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ART/DESIGN

DESIGNART TOKYO 2025 「UNDER 30」、若き感性が東京を染める10日間

Oct 27, 2025
「東京の街全体がミュージアムになる10日間」。
2017年に始まったDESIGNART TOKYOは、表参道、渋谷、六本木、銀座などの都市を舞台に、世界中からアート、建築、インテリア、プロダクト、ファッション、テクノロジーなどの多彩なクリエイションが集結するイベントだ。

その中でも注目したいプログラムのひとつは、30歳以下の若手クリエイターに光を当て、未来のスターを発掘する「UNDER 30」。今回、DESIGNART TOKYOの発起人である青木昭夫と、選出された5組のクリエイターに見どころを聞いた。

DESIGNART TOKYO 2025 「UNDER 30」、若き感性が東京を染める10日間

Oct 27, 2025 - ART/DESIGN
「東京の街全体がミュージアムになる10日間」。
2017年に始まったDESIGNART TOKYOは、表参道、渋谷、六本木、銀座などの都市を舞台に、世界中からアート、建築、インテリア、プロダクト、ファッション、テクノロジーなどの多彩なクリエイションが集結するイベントだ。

その中でも注目したいプログラムのひとつは、30歳以下の若手クリエイターに光を当て、未来のスターを発掘する「UNDER 30」。今回、DESIGNART TOKYOの発起人である青木昭夫と、選出された5組のクリエイターに見どころを聞いた。

「UNDER 30」に込められた思い

DESIGNART TOKYOは、青木昭夫をはじめとする6名の発起人によって2017年に始動したデザイン&アートイベントだ。その中のプログラム「UNDER 30」では、国内外からの応募者の中から毎年5組を発起人らが選出し、無償で展示の機会を提供している。

なぜ、東京でDESIGNART TOKYOというイベントをスタートし、その中で「UNDER 30」というプログラムを行っているのだろうか?

— DESIGNART TOKYOを始めた背景は?

青木昭夫(以下、青木): きっかけは2016年。当時、東京オリンピックの競技場やロゴの混乱、TOKYO DESIGN WEEKでの火災事故などで、デザインの業界に不信感が広がり、若手や企業がチャレンジングなものを発表する場が失われかねない危機感があったんです。そうした環境を打破したいという想いから、発起人で資金を出し合ってDESIGNART TOKYOをスタートしました。国際的な発信の場にしたかったので、バイリンガルで運営することも当時から大切にしています。

— 若手クリエイター支援プログラム「UNDER 30」を設けた狙いと、30歳で区切った理由とは?

青木:10年後・20年後を見据え、若手がステップアップするためのきっかけが必要だと考えました。nendoさんや吉岡徳仁さんら、いま国際的に活躍するデザイナーも、若いうちにデザインイベントに関わる事が活躍のきっかけのひとつになっているんです。実際、「UNDER 30」をきっかけに国際的に活躍される方も増えてきて、意義を感じています。

年齢をあえて30歳以下で区切ったのは、洗練されたものよりも、粗削りでも良いからアグレッシブな若手をプッシュしていきたいと思ったからです。いま、世界中のデザインシーンがコモディティ化しやすくなっている中で、それを逸脱する独創性を持ち、その上で、心に訴えかけられるものがあるか?といった点などを基準に選出しています。

— いま“デザイン”の役割をどう捉えていますか?

青木:既存の物のデザインに優劣をつけるのではなく、今までになかった視点で、「まだ世の中にないけれど、必要とされるもの」を生み出していくことがデザインのひとつの責任だと考えています。

一方で、所有した時に気持ちが救われたり、高揚感に満たされたりといった部分も大事だと思います。そんな風に皆さんの生活に潤いを与えられるものと出会う機会として、DESIGNART TOKYOを活用してもらえたら嬉しいなと思っています。

— DESIGNART TOKYOはどう楽しむのが良いでしょうか?

