セレクトショップの次なる視線|Community Center Tokyo Branch 内田直毅
トレンドをとらえたブランド、趣味や嗜好性が表れた服、目利きがキャッチした新世代のデザイナーなど、コンセプトが明確なショップであるほど、ファッションに対する美意識は店内の品揃えからも一目瞭然だ。そんなショップを訪れるファッションフリークが気にしているのは、常に新しい刺激を提案してくれるオーナーやバイヤーの次なる動向や関心。今回は狭く、深いセレクトで熱心なファンが集うようなショップを目指す「Community Center Tokyo Branch(コミュニティーセンタートーキョーブランチ)」の内田直毅さんにお話を伺った。
1987年埼玉県生まれ。大学卒業後、セレクトショップにて販売、バイイングを経験。約10年間勤務した後、2020年に独立し、東京・広尾に「Community Center Tokyo Branch」をオープン。
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「do it yourself」の精神に導かれファッションの道へ
—「Community Center Tokyo Branch」のオープンはいつですか。
内田:2020年です。
—オーナーである内田さんはショップをオープンさせる前もセレクトショップで働いていたのでしょうか。
内田:そうです。大学卒業後に就職したのがセレクトショップを運営している会社でした。
—ご自身のお仕事としてセレクトショップを選んだのは何かきっかけがあったのでしょうか。
内田:ファッションも好きでしたけど、それ以上にパンクの音楽が好きで「do it yourself」ってあるじゃないですか。それに感化されて「自分の力で何かをやり遂げる」という志向が強かったんです。そこでファッションならやれるかもしれないと思ったのがきっかけでした。
—将来的に独立するというのは就職した時点で考えていたことですか。
内田:独立してもやっていけるようになるための勉強期間だと思っていました。なので大手ではなく規模としても比較的小さめの会社を選びました。その方が若いうちからいろんなことを任せてもらえるだろうと。10年ぐらい働いたのですが、本当にいろいろな経験をさせてもらいました。
—10年というのは勉強期間としてはみっちりですね。
内田:もう少し早い段階で「独立できるかも」と思ったんです。ですが、ショップを軌道に乗せて、それを維持していくにはまだ武器が足りない気がしました。自分にとっての武器を模索し続けた10年でした。
—その結果、内田さんが手にした武器は何だったのでしょうか。
内田:バイヤーを任されたときに積極的に買い付けたのが<Willy Chavarria(ウィリー・チャバリア)>でした。それが売れましたし、僕もブランドのことがどんどん好きになっていって全品番、全カラーを買い付けたいぐらいの気持ちが生まれたんです。
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—ブランドの直営店みたいですね。
内田:まさに「勝手に直営店」です(笑)。そういう振り切ったことをするなら自分のショップを持つしかない。そういうショップにこそ自分も足を運びたいと思いましたし、お客さんもおもしろがってくれるかもしれないと、自分らしいショップの方向性が具体的に見えてきたので独立を決めました。
—ショップは広尾です。渋谷区は「ファッションの街」というイメージが強いエリアが他にありますが、この場所を選んだのは何か理由はありますか。
内田:最初に働いたセレクトショップが恵比寿だったので土地勘があったというのが理由のひとつです。あとはファッションのお店が集結していないエリアでやりたかったので広尾を選びました。
一点突破のような強さを持ったブランドに惹かれる
—個人のセレクトショップは店名にもオーナーの想いが現れるものですが「Community Center Tokyo Branch」というのはかなりユニークです。由来などを質問せずに素通りはできません(笑)。
