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ART/DESIGN

心地よいカフェの空間で 「本当にお気に入りのアート」と出会える WHAT CAFE|QUI的ギャラリー探訪

Aug 31, 2023
運河沿いにパブリックアートやカフェが並ぶ東京・天王洲エリア。このエリアにある「WHAT CAFE」は、明るく開放的な雰囲気のカフェであり、たくさんのアート作品が並ぶギャラリーでもあるユニークな施設だ。

こちらの「WHAT CAFE」について、2020年の立ち上げから携わるWHAT CAFEチームリーダーの阿食裕子さんに話をうかがった。

心地よいカフェの空間で 「本当にお気に入りのアート」と出会える WHAT CAFE|QUI的ギャラリー探訪

Aug 31, 2023 - ART/DESIGN
運河沿いにパブリックアートやカフェが並ぶ東京・天王洲エリア。このエリアにある「WHAT CAFE」は、明るく開放的な雰囲気のカフェであり、たくさんのアート作品が並ぶギャラリーでもあるユニークな施設だ。

こちらの「WHAT CAFE」について、2020年の立ち上げから携わるWHAT CAFEチームリーダーの阿食裕子さんに話をうかがった。

コーヒー片手に気軽に現代アートと触れられるギャラリー

QUI編集部(以下QUI):天王洲エリアには、ミュージアムやギャラリーコンプレックスなど、アートの施設が多くありますが、そうした中、WHAT CAFEはどのような施設なのでしょうか?

阿食裕子さん (以下阿食):より多くの方にアートを届けることと、若手アーティストを支援することを目的に生まれた施設です。若手アーティストや、若いコレクターをどう育てていくのかという部分に目を向けています。

WHAT CAFEチームリーダーの阿食裕子さん

QUI:美術館で絵を観るのは好きでも、ギャラリーに入ったり、作品を買うことって少し敷居が高かったりしますよね。でも、こちらはカフェと一緒になっていてふらっと入りやすいです。
ご飯を食べたり、コーヒーを飲んだりしながら、これだけのアート作品を見られる場所って、なかなか無いように思います。

阿食:そうですね。例えば、お客さんがコーヒーを持ったまま作品の近くに行くのって、運営側からするとヒヤヒヤするところもあります。でも、アート作品は、気を使わなきゃいけない部分と、一方で、マナーさえ守れば気軽に見ていいんだよっていうところも伝えていきたくて、食とアートの施設として運営してきました。

カフェとギャラリーの空間が一体となったWHAT CAFE

QUI:マナーを守ればもっと気軽に見ていいと思うと、アートをもっと身近に感じられるような気がしますね。ちなみに、カフェを利用せずに絵だけ見たり、逆にカフェだけを目的に利用しても良いのでしょうか?

阿食:もちろんです!お茶を目的にいらっしゃる方と、アートを目的にいらっしゃる方が半々くらいですよ。

カフェのフード・ドリンクのメニューも充実しています。近隣の展覧会と連動した特別メニューが販売されることも。

 

みんなの「いいな」が集まる場で 自分の「好き」を探せる展覧会

QUI:こちらでは、いつ来ても本当に多くのアーティストの作品が展示されていますね。こちらで定期的に開催されている「WHAT CAFE EXHIBITION」とは、どのような展覧会なのでしょうか?

阿食:「若手アーティストを一人でも多くご紹介したい」というのと、「たくさんのアーティストを一度にご覧いただくことで、その方のお気に入りのアートを見つけて欲しい」というのを目的に、毎回、多くのアーティストの作品が見られる構成の展覧会にしています。

「WHAT CAFE EXHIBITION vol.28」展示風景

QUI:一度に多くのアーティストと出会えるのは嬉しいですね。ギャラリーは数多くありますが、最初は、どのギャラリーに行けば自分の好きな雰囲気の作品と出会えるのか分からなかったりしますし。

阿食:まさにそこがポイントです。「どこのギャラリーに行けばよいかわからない」というのは、ギャラリーに敷居の高さを感じてしまう要因のひとつかなと思います。でも、一人好きなアーティストが見つかると、次の展示を見に別のギャラリーに行くきっかけになりますよね。

また、WHAT CAFEでは、ギャラリーとのコラボレーション展示も行っているので、それぞれのギャラリーごとの魅力もぜひ知っていただければと思います。

「WHAT CAFE EXHIBITION vol.28」より 「陶」の技法とストリートカルチャーを融合させた井上魁さんの作品《LOVE-2308》

QUI:展覧会はどれくらいの頻度で開催されているんですか?

阿食:月1回を目安に、年10回前後くらい開催しています。

QUI:そうすると、本当にいつ来ても毎回新しい作品と出会えますね。
展示されるアーティストは、どういった形で選定されているのでしょうか?

