BOTTEGA VENETA 2026年ウィンターコレクション──ミラノの誇りが宿る装いに、手仕事の誇りを重ねて
ミラノの中心部、スカラ座やドゥオモからほど近い歴史的建造物パラッツォ・サン・フェデーレ。<BOTTEGA VENETA>の拠点でもあるこの空間が会場となった。会場には鮮やかな赤いカーペットが敷かれ、ロンドンを拠点とするデザイナー、マックス・ラムが手がけた椅子が整然と並び、観客は静かな緊張感のなかでランウェイの始まりを待つ。
ルイーズ・トロッターによる2シーズン目のコレクションが見つめたのは、ミラノという都市の装いだ。精巧に仕立てられたジャケットやコート、素材の質感を尊ぶワードローブ。公共の場に身を置くとき、装いを整えるというこの都市に根付いた美意識がそこにはある。直線的で重厚なスタイルの奥には、実のところ柔らかな感情が潜んでいるのだ。

ショーの幕開けを飾ったのは、ピークドラペルのブラックコート。大胆に張り出したショルダーラインが力強い存在感を放つが、ショルダーに丸みを持たせることで穏やかなニュアンスを添えている。ウエストからヒップにかけては緩やかな曲線を描き、身体に寄り添うフォルムを形成する。今季はそうした男性的な迫力と女性的な柔らかさが一着の中で共存し、ジェンダーの境界をゆるやかに横断するシルエットが印象を残した。
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随所にゆとりのあるパンツやスカートのシルエットが差し込まれ、自然と目が留まる。精緻なフォルムは硬質な印象にとどまらず、身体の動きに寄り添う柔らかさを備えていた。

今季のコレクションで何より目を引くのは、素材を通じた表現の拡張だ。メゾンの卓越したクラフツマンシップにより、ファーを想起させるテクスチャーがさまざまな素材で再解釈された。シルク、フィルクーペ、ニット、テクニカルファイバーによるファーは、ウェアのみならずジュエリーやシューズにも展開されていた。
クラシックなPコートは、マットなクロコダイルレザーやイントレチャートの技法を応用したフリンジ状の表現、毛足の長いベルベットなど、異なる質感で登場した。同一の型に異なるマテリアルを与えることで、ひとつのプロトタイプが持つ多面的な表情を引き出している。さらに、シアリングにブラッシュ加工を施しフォックスファーのような質感を生み出す試みも含め、視覚と触覚の双方に働きかけるアプローチが続いた。
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白と黒で構成されたアシンメトリーのフリンジスカートは、ウエストから斜めに流れる装飾が動きを生み、ミニマルなニットタンクトップとの対比によって立体感を際立たせる。鮮やかなピンクレッドのシャギー素材によるアンクル丈のドレスも見られた。素材の質感や装飾のリズムが、コレクションに視覚的な振幅をもたらしている。
ファーの質感を異素材で再構築するアプローチは、ラグジュアリーの価値を「希少性」から「手仕事そのもの」へと移行させる試みとも言える。そこでは素材の階層よりも、クラフトの思考と技術が主役となる。メゾンが長年培ってきた職人技は、現代のラグジュアリーを再定義する言語として機能しているようだ。
また、多くのルックに合わせられたニットキャップも重要な要素のひとつだ。ボリュームのあるアウターや構築的なシルエットに対し、頭周りをタイトにまとめることで全体のバランスを整える。素材やフォルムが生む緊張感をやわらげながら、装いを簡潔な印象へと導いていた。
ミラノの人々のワードローブは、優れた素材と仕立てゆえに長く受け継がれていく。今季のコレクションでは、その「受け継がれる」という感覚が、メゾンの手仕事と私的な記憶の双方を通しても表現された。
ノンナ(祖母)が大切にしていたイブニングパースや、父が履いていたシューズといった、世代を超えて受け継がれる記憶へのまなざしも重ねられ、衣服や小物は誰かの時間と結びつく器でもあることも映し出していた。
構築的でありながら柔らかく、厳格でありながら親密。都市の精神と個人の身体、過去から受け継がれる記憶と現在の創造性が織りなすなかで、<BOTTEGA VENETA>はミラノの誇りが宿る装いに、メゾンの手仕事の誇りを重ねてみせた。
BOTTEGA VENETA 2026 WINTER COLLECTION RUNWAY
BOTTEGA VENETA
https://www.bottegaveneta.com/
- All Photo : BOTTEGA VENETA
- Edit & Text : Yukako Musha(QUI)