内田:ショップ名を考えるときに親しくしていたデザイナーに相談したら「Community Center」というワードが出てきたんです。洋服を売る場所というよりもコミュニティが生まれる場所っていいなって思いました。まるで公共施設を思わせるようなちょっとしたダサさも気に入って(笑)。
—そして「東京支店」なんですよね。本社とは名乗っていない。
内田:あくまで支店です。
—ホームページにも「単なるセレクトショップではなく、新しい出会いや会話が生まれるコミュニティの分岐点であり続ける」と店名に通じるような想いが記載されていますよね。
内田:僕のセレクトの方針が「狭く」、そして「深く」なんです。なので取り扱っているブランドの熱心なファンが「Community Center Tokyo Branch」に集って、コミュニティのようなものが生まれたらうれしいという気持ちはあります。結果的にそういうショップになりつつあるような気もしています。
—どういうブランドに惹かれることが多いですか。
内田:僕が独立のために武器になるものを必要としたように、強みがはっきりとしているブランドに惹かれます。ハイプであることは求めていなくて、味があるようなブランドが好きです。一点一点のトップスやボトムスで手をかけたポイントはそれぞれ違っていても、絶対的なこだわりを持つブランドのコレクションは全体で見たときにやはり統一感が生まれて強さを感じます。
—ショップオープンから6年経っていますが、惹かれるブランドの傾向に大きな変化はないですか。
内田:大きくは変わっていないと思います。ただ、春夏はオーバーサイズを取り扱っていたけれど、秋冬はサイズをダウンして入荷したり、店頭でお客さんと接することで察知した時代ごとのファッションのムードのようなものは常にセレクトに反映させています。
—ブランドとの出会いで印象に残っていることはありますか。
内田:SNSでリサーチしているときに見つけたのが<1313 SELAH(1313 セラー)>というノルウェーのブランドなんですけど、僕は誕生日が13日なんです。最初は「13」という数字に引っかかり、デザインも好みだったのですぐにコンタクトを取りました。そしたら彼らも海外のバイヤーからの初めてのアプローチだったこともあり、来日のたびに「Community Center Tokyo Branch」に遊びに来てくれて、今では食事に行くような関係です。
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お客さんが耳を傾けたくなるような接客を心がける
—「ファッションを通して人・背景・思想が交差する場所でありたい」とも掲げていますが、そういう場所作りのために内田さんが意識していることはありますか。
内田:足を運んでくれたお客さんに「伝える」ということですかね。服そのものについても、デザイナーの想いについても。でも、あまり蘊蓄を押し付けるようなことはしたくないです。SNSでも情報を伝えることはできるのですが、感覚的な部分というのは直接会話をすることで深く伝わると思っています。その日は服を購入しなかったとしても、来店してくれたお客さんに何かを持って帰ってもらいたいです。
—お客さんとのコミュニケーションで心がけていることはありますか。
内田:自分が感じたこと、思ったことは正直に伝えるようにしています。例えばジャケットを試着したお客さんに「ジャケットは似合っていますけど、穿いてきたパンツが違いますね(笑)」とか。接客マニュアルにあるような言葉ではお客さんもスルーだと思うんです。正直を信条としたスタイルに親近感を抱いてくれるのかビールを差し入れしてくれたお客様もいます。せっかくだから軽く乾杯しますか、みたいな(笑)。
—ショップは大きな通りに面しているので、近所の方や通りがかりの方の立ち寄りも多そうですね。
内田:多いですよ。犬の散歩の途中とか(笑)。通りがかりに覗いてくれるのは大歓迎なのですが、地元の方はお店にとって最適なタイミングで来店してくれるとは限らないです。
—タイミングというと?
