独創的で心を揺さぶることがアイウエアの使命|LAPIMA グスタフォ・アシス



アイウェアとは顔に纏うオブジェのようなもの
—<LAPIMA>にとってアイウエアとはどのような存在でしょうか。
私はアイウェアとは美しさとアイデンティティを表現したものだと考えています。そのために<LAPIMA>のアイウェアはひとりひとりの個性と美しく調和するようなフレームのデザインを心がけています。アイウェアのフレームは快適にフィットし、なおかつ掛けた人の魅力や存在感を放つものでなければなりません。顔に纏う彫刻的なオブジェのようなものであり、眼差しに表現をもたらすものです。だからこそ<LAPIMA>はアイウェアを通してひとりひとりの異なる物語を生み出したいと思っています。
—「アイウェアがもたらす美しい顔」をどう捉えていられますか。
私たちにとって美しさはエモーショナルな感性と深く結びついていて、アイウェアはそれを高める力を持っていると信じています。顔に自然と収まり、それによって個性を引き出して存在感を醸し出す。優れたデザインのフレームは顔を隠すのではなく、より魅力を高めます。神秘的に、自信に満ちあふれ、優しく、そして強く、その人らしさを演出します。アイウェアだけが持つパワーを信じているからこそ、私たちの創造性が高揚していくのです。


—強い個性を宿すアイウエアを生み出すうえで何を大切にされていますか
<LAPIMA>の全てのデザインは曲線から始まり、インスピレーション、独自性、方向性など、さまざまなアプローチから造形を作っていきます。デザインを単なる装飾ではなく、もっとエモーショナルな感動をもたらすものと捉えてほしいんです。私はデザインに新たな発見や感動を見出すことが大好きで、そのため常に新しいフォルム作りに挑戦しています。その大胆さこそが<LAPIMA>のクリエーションの源です。
—建築家のオスカー・ニーマイヤーやリナ・ボ・バルディの影響を受けているそうですがどのような点に共鳴されていますか。
私たちの作品は「とても彫刻的」と評する声は多いですが、それが<LAPIMA>の真髄だと思っています。ニーマイヤーの曲線と流動性、リナ・ボ・バルディの荒々しい力強さ、パウロ・メンデス・ダ・ロシャの構造的知性、そしてブール・マルクスの詩的な風景。これらの建築流派にはブラジルの自然と調和し、山々など土地の起伏に沿い、緊張感と柔らかさを同時に受け入れる深く有機的な何かがあります。私たちがアイウェアで捉えようとしているのはまさにそれです。生き生きとした彫刻的なライン、動きを反映するシェイプ、そしてボリュームと繊細さの調和です。



—自然や文化から着想を得たものをどのような思考やプロセスを経てアイウエアへと変換させていくのでしょうか。
私が惹かれるのがブラジルの地形、丸みを帯びた風景、川の流れや水面の様子です。エモーショナルな感覚や形あるもの、ダイビングマスク、ダンスの動き、ヨットの帆に当たる風などからインスピレーションを得る際に、いつもブラジルの自然への畏怖や感動を感じています。<LAPIMA>の「FOREST」というコレクションのカラーは大西洋の豊かな森林から着想を得ましたし、深いブルーの「OCEAN」は南大西洋の海からインスピレーション源です。イエローはブラジル中央部に広がるサバンナの植生の色を表現しています。そのようにブラジルの自然をアイウェアのシェイプやカラーリングに活かしています。
手作業によって生まれる流動性と彫刻的な質感
—インスピレーションが湧いたとして何を活かし、何を排除するかが必要ですが、取捨選択の基準のようなものはありますか。
私たちは美的にも色彩的にも本当に意味のあるものだけを世に送り出しています。フレームは美しく顔にフィットし、独創的で、心を揺さぶるものでなければならないので、いつもそれぞれのフレームを誰がどのように着用するかを想像しながら形にしていきます。全てのコレクションに対してそのようなスタイルを貫くことで<LAPIMA>のスピリットとアイデンティティが生まれていると思っています。