青木:渋谷PARCOの隣にあるDESIGNART GALLERYを起点に、表参道、六本木、銀座など、さまざまなエリアを巡るのが王道です。キックボードサービスなどを活用すると回りやすいですね。

おすすめは2・3日間かけて巡ること。基本的に無料ですし、様々なイベントも開催されます。作り手と直接話せる機会が多いのも魅力ですね。一部は購入も可能で、数千円から購入できる作品もありますよ。作品との出会い、人との出会い、その両方のワクワク感を楽しんでください。積極的に交流すれば、見るだけでは得られない価値がきっと広がります。


青木昭夫
1978 年東京生まれ。株式会社ミルデザイン 代表取締役/クリエイティブディレクター。
2009年 MIRU DESIGNを始動。建築、インテリア、プロダクト、ファッション、アートなどさまざまなクリエイターのネットワークを活かし、企業のブランディングや展示会・展覧会の企画・プロデュースを行う。2015年~2019年 ASAHIKAWA DESIGN WEEK クリエイティブディレクター、2017年よりのべ20万人以上が訪れる国内最大級のデザイン&アートフェスティバル「DESIGNART TOKYO」の代表、2023年よりOsaka Art & Designの総合プロデューサーを務める。ミラノデザインウィークの最新情報、マップをまとめた「Description for」やパブリックアート支援活動「1% for Art」の啓蒙を行い、クリエイティブ産業発展のために若手支援や情報発信、人材教育などの環境づくりに尽力している。

続いて、2025年の若手クリエイター支援プログラム「UNDER 30」に選出された5組のクリエイターに、それぞれ3つの質問をした。

1. 今回の展示作品:今回の「DESIGNART TOKYO 2025」の展示作品はどんな作品か教えてください。
2. 表現手法・素材への思い:表現に使用している「手法」や「素材」についてのこだわり・思いを教えてください。
3. デザインとの向き合い方:制作/デザインにおいて、大切にしている価値観や姿勢を教えてください。

Kaining He — 素材を違った視点から見つめ 本質を突き止めたい

参考画像

1. 今回の展示作品

《時間の贈り物》は、四季の流れとともに儚く変化していく自然をモチーフにデザインしたお線香です。「お香を見る、時間を大事に味わう」という、言語や文化を超えて普遍的な共感を呼び起こす体験を提供します。この体験を通して、見る人それぞれの心の中に異なる情景が浮かび上がってくれたらと思います。

今回は、実物を展示するのとともに、映像や印刷物を用いたインスタレーションも行う予定です。また、このお線香は京都の女性支援団体と協働で制作、販売も行うので、伝統、地域、社会、そして個人の物語がものづくりの過程で結びついています。作品の背後にあるストーリーも含めてご覧いただければと思います。

2. 表現手法・素材への思い

お線香は何千年も前から、世界中で広く使われているのに、その用途も形式も固定されています。私はそこに着目し、異なる使い方や形状を模索する中で、実験的なアプローチへと展開しました。たとえば、形を丸くすると鮮やかな赤色が生まれるなど、ささやかな現象から変化を見出すことができました。そして、ものの造形や製法における新規性だけでなく、存在そのものが人の内面にある何かと結びつくような表現を探求しています。

香料には伝統的な素材を用いています。中でもこだわった「沈香」は、木が自らの傷を癒すために分泌した樹脂が、長い年月を経て熟成し、香りを放つ香料です。その生成の過程自体が、「時間」や「再生」という大きなテーマとも深く響き合っています。

3. デザインとの向き合い方

私はものづくりをするとき、素材を通常とは少し違った目線から観察して、本質を突き止めたいと考えています。また、すべてのものは消耗されてなくなっていきますが、その変化の過程全体をデザインの目線から考えて、どう演出しどう届けるのかを大切に考えていますね。見た目の効果だけでなく、人の気持ちを動かせるようなものを制作したいと考えています。


Kaining He(カガイネイ)(デザイナー)

