描いているじゃないですか。他の人たちには絶対に見られることがない、二人だけの世界を大放出しているので、少なからず自分自身が持っているものも出てしまう……。

伊藤:……出ちゃいますね。

前田:だから何だかくすぐったかったんです。

伊藤:こうやって言ってしまうよねと、身に覚えがあるような。

前田:ネコを被っていない本性の部分が……ね(笑)。

― 役に乗っかって、表れてしまうと。

前田:そうだと思います。

― 役を演じるうえで、どんな部分を大事にしていましたか?

前田:私が演じた真知子という役は、舞台では根本さんが演じられていたんです。根本さんとはいろいろなお話をする関係で、普段の根本さんのこともなんとなくわかるからなのか、脚本を読んだときに真知子という役がすっと腑に落ちたんです。どちらかというと自分自身ではなく、「たぶん根本さんってこうだよな」という部分を見つけながら演じていきました。

― 根本さんとの関係性があったからこそ、あの真知子が生まれたんですね。

前田:真知子が恋愛で自分を抑え込んでしまうのは根本さんの特徴かなと。私はどちらかというと、「ちょっといい?」みたいな感じで淡々と話してしまうタイプなので(笑)。

伊藤:わかる気がします(笑)。

前田:でも本当に根本さんって、“あるある”を描くのが上手ですよね。女性の心の奥にある「どうしたらいいかわからない」というところをちゃんと言葉にしてくれる方なので。演じていて気持ちが良かったです。

― 伊藤さんは、美和を演じるうえで大事にしたところは?

伊藤:私はレイジくん(オカモトレイジ)が演じていた泰造に……。

前田:本当に恋してたでしょ?

伊藤:好きになってしまうくらいのめり込んで、撮影期間は本当に泰ちゃんラブという感じでした(笑)。レイジくんとは以前から友人だったのですが、今回は恋人役なのでより仲を深めるためにたくさん喋るようにして役とのテンションを合わせていきました。

― オカモトレイジさんとの共演はいかがでしたか?

伊藤:レイジくんは今回が本格的な演技初挑戦で。この大規模な現場に入っていくのはめちゃくちゃプレッシャーだったと思います。でも、レイジくん自身が泰造の共通点を見つけていき、いつの間にか自然に泰造としてその場にいたという印象がありました。

― 泰造は本当に魅力のあるキャラクターでしたよね。

伊藤:あと、美和にプレゼントしたアイテムもレイジくんの案でした。

前田:レイジくん、「みんな作りませんか?いつでも言ってください」って言ってたもんね(笑)。

伊藤:泰造の役がレイジくんでなかったらあのアイテムになっていないので、そういう意味でもこの映画のアクセントになっている存在だと思います。

― プレゼントを受け取るシーンの美和、とてもかわいかったです。ニコニコしている表情だけで、泰造のことが本当に好きなんだなって。

前田:かわいかったですよね。

伊藤:本当に、ずっと笑っていました。

― 前田さんは、彼氏の怜人役の菊池風磨さんとご一緒していかがでしたか?

前田:風磨くんが怜人を演じたのは、重要なことでした。怜人は、風磨くんじゃなかったらきっとヤバい人になっていましたし、風磨くんだからこそ憎めない怜人を演じられていたんだなと思います。

伊藤:誰が演じてもいいという役ではなかったですよね。

前田:「ヒモだけど……かわいいからもう良いか!」ってみんなが思えてしまうような怜人役、本当に素晴らしかったです。もともとの彼の持ち味が出ていると思うんですよね。現場でもずっとハッピーで楽しそうだったので。だからといってぶっとんでいるわけでもなく、みんなに「良い感じのアガっている部分を届けてくれる人」というか。だからバラエティ番組などでも活躍されているんだろうなって思いました。

本質的な部分で怜人に近いものがあるのかもしれないです。一緒にいると、「私なんでこんな細かいことで悩んでるんだろう?」って、自分が小さなことを気にしているのがバカバカしくなってくるんです。

 

 

もっとポジティブに恋愛を楽しめるようになるといい(伊藤)

― 『もっと超越した所へ。』では恋愛がテーマのひとつとなっていますが、今のおふたりにとって恋愛とはどのようなものですか?

