河合優実 – より良い方へ
デビューから4年目を迎えた今年、初の主演となる映画『少女は卒業しない』が劇場公開を迎える。
どの立場からでも協力し合えることが理想的
― 本作『少女は卒業しない』が映画初主演となりました。
事務所に入る前の自主映画では主演したこともあったんですけど、商業映画では初ですね。
― 主演ということで、心構えに違いがでてくるものでしょうか?
主演だって思いすぎないようにしていたんですけど、もっと良いものにしたいという思いは普段より強くありました。
― 役だけでなく、より作品自体に関わりたいというような?
やっぱり主演だと、監督と積極的に話せる時間や、スタッフさんと関われる時間が多くなるのが大きくて。中川(駿)監督も意識的に私たちと同じ目線に立とうとしてくださったので、なんでも話せましたし、共有できました。
― 主演でない作品でも、もっとコミットしていきたいという意識が強くなりそうですね。
主演だから発言しやすいというのもどこかしっくりこないし、本当はどの立場からでも協力し合えることが理想なんでしょうね。実際は時間も限られているしなかなか難しいことですけど、今回、自然にその協力体制を作ってくれた監督に感謝しています。
― 河合さんが演じた山城まなみは、どんな少女だと捉えて、なにを大切に演じましたか?
まなみは、周囲とバランスを取りながら1人の世界を作っている子で。普段、友達と話しているときと、(窪塚愛流さん演じるまなみの彼氏の)駿のことを想っているときのギャップを意識しました。
― 窪塚愛流さんとは初共演でしたか?
お父さん(窪塚洋介)とは共演させていただいたことがあり、その舞台挨拶みたいなときに来ていて顔を合わせたことはあったんですけど、共演は初めてでした。
― 窪塚さんの印象は?
窪塚くんは、ちょっと人っぽくないというか(笑)。
― どういうことでしょう(笑)?
不思議な存在なんですよね。キャストみんなの中でも、ちょっと異質なオーラを持っていて。お父さんもすごく独特のオーラがあるじゃないですか。声や話し方もお父さんとそっくりだったり、お芝居でも思いついたことをパッとやってみたり。そういう窪塚くんの個性は、私がお芝居するときにもヒントにさせてもらいました。
― 撮影時に強く印象に残っているシーンはありますか?
卒業式のシーンではほぼ全キャストが集まって、みんなはそこでオールアップだったんです。でも私はまだ最後のシーンの撮影を残していて、みんなが挨拶をして去っていっちゃう感じが本当の卒業式みたいだなって。自分が取り残されている状況がまなみの心情とも重なって、なんとも言えない気持ちになりました。みんなが卒業できて嬉しい反面、すごく寂しさもあるような。
― 完成した作品をご覧になっていかがでしたか?
本当にみんなの純粋さが詰まった映画だなと。こういうものが作りたい、こういうことをやってみたいという、すごくピュアな気持ちをすべてのスタッフやキャストが持ち寄っていて、爽やかさを感じました。
別れは、前に進むためにあるような気がする
― 河合さん自身はどういう高校時代を送っていましたか?
高校時代は“なんとか長”とか“なんとかリーダー”とか、よくやっていました。
― 学級委員長とか?
そうです。出し物がすごく多い学校だったので。たとえばダンスとかみんなで発表してくださいとなったときには率いる立場が多かったですね。
― それは自分から進んで?
小学校、中学校からそういう立場になることが多かったんですけど、最初は誰も手を挙げないから自分が手を挙げていて。そのうち推薦されるようになり、それが染みついて自分からやるようになったんだと思います。
― 映画づくりでリーダーといえば映画監督が思い浮かびますが、河合さんは自分で映画を撮りたいとは思いませんか?
ゼロから作ることにも興味はありますけど、今は思わないですね。誰かが書いたもの、誰かが作っているものに、演じるという立場から一緒の船に乗ることが今は楽しいです。
― 高校の卒業式では、どんな思い出が残っていますか?
卒業式、私も答辞を読んだんです。
― すごい。まなみと一緒ですね。
先生とやりとりしながら書き直したり、添削したり。そのことを思い出して、パソコンに残っていた当時の文章を読んだら長くて、長くて。
― 周囲からの反響はありましたか?