中国・杭州に生まれ、高校卒業後に日本に渡り多摩美術大学や武蔵野美術大学を卒業したKaining He は、プロダクトからグラフィックまで幅広い分野を横断し、素材の物質性への観察を出発点に、ものづくりと人文学とのつながりを探求。詩的な世界観をベースにした創作活動を行っています。デザイン事務所での勤務を経てロンドン芸術大学へ留学後、現在は中国と日本の両方で活動しています。DESIGNART TOKYOで発表する「時間の贈り物(The Present of Time)」は、乾燥前は粘土のように柔らかく、自由に形を変えることができる「お香」の特性を活かして、造形や原料が燃焼に与える影響を探求し、お香が灰へと変わる過程をデザインに取り入れています。蕾の形をしたお香は灯すと早春の梅のように艶やかな光を放ち、葉の形をしたお香は秋の紅葉のように鮮やかに燃え、やがて枯れていく。春には花が咲き誇り、冬には静かに雪が降り積もる。「「今、この瞬間」に意識を向ければ、「Present」は「今」という時間からの「贈り物」でもある」という禅の思想と深く結びついたお香の体験を提供します。
Instagram:@neing_works

Selected by 小池博史 / NON-GRID
華やかで賑やかな「映え」が好まれる現代に、このお香は日本の美意識「侘び寂び」を映し出します。これまでのお線香にひと工夫デザインを施すことでこんなにも愛らしくその香り漂う空間に身を置きたくなる感覚を呼び起こします。素朴さと静けさ、移ろいゆく時間の中に宿る美しさを感じ、日本人の心をそっと再認識させてくれるお香です。

展示場所:東京都渋谷区神宮前5-7-12
展示期間:2025年10月31日(金)〜11月9日(日)
公開時間:11:00〜19:00
詳細はこちら

Nomadic — 受け手がその後の生活へ実践へと接続できる 余白のあるデザイン

参考画像

1.今回の展示作品について

《BUY METHOD, KEEP BECOMING》は、Nomadicのメンバーのうち、笠松・品川・福島の3人によるものです。笠松は紙で照明をつくる過程を記録したブックレットを、品川は型を用いたセラミック作品を、福島は円の幾何学を展開する立体作品を制作しました。それぞれ異なる素材と手法で、方法を重視した多様な姿を示します。

会場では、販売も視野に入れ、形や寸法に応じた渡し方や梱包の検討プロセスも展示予定です。

2. 表現手法・素材への思い

笠松の作品では、照明を「自身の手で作る」という、実践の重要性を伝えたいと考えています。紙という素材は誰もが親しみ、手に入りやすく、実践しやすい素材である点がポイントです。

品川の作品は、「量産が画一的な生産にとどまらないためにはどうしたらよいか?」という問いが先にあり、セラミックという素材と型の手法にたどり着きました。

福島は、日々の生活における観察や直感を作品へと繋げています。私たちが当たり前すぎて見過ごしている現象こそ、実は大きな可能性を秘めていることを作品で示しています。

3. デザインとの向き合い方について

重視しているのは「作品が開かれているかどうか」という点です。作り手と買い手という一方的なコミュニケーションに留まらず、受け手がその後の生活の中で実践へと接続できる作品と渡し方を目指しています。

他者が参与する隙間のない閉じた完成品ではなく、人や場所性といった変数を受け入れる余白を持ったデザインであることが大切だと考えています。


Nomadic(デザイナーコレクティブ)

笠松 祥平/ Shohei Kasamatsu、品川 及 / Itaru Shinagawa、福島 拓真 / Takumi Fukushima
2023年より活動を開始したNomadicは、閉じた枠組みを作るのではなく、揺らぎや余白のある創造性をエンジニアリングによって生活に実装することを取り組みとしています。DESIGNART TOKYOで発表するのは「開かれたモメンタム」。作品は閉じた完成品ではなく、文脈によって形を変え、環境に応答し、外部と切り離せない存在として生成される、生きたメソッドです。本展示では、それらのメソッドが場所や領域を周遊し、つながりを得ていく姿を、物質的・空間的に提示します。
公式サイト
Instagram:@_nomadic_collective

Seleeted by 川上シュン/artless Inc.
余白のあるMethodという彼らのコンセプトには、日本的な“ゆらぎ”や“間”を感じます。
その中に「厳密さの中に不確かさを内包する」という深みを期待し、ここから生まれるデザイン作品がどのような着地とクオリティで発表されるのか、楽しみにしています。これからの成長に期待を込めて、セレクトさせていただきました。

