QUI

FASHION

セレクトショップの次なる視線|and father 西田新大

Feb 26, 2026
その名の通り、オーナーやバイヤーの審美眼がフルに発揮される「セレクトショップ」。
トレンドをとらえたブランド、趣味や嗜好性が表れた服、目利きがキャッチした新世代のデザイナーなど、コンセプトが明確なショップであるほど、ファッションに対する美意識は店内の品揃えからも一目瞭然だ。そんなショップを訪れるファッションフリークが気にしているのは、常に新しい刺激を提案してくれるオーナーやバイヤーの次なる動向や関心。
今回は東日本橋、東神田というエリアにあってファッション上級者も通うという「and father(アンドファザー)」の西田新大さんにお話を伺った。

セレクトショップの次なる視線|and father 西田新大

Feb 26, 2026 - FASHION
その名の通り、オーナーやバイヤーの審美眼がフルに発揮される「セレクトショップ」。
トレンドをとらえたブランド、趣味や嗜好性が表れた服、目利きがキャッチした新世代のデザイナーなど、コンセプトが明確なショップであるほど、ファッションに対する美意識は店内の品揃えからも一目瞭然だ。そんなショップを訪れるファッションフリークが気にしているのは、常に新しい刺激を提案してくれるオーナーやバイヤーの次なる動向や関心。
今回は東日本橋、東神田というエリアにあってファッション上級者も通うという「and father(アンドファザー)」の西田新大さんにお話を伺った。
Profile
西田新大
and father バイヤー

1999年京都生まれ。

Instagramをチェック!
@and__father

店名の由来は「隔週土曜の営業体制」

「and father」という店名はすごくユニークですね。

西田:「and father」を運営するのは「and mother」という会社で、もともとセレクトショップ事業は隔週土曜日に完全アポイント制でやっていたんです。土曜日だけオープンするショップなので「and father」という名前になりました。

土曜日だけのオープンだと、どうして「and father」になるのでしょうか?

西田:『おかあさんといっしょ』という子供向け番組がありますよね。それは平日の番組名で、土曜日に放送されるときは『おとうさんといっしょ』になるんです。「and mother」が土曜日だけ営業するセレクトショップということで「and father」です。

父親と一緒に立ち上げたショップだから「and father」なのかなと勝手に推測していました。

西田:ショップ名はコンセプトにも通じるのかとよく聞かれるのですが、店名に深い意味はなく本当に遊び心で、響きが良いとか、そういう感じです。ただこの名前である以上、誇り高き職場でありたいと思っています。

現在は東日本橋と西田さんが店長をされている東神田に路面店を構えています。1号店の東日本橋のオープンはいつだったのでしょうか。

西田:2025年の1月です。

西田さんは「and father」にどのタイミングから携わっているのでしょうか。

西田:アポイント制の時代は関わりはなく、路面店としてオープンするというタイミングでオーナーから声をかけられて店長兼バイヤーとしてまずは東日本橋店を任されました。なので路面店に関しては立ち上げメンバーと言えるかもしれません。

「and father」を任される際にオーナーからショップの方向性などは伝えられたのでしょうか。

西田:僕がオーナーから声をかけられたのが2024年の8月頃で、2025年の1月のオープンまでに準備期間もあまりなかったのでコンセプトなどの話し合いもしっかりとはしていないんです。走り出してから、いろいろと決めていこうって感じでした。

オーナーとしては西田さんに任せれば大丈夫という感じだったのかもしれないですね。

西田:どうでしょうか。僕とオーナーは以前からの知り合いでもなかったので。

どういうご関係だったんでしょうか。

西田:僕は学生の頃から4年程アパレル業界で働いていたのですが、オーナーから声をかけてもらったときは大阪で全く別の仕事をしていたんです。ただ、アパレル時代には店長とバイヤーの経験もあって、そのときに懇意にしていたブランドの方が「セレクトショップを始めるならいい人を知っていますよ」ってオーナーに僕のことを紹介してくれたみたいです。

オープン前にコンセプトなどの話し合いもなく、ショップの目指すべき方向性もよく見えない状況でありながら西田さんが店長兼バイヤーという重責を引き受けたのはどういう理由からでしょうか。

西田:オーナーとお会いしたときに決まっていたのは「and father」という店名だけでしたが、その名前に惹きつけられたんです。僕にとって無視できない何かを感じたというか。それで、もう一度アパレル業界で頑張ってみようという気持ちになりました。

