日本とカルティエ 半世紀の絆をたどる「結 MUSUBI」展の見どころ
舞台は左右対称の構造をなす表慶館。来場してすぐ目に飛び込んでくるのは、アーティスト澁谷翔氏による、歌川広重の『東海道五十三次之内』(1832年)にオマージュを捧げた「日本五十空景」。35日間をかけて全都道府県を訪れ、地方日刊紙の1面に空を描いた連作だ。<カルティエ>と日本、過去・現在・未来のつながりを象徴している。
日本がメゾンに影響を与えたアーカイブピース
建物右翼では、主に19世紀後半以降のルイ・カルティエによる日本美術コレクションを展示。鳥居をモチーフにしたミステリークロックや、蒔絵技法を用いたパウダーコンパクトに文具、桜や菊、結び目といった日本モチーフのジュエリーなどが並ぶ。日本の印籠にインスパイアされたヴァニティケースの中には、ココ・シャネルのために制作した品も。日本の影響をそこかしこに受けながら、独自のクリエイションに昇華してきたことがうかがえる。
カルティエ現代美術財団が注目してきたアーティストたちとの対話
いっぽう建物左翼の「カルティエ現代美術財団と日本のアーティスト」。こちらでは財団と交流の深い、国内外で活躍するアーティスト16名の作品を紹介。荒木経惟氏や森山大道氏、村上隆氏、杉本博司氏、川内倫子氏、横尾忠則氏、三宅一生氏、北野武氏らの写真や絵画、オブジェなどさまざまな作品が鑑賞できる。建物両翼の階段踊り場の壁面に展示された、束芋氏によるデジタルインスタレーションも見ごたえ抜群だ。
束芋 flow-wer arrangement 2018 建物右側の階段踊り場にて展示
トークセッションにおいて、<カルティエ>のイメージ スタイル&ヘリテージ ディレクターのピエール・レネロ氏は、「日本の芸術に影響を受けた個々の作品を超えて、<カルティエ>がすべての作品で使用する共通の言語が、日本の芸術から多くの面で影響を受けている」と指摘。また財団のディレクターであるエルベ・シャンデス氏も、「財団の役割は、さまざまな分野の多様なアーティストと出会い、作品を紹介し、自由な創作機会を提供すること。人と人、アーティストとアーティスト、観客と観客をつなぐ場を生み出すことです」と語った。
貴重なアーカイブジュエリーから現代アートまで。長きにわたる日本と<カルティエ>のつながりを、心ゆくまで堪能してほしい。
カルティエと日本 半世紀のあゆみ『結 MUSUBI』展 — 美と芸術をめぐる対話
会場:東京国立博物館 表慶館
住所:〒110-8712 東京都台東区上野公園13−9
会期:2024年6月12日~7月28日
開館時間:9:30~17:00(金・土~19:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日・7月16日(火) ※7月15日(月)は開館
料金:一般1,500円 大学生1,200円 ※高校生以下、障がい者とその介護者1名は無料
https://www.tnm.jp
- Photograph : Kei Matsuura(STUDIO UNI)
- Text : Kaori Sakai(QUI)
- Edit : Seiko Inomata(QUI)