展示場所:東京都港区南青山5丁目4-35 たつむら青山ビル
展示期間:2025年10月31日(金)〜11月9日(日)
公開時間:11:00〜17:00 / 土日〜18:30 水休(最終入場は30分前迄)
詳細はこちら

閃 — “ご近所”だからこその 視点の「深度」と「軽快」さ

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1. 今回の展示作品について

《within the neiborhood.》は、拠点である福井県越前市で、職人と日常的に交わりながら、越前和紙の新しい可能性を探ったプロジェクトです。今回は、塗装した木と和紙を組み合わせて新しい質感を与えた家具や、和紙をロールスクリーンのように使った扉を持った棚など、メンバーそれぞれが制作した、和紙ならではの特性を活かしたプロダクトを展示します。

2. 表現手法・素材への思い

作品に利用した和紙は職人さんとともに素材の段階から共創してきました。工房に通い、コミュニケーションをとりながら最適な質感を共に探って生まれたかたちです。自分たちも職人さんたちもものづくりが好きなので、対話の中でアイデアが広がっていきます。

伝統工芸の素材を扱っていますが、タイトルの「閃き(ひらめき)は近所にある」という感覚で、発想を広げて、一緒に面白いものづくりを考え、それを表現をしていけたらと考えています。その結果として、工芸の持続や認知につながってほしいとも思っています。

3. デザインとの向き合い方

作品を通して、産地や素材の魅力を伝えられるのは、デザインの大きな価値だと感じていますね。そうして、外部の人に興味を持ってもらうきっかけをつくりつつ、一方では「近所」であるからこそ、この土地のものを深く掘り下げ、拡張させて、ひらめきを新しい産地の製品へとつなげていけると考えています。

単に産地の素材を扱うのではなく、それを日常に溶け込む良いプロダクトに落とし込む手段として、デザインを使いたいですね。視点の「深度」と「軽快」さを活かして活動していきたいと考えています。


閃 (セン)(クリエイティブチーム)

大西弘晃/ Hiroaki Onishi、上田樹一/ Kiichi Ueda、高田 陸央/ Rikuo Takata、深治遼也/ Ryoya Fukaji
福井県越前市を拠点に活動する同世代クリエイターによるチーム「閃」は、上田樹一、大西弘晃、高田陸央、深治遼也の4人から成り、それぞれデザイナー、家具製作、メーカー、小売など異なる分野でのバックグラウンドを持っています。それぞれの専門性を交差させながら、地域ならではの素材や文化に現地で触れ、それぞれが手を動かすことを通して新たな価値や解釈の創出を目指しています。DESIGNART TOKYOでは、和紙、打刃物、箪笥、漆器、焼物と様々な工芸産地としての歴史を持つ福井県越前市の土地周辺をあえて「近所」と呼び、活動の皮切りとしてごく身近に存在するマテリアルである越前和紙に焦点を当てた作品「within the neighborhood」を発表します。ご近所さんでもある職人とのコミュニケーションや素材を自らの手で触れて体感することを通して、一般的に測られやすい尺度だけでない、なるべく素直な独自の尺度をもって素材の価値を見出します。産地としてではなく、近所としてこの地を捉えるからこそ生まれる視点の深度と軽快さを大切にした試みです。
公式サイト
Instagram:@sen_fukui

Selected by アストリッド・クライン、マーク・イサム/ Kein Dytham architecture
SENの素材・場所・時間への探求に心を動かされました。福井の地域伝統をルーツとし。
和紙や、工芸を用いた作品は優さと強靭さを併せ持ちます。身近な素材を詩的で現代的な造形へと昇華させ、流子を被起させる和紙の作品や、折り紙のようなサイドテーブルが印象的でした。地域の記憶を尊重しつつ未来を示す姿勢に、伝統への深い敬意から生まれる革新を感じます。

展示場所:東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア 2F ぺラフィネ前
展示期間:2025年10月10日(金)〜11月5日(水)
公開時間:11:00〜20:00
詳細はこちら

