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見上愛 – 自分と素直に向き合う

May 7, 2025
人との出会いが、人生を前に進めてくれる。
映画『かくかくしかじか』で、漫画家を目指す主人公の友人・北見を演じた見上愛。本作の撮影を振り返るとともに、自身の人生において「先生」「挫折」「夢」「運」などといかに向き合ってきたのか話を聞いた。

見上愛 – 自分と素直に向き合う

May 7, 2025 - FILM
人との出会いが、人生を前に進めてくれる。
映画『かくかくしかじか』で、漫画家を目指す主人公の友人・北見を演じた見上愛。本作の撮影を振り返るとともに、自身の人生において「先生」「挫折」「夢」「運」などといかに向き合ってきたのか話を聞いた。

 

ai mikami

 

応援するだけじゃない、正義と優しさ

― 観終わった方たちが自然と前を向ける、エールのような作品だと感じました。見上さんはできあがった作品をご覧になって、どのように受け取りましたか?

ひとりの人間に、真正面から向き合ってくれる人の大切さをすごく感じました。そんな人が自分にもいたかなと考えたら、やっぱりいたんですよね。中高時代、いろんな先生たちがしっかり向き合ってくれて、私の人生の指針を一緒に作ってきてくれた。そういう人たちのことを思い出す作品でした。

― そんな先生方の中でも、とくに印象に残っている方はいますか?

(大泉洋さん演じる)日高先生に似ている先生が……。

― 強烈ですね(笑)。

竹刀は振り回していないんですけど(笑)。個人塾のおばあちゃん先生で、生徒はみんな同じ空間にいるけど、ひとりひとりに向き合ってそれぞれに合わせた勉強を教えてくれるんです。日高先生の絵画教室の雰囲気と似ていて、見ていてリンクする部分がありました。

― 日高先生もその塾の先生も、人のために必死になれるところが本当にすごいですよね。本作で見上さんが演じた北見は、永野芽郁さん演じる主人公・明子の友人ですが、何を大切にして演じましたか?

北見は明子に対して、要所要所で「そんな甘くないやろ」と口癖のように言っているキャラクターで。明子を肯定して応援するだけじゃなくて、それを言葉にすることが彼女の正義であり優しさなんだろうなと捉えていました。

― 否定的な言動って、ともすれば物語にブレーキをかけてしまうこともあると思いますが、ちゃんと物語を前へと進めてくれるキャラクターになっていました。北見と明子のバランスが良いからなのかな。

そうですよね。全然違う2人に見えて、お互いに美術が好きとか、どこか流れているものが一緒なんだろうなと思いました。

― 永野さんとは初共演ですか?

初めてでした。すごくかわいくて、透明感もすごいんです。天真爛漫でありながら、ちょっとクールな部分もあるところが魅力的で。できあがった作品を観ても、明子が100%良い子というわけじゃないところがおもしろくて、そういうところも憎めないというか、愛されるキャラクターだなと思いました。

― 大泉さんはいかがでしたか?

いらっしゃるだけで現場が明るくなる方ですよね。宮崎弁もものすごくお上手で、(方言の)先生からも褒められていました。私はどうしても、方言を練習してしゃべっているという感覚があったんですけど、大泉さんも永野さんもそれを感じさせなくて。

― 方言に苦労されたようですね。

苦労しました。おじいちゃんやおばあちゃんもみんな東京なので、方言を聞く機会もあまりなくて。音程を探りながら感情を乗せてしゃべることが難しかったです。しかもその時、別の作品で京都弁も練習していたので混ざっちゃって、「今のは関西弁だよ」って指摘されたり。

― エンドロールには、方言の監修で東村アキコ先生もクレジットされていました。

そうですね。東村先生やご親戚の方もいらっしゃって、しっかり教えていただきました。

― 宮崎弁の中でも、東村先生の地元の方言が忠実に再現されているということですね。お話を聞いていると、楽しそうな現場だなと感じました。

東村先生が宮崎のおいしいマンゴーを差し入れしてくださったり、ご親戚の方々がお昼にスープを作ってくださったり。人の温かさやホスピタリティをすごく感じましたし、気候も良くて居心地の良い場所でした。

 

運って他の人が運んできてくれるもの

― 明子も北見も、日高先生のもとで「描くこと」に本気で向き合いますが、見上さん自身が人生で最も打ち込んだものはなんでしょう?

