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ERDEM 2025秋冬コレクション、アーティストと被写体の間に存在する想像上の対話を描く

Mar 5, 2025
<ERDEM(アーデム)>が、ロンドン・ファッションウィークで2025秋冬コレクションを発表した。今シーズンは、ロンドンを拠点とする画家のケイ・ドナキーとのコラボレーションが実現した。

ERDEM 2025秋冬コレクション、アーティストと被写体の間に存在する想像上の対話を描く

Mar 5, 2025 - FASHION
<ERDEM(アーデム)>が、ロンドン・ファッションウィークで2025秋冬コレクションを発表した。今シーズンは、ロンドンを拠点とする画家のケイ・ドナキーとのコラボレーションが実現した。

デザイナーのアーデム・モラリオグル(以下、アーデム)とケイ・ドナキー(以下、ケイ)の二人は、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)で同時期に学んだものの、コラボレーションの実現はアーデムがケイに母親の肖像画を依頼した数年後に始まった。

アーデム「文字通りの表現ではなく本質を捉える彼女のアプローチは、私にとって本当に共感できるものが多かったです。彼女が、歴史上の人物や想像上の人物の両方を、固定されたイメージではなく感情として描く方法に魅了されました。これが、彼女の筆遣いを反映する構造と流動性の相互作用を取り入れ、時代を超越しながらも個人的なシルエットを作成するというインスピレーションを与えました。」

アーデムはケイが過去を詩的に描く方法に強く引き寄せられた。ケイの作品が持つ抽象的なアプローチと感情的な深みが、アーデムに新たなインスピレーションを与えたのである。

ケイ・ドナキーの肖像画は、ただの人物画ではない。彼女は「オーラ」と呼ばれる感覚的な要素を作品に込め、リアルな描写よりも、その人物が放つ雰囲気や情感を抽象的に表現する。顔を「感覚」として捉え、感情や記憶の「凝縮」として描くその手法は、まるで過去と現在の間に横たわる霧のようなものと言える。ケイにとって、肖像画は単なる表現の枠を超え、人物の魂やその時代の影を描き出す手段であった。

アーデムはこのテーマを自身のコレクションに見事に取り入れた。ケイの描く女性像の「感情」が、アーデムのデザインに見事に反映され、エーテル的な色彩や抽象的なムードが、アーキタイプ的な女性のシルエットと対比しながら新たな命を吹き込んでいる。

今シーズンのコレクションは、アーティストと被写体の間に存在する想像上の対話をテーマに据えた。<ERDEM>が提案するのは、ただのファッションではなく、ケイの肖像画に込められた感情や物語が、身にまとう衣服を通して現実となり、観る者に強い印象を与えるようなアートの延長線上にあるものである。

また、ケイの「時間の脚注」という言葉が示すように、このコレクションは単なる過去の再現ではなく、時間の流れの中で留まる影や魂、残された痕跡を形にしている。過去と現在が交差するその瞬間に生まれる美は、ただの装いではなく、感覚的かつ精神的な深みを持つ芸術作品へと昇華している。

ケイの作品が大胆に施されたドレスからスタートしたコレクションは、会場に展覧会のような空間を創り出した。

ボンディング素材をキャンバスにしたケイによる手描きプリントのアイテムも多数登場した。

<ERDEM>の代名詞でもある花柄や植物をモチーフにしたプリントのコートやドレスも登場。
マルベリーレッドのローズブーケオーバープリントを施したビスコーステーラリングのモールドアワーグラスコートは、カラフルな色使いながら、落ち着いた色味で構成され、華やかさと品性を合わせ持っている。

中でも注目したいのは、ショー後半で登場した花柄プリントが施されたテクニカルサテンが美しいスプライスコラージュカクテルドレス。
ケイの作品に見られる寒色の淡くて控えめな色彩に、ケイのアートワークプリントが組み合わされている。

<ERDEM>とケイ・ドナキーのコラボレーションは、ファッションとアートが交錯する特別な瞬間を捉えたものであり、単なる美的な表現を超えて、視覚を通じて心に訴えかける力を持っている。コレクションを通じて、過去と現在が融合し、衣服というキャンバスに新たな物語が織り成されていることを感じずにはいられない。

 
 


ERDEM(アーデム)

トルコ人の父とイギリス人の母の間にモントリオールで生まれたエルデム・モラリオグルは、2003年にロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートで修士号を取得。2005年に初のウィメンズコレクションを発表し、詩的でモダンな女性らしさを追求したことで、瞬く間に注目を集めた。<ERDEM(アーデム)>は、科学的に研究された物語と職人技の力を信じることを中心に、各コレクションを展開し、業界で独自の道を切り開いている。コレクションはミューズを念頭に置いて構成され、これまで語られることのなかった英雄的な女性たちの物語が描かれる。

ERDEM 2025AW COLLECTION はこちら

  • Text : Yukako Musha(QUI)

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