金森由晃 — 気を張っていないと見失ってしまう 何気ない日常の風景

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1.今回の展示作品について

《情景 -scene (or memory)-》は、日常の中で目にする何気ない風景をモチーフにした作品です。激動の時代を生きる私たちにとって、そうした風景はいつの間にか忘れられていく存在だと思います。特別な出来事が起こるわけでもなく、気に留めることもない場面。ただ何も起こらないことこそが日常で、そんな日常を忘れてはいけないものだと感じています。作品を通して、鑑賞者自身の記憶の片隅にある情景をすくい上げるきっかけになればと思っています。

2. 表現手法・素材への思い

街の風景のなかにある些細な現象をヒントに素材を選んでいます。例えば、何気なく見た窓の光が美しく感じられたことがあります。目隠し用のルーバーが日焼けで黄変し、そこに光があたることで微妙なグラデーションが生まれていました。その現象をもとに、窓の構造を参考にした照明型の作品に落とし込んでいます。
誰もが一度は経験したことのある質感を目指して制作していて、その質感をトリガーに鑑賞者の記憶と繋がっていったら嬉しく思います。

3. デザインとの向き合い方

日常生活の中で、ふと心が動く瞬間がアイデアの元になることが多く、その瞬間の感覚を大切にしています。その正体を様々な角度から探っていきますが、気を張っていないと簡単に見失ってしまうものです。模索しては何度も立ち返り、その作品に初めて出会う瞬間を想像しながら少しずつ形にしていきます。私の作品は繊細な現象を扱うことが多いのですが、ある一定のラインを越えないと魅力が伝わりません。そこが要なので、細部に時間をかけて丁寧に調整しています。


金森由晃(デザイナー・アーティスト)

金森由晃は、東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻修了。日常のささやかに息づく現象を切り取り、インスタレーションや立体作品を主に制作しています。また、2017年からクリエイティブユニット「Oku Project」としての活動も展開しています。 DESIGNART TOKYOでは、街の風景をモチーフにした「情景 – scene (or memory)-」を発表します。「私たちの日常には安価で画一化されたプロダクトが溢れ、隅々まで資本主義という大きな物語に巻き込まれています。しかし、ありきたりな量産品は、同時に個々の日常や人生とも密接に結びついています。本作は、画一化された風景の中から、私たちの記憶の隅にある情景を拾い上げます。街中にありふれた量産品から生じる何気ない現象を丁寧に再構築することで個々の記憶を喚起し、そこに生きる私たちの物語は決して同じではないということを思い出させます。」
Instagram:@yoshiakikanamori

Seleeted by 青木昭夫 / MIRU DESIGN
金森由さんの作品「情景-scene (or memory)-」は日常の風景をモチーフにしたもので、頭の片隅にあった記憶をフラッシュバックさせられました。きっと見た人も思い出の曲を聴いた時に人生の断片がってくるように、懐かしさやほっとする気持ちに癒されてしまうでしょう。共感を生み出す新たなデザインのあり方が画一化時代に風穴を開ける存在になるのではと思いました。

展示場所:JR銭瓶橋高架下B 東京都千代田区大手町2-5-11 
展示期間:2025年10月31日(金)〜11月9日(日)
公開時間:11:00〜20:00(10/31は18:00まで)
詳細はこちら

TORQ DESIGN — 精密さと偶然性の掛け合わせで 素材の認識を刷新する

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1.今回の展示作品について

《Pyro PLA Project》は、3Dプリンタで出力した樹脂の成形品を直火で焼き上げ、溶かして固めることで、釉薬のような独自の質感を創出する取り組みです。最後に手加工を仕込むことで、同じデータをもとに異なる形や表情の作品が生まれます。

これは、「積層する」という3Dプリンタの性質で縛られていた表現から開放し、3Dプリンタと樹脂の可能性を模索する試みです。結果として、樹脂製品が今まで入り込むことのできなかった領域へと進出していくことを目指しています。