うーん……。俳優の仕事になるのかな。

― 俳優業でいえば、見上さんは順調にキャリアを築いているイメージがあります。ご自身の中で挫折やフラストレーションを感じるときもありましたか?

今もそんなことだらけです。たとえば舞台をやったときには、客席の後ろのほうまで同じように伝わる声の出し方や身体表現が全然できなくてすごく苦労しましたし、映像のお仕事でもできないことがたくさんある。結果として順調に見えているかもしれないけど、毎日順調というわけではないですよ。

― そうやってうまくいかないことには、どのように向き合っていますか?

とにかく分析するようにしているかもしれません。客観的に見ることをすごく大事にしているので、なぜその失敗をしたのかをしっかり分析して、どうやったらうまくいく可能性があるのかを前向きに捉えるようにしています。

― 本作で描かれた高校生たちのように、将来に向けて夢と不安を抱えた10代に声を掛けるならどんなアドバイスを?

明子は小学生のころから将来やりたいことが決まっていましたが、私も舞台の演出家になりたい、舞台に関わる裏方の仕事をしたいと、やりたいことが比較的すぐに見つかっていて。

でもそれって、本当にラッキーなことなんですよね。だから夢や目標が見つかっていない人も嫌な気持ちになってほしくないし、前向きに生きていけたら良いなと思うんです。

まわりと比べるとすごく焦るし、疲れちゃう。誰にどう思われるかを気にせず、自分の得意なこと苦手なことは何か、好きなもの嫌いなものは何か、そういう自分と素直に向き合う時間を取ってみると、新しく見えてくるものもあるかもしれません。

― 2026年春から放送されるNHKの連続テレビ小説「風、薫る」では主人公の1人として出演が決定するなど、近年は俳優としてさらに大きく躍進されています。現在のご自身の状況をどのように受け止めていますか?

運に恵まれたなと。運って他の人が運んできてくれるものだと思っていて。だからそういう人たちに出会えたことが幸せです。

― 運ばれてきた運を逃さずキャッチできたんでしょうね。

それも自分でキャッチしたかはわかりません。目の前まで持ってきて、置いてくれたのかも(笑)。

― でもそう考えると、年々まわりに対する感謝も強くなっていきそうです。

そうなんです。

― これからもまだまだ先に進んでいくと思うんですけど、どういう俳優に進化していきたいですか?

役者の仕事だけに縛られず、いろんな表現をしていけたら良いなと。あとは作品のことだけじゃなく、現場のことも考えて動かなきゃと思うことも増えているので、みんなが嫌な気持ちをせずに働ける現場を作っていきたいです。

 

Profile _ 見上愛(みかみ・あい)
2000年10月26日生まれ。東京都出身。2019年にデビュー以降、映画・ドラマ・舞台・CMと活躍の場を広げる。近年の出演作は、主演を務めた映画「不死身ラヴァーズ」、Netflixシリーズ「恋愛バトルロワイヤル」や、ドラマ「マイダイアリー」、「119 エマージェンシーコール」、「正直不動産ミネルヴァSPECIAL」など。大河ドラマ「光る君へ」で、藤原彰子を演じ大きな話題となり、2026年前期連続テレビ小説「風、薫る」では、ヒロイン一ノ瀬りんを演じる。

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Information

映画『かくかくしかじか』

2025年5月16日(金)公開

出演: 永野芽郁、大泉洋、見上愛、畑芽育、鈴木仁、神尾楓珠、津田健次郎、有田哲平、MEGUMI、大森南朋
原作:東村アキコ「かくかくしかじか」(集英社刊)
監督:関和亮
脚本:東村アキコ、伊達さん
主題歌:MISAMO「Message」(ワーナーミュージック・ジャパン)

配給:ワーナー・ブラザース映画

映画『かくかくしかじか』公式サイト

©東村アキコ/集英社 ©︎2025 映画「かくかくしかじか」製作委員会

  • Photography : Kazuma Yamano
  • Styling : Satsuki Shimoyama
  • Hair&Make-up : Kenji Toyota
  • Text&Edit : Yusuke Takayama(QUI)

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