パリ・ファッションウィーク 2027年春夏メンズコレクションガイド — 夏を多角的に捉える視点 vol.3
※コレクション発表順
Maison Kitsuné/メゾン キツネ
<Maison Kitsuné>が、パリのHôtel de Rohanの中庭で、クリエイティブディレクターのアビゲイル・スマイリー=スミスによる2027年春夏コレクション「URBAN GLIDE」を発表した。真夏の都市を快適に過ごすワードローブを描き、「Protection」「Water」「Escape」の3テーマを軸に、都市と海辺を行き来するための機能性と軽やかさを組み立てた。軽量で通気性に優れたテクニカル素材や冷却機能を持つウェア、熱に反応して色が変化するウインドブレーカーとTriangle Toteに加え、水面の反射を落とし込んだプリントやジャカード、ゆとりのあるシルエットが登場し、<Snow Peak(スノーピーク)>、<ATP Atelier(エーティーピーアトリエ)>、<LONO(ロノ)>との協業もラインナップを広げた。東京の建設作業員の服やバリの「Desa Kitsuné」を手がかりに、暑さや強い日差しから身体を守りながら、都市の活動と束の間のエスケープを途切れなくつなぐ衣服のあり方を探った。
Maison Kitsuné 2027SS COLLECTION RUNWAY
TAAKK/ターク
<TAAKK>が、花と写真家アーヴィング・ペンへの関心を起点に、2027年春夏コレクション「The Ability of Discovery」を発表した。森川拓野は、見慣れたものの中に新たな表情を見出す視点を軸に据え、素材そのものが生み出す立体感や色彩の変化をコレクション全体で積み重ねた。精密なカットワークと同素材の刺繍を重ねた立体的なテキスタイル、織りや素材構成まで移り変わるグラデーション生地を用いたセットアップやコート、ドレープを描くナイロンのロングコート、ゆとりのあるレザーウェア、夕焼けを思わせる色彩のテーラードが並んだ。ジュエリーブランド<4℃ HOMME +(ヨンドシーオムプラス)>、レザーブランド<yuhaku(ユハク)>との協業も披露された。素材を装飾のための要素として扱うのではなく、織りや加工、色の移ろいそのものから新たな表情を引き出し、身近な風景や記憶を見つめ直す視点を衣服へ重ねた。
TAAKK 2027SS COLLECTION RUNWAY
SOSHIOTSUKI/ソウシオオツキ
<SOSHIOTSUKI>が、経験したことのないリゾートへの郷愁を着想源に、2027年春夏コレクション「The Persistence of Memory」を発表した。普段は厳格な父親が旅先の開放感からわずかに着こなしを崩す姿を思い描き、本来は着る人の癖や偶然によって生まれる着崩れを、服そのものの構造として設計した。片方だけ飛び出すシャツの襟、前が閉じきらないショーツ、そこからのぞくトランクスに加え、極端な段返りのラペルや内部に仕込んだ金属によって“S”字に湾曲するベルトとカラーステイ、乾いたベージュや褪色したサックスブルーの国産生地を採用。<ASICS SportStyle(アシックススポーツスタイル)>や<三陽山長(サンヨウヤマチョウ)>、<SANYOCOAT(サンヨーコート)>、<blackmeans(ブラックミーンズ)>、<KOTA OKUDA(コウタ オクダ)>との協業も発表した。サルバドール・ダリの作品に見られる、硬い物体が溶けるように見える逆説をパターンや内部構造によって衣服へ落とし込み、経験したことのない記憶に輪郭を与え、新たな記憶として身体に刻むことを試みた。
SOSHIOTSUKI 2027SS COLLECTION RUNWAY
ssstein/シュタイン
<ssstein>が、霧に包まれた湖畔の夜明けの情景と、ロニ・ホーンの画集『Remembered Words』を着想源に、パリで2027年春夏コレクションを発表した。淡いイエローやグリーン、ピンク、ブルーに、トープやグレージュ、赤みを帯びたブラウンを重ね、朝の光が少しずつ移り変わる情景を色彩とテクスチャーの組み合わせで表現した。別注色のオルメテックス製ナイロンを用いたブルゾン、ドラム染色のディアスキン、コットンとヘンプを混紡したソフトデニム、ポントリオのコーデュロイによるボクシーなハーフコート、ウォッシャブルシルクのシャツジャケット、七つ折りのウールネクタイなどが、例年よりもクラシックでリラックスしたシルエットに仕立てられた。素材の染色や加工、タックの使い分け、袖のダーツ、裏地の素材選びまで細部を突き詰め、クラシックな佇まいと軽やかな着心地を両立した。
ssstein 2027SS COLLECTION RUNWAY
CELINE/セリーヌ