現在は会社やオーナーから「こういうショップにしてほしい」という具体的なオーダーのようなものはあるのでしょうか。

西田:特にはないです。ブランドでもアイテムでも買い付けは全て任せてもらっています。

理由や理屈とは無関係のセレクトショップを作りたかった

「and father」は2025年11月に東神田店がオープンして2店舗になりましたが、東日本橋店と東神田店でブランドやアイテムのセレクトは異なるのでしょうか。

西田:どちらの店舗もオープンして日が浅いですし、両店のブランドやアイテムのラインナップは僕が買い付けたものなので大きな違いはないです。なので現時点ではお客さまもほぼ同じです。ですが、今後のセレクトについては店長の意向に任せると言われているので、これからは東日本橋店の店長のセレクトと東神田の店長である僕のセレクトにはそれぞれの趣味嗜好が強く表れていくと思います。

東日本橋店との差別化を考えて東神田店を新たにオープンさせたということでもないんですね。

西田:そうですね。ありがたいことにオープンして間もない段階から東日本橋店には多くのお客さまが来店してくれて、ブランドやアイテムを広げたい、ゆっくりと服を選んでもらえる空間を作りたいと考えたときに1店舗だけでは難しくなったんです。それで2店舗目のオープンに踏み切りました。

西田さんは店長として東神田店にどんな服を置きたいと考えていますか。

西田:すごく抽象的な表現にはなってしまいますが「着ることで気分が上がる服」です。出かけたい気分にさせてくれる服だったり、心からリラックスできるような着心地のいい服だったり。とにかく自分にとって気持ちがいい服です。その「自分」というのも僕基準だったりします。

ご自身が着たいと思う服をセレクトしているとしたら、お客さまにはどのように提案しているのでしょうか。接客で心がけていることなどはありますか。

西田:僕が20代後半ということもあって、お客さまはファッション遍歴でいえば僕なんかよりも経験豊富な方ばかりなので、着こなしなどを提案することは少ないですね。東神田のセレクトショップにわざわざ足を運んでくれる方というのは上級者も多いですし、こちらのアドバイスがなくても自分で選ぶことができるので、そもそもお客さまと服の話をすることも少ないかもしれません(笑)。心がけていることといえば、とにかく気持ちよく服を選んでもらうことです。

「and father」のお客さまはどんな方が多いのでしょうか。

西田:東日本橋や東神田という街でファッションをやっているという珍しさからなのか応援してくださる方は多いです。通りがかりに店内を覗いてくれる地元の方もいて、「頑張ってショップを続けてね」と服を買ってくれるお客さまもいます。

東日本橋や東神田というのはファッションの街というイメージはあまりないのですが、そもそもどうしてこのエリアだったのでしょうか。

西田:会社の所在地が東日本橋なんです。なのでその近辺を選んだとオーナーから聞いています。私自身、アパレルのキャリアは大阪でスタートしましたが、展示会などで東京を訪れる機会はあったので、詳しい土地勘こそなかったものの、青山や表参道がファッションの中心地であることは以前から認識していました。ただ、東日本橋がどんな街なのか詳しくなかったのもあって「東京のこのエリアでファッションをやっていけるのか」という不安なども全くなかったです(笑)。青山や代官山ではなく、SNSで「and father」のことを知って訪れてくれるファッション好きの方たちにはくつろぎながら買い物を楽しんでほしいという気持ちは強いです。

大きな石がオブジェとして置いてあったり庭園を思わせるような店内なのでくつろぎながら買い物を楽しめそうです。内装はちょっと落ち着いた大人のムードですが、それも街の雰囲気と合わせているのでしょうか。

西田:石のオブジェに関しても「こういう空間演出をしたい」という狙いがあって置いているわけではないんです。はっきり言ってしまうと特に意味はない。先ほどからショップのコンセプトやセレクトの基準、店内の設えについてなどの質問に対して明確な答えはできていませんが、それが「and father」の方針でもあるんです。理由や理屈は必要ない、とにかく自分たちが好き、楽しいと思えることをやっていこうと立ち上げたショップなんです。

ひとつひとつのことに意味や理由が求められる、言語化が求められる時代に逆らっているようにも思えます(笑)。

西田:セレクトに関しても一任されているということもあり、僕は自分がほしい服、着たい服、カッコいいと思う服を買い付けています。言われてみれば、ショッピングに近い感覚もあるのかもしれません。

お客さまが店内でくつろいでくれるのがいちばんの喜び

バイヤーとしてブランドのリサーチなどはどのようにして行なっているのでしょうか。

西田:SNSなども活用しますけど、時には「and father」のお客さまが身につけているものが気になって、「どこのブランドですか?」と聞いてしまうこともあるんです。実際にお客さまに教えてもらって取り扱いがスタートしたブランド、アイテムもあっていつも勉強させてもらっています。