阿食:自分から売り込みに来られるアーティストの方もいますし、展示していたアーティストの方々が、別のアーティストの方を紹介してくださることも多いですね。コレクターさんから紹介される場合もあります。

そうしたいろいろな立場の人がオススメする「いいな」を集められる施設になっていて、それは他のギャラリーにはない部分かなと思います。

真田将太朗さん「WHAT CAFE EXHIBITION vol.28」展示風景

 

ポップなキャラクターと「ストリート」を舞台にしたプロジェクト|247POKOさん

開催中の「WHAT CAFE EXHIBITION vol.28」では、「CROSS(横断)」をテーマに、さまざまな領域を横断した作品を制作する14名のアーティストの作品が展示されている。

QUI:展示室の奥にある、ピンク色の雲型のキャラクターが目を引きますね。

247POKOさん「WHAT CAFE EXHIBITION vol.28」での展示風景

阿食:こちらは、247POKOさんの作品で、ピンク色の雲は「FA」というオリジナルキャラクターです。白い雲が夕焼けにそまってピンク色に見える、「マジックアワー」という現象をキャラクターにしています。

QUI:思わず部屋に飾りたくなる可愛らしさですね。同じキャラクターでも、つやっとした作品や、ラメ入りの作品、マットな質感の作品まで色々あります。

阿食:そこがポイントで、彼はこの「FA」を軸に、さまざまな表現を行っています。たとえば、大きいサイズの「FA」のぬいぐるみを街に置いて写真を撮ったり、通行人の人たちの反応を見たりするプロジェクトなども行いました。

247POKOさんの立体作品の展示下部には、雲の湿気を表現したフェイクの水滴も。また、その水滴で”隠れ”「FA」も描かれている。

QUI:キャラクターのかわいらしさに目がいってしまいますが、社会に介入していく現代アート作品でもあるんですね。

阿食:「FA」のポップさやグラフィティのような部分は「ストリートアート」の要素だと思うんですが、「ストリート」って、その名の通り街中にあるものですよね。そんな自分が主要的に過ごしている場所でプロジェクトを行い、社会に介入していくといった部分も含めて、「ストリート」感のある作品です。

 

3つの技法を組み合わせた独自の技法「獏嵌(ばくがん)」で作り出す モノクロームの世界|清川漠さん

QUI:こちらは、モノクロームの線が美しい作品ですね。

《BONSAI》/ 清川漠

阿食:こちらは、清川漠さんのBONSAI(盆栽)シリーズの作品です。「盆栽」って、実物を見た事ってありますか?

QUI:イメージとしてはすぐに浮かぶけれど…そういえば実際には観たことがないかもしれません。

阿食:盆栽って、現代では実際に観たり育てたりする人はあまりいないのに、日本人の心の中に強くある。そういったことに気づいて作られたのがこのシリーズです。

QUI:流れるような線が美しいですね。

左から《BONSAI》《BONSAI》/ 清川漠

阿食:彼女は、大学で、彫刻と版画、絵画といった3種類の技法を学んで、それらを組み合わせた「獏嵌(ばくがん)」というオリジナルの方法で作品をつくっています。具体的には、透明なアクリルパネルを削って、その中に絵具を流し込み、このとき彫った線の深さで濃淡をつくっているんです。

QUI:一見、太い絵筆でなぞったようにも見えますが、本当に、1本ずつの線が大切にされている作品なんですね。

 

たくさんの作品を観て話して… 本当にお気に入りの1枚と出会う

QUI:作品を拝見してきて、どの作品もとても素敵で、さらに、サイズや価格の面でも購入しやすい作品が、揃っているように感じました。

阿食:はい、そこはとても意識している部分です。「部屋に飾る」という観点で、おすすめしやすいサイズだったり、価格帯も最初の一歩として踏み出しやすい、数万円から30万円くらいの価格帯で作品をセレクトしています。

1点ものの作品だけでなく、グッズの物販コーナーも充実。

QUI:今回、作品をご説明いただいたことで作品により興味が持てました。展示を見ていて、「この絵気になる!」と思ったら、スタッフの方にいろいろ伺っても良いでしょうか?

阿食:もちろんです!「こんな質問していいのかな?」と躊躇することもあるかもしれませんが、WHAT CAFEでは気軽に「この作品ってどういう意味なの?」とか、気兼ねなく声をかけてみてください。

また、こちらにはアーティスト本人が在廊されていることも多く、本人から直接作品のことを聞けたりします。アーティストともぜひお話してみてください。

「気負わず、まずは気軽にお越しください」とお話する 阿食さん

QUI:ありがとうございます。最後に、これから「最初の1枚」を手に取ってみたいなという方に向けて、メッセージをいただけますか?

阿食:アートって「こう観なきゃいけないのかな?」みたいな、緊張した気持ちは取り払って、まずは色々な作品を観ることが、大事なのかなと思っています。

気軽にお越しいただいて、スタッフやアーティストと話をすると、作品の背景にあるすごく面白い話もたくさん聞けると思います。そういった中で、ぜひ自分の本当にお気に入りの1枚を見つけてみてください。

QUI:ありがとうございました。

 

「WHAT CAFE EXHIBITION vol.28」
会期:2023.08.25 – 2023.09.05
料金:FREE ENTRY
出展アーティスト:相川恵子 / 新埜康平 / 井上魁 / A2Z™ / 角谷紀章 / 川獺すあ / 清川漠 / 真田将太朗 / 杉谷一考 / NARI(LITTLE FUNNY FACE) / 247POKO / ムラタナナ / もりさこりさ / LILY NIGHT

 

WHAT CAFE
住所:〒140-0002 東京都品川区東品川2-1-11
営業時間:11:00 – 18:00(定休日なし)
※貸切イベント開催時は休業することがあります。
公式サイト
Instagram

 

  • ライター : ぷらいまり。

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