<CELINE>が、テニス・クラブ・ド・パリで、マイケル・ライダーによる初のメンズとなる2027年春夏コレクションを発表した。プレッピーを起点に、ブレザーやオックスフォードシャツ、ニット、ストレートパンツから成るクラシックなワードローブを、身体に沿う軽やかなプロポーションでまとめた。ネイビー、ブラック、ホワイト、ベージュを基調にレッドやイエロー、ブルー、グリーンを差し込んだルックが登場。細身のネクタイやカマーバンド、スカーフ、チャーム、ジュエリーを加え、レザーウェアやバッグが装いに個別の変化を生んだ。少数の気に入った服を旅先や日常で繰り返し着て、自分なりの組み合わせやカスタマイズを重ねることで、服と着る人の時間から“スタイル”が育っていくという考えをランウェイに落とし込んだ。
CELINE 2027SS MEN'S COLLECTION RUNWAY
sacai/サカイ
<sacai>が、トラディショナルなワードローブの定番を着想源に、2027年春夏メンズコレクション「THE NEW CLASSICS」を発表した。厳格なテーラリングやプレッピーなスタイルにインダストリアルな要素や現代カルチャーのエネルギーを掛け合わせ、静的なワードローブに新たな動きをもたらした。<Brooks Brothers(ブルックス ブラザーズ)>のヘリテージを受け継ぐブレザーには自由なタイのあしらいや変形したネックライン、機能的なチン・タイを取り入れた。ロンドンの伝説的なサウンドシステム「Soul II Soul(ソウル・トゥ・ソウル)」のアーカイブ写真や「Back to Life」「Keep on Moving」のフレーズを配したTシャツやフーディ、<BIRKENSTOCK(ビルケンシュトック)>の2つのアイコニックなモデルを融合したシューズと同素材のユーティリティバッグも登場。異なる時代や文化、用途を持つ原型を一着の中で融合させながら、「Soul II Soul」が掲げるポジティブさやインクルーシビティとともに、普遍的な日常へと立ち返る新しいクラシックを提示した。
sacai 2027SS MEN’S COLLECTION RUNWAY
POST ARCHIVE FACTION (PAF)/ポスト アーアカイブ ファクション (PAF)
<POST ARCHIVE FACTION (PAF)>が、灼熱に包まれた6月のパリで、2027年春夏コレクションを発表した。半透明の白から淡いイエローやピンク、グレー、くすんだパープル、鮮やかなライトブルーを経て黒へ移る構成の中で、衣服が身体を覆い、部分的に露出させ、輪郭をずらしていく過程を組み立てた。白い透過素材のスタンドカラーロングコートをはじめ、湾曲したシームを持つシャツやパネルTシャツ、肩をファスナーで開閉するブルゾン、ギャザーを寄せたシアンブルーのトップス、テクニカルパンツを重ね、終盤には胸元をX字に横切って膝下まで垂れるスカーフ状の襟を備えた黒いシャツとスラックスを配した。馴染みのある素材や日常着の形式を歪曲、遮蔽、露出、増殖という操作に通し、過去を振り返ることでしか確かめられない自己の変化を、揺れ続ける身体の形として描いた。
POST ARCHIVE FACTION (PAF) 2027SS COLLECTION RUNWAY
doublet/ダブレット
<doublet>が、パリで2027年春夏コレクション「A DAY IN THE LIFE」を発表した。朝に目を覚まし、服を着て外へ出て、働き、誰かと会い、食事をして帰宅するまでの一日をたどりながら、空気、木、炭素、バナナ、海洋資源、農業廃棄物に由来する素材が暮らしの中へ溶け込んだ未来のワードローブを描いた。オーバーサイズのジャケットや螺旋状に切り替えたデニム、チェーンベルトを組み込んだショーツ、赤いレザージャケットに加え、食パンを手にしたスクールガール風の人物やパーティー帰りの女性、観光客など、一日の時間に応じた人物像をスタイリングで表現。未来素材が日常に溶け込む新しいワードローブを提案した。
doublet 2027SS COLLECTION RUNWAY
BED j.w. FORD/ベッドフォード
<BED j.w. FORD>が、イタリア・チンクエ・テッレで目にした二人の婦人と一本のレモンの木のある光景を着想源に、2027年春夏コレクションを発表した。デザイナーの山岸慎平は、夕暮れの道端で椅子に腰掛け、ワインを一杯だけ飲む二人の姿から、何でもない一日を「いい一日だった」と思える心や、張り詰めた緊張を手放すことへと思いを巡らせた。アウターを大幅に削り、着古したようなキュプラシャツ、リブ編みのウエストを持つスラックス、ショーツ、サマーニット、和紙を織り込んだニット、マルチストライプを並べ、<SUICOKE(スイコック)>とのスパンコール付きシューズや<PREEK(プリーク)>とのピンキーリングを添えた。ピンストライプのテーラードジャケットだけは端正な形を保ち、肩の力が抜けた色気や愛嬌を宿す、端正さと緩みが同居するワードローブを描いた。家族や友人が隔てなく集う、ささやかな祝日のような一日への憧れを、レモンのモチーフに託した。
BED j.w. FORD 2027SS COLLECTION
- Edit & Text : QUI Editorial Team








