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三浦獠太 – 人間だからこそできる表現を

Jun 18, 2025
映画『フェイクアウト!』で初主演を果たした三浦獠太。
画期的なAIプログラムをめぐる騙し合いが交錯するスリリングな展開に翻弄される主人公・高島誠人を演じきった三浦に訊く、AI時代における表現者としての信念、そして俳優としての現在地について。

三浦獠太 – 人間だからこそできる表現を

Jun 18, 2025 - FILM
映画『フェイクアウト!』で初主演を果たした三浦獠太。
画期的なAIプログラムをめぐる騙し合いが交錯するスリリングな展開に翻弄される主人公・高島誠人を演じきった三浦に訊く、AI時代における表現者としての信念、そして俳優としての現在地について。

 

 

 

 

 

 

 

三浦獠太が生きてきた27年がにじみ出るように

― 映画『フェイクアウト!』、刺激的な作品でした。どんでん返しの連続で、何を喋ってもネタバレになってしまいそうなんですが、主演の三浦さんがまさかあんなふうに翻弄されていくとは……。

今回は主演といっても、主人公っぽくない感じだったので、(自身が演じた)誠人として物語の中に飛び込んで、渦の中に飲み込まれていくような意識でいました。

― 観ている側も一緒に飲み込まれていきました。本作に限らず、普段からお芝居で心がけていることはありますか?

作品によって現場の空気もまるで違うし、自分にとっては毎回が新しい役で新しいことをしているので、常に初めてやるような気持ちで取り組もうと思っています。俳優という仕事に慣れたり、「こうなろう」と型を決めたりすると、視野が狭くなってしまう気がするので。

でもその中で、自分がやる意味も出したい。三浦獠太が生きてきた27年がにじみ出てくると良いなと思っています。

― お芝居の中での自分らしさは、自然と現れてくるものでしょうか?

今まではなんとかこの作品で爪痕を残そうという意識が強く、それはそれで自分らしさだったとは思うんですけど、最近はその場で自然に出たものを撮られるほうが自分本来の人間味が出ているなという印象があって。

― 本作をはじめ、多くの作品で目覚ましい活躍を見せていますが、ご自身の現状はどう捉えていますか?

本当はもっと未来のことも考えていかなきゃいけないんですけど、自分としては今ある一つひとつの仕事に手一杯で。「飛躍の年ですね」と言っていただくこともありますが、まったくその意識がないんです。それこそすべての仕事が新しいので、始めたころからあまり変わらないですね。

― でも「慣れない」というのは大きな才能ですよね、きっと。

でも、自分の中で「ちょっとこなれちゃってるな」と思う瞬間もあって。その都度その都度、自分を戒めながら、常に新鮮な気持ちでやり続けたいなと思っています。

 

人と人が一緒に何かを創造することがすごく大事

― 本作ではあるAIプログラムをめぐる騙し合いが物語の軸となっていましたが、昨今、AIは映像業界でも多く取り入れられ、国内外で大きなイシューとなっています。「演じる」ということを大きく転換する可能性もありますが、三浦さんはAI技術に対して脅威を感じることはありますか?

特に脅威を感じることはないです。AIによって救われることもたくさんありますし。

僕は最近、チャップリンの映画にすごくハマっていて、その当時の作品でも新しい機械がどんどんできることで職を失う人の話があるんです。世の中が便利になることで人が失うものもたくさんあるけれど、それでも人は対応して生きてきた。だからこそ、人と人が一緒に何かを創造する、そういう根源的なことがすごく大事だと思うんです。

僕にとってはそれが映画やドラマで、そこには人が人である意味や、表現する可能性があるんじゃないかと感じています。

― AIにはない、それぞれの人から発せられるものがあると信じている?

はい。それに人と人が出会うことで、また新しい何かが生まれるじゃないですか。AIがどんなに発達しても人の心とは違うと思うので、脅威というよりはむしろ、「人だからこそできる表現をしたい」という自分のモチベーションにつながっています。

― 僕も勇気づけられます。ライターもAIに取って代わられそうな仕事なので

いやいや。インタビューもまさに人と人が創造するものですから。

 

エンターテインメントとして楽しく観てほしい

― 他のキャストの方と印象的なエピソードがあればシェアしていただけますか?

共演させていただいた皆さんは2日ずつぐらいしかご一緒できず、仲良くなる前に終わってしまったので、ちょっと寂しかったです。

その中でも(借金取りの根本圭司を演じた)NON STYLEの石田さんはものすごく気さくに話してくださいました。王道の取り立てというより、ちょっと怖めの親戚のおっちゃんみたいなテンションは石田さんのパーソナルな部分が反映されていたと思いますし、よりリアルにも感じました。お芝居の掛け合いもすごく楽しくて、印象に残っていますね。

― 堀江慶監督とはどんなやりとりを?

監督ともいろんなお話をさせていただいたんですけど、僕の意見を全部肯定してくれるんです。本当かなと思いながらやっていました(笑)。

もともとは違う現場で出会って、すごく意気投合したんです。だから監督と俳優というより、友達同士みたいに遠慮せずに言ってきてくださいという話はさせていただきました。

― 出会いは何の作品だったんですか?

『アオショー!』という映画で堀江さんがヘルプで来ていて。そこで仲良くなって、「いつか映画撮ろう」と言ってはいたんですけど、まさかの半年ぐらいで実現して。僕も信じられず、「本当にやるのか?」という戸惑いのほうが強かったです。

― その三浦さんと話をしたときには、堀江監督の頭の中にはこの作品があったんでしょうね。撮影はスムーズでしたか?

本当にスパンが短かったので、みんな目を血走らせながらやっていました。

― 夜のシーンが多いですよね。

はい。基本的に、朝日とともに帰宅していました(笑)。

― おつかれさまでした。これからご覧になる方に、作品の見どころを教えていただけますか?

細かいシーンについては何も言えない作品ですが、エンターテインメントとして、深く考えるよりは楽しく観てほしいという思いが一番強いです。

― 複雑といえば複雑な構成ですけど、難しいストーリーではないですよね。乗ってしまえば自動的に振り回されて楽しめる、ジェットコースター的な映画でした。

そうなんですよ。複雑に考えると混乱してしまう可能性があるので、細かいところは気にせず身を任せてほしいなと思います。

 

Profile _ 三浦獠太(みうら・りょうた)
1997年9月5日生まれ。東京都出身。ドラマ『グランメゾン東京』(2019年・TBS)で俳優デビュー後、ドラマ『東京貧困女子。―貧困なんて他人事だと思ってた―』(2023年・WOWOW)、NHK連続テレビ小説『ブギウギ』(2023年)、『オクラ〜迷宮入り事件捜査〜』(2024年)、『119エマージェンシーコール』(2025年)、大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(2025年)、『阿修羅のごとく』(2025年・Netflix)、映画『赤羽骨子のボディガード』(2024年)、『フロントライン』(2025年、公開中)、『アオショー!』(2025年9月公開予定)ほか出演多数。
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Information

映画『フェイクアウト!』

2025年6月20日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

出演:三浦獠太、浅川梨奈、矢柴俊博、久保田秀敏、呉城久美、田中優樹、葉月ひとみ、石田 明(NON STYLE)、永澤俊矢、菅田俊
監督:堀江慶
脚本:片山直樹

映画『フェイクアウト!』公式サイト

©️2025 Colossus Pictures LLC

  • Photography : Mamico Ando
  • Styling : Naoki Sakuyama
  • Hair&Make-up : Emiy
  • Text&Edit : Yusuke Takayama(QUI)

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