當真あみ – 進化する女優
女優・當真あみが『水は海に向かって流れる』で長編実写映画初出演を果たした。
自分が考えていたまま素直に演じた
― 原作の漫画や脚本を読んで、どんな作品だと感じましたか?
あたたかいシェアハウスのお話かと思ったんですけど、(広瀬すずさん演じる)主人公の榊さんは昔負った心の傷を抱えていて、その傷が大きく深くて。すごく考えさせられる作品だと思いました。
― 今回當真さんが演じられた泉谷楓のことは、どのような人だと捉えましたか?
自分の気持ちにすごく素直な人だと思いました。行動力もあるので、榊さんに自分の気持ちを伝えに行ったり、(大西利空さん演じる)同級生の熊沢くんに自分の気持ちを伝えたり。私はそんな風に真っ直ぐ気持ちをぶつけることができないので、すごいなと思いながら演じていました。
― ご自身と近い部分や似ているところもありましたか?
自分にはない要素がありつつも、考え方は似ている部分もありました。例えば、楓ちゃんが気になっている熊沢くんは榊さんのことを気にしていて、そのことに対して嫉妬とか悔しさがありながら、でも相手が榊さんじゃ勝ち目がないかもしれないと感じてしまう気持ちはすごく共感できましたし、考え方が似ているなと思いました。
― ちなみに當真さんだったら、熊沢くんにどのように寄り添いますか?
私は楓ちゃんのようには話しかけないかもしれないですね。熊沢くんはすごく鈍感だし、全然楓ちゃんの気持ちには気づいてくれないので……(笑)。ずっと追い続けていても苦しい想いをするだけなのかも……と、諦めてしまうかもしれません。
― 楓役を演じたことで気付いたことや見えてきたことはありましたか?
楓ちゃんは真っ直ぐ熊沢くんにぶつかっていったからこそ、こじれることもなく、気持ちがしっかり伝わったんです。私は人に素直に気持ちをぶつけることが得意ではないんですけど、真っ直ぐ伝えることって重要なんだと楓ちゃんを見て気付かされました。
― 告白のシーン、すごくかわいらしかったです。
脚本を読んだとき、楓ちゃんのワードセンスすごいなって思いました。なかなか出てこない言葉なので面白いなと思いつつも、どうやって自然に言えばいいんだろうと考えました。
― 前田哲監督とは役についてどんなお話をしたのでしょう?印象的な言葉はありましたか?
「自分なりの楓でいいよ」という言葉ですね。最初はすごく緊張していたんですけど、監督のその言葉で緊張がほぐれたというか、少し気が楽になりました。撮影前に監督と大西くんと私とでリハーサルをさせてもらったんですけど、監督が「自然に」と言ってくださったので、自分が考えていた楓ちゃんのままでいいのかなと素直に演じることができました。
― 熊沢くんを演じた大西利空さんとは同世代ですよね。共演されていかがでしたか?
同い年ということも相まって、撮影が始まってからも現場で一緒にいてくれる機会が多くて心強かったです。リラックスできました。大西くん本人が熊沢くんみたいにすごく優しい雰囲気だったので、現場の空気を和ませてくれる存在でした。
― あたたかな撮影現場だったんですね。
みなさん本当に優しかったです。広瀬さんも「寒くない?」って声をかけてくださったり、すごくあたたかい現場でした。
知らないことを知れることはすごくワクワクする
― 2020年にデビューしてからCMやドラマ、声優などいろいろな作品に出演されていますが、仕事との向き合い方に変化はありますか?
やっぱり演じることって難しい部分もありますし、まだ全然できていないなと感じることもたくさんあります。大変なこともありますけど、できない部分はこれからどんどん直していきたいですし、そうやって向き合っていくことが楽しいと感じるようになってきています。
― 自分の芝居をテレビやスクリーンで観たときはどう感じましたか?
これまでは自分が映っているものを見るのはお母さんが撮った写真くらいだったので、すごく不思議な感じがしました。自分ではない自分が誰かと喋っている姿を観ている感覚で。自分が思っていたものと違うというギャップもあって、慣れるまでは違和感がありました。
― 仕事を始めてから、驚いたり学んだりすることも多いのでは?
