エルメス財団のスキル・アカデミー「金属に学ぶ、五感で考える:夏のオープンクラス」、展示と体験から金属の可能性を探る
スキル・アカデミーは、自然素材に関わる職人技術や手わざの伝承、拡張、共有を目指すエルメス財団のプログラム。日本では2021年に活動を開始し、「木」「土」に続く3つ目の素材として、2025〜2026年は「金属(メタル)」をテーマに展覧会や出版、ワークショップを展開している。

スキル・アカデミー「金属に学ぶ、五感で考える:夏のオープンクラス」では、2026年春に中学生・高校生を対象に実施した「春のワークショップ」の報告展示と、4組のアーティストによるグループ展「結合」を紹介する。
「春のワークショップ」では、橋やタワーなど身体のスケールを超えたものづくりから、はさみや時計にまつわる職人の手わざ、彫刻、ダンス、音楽まで、さまざまな視点から「金属のスキル」を探究した。その成果を、参加者の言葉や実際に使用した道具、記録映像とともに振り返る。
グループ展「結合」は、金属のミクロな構造やメカニズムをめぐる科学・技術史を参照しながら、レオノール・セラーノ・リヴァス、Playfool、島田清夏、奥山慎の作品を通して、金属と身体、自然、テクノロジーの関係を考えるものだ。

Leonor Serrano Rivas《Here Be Dragons》(2025)Installation view Courtesy of the artist and carlier | gebauer Photo: Andrea Rossetti
レオノール・セラーノ・リヴァスは、電解溶液の中で金属の被膜を生成する電気鋳造を応用し、植物を金属の「第二の皮膚」で覆う作品を制作する。無機物である金属と有機物である植物を組み合わせることで、異なる素材が共存し、変化していく過程に目を向ける。

Playfool《a re(imitation) of Life》(2024)Installation view Courtesy of the artist Photo: Naoya Toita
ダニエル・コッペンとマルヤマ・サキによるアート・デザインユニット、Playfoolは、金属の甲羅を持つカメ型ロボットを発表する。周囲の環境に反応して自律的に動くロボットに触れる体験を通して、電気や電子機器の内部で働く、目に見えない金属の存在を身近に感じさせる。

Sayaka Shimada《R9+C9QP》(2020)Courtesy of the artist Photo: Great the Kabukicho
花火師としても活動する島田清夏は、花火の物質性や火薬学、文化的背景を研究し、作品制作へとつなげてきた。金属固有の色を生む炎色反応や、花火に用いられる素材に着目し、祝祭や鎮魂と結びついてきた花火を、物質と文化の両面から見つめ直す。

Installation view of the exhibition / Skills Academy “Metal Learning –Summer Class”, 2026|スキル・アカデミー「金属に学ぶ、五感で考える:夏のオープンクラス」展示風景(2026年) © Nacása & Partners Inc./ Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès
ジュエリーを手掛ける奥山慎は、伝統的な技法や手仕事を軸に、素材とのコミュニケーションから生み出されるフォルムを用いてサイトスペシフィックなアプローチを行う。空間にジュエリーと身体の親密なアニマを解放するかの如く、SKACの空間に奥行きをもたらしてゆく。
また、会期中の毎週金・土・日曜日には、申込不要の展示ガイドツアーを開催。解説を聞きながら展示を巡り、作品や制作技法を手がかりに、金属をより身近な素材として捉える機会となる。出入り自由のため、展示を初めて見る人にも参加しやすい内容だ。
プロフィール
レオノール・セラーノ・リヴァス(Leonor Serrano Rivas)
1986年、マラガ(スペイン)生まれ。同地を拠点に活動。前近代的な知識や見過ごされてきた技法に関する研究を起点に、彫刻、映像、舞台美術を横断する空間体験を制作する。近年の主な個展に「Here Be Dragons」(Carlier | Gebauer、ベルリン、2025)、「Para un ser sumergido」(Le Lait Centre d’Art、アルビ、フランス、2025)、「Natural magic」(ソフィア王妃芸術センター、マドリード、2022〜23)など。スレード美術学校で博士号を、ゴールドスミス・カレッジで美術学修士号を取得。
Instagram:@leoserranorivas
Playfool
ダニエル・コッペン(ロンドン生まれ)とマルヤマ・サキ(福島生まれ)によるアート・デザインユニット。ロンドンを拠点に活動する。あそびを媒介に、人間とテクノロジーの変化する関係を捉え、実験的なゲームやインタラクティブなインスタレーションを制作。Science Gallery(モンテレイ、メキシコ、2025)、アルスエレクトロニカ(リンツ、オーストリア、2024)、V&A Museum(英国、2022)などで作品を発表。CCBT(Civic Creative Base Tokyo)2023年度フェローシップ。
Instagram:@studioplayfool
島田清夏(Sayaka Shimada)
東京生まれ。同地を拠点に活動。大学で映像を学ぶ過程で花火と出会い、卒業後は花火師として活動。花火の物質性、火薬学、文化的背景に関する領域横断的な研究をもとに作品を制作する。東京藝術大学大学院で博士課程修了。近年の主なグループ展に「文化庁メディア芸術支援事業成果展」(東京、2026)、「ATAMI ART GRANT 2022」(静岡、2022)、「第12回恵比寿映像祭 - 時間を想像する-」(東京、2020)など。野村美術賞受賞(2026)。2025年にはドイツで開催された国際花火競技会で優勝。
Instagram:@sayatarou
奥山慎(Shin Okuyama)
ジュエリー・デザイナー。1982年、長崎生まれ。同地を拠点に活動。伝統的な技法や手仕事を軸に、素材とのコミュニケーションから生まれるフォルムを追求する。東京藝術大学工芸科卒業。
Instagram:@baugoheian
開催情報
スキル・アカデミー「金属に学ぶ、五感で考える:夏のオープンクラス」
会期:2026年7月15日(水)〜8月16日(日)
会場:SKAC(SKWAT KAMEARI ART CENTRE)
住所:東京都葛飾区西亀有3-26-4
開館時間:11:00〜19:00
休館日:月曜日・火曜日
※7/20(月・祝)、8/11(火・祝)は開館
主催:エルメス財団
アーティスト・トーク1:レオノール・セラーノ・リヴァス
日時:7月18日(土)14:00〜15:10
対象:中学生(13歳)以上
※英日の逐次通訳あり
人数:各回40名程度
申込:2026年6月23日(火)より/先着順予約制/ウェブサイトより
アーティスト・トーク2:Playfool
日時:7月19日(日)14:00〜15:10 対象:中学生(13歳)以上
※英日の逐次通訳あり
人数:各回40名程度
申込:2026年6月23日(火)より/先着順予約制/ウェブサイトより
展示ガイドツアー
日時:毎週金・土・日曜日 16:30〜17:00
対象:10歳以上
申込:不要、出入り自由