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FENDI 2026年秋冬コレクション──“私”から“私たち”へ、連帯で拓く新章

Mar 4, 2026
2026年2月25日、マリア・グラツィア・キウリによる初のシーズンとなった<FENDI(フェンディ)>の2026年秋冬コレクションがミラノの本社で発表された。掲げられた「Less I, more us(“私”よりも“私たち”)」は、キウリの仕事におけるモットーでもある。スター・デザイナーを中心にメゾンが語られることが多い現代に、職人やコラボレーターを含む共同体こそがメゾンであるという「連帯」が強調された。メゾンが築き上げてきたクラフトマンシップの軌跡に敬意を払いながら、連帯を軸に新章を拓こうとする姿勢が明確に打ち出されたコレクションだった。

FENDI 2026年秋冬コレクション──“私”から“私たち”へ、連帯で拓く新章

Mar 4, 2026 - FASHION
2026年2月25日、マリア・グラツィア・キウリによる初のシーズンとなった<FENDI(フェンディ)>の2026年秋冬コレクションがミラノの本社で発表された。掲げられた「Less I, more us(“私”よりも“私たち”)」は、キウリの仕事におけるモットーでもある。スター・デザイナーを中心にメゾンが語られることが多い現代に、職人やコラボレーターを含む共同体こそがメゾンであるという「連帯」が強調された。メゾンが築き上げてきたクラフトマンシップの軌跡に敬意を払いながら、連帯を軸に新章を拓こうとする姿勢が明確に打ち出されたコレクションだった。

真っ直ぐ伸びたランウェイに真っ直ぐ配された「Less I, more us」の文字は、コレクションの中心に置かれた揺るぎないスローガンであることを象徴していた。

ショーは黒のテーラリングから始まる。ピークドラペルのジャケット、端正なロングコート、しなやかに落ちるトラウザー。余分な装飾を削ぎ落としたルックが続き、シンプルな会場装飾と相まって、仕立てそのものの強さを際立たせる。クラシックなシャツカラーをチョーカーのように転用するなど、伝統的な要素にわずかな操作を加えることで、新たなバランスが生まれる。ブランドの歴史に正面から向き合いながら、輪郭を整えていく導入となっていた。

後半では身体に寄り添うドレスが重なった。オフショルダーのブラックドレス、スリップドレス、透けるレーススカート。ランジェリーの要素を含んだピースが、テーラリングの緊張感をやわらげる。レースをレーザーカットレザーで再解釈したルックでは、柔らかさと硬質さの相反する要素が合わさり、視覚だけでなく触覚にも訴える質感が際立った。衣服は身体の動きとともに意味を帯びていく。

<FENDI>の象徴であるファーも、多様なかたちで登場した。コートやジレ、襟元やトリミング、ライニング、バッグやシューズに至るまで、メゾンのメティエが随所に織り込まれる。アーカイブや既存素材を活用する姿勢も打ち出され、歴史を現在の時間軸に接続する試みが見て取れた。

ランウェイには男女モデルが並び、ボーダレスなワードローブにまとめられていた。オーバーサイズのブレザー、トレンチコートとデニム、カーゴパンツなど、日常に根ざしたアイテムが組み込まれる。フェミニンとマスキュリンを分けるのではなく、同じクローゼットの中に置くという発想が、スタイリング全体から伝わってくる。

アクセサリーでは<FENDI>の最もアイコニックなバッグ「バゲット 」が印象的だ。ビーディングやファー、異素材を重ねた装飾が施され、複数のクラフトが一つのバッグに集約される。バッグは単なるアイコンではなく、メゾンの技術と歴史を束ねる存在として強調された。

こうした流れの中に、女性アーティストとの協業も欠かせない。ミレッラ・ベンティヴォーリオのアーカイブとのプロジェクトでは、1970年代初頭にデザインされたアーティストジュエリーが限定復刻された。言葉を分解し、意味の揺らぎを視覚化する彼女の実践は、リングやイヤリングとして身体に結びつく。さらに、言語実験に着想を得たウェアやスカーフも登場し、言葉がグラフィックとして衣服に組み込まれた。

サグ・ナポリとの協業では、「Rooted but not stuck」「Loyal but not obedient」といったメッセージがフットボールスカーフやTシャツにあしらわれた。肯定と制限を対にした言葉は、所属や連帯を語りながらも、個人の境界線を意識する姿勢を示す。集団の中に身を置きながら、自分を見失わないという視点がここにある。

Maria Grazia Chiuri

今回のコレクションは、テーラリング、ドレス、ファーというメゾンの核を軸に、バッグやアーティストとの協働へと展開することで、<FENDI>の現在地を示したシーズンだった。「Less I, more us」という言葉は、単なるシーズンテーマではない。デザイナー交代が相次ぎ、個のカリスマ性ばかりが注目を集めがちな状況の中で、あえて“連帯”を掲げた点にこそ意味がある。
キウリもまた、その大きな変化の流れの中にいる一人だ。そのような局面で、メゾンに関わる人々や蓄積された技術へと視線を広げる姿勢は、内部の結束を促し、創造の基盤を整える選択とも受け取れる。連帯を指針として共有することは、メゾン全体の士気を高め、結果としてより強度のあるクリエーションへとつながっていくだろう。
強い個性を誇示するのではなく、方向性を示すことで組織を導く。その姿勢からは、リーダーとしての輪郭も垣間見えた。ここから<FENDI>がどのような進化を遂げるのか。新章の行方を注視していきたい。

FENDI 2026AW COLLECTION RUNWAY

FENDI
https://www.fendi.com/

  • All Photo : FENDI
  • Edit & Text : Yukako Musha(QUI)

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