2. 表現手法・素材への思い

緻密なデジタル設計と、偶然性を伴う“焼く”工程を組み合わせました。これは、クラフトとデザインの境界を横断し、樹脂という素材の認識を刷新したいと思ったからです。

樹脂が含有する成分によって、焼いた後の表情には差が生じます。美しいテクスチャを生み出すには、入念な素材のリサーチと焼き上げの技術が必要になるため、何度も実験を繰り返しながら制作してきました。

3. デザインとの向き合い方

TORQ DESIGNは、プロダクトデザインを軸としつつ、家具や什器などの手作業による製造にも取り組んでいます。

デザイナーとしての視点と、つくり手としての視点の両面から様々な事象と向き合うことを基本姿勢としてデザインを行ってきました。制作したプロトタイプをスタジオで実際に使用しながら検証するというプロセスを重視しており、果たすべき役割や可能性をひとつひとつ確かめながら、本質を探っています。


TORQ DESIGN(デザインスタジオ)

末瀬篤人/ Atsuhito Suese、川島凜/ Rin Kawashima、伊藤陽介/ Yosuke Ito
末瀬篤人、川島凜、伊藤陽介の3人によって構成されるTORQ DESIGNは、神戸芸術工科大学在学中に設立され、2024年より神戸を拠点として本格的に活動を開始しました。プロダクトデザインを軸としつつ、手作業による製造やクラフトにも取り組んでいます。使い手が創造性を発揮できる余白をデザインに残すことを
大切にしながら、さまざまな事象を独自に解釈し、それらに形を与えています。DESIGNART TOKYO で発表するPyro PLA Project(パイロ ピーエルエー プロジェクト)は、3Dプリンターによる出力物の表面を直火で熱し、積層の軌跡を溶かし混ぜ合わせることで、新たなテクスチャを生み出す取り組みです。陶芸家が粘土と向き合い成形していくように、データ上で細部まで調整して造形したのち、「焼く」という手作業による仕上げの工程を踏むことで樹脂素材を工芸の世界に近づけます。
公式サイト
Instagram:@torqdesign

Selected by 永田宙郷 / TIMELESS
3Dプリンターと脂に焼成を加えることで、「素材と向き合い。偶然を受け入れながら美を探る」という工芸の本質を現代へと軽やかに結びつけた点に惹かれました。量産と一品、無然と必然の対比を自然に想起させるだけでなく、デザインとしての独自性も際立ち、工芸とデザイン双方の可能性を広げる前向きでユニークなプロジェクトとして高く評価しました。

展示場所:JR銭瓶橋高架下B 東京都千代田区大手町2-5-11
展示期間:2025年10月31日(金)〜11月9日(日)
公開時間:11:00〜20:00(10/31は18:00まで)
詳細はこちら

DESIGNART TOKYOの発起人である青木は、「DESIGNARTを巡ることは“自分磨き”にもなると思います。チャレンジングなデザインと出会うことで、ご自身の活動に対してのインスピレーションが湧いたりと、良い影響に繋がっていくと思います。」と語った。

なかでも「UNDER 30」には、素材や技法の本質を見つめ直し、独自の視点から生み出されたプロダクトと多く出会うことができ、普段とは少し違う“ものの見方”に、感化されるのではないだろうか。

東京の街全体がミュージアムになる10日間「DESIGNART TOKYO 2025」。街をめぐりながら、積極的にお気に入りのプロダクトや、独創的なアイディアを探してみよう。

DESIGNART TOKYO 2025 開催概要
会 期:2025年10月31日(金)〜11月9日(日)の10日間
エリア:表参道・外苑前・原宿・渋谷・六本木・銀座・東京
主催:DESIGNART TOKYO 実行委員会
発起人::青木昭夫(MIRU DESIGN)/川上シュン(artless)/小池博史 (NON-GRID)/永田宙郷(TIMELESS)/アストリッド・クライン(Klein Dytham architecture)/マーク・ダイサム(Klein Dytham architecture)
オフィシャルウェブサイト
Instagram:@designart_tokyo

  • Text : ぷらいまり。
  • Edit : Seiko Inomata(QUI)

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