いろいろな現場に行く度に、新しいことをたくさん勉強しているところです。「CMってこういう風に撮ってるんだ」とか、「バラエティ番組はこんな進行でやってるんだ」とか、知らないことを知れることはすごくワクワクしますし、楽しいです。
― その姿勢、素敵ですね。好奇心は旺盛なタイプですか?
どちらかというと、そうだと思います。ただ自分の中ではベストを尽くしていても、もっと努力をされていたり勉強していたりする人もいると思うので、負けないように頑張っていきたいです。
― どんな部分が自分の強みだと感じていますか?
ポジティブに考えるタイプなので、そこまで物事を引きずらずに気持ちを切り替えていけるところですね。悔しいと思ったことも引きずるのではなく、次に活かしていこうと考える部分は私の強みだと思っています。
― すごいですね。ちなみに気持ちはどう切り替えて?
普段から物事を深くずっと悩んでいることがあまりないんです。悩んでいても解決しないのであれば、諦めるか次に進むかしないと考えるタイプなので。
― これからもいろいろな作品や役との出会いがあると思いますが、どんな役者になっていきたいですか?
ひとつの作品が終わってから出演した作品を観返すと、自分が思っていたようにできていないなとか反省点がいっぱい出てくるんです。でも、そういうことを何度も繰り返していって、どんどん進化していける女優さんになりたいです。完璧とまではいかなくても、役の土台の部分をしっかり作れるようにしていきたいです。
― 憧れている役者さんはいますか?
憧れの女優さんは長澤まさみさんです。今のお仕事を始めてから、意識をしてドラマや映画を観るようになったんですけど、その時に放送していたドラマ「ドラゴン桜」や映画『コンフィデンスマンJP』に出演されていて。ここまで全然違う役柄を演じられていることが本当にかっこいいなと思ったんです。私も長澤さんのように幅広い役柄を演じられるようになりたいです。
― では最後に、これから映画『水は海に向かって流れる』をご覧になる方へメッセージをお願いします。
過去に傷ついた経験がある榊さんの気持ちを、熊沢くんの真っ直ぐで優しい気持ちが溶かしていくところがこの作品の見所だと思っています。映画を観た人の心の中にあるもやもやしたものを、優しくて温かい気持ちに触れることで一緒に溶かして、流してもらえるんじゃないかなと思うので、ぜひいろいろな人に観ていただきたいです。
Profile _ 當真あみ(とうま・あみ)
2006年、沖縄県生まれ。2020年10月にスカウトされ、2021年7月にCMデビュー。「カルピスウォーター」の14代目CMキャラクターに起用される。「妻、小学生になる。」(22/TBS)でドラマ初出演を果たし、「オールドルーキー」(22/TBS)、「Get Ready!」(23/TBS)など話題作に出演。ZIP! 朝ドラマ「パパとなっちゃんのお弁当」でヒロインを演じ、『かがみの孤城』(22)では初の劇場アニメ出演にして主演声優を務めるなど、今大注目の若手女優。映画『水は海に向かって流れる』で長編実写映画初出演を果たした。6月16日公開の「忌怪島」の出演も控えている。
Instagram Twitter
Information
映画『水は海に向かって流れる』
2023年6月9日(金)公開
出演:広瀬すず
大西利空 高良健吾 戸塚純貴 當真あみ/勝村政信
北村有起哉 坂井真紀 生瀬勝久
監督:前田哲
原作:田島列島「水は海に向かって流れる」(講談社「少年マガジンKCDX」刊)
脚本:大島里美
音楽:羽毛田丈史
主題歌:スピッツ「ときめきpart1」(Polydor Records)
©2023映画「水は海に向かって流れる」製作委員会 ©田島列島/講談社
- Photography : Mikako Kozai(L MANAGEMENT)
- Styling : Junko Omura
- Hair&Make-up : SAKURA
- Art Director : Kazuaki Hayashi(QUI)
- Text : Sayaka Yabe
- Edit : Yusuke Takayama(QUI)