「ルーシー・リー展―東西をつなぐ優美のうつわ―」、旧朝香宮邸でたどる東西を結ぶ器のかたち
1902年、オーストリア・ウィーンに生まれたルーシー・リーは、ウィーン工芸美術学校で轆轤(ろくろ)を用いた制作に出会い、陶芸の道へ進んだ。作家として活動を続けるなか、1938年には戦争により亡命を余儀なくされ、制作の場をイギリス・ロンドンへ移す。轆轤(ろくろ)から生まれる優雅なフォルム、象嵌や掻き落とし技法による文様、釉薬による色彩は、リーの作品を特徴づける要素となった。

ルーシー・リー《青釉鉢》 1980年頃 井内コレクション(国立工芸館寄託) 撮影:品野 塁

ルーシー・リー《熔岩釉鉢》1980年頃 井内コレクション(国立工芸館寄託) 撮影:品野 塁

ルーシー・リー《マンガン釉線文鉢》1970年頃 井内コレクション(国立工芸館寄託) 撮影:品野 塁
本展は、ウィーンでの初期制作、ロンドン移住後の出会い、東洋陶磁との関わり、そして1970年以降に確立されていく独自のスタイルへと、リーの歩みを時代ごとにたどる。
ウィーン時代の紹介では、ウィーン工房の創設者のひとりであるヨーゼフ・ホフマンをはじめ、同時代の作家たちの作品とともに、リーの初期作品が並ぶ。建築や家具、衣服、日用品までを含む「総合芸術」の考え方が広がっていた時代の空気と、リーの造形との関わりに触れられる内容だ。

ルーシー・リー《鉢》1926年頃 個人蔵 撮影:野村知也

上野リチ・リックス(装飾)/ヨーゼフ・ホフマン(形)《リキュールグラス》 1929年[1917年(形)/1929年(装飾)] 京都国立近代美術館蔵
ロンドン時代には、ナチスの迫害を逃れて渡英した後の制作に焦点が当てられる。イギリス陶芸界で中心的な役割を担っていたバーナード・リーチとの出会い、戦時中の陶製ボタン制作、そして工房を訪れたハンス・コパーとの関係が取り上げられる。リーの作品だけでなく、リーチやコパーの作品もあわせて紹介され、彼女の制作を取り巻いていた環境が具体的に浮かび上がる。

ルーシー・リー《ボタン》(一部) 1940-50年代 公益財団法人岡田文化財団パラミタミュージアム蔵

ハンス・コパー《キクラデス・フォーム》1972年 国立工芸館蔵 撮影:アローアートワークス
さらに本展では、リーと東洋のやきものとの関わりにも目を向ける。リーが渡英した当時、バーナード・リーチを中心とするスタジオ・ポタリーの陶芸家たちは、日本、中国、朝鮮などの東洋陶磁を参考にしていた。1952年にイギリスで開かれたダーティントン国際工芸家会議では、日本から柳宗悦と濱田庄司が招聘され、リーも彼らと交友を深めたという。会場では、リーチや濱田庄司らの作品とともに、東西の陶芸が交差する背景をたどることができる。

ルーシー・リー《白釉鎬文花瓶》1976年頃 国立工芸館蔵 撮影:品野 塁
1970年以降の作品では、現在広く知られるリーの作風に焦点が当てられる。小さな高台をもつ鉢、マンガン釉や掻き落とし技法による文様、釉薬と形態、装飾が一体となった造形。1989年に草月会館で個展が開かれたことをきっかけに、日本でもルーシー・リーの人気は高まっていった。

ルーシー・リー《ピンク象嵌小鉢》1975-79年頃 国立工芸館蔵 撮影:アローアートワークス

ルーシー・リー《白釉ピンク線文鉢》1984年頃 井内コレクション(国立工芸館寄託) 撮影:野村知也
会場となる東京都庭園美術館の本館は、1933年に朝香宮家の自邸として竣工したアール・デコ建築。邸宅としての空間のなかで見るリーのうつわは、美術館の展示室とは少し異なる距離感をもって立ち上がる。
プロフィール
ルーシー・リー
1902年、オーストリア・ウィーン生まれ。ウィーン工芸美術学校でミヒャエル・ポヴォルニーに陶芸を学び、轆轤を用いた制作に取り組む。1938年、ナチスの迫害を逃れるためロンドンへ渡り、作陶を続けた。ろくろによるフォルム、象嵌や掻き落とし技法による文様、独自の釉薬による色彩で知られる。1995年没。
開催情報
ルーシー・リー展―東西をつなぐ優美のうつわ―
会期:2026年7月4日(土)-9月13日(日)
会場:東京都庭園美術館(本館+新館)
住所:東京都港区白金台5-21-9
開館時間:10:00-18:00(入館は閉館の30分前まで)
夜間特別開館:8月7日、14日、21日、28日(金)はサマーナイトミュージアム2026のため、21:00まで開館(入館は閉館の30分前まで)
休館日:毎週月曜日
※7月20日(月)は開館、7月21日(火)は休館
観覧料:一般 1,400円(1,120円)/大学生(専修・各種専門学校含む)1,120円(890円)/高校生・65歳以上 700円(560円)
※本展は日時指定予約制。
※中学生以下無料。
※()内は20名以上の団体料金、事前申請が必要。
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳を持参の方とその介護者2名は無料(ミライロID含む)。
※第3水曜日(シルバーデー)は65歳以上無料(予約不要)。7月29日(水)・8月5日(水)はフラットデー開催日のため通常よりも入場者数を制限。
主催:東京都庭園美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)、東京新聞
企画協力:国立工芸館
特別協力:井内コレクション、京都国立近代美術館
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
ウェブサイト:www.teien-art-museum.ne.jp
Instagram:@teienartmuseum
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