Stella McCartney 2026年ウィンターコレクション──愛と敬意に満ちたエシカル ラグジュアリー
ショー開始の合図とともに、馬術家ジャン フランソワ ピニョンに導かれた黒と白の馬がランウェイ中央に現れる。静寂のなかで優雅に歩むその姿は、人間と動物が共に生きる世界を象徴するかのようだった。ブランド創設以来、レザーやファー、フェザー、エキゾチックスキンを一切使用しないという信念を貫いてきたステラ マッカートニーにとって、動物との共生という価値観をランウェイという舞台で可視化した瞬間でもあった。

今シーズンの“ステラ ウーマン”は、二面性を持つ存在として描かれる。マスキュリンとフェミニン、ユーモアとエレガンス。相反する要素を軽やかに行き来する女性像は、ステラ マッカートニーの人生と<STELLA McCARTNEY>のデザイン史を重ね合わせるように描かれていた。
コレクションの93%は環境に配慮した素材で構成されている。ヴィーガン由来のファー代替素材、ヴィンテージレース、責任ある調達によるウール、リサイクル繊維など、素材選びそのものがブランドの思想を語る。サステナビリティを単なるメッセージにとどめず、ラグジュアリーの新しい基準として打ち出す姿勢こそが<STELLA McCARTNEY>の真骨頂だ。
そもそもサステナビリティに取り組むことは、ブランドにとって制約があるように思える。ただ、これまでのコレクションから、ステラ マッカートニーにとっては創造力を拡張するための前提条件であるという印象を受ける。今季も同様にコレクションに自由度をあげている存在こそがサステナビリティだと強く感じた。
カラーパレットは、チョコレート、キャメル、グレー、ブラックといった落ち着いたベースを軸に、原色や錆色をアクセントとして加える構成。モアレ、シャンティリーレース、シルクジャカードといった素材使いは、ブランドの初期コレクションに見られたランジェリーのセンシュアリティを思い起こさせる。
象徴的なシルエットとしては、ペプラムのトップスやジャケット、横に張り出すような彫刻的なシルエットのスカートやドレスなど、ウエストを強調するようなアイテムが登場。女性らしいフォルムを強調すると同時に、身体の輪郭を再構築するような建築的な美しさを生み出していた。

ブランドのシグネチャーであるテーラリングも健在だ。サヴィル ロウ仕込みの構築的なシルエットは、責任ある調達のウールやGRS認証ブレンド素材によって仕立てられ、シングルブレストやダブルブレストのジャケットとして登場。クラシックなメンズウェアの文脈を引き継ぎながらも、女性の身体に寄り添う柔らかなラインが印象的だ。
アクセサリーにもブランドの進化が表れている。「Appaloosa」には新たなカラーやミニクロスボディが加わり、「Falabella」はミンクのようなヴィーガン素材やレオパードジャカードでアップデート。「Stella Ryder」ポシェットはキルティングのダイヤモンドステッチとクルエルティフリーのクロコ調素材で登場した。足元には建築的なピラミッドヒールのパンプスやブーツが加わり、モダンなアクセントを添える。
今シーズンのコレクションを形作る重要な要素となっているのが、随所に散りばめられているステラ マッカートニーのパーソナルヒストリーだ。彼女のルーツであるスコットランドから着想を得たフィッシャーマンリブのアイテムが登場した。パッド入りのステッチディテールやシームレスなインターシャ、ウールシルクブレンドのセミシアー素材によって再解釈されたニットは、チャンキーな質感と繊細な透け感を共存させる。コンパクトなリブドレスやクロップドポロのセットアップは、力強さとセンシュアリティのバランスを美しく保っている。
さらに手編みのハートやヴィーガントリムは幼少期の温かな記憶を呼び起こし、スローガンタンクトップに掲げられた「My Dad Is A Rockstar」の言葉は、父ポール マッカートニーへの愛情に満ちたオマージュとしてユーモラスな輝きを放つ。実際に会場にはポール マッカートニーの姿もあり、ショー終了後にステラ マッカートニーと交わした熱い抱擁はひときわ印象的だった。その光景は、家族やルーツへの敬意がこのコレクションの根底に流れていることを物語っていた。
ショーを通して、動物、自然、家族、そして自身のルーツへの愛と敬意が満ちていた。<STELLA McCARTNEY>が打ち出すラグジュアリーは、人と自然の絆を基盤とした価値観そのものの美しさに支えられている。
STELLA McCARTNEY 2026AW COLLECTION RUNWAY
STELLA McCARTNEY
Web:https://www.stellamccartney.com/
- All Photo : Stella McCartney
- Edit & Text : Yukako Musha(QUI)