別のクラスの子のお母さんが良いスピーチだと言っていたと、母親から聞いたことは覚えています。でも長すぎました、本当に。あなたが言いたいことなんて、そんなに聞きたくないよ、みたいな(笑)。答辞とか送辞って不思議な文化ですよね。
― 卒業に限らず、人生にはいろんな別れがあると思うんですけど、別れを経て前に進むためにはなにが必要だと思いますか?
自分が経験した別れや節目を思い出すと、あまりそのことに執着しすぎないようにしていたように思います。別れって、前に進むためにあるような気がしていて。次にやるべきことがあれば、別れの辛さも乗り越えられるのかなと。
― 前に進むことで乗り越えていく。そう考えると辛い別れも少し肯定的に受けとめられるかもしれません。
そう思います。
― 卒業を控えた高校3年生ってすごく多感な時期ですけど、そのころの自分になにか声をかけるとすればどんなことを伝えてあげたいですか?
なんだろう……安心してって伝えますかね。この仕事でいこうと決めた時期だったので。進路も急に変えて、演劇系の大学にして、事務所を探して。突然舵を切ったので、周りの友達や先生からは心配されることもあったし。私も強がりながらもすごく不安だったので、安心して、大丈夫だよって言ってあげたいです。
― ご両親から反対は?
ダンスをしていたので、人前に立つことを仕事にしたいということは言っていて、「全然良いじゃん」という反応だったんです。でも、いよいよ高校の卒業が近づいて、私が「事務所に応募していい?」と言い始めたら、「本気だったの? いやいや無理だよ」って結構揉めました(笑)。
― 今の活躍はご両親もうれしいでしょうね。
むしろ興味がなくなってきているような……。
― まだ卒業から3年ですけど、早くないですか(笑)?
周りの友達から教えてもらっているみたいです。「お宅の娘さん、これ出てますよ」って(笑)。
― それにしてもさまざまな作品への出演が絶え間ないですよね。
いや、めっちゃ休んでますよ。
― よかったです。忙しい中でも大切にしている時間はありますか?
お風呂に入るのは好きです。サウナとか銭湯とか、結構行きますね。
― ととのいに。
汗をかくのが気持ちいいです。あとはお散歩して、ボーっとしたり。
― 1回クリアにする。
はい。
― では最後に、これからの人生で追い求めていきたいことを教えてください。
周りの人を大切にしながら、幸せになりたいです。
― 俳優としてはいかがですか?
いつも、より良い方を選んでいきたい、ということでしょうか。自分で意識したことはないんですけど、負けず嫌いだねとか、向上心があるねと言われることが結構あって。たぶん無意識に、常にもっと良くなっていきたいという思いがあるのかもしれません。
― 簡単なようで難しいですよね。よりラクだとか、より儲かるとか、選びがちなので。
よりおもしろいとか、より価値があるものを、常に更新していきたいですね。
Profile _ 河合優実(かわい・ゆうみ)
2000年生まれ。東京都出身。2019年デビュー後、数々の新人賞を受賞。2022年は第14回TAMA映画賞<最優秀新進女優賞>、第35回日刊スポーツ映画大賞<新人賞>、第44回ヨコハマ映画祭<助演女優賞>を受賞。主な出演作に「サマーフィルムにのって」、「由宇子の天秤」、「ちょっと思い出しただけ」、「愛なのに」、「女子高生に殺されたい」、「冬薔薇」、「PLAN 75」、「百花」、「線は、僕を描く」、「ある男」など。公開待機作に「ひとりぼっちじゃない」(2023年3月10日公開)がある。
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Information
映画『少女は卒業しない』
2023年2月23日(木・祝)より新宿シネマカリテ、渋谷シネクイントほか全国公開
出演:河合優実、小野莉奈、小宮山莉渚、中井友望、窪塚愛流、佐藤緋美、宇佐卓真/藤原季節
脚本・監督:中川駿
原作:朝井リョウ「少女は卒業しない」(集英社文庫刊)
© 朝井リョウ/集英社・2023映画「少女は卒業しない」製作委員会
- Photography : Daisuke Sasaki
- Styling : Tatsuya Yoshida
- Hair&Make-up : TAKAE KAMIKAWA(mod's hair)
- Art Director : Kazuaki Hayashi(QUI)
- Text&Edit : Yusuke Takayama(QUI)