—<LAPIMA>では全てのフレームをサンパウロの自社工房でハンドメイドで製作しているそうですが、そのこだわりは日本人がイメージする「手仕事=丁寧な仕事」と同じような理由でしょうか。
そう思っていただいて大丈夫です。手仕事というものは感情を育むものという考えから、<LAPIMA>のフレームは人の手によって作られています。形、仕上げ、精密さの全てに熟練の職人が携わります。デザインチームも自社工房の同じ屋根の下にあり、まるでクチュールメゾンのようですが、それによって全ての製品の品質を高くキープすることができるのです。デザイナーはあらゆる場面でチェックをし、コンセプトと製作の間の絶え間ない対話がデザインや品質を進化させています。
—手仕事によるプロダクトというのはブラジルでも多いのでしょうか。
ブラジルには刺繍から寄木細工まで、豊かな伝統工芸があります。私たちは人と人とのつながり、思いやり、そして直感を大切にしています。<LAPIMA>の手仕事というのは単に古くからの技法を慈しむものではなく、独自性と表現力を大切にした結果です。ハンドメイドでフレームシェイプを形成し、表面処理をし、そして作品に感情と命を吹き込んでいるのです。
—ハンドメイドだからこその<LAPIMA>らしい「造形」や「表情」があるということですね。
ボリューム感や曲線だけでなく、特に<LAPIMA>のマットとシャインのコントラストは手仕事だからこその表現です。熟練の職人の技術がアセテートプラスティックに深み、柔らかさ、そして個性を与えていきます。私たちが目指す流動性と彫刻的な質感は手作業でなければ実現できません。

—マットとシャインが共存するアセテート素材はすごく印象的でした。このような質感のコントラストは彫刻的な表現として捉えてよいでしょうか。
まさにその通りです。このコントラストは意図的で、私たちの美意識を反映しています。フレームのマットな表面は荒々しく力強く、まるでブルータリズム建築のようです。それに対して光沢のあるフレームの裏面はシルクやカシミアのような繊細さと心地よさをもたらします。まるで彫刻の光と影のように、生き生きとした触感と緊張感を生み出すのです。


—私も大好きで愛用している「Antonia」はヨットの帆からインスピレーションを得たそうですが、こちらのモデルの制作ストーリーを知りたいです。
<LAPIMA>を選んでくれて本当にうれしいです。ありがとうございます。「Antonia」はブラジル北東部のアキラスの伝統的な漁船、ジャンガダの帆からインスピレーションを得たものです。まるで海上でバレエを踊っているかのような帆の動きに魅了されました。当時の<LAPIMA>は丸みを帯びたフレームしかデザインしていなかったのですが、帆の動きを目にした瞬間に全てが変わりました。帆からのインスピレーヨンによってシャープで角張ったフォルムが生まれ、彫刻的な柔らかさも加わりました。そのコントラストが新しいデザインとなり、「Antonia」は私にとってターニングポイントと言えます。多くのコレクションの中でも私のお気に入りのひとつです。
—<LAPIMA>のことを初めて知ったという方もいると思います。最後にブランドからのメッセージをお願いします。
<LAPIMA>は美しさとなめらかさ、そして感覚を大切にしています。個性的であり、やさしく、そして力強さもあるフレームを好む方にはまさしくぴったりのデザインだと思います。私たちが秘めるスピリットがあなたの心に響くことを願っています。

-ブランド概要
<LAPIMA>はブラジル発、職人技と建築的美学を融合させたアイウェアブランド。流行や大量生産に抗い、彫刻のように削り出す造形と、自然や文化に根差したデザイン哲学が魅力。掛ける人の内面を引き出す“存在感のある美”を提案する。
公式サイト:https://www.lapima.com
Instagram:https://www.instagram.com/lapima_eyewear
-LAPIMA 取り扱い店舗
グローブスペックス
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- Photography : Satomi Yamauchi
- Text & Edit : Yusuke Soejima(QUI)