内田:目当てのブランドやシーズンの新作を求める方は入荷時期もSNSなどでチェックしてから来店するのですが、通りがかりの場合は全部売り切れた後や新作の入荷前ということもあります。なので僕も自信を持って接客ができない。先週はもっと商品があったんです、来週になれば新作が入荷しますと、そこは言い訳のように聞こえたとしてもきちんと伝えます(笑)。
—「Community Center Tokyo Branch」はオンラインストアの品揃えがかなり充実している印象です。
内田:品揃えもそうですが、テキストで伝える情報も充実させたいと思っています。オンラインで購入されるお客さんとは直接的なコミュニケーションはありませんが、僕としてはテキストを通じて接客しているつもりです。なので、それぞれの商品に対して「店頭だったらこういう質問をされるだろう」というのを想定して、あらゆる情報を掲載しています。
—お客さんが関心を持ちそうな商品情報を網羅するのは大変そうですね。
内田:大変であっても商品のことを徹底的に理解することで、それが店頭での接客に活きてくるんです。採寸も自分でやるのでMとLのサイズ感の違いも頭に入っていて、迷っているお客さんに着丈、袖丈、身幅などがMとLではどれぐらい差があるのかをすぐに伝えることができます。
—店内も商品ラインナップは充実していますよね。ハンガーがびっしりですし、棚にも隙間はない。
内田:自信を持ってセレクトしたものなのでお客さんにひとつでも多くの商品を見てもらいたいです。ハンガー掛けを多くしているのはその方が服の柄でもシルエットでも見やすいですし、畳んでいる服を次々に広げていくのって躊躇しませんか?
—すごくよくわかります(笑)。
内田:服を畳んで陳列するなら縦に積めますが、ハンガーでの陳列なのでどうしてもズラッと横に広がっていくんです。
—服やシューズ以外ではキャップが多いですね。
内田:個人的にキャップが大好きなので、いつも置いています。新しい取り扱いアイテムでいえばジュエリーとサングラスがこれから入荷予定です。ジュエリーもサングラスも取り扱いジャンルを増やしたかったというわけではなく、ブランドのクリエーションに強く惹かれたので入荷を決めました。
—「do it yourself」の精神で立ち上げた「Community Center Tokyo Branch」ですが、オープンから現在までを振り返ってみてどうですか。
内田:オープンしたのが2020年1月だったのでいきなりコロナ禍に巻き込まれましたから、決して順風満帆とは言えないですが基本的には楽しく、やりたいことがやれています。ディープなファンも満足してくれるように「狭く、深く」というセレクトを、さらに極めていきたいと思っています。
内田直毅がレコメンドする3アイテム
<SOSHIOTSUKI(ソウシオオツキ)>
2026年秋冬コレクションから取り扱いをスタートしました。Pitti Immagine Uomoで披露した2026年秋冬ランウェイショーが衝撃的でしたし、自分の気分がテーラードに向かっていたこともあってセレクトしました。話題性に関係なくブランドのことを知らなくても購入する方もいます。
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<TSTS(ティーエスティーエス)>
「Community Center Tokyo Branch」での取り扱いは2026年秋冬コレクションからです。世界を舞台に活躍する日本ブランドになるに違いないと将来性をすごく感じています。クリエーションにもすごくポテンシャルがあって、以前から注目をしていたので満を持してのセレクトです。
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<LU'U DAN(ルー・ダン)>
ロンドンを拠点とするベトナム系アメリカ人デザイナー、Hung La(ハン・ラー)が手掛けるブランドです。<Balenciaga(バレンシアガ)>ではNicolas Ghesquière、<Celine(セリーヌ)>ではPhoebe Philoのもとで経験を積んでいて、彼自身のアジア人としてのアイデンティティやルーツを背景にしたメンズウェアを展開しています。
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@luudan_official
Community Center Tokyo Branch【CCTB】
2020年、東京・広尾にオープンしたセレクトショップ。ファッションを通して、人や背景、思想が交差する場所でありたいというオーナーの考えから、心から共感できる価値観や姿勢を持つブランドを、狭く、深く、丁寧にセレクトしている。「餅は餅屋」という考えのもと、ひとつひとつのアイテムと真摯に向き合い、その背景や魅力を自分たちの言葉で丁寧に伝えることを大切にしている。服を売るだけではなく、そこからブランドやつくり手を知り、新しい価値観に出会い、会話が生まれる。CCTBは、そんな新しい出会いのきっかけとなる場所を提供している。
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- Photograph : Reina Tokonami
- Text : Akinori Mukaino(BARK in STYLe)
- Edit : Miwa Sato(QUI)