ここまでお話を聞いていて「いいと思ったら迷うことなく取り扱う」というのも「and father」らしいですね。

西田:展示会などではデザイナーさんにモノづくりについてのお話を聞いたりしますが考え方や思想に共感してお店で取り扱うというよりは、僕はモノベースで選ぶタイプだと思います。カッコいいかどうか、着たいかどうか、身につけたいかどうか。なので接客の際も展示会で聞いたデザイナーさんの想いを代わりに伝えることもそうですが、どうしてこの服をセレクトしたのかという自分の想いを話すことの方が多いです。

そういう自分の気持ちに素直な直截的なバイイングも「and father」の独自性につながっているのかもしれないですし、お客さまもおもしろがっているのかもしれないですね。

西田:お客さまからは温かく見守ってもらっています(笑)。

東神田店の取り扱いのブランド数はどれぐらいなのでしょうか。

西田:20ブランドぐらいですね。自分としてはブランド数は多くなくてもいいので、一品番における数量を増やして、気に入って下さった方にしっかりと届くようにしていきたいです。

「その服がほしいかどうか、着たいかどうか」とモノ軸で選ぶ西田さんとしてはそういう考えになるのも自然だと思います。

西田:バイイングはブランドからではなくアイテムから入っていくので、店内に置いてある服や雑貨とどこで出会ったのか、エピソードを覚えているものが多いです。僕はロマンチストなので(笑)。

「and father」の東神田店は西田さんのクローゼットをそのまま映し出しているかもしれないですね。今後、そんなショップをどのように育てていきたいですか。

西田:お客さまがくつろげるお店、それを作っていくことがいちばんです。セレクトショップの店長をやっていて、お客さまがリラックスした様子で楽しそうに服を選んでいるのを見るのが自分にとっての最大の喜びです。アパレル業界を一度離れてみて気づいたのは、仕事が終わったあとの時間や休日が、どれだけ楽しみで特別なものだったかということ。その貴重な時間を弊店に充てて下さる事への感謝と、日々のサプライズが大切だと考えています。新しいことを始めるにしても、取り扱う商品以外の部分ではお客さまにとってうれしいサービスやおもてなしを起点に考えていきたいと思っています。

西田新大がレコメンドする3ブランド

<gokan studio(ゴカンスタジオ)>

ロンドンを拠点に、日本のアイデンティティをプロダクトで発信する<gokan studio>。インラインで展開されている備前焼のキャンドル台座と畳のコースターを、東神田店オープン時に色別注で制作していただきました。日本に住んでいながらも、私たちの暮らしは“和”の環境からは少し離れています。だからこそ、自分たちがどこか懐かしいと五感で感じられる畳の色で、今回あらためて制作をお願いしました。東神田店ではご来店いただいたお客さまにお茶をお出しするのですが、その際にコースター兼トレーとして使用しています。

Instagramをチェック!
@gokan_studio_jp

<m's braque(エムズ ブラック)>

定番のワイドパンツに、共地のベルト付きモデルが新たに登場しました。さらに「and father」では、生地を変え、個人的に理想とするかっこいいシルエット×テキスタイルを実現した別注モデルを製作していただきました。合わせるトップスは、カジュアルでもトラッドでも。肩肘を張らなくても、きちんと感のある装いでも、不思議と自然に馴染む。ニュアンスにはなりますが、なんか馴染んでしまう、そんな懐の深い一本だと思っています。

Instagramをチェック!
@ms_braque

<Sara Finchley(サラ フィンチリー)>

お客さまが身につけていたことがきっかけで知った日本のジュエリーブランドです。シルバーのパーツは無骨で存在感がありますが、いわゆる“男性が男性のために作る”アクセサリーにはない要素を感じました。男性的になりがちなシルバーアクセサリーに、女性的な感性がひとつ加わることで、ここまで気品のある佇まいになるのだと感じ、ひと目で気に入り、お取り扱いをスタートしました。コンチョとピアスは常設での展開を予定しており、そのほかのアイテムについては、期間限定の受注会などを開催する予定です。

Instagramをチェック!
@sarafinchley_official

 


 

and father

2024年8月に隔週土曜日のアポイント体制にてスタート。その翌年2025年1月に路面店として現在の「and father東日本橋」をオープンし、同年11月には2号店「and father東神田」を立ち上げる。

オンラインサイトはこちら

東日本橋
〒103-0003東京都中央区日本橋横山町4-13

東神田
〒101-0031東京都千代田区東神田1丁目11-6 ライオンズマンション東神田

Instagramはこちらから!
@and__father

  • Photograph : Junto Tamai
  • Text : Akinori Mukaino(BARK in STYLe)
  • Edit : Miwa Sato(QUI)

NEW ARRIVALS

Recommend