前田:今は恋愛に関してすごく客観的になってしまっているんですけど、恋愛ができるということは元気な証拠で、それプラス両想いになれるということは奇跡的なことだと思います。恋愛は一人で始められるものでも無いですし、向かい合える人がいるということは幸せなことですよね。

伊藤:……深すぎます。

前田:若い頃ってすぐに誰かを好きになってしまうこともあると思うんですけど、それってすごく素敵なことだなと。

伊藤:そうですね。頑なに恋愛をしない、と決めなくてもいい。好きになったら好きでいいんだって。

前田:好きの形はいろいろあっていいからね。ただ思っているだけでも素敵なことですし。でも、自分の「好き」という感情に対して「これは気のせいかも」って思う必要はないんじゃないかな。恋愛をするにはパワーが必要だけど、すごく人間らしいというか、生き物らしさでもあると思うので。

伊藤:確かに。恋愛はすごく体力を使うし何でこんなことでうじうじ悩んだりするんだろうと思うけれど、その分成長できるというか。

前田:人間的に成長できるものだよね。どんなに傷ついても、だいたいのことは乗り越えられるじゃないですか。

伊藤:なんとかなりますもんね、結局。

前田:だったらいっぱい経験した方がいいなって思います。終わった恋愛を笑い話にできるのも素敵なことですし。

伊藤:いろいろなことがあったから、今の出会いがあるわけで。みんなもっとポジティブに恋愛を楽しめたらいいですね。

― 本作を観たら、恋愛を楽しむエネルギーを貰える気がします。ちなみにおふたりは普段から恋愛について話したりするんですか?

前田:するよね。

伊藤:めちゃめちゃ相談にのってもらっていました。「思っていることは言った方がいいよ」とアドバイスを頂いたり。私は遠慮してしまいがちなので。

前田:「もったいないぞー!」って女子たちが声をあげて(笑)。

伊藤:気持ちを伝えることはどこか恥ずかしさもあると思うのですが、結果どんな形になったとしても伝えてよかったと思えるはず。だからやっぱり相手に気持ちを伝えることは大事です。

― おふたりが恋愛をするうえで、譲れない部分はなんですか?

前田:嘘が一番良くないと思います。本当にいらないですね。あとは、一緒にいるときに、その場に友達を呼べる人がいいです。ずっと二人きりでいないといけないのって結構しんどいじゃないですか。お互いに外の世界との関わりも必要だし、家に帰ってもお互いに友達を呼び合える人であってほしいです。

伊藤:わかります、わかります。

前田:「友達呼んでもいい?」って聞いて、不機嫌になられたら困るよね。

伊藤:嫌ですね。友達は共有したいかも。

― おふたりとも交友関係が広く、好きなこともたくさんあるイメージなので、なるほどと思いました。

前田:好きなことがたくさんあるのは万理華だよね。

伊藤:私ですね。

前田:石を並べてますから。

伊藤:並べてますけど(笑)。

― 伊藤さんはいかがですか?

伊藤:お互い自分の空間を大事にできることでしょうか。全部共有はしないけれど、その空間を許してほしいと思います。

前田:嫌がらないで欲しいんだよね?

伊藤:そうです。別に何も言わなくていいから、嫌な顔はしないで欲しいなと。

― その感じ、どこか美和っぽいですね。

伊藤:美和っぽいですかね?その先へ行きたいんですけど……。

前田:まだ爆発してないんだよね?

伊藤:いつか爆発したいです(笑)。

前田:今はまだうちに秘めているものがたくさんあるんだと思います(笑)。

― では最後の質問です。おふたりが今「超越していきたいこと」は何ですか?

前田:年齢を感じないようになりたいです。体力的にも30歳の壁を感じているからこそ、そこを「うんとこしょ」って乗り越えて、いつまでも気持ちは元気で明るいお母さんでいたいです。

― 素敵です。伊藤さんは?

