VERSACEが託した視線、岡部桃という存在
ジェンダー、セックス、セクシュアリティをテーマに、社会的境界へ挑戦する生々しく率直な表現で知られる。剥き出しで親密な視点から切り取られる写真は、観る者の感覚に直接訴えかける。
1978年の創設以来、ファッションだけでなく、写真、音楽、演劇といった芸術文化と深く結びついている<VERSACE>。ジャンニ・ヴェルサーチェの時代から、リチャード・アヴェドンやヘルムート・ニュートンといった巨匠写真家との協働で知られているが、2026年春夏からの新体制で始まった「VERSACE EMBODIED」は、この関係性をさらに進化させたもので、いわゆる広告キャンペーンの形式によらず、世界中のアーティストとの対話を重ねながら、表現の領域を押し広げている。
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— <VERSACE>が展開するプロジェクト「VERSACE EMBODIED」に、日本人として初めて参加されましたが、どういった経緯でお声がかかったのでしょうか?
チーフクリエイティブオフィサーを務めていたダリオが、以前から私と何か出来ないかと考えて下さっていたという話を聞きました。
— 「VERSACE EMBODIED」への参加が決まったとき、最初に感じたことを教えてください。
私はファッションについて知識が足りないと思っていますが、<VERSACE>とは親和性が高いのではないかと、直感的にこのコラボレーションの成功を予見しました。
— 今回の作品制作において、<VERSACE>というブランドからどんなインスピレーションを受けましたか?
自分の美学を貫く事、それを自分の手で崩壊させ生まれ変わる事を恐れない事、創作の真髄を突き付けられた気がします。
— 岡部さんは作品を通して「ジェンダー」や「アイデンティティ」への問題を取り上げてきましたが、今回のプロジェクトでは自らの作風によって、<VERSACE>というブランドをどう解釈していったのでしょうか。
道から外れ自分だけの道を生きる方を選んだ場合、それは後ろ暗い事ではなく、逆に強い光を放ち始めると、そんな感覚がずっとあります。世界に挑むように存在する姿は、驚くほど鮮烈で格好良く、それと同時に、センシティブな美しさも兼ね備えていると解釈しています。
— 被写体のみなさんはどのように選出されたのでしょう。
やはり自分の好みの被写体を選んでしまいます。今回は服そのものの力に埋もれてしまわないよう、個がぶれない、生きている事そのものが表現になってしまうような人を選出しました。
— 被写体と向き合う際に、親密さを引き出すために意識していることは?
私は人と付き合うのがとても下手ですが、被写体と向き合う時だけは、その人の美しさを真剣に探し、もっと理解したいと自然に思っています。その瞬間、私は相手に強い好意と関心を抱いていて、そのまっすぐな感情が写真の中では親密さとして立ち上がっているのかもしれません。
— 現代において写真が担う役割をどう考えますか?
世界が複雑になりすぎて、正しく語ることも、もう誰にもできなくなっています。だから私たちは正解を出す代わりに、「私はこれを信じたい」と写真によって立場表明するのだと思います。写真は、断言できない時代の、世界に向けた精一杯の私たちの声明文となります。
— 今回の作品を通して、観る人にどんな感情を持ち帰ってほしいですか?
これから先、世界が崩れながら変化を続けていくとしても、最後に有るのは愛かもしれない、と感じて貰えれば素晴らしいです。
- Edit : Miwa Sato(QUI)