伊藤:いろいろなことに興味があるのでジャンルを超えていきたいです。今もいろいろなことに挑戦させていただいているのですが、ひとつに凝り固まるのではなく今後は制作の仕事なども挑戦したいと思っています。

前田:今って何をやっても良い時代だから、それで良いと思う!

伊藤:何をやってもいい人になりたいです。

前田:もう、ちょっとなってるから大丈夫だよ。

伊藤:ありがとうございます!

 

 

Profile _

左:前田敦子(まえだ・あつこ)
1991年7月10日生まれ、千葉県出身。AKB48のメンバーとして活躍し、2012年に卒業。女優として、市川準監督の『あしたの私のつくり方』(07)で映画デビュー。11年、映画『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(田中誠監督)で初主演を飾る。近年の主な出演作に、『町田くんの世界』(19/石井裕也監督)、ロカルノ国際映画祭で上映された主演映画『旅のおわり世界のはじまり』(19/黒沢清監督)、『葬式の名人』(19/樋口尚文監督)、『くれなずめ』(21/松居大悟監督)、『DIVOC-12「睡眠倶楽部のすすめ」』(21/加藤拓人監督)、舞台「NODA・MAP第24回公演『フェイクスピア』」(21/野田秀樹演出)、舞台「パンドラの鐘」(22/杉原邦生演出)、ミュージカル「夜の女たち」(22/長塚圭史演出)などがある。また、WOWOWで放送・配信をする「アクターズ・ショート・フィルム2」にて短編映画の監督を務める。公開待機作にAmazon originalシリーズ『モダンラブ・東京』(22/平柳敦子監督)、映画『そばかす』(22/玉田真也監督)、『そして僕は途方に暮れる』(23/三浦大輔監督)、『あつい胸さわぎ』(23/まつむらしんご監督)など。

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右:伊藤万理華(いとう・まりか)
1996年2月20日生まれ、大阪府出身。2011年から乃木坂46一期生メンバーとして活動し、17年に同グループを卒業。現在は俳優としてドラマ、映画、舞台に出演する一方、PARCO展「伊藤万理華の脳内博覧会」(17)、「HOMESICK」(20)を開催するなど、クリエイターとしての才能を発揮。映画『映画 賭ケグルイ』(19/英勉監督)やTVドラマ「潤一」(19/KTV)、舞台『月刊「根本宗子」第17号「今、出来る、精一杯。」』、『月刊「根本宗子」第18号「もっと大いなる愛へ」』。21年は、地上波連続ドラマ初主演を務めた「お耳に合いましたら。」(TX)に出演。初主演映画『サマーフィルムにのって』(21/松本壮史監督)では国内映画賞のトップバッターTAMA 映画賞にて最優秀新進女優賞を受賞、第31回日本映画批評家大賞にて新人女優賞を受賞するなど、多岐に渡って活動中。


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Information

映画『もっと超越した所へ。』

10月14日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

出演:前田敦子、菊池風磨、伊藤万理華、オカモトレイジ・黒川芽以、三浦貴大、趣里、千葉雄大
監督:山岸聖太
原作:月刊「根本宗子」第10号『もっと超越した所へ。』
脚本:根本宗子
音楽:王舟
主題歌:aiko 「果てしない二人」(ポニーキャニオン)
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ

『もっと超越した所へ。』公式サイト

©2022『もっと超越した所へ。』製作委員会

  • Photography : Yuki Yamaguchi(W)
  • Styling for Atsuko Maeda : Yusuke Arimoto(NANAKAINOURA)
  • Hair&Make-up for Atsuko Maeda : Riho Takahashi(HappyStar)
  • Styling for Marika Ito : Takeru Sakai
  • Hair&Make-up for Marika Ito : Miki Tanaka
  • Art Director : Kazuaki Hayashi(QUI / STUDIO UNI)
  • Text : Sayaka Yabe
  • Edit : Yusuke Takayama(QUI / STUDIO UNI)