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佐藤新(IMP.) × 渡邉美穂 – 自分の心が向かう場所へ

Jun 11, 2025
映画『青春ゲシュタルト崩壊』でW主演を務めた佐藤新(IMP.)と渡邉美穂。
高校生たちの自己の喪失と再生を描いた本作を通して、ふたりが改めて見つめた“演じること”と“生きること”とは。

佐藤新(IMP.) × 渡邉美穂 – 自分の心が向かう場所へ

Jun 11, 2025 - FILM
映画『青春ゲシュタルト崩壊』でW主演を務めた佐藤新(IMP.)と渡邉美穂。
高校生たちの自己の喪失と再生を描いた本作を通して、ふたりが改めて見つめた“演じること”と“生きること”とは。

17歳の自分たちに戻って役と向き合った日々

― まず、おふたりは本作への出演をどのように受け止めましたか?

渡邉美穂(以下、渡邉):お話をいただいて、まずタイトルに引きつけられました。「青春」に「崩壊」って、穏やかではないなと(笑)。漫画が原作の作品は何作品か出演したことがあったんですけど、小説が原作の作品はあまり経験したことがなかったので、個人的には新しい挑戦だなと思いました。

佐藤新(以下、佐藤):僕はそもそも映画に主演すること自体が初めてだったので、作品云々より先に「主演ですか?」って。

渡邉:それはなるね。

佐藤:しかも伝えられたのが、IMP.のデビュー曲「CRUISIN’」を歌番組で披露する5分前ぐらいで。「映画主役決まったね、おめでとう、いってらっしゃい」みたいに送り出されて、動揺しながらパフォーマンスしたことをよく覚えています(笑)。

― 初共演とのことですが、お互いにどんな魅力を感じましたか?

佐藤:壁を作らずに、コミュニケーションを取りやすい空気感を作ってくれたことが、すごくありがたかったです。僕は初めての主演ということもあって、稽古場では平静を装っていましたが、実際は本当にビクビク、バクバク、ガチガチで。渡邉さんの人柄に救われた部分がたくさんありました。

― W主演のパートナーとして、すごく心強いですね。

渡邉:私もお会いした瞬間に、「すごく明るい人だな」という印象を抱きました。そしてグループで活動されているだけあって、人と関係性を築き上げることがすごくお上手な方だなと思って。ほとんど共演シーンがない方ともたくさんお話をされていたり、佐藤さんのシーンが終わってからも現場に残って撮影の様子を見守ってくださったり。私は人と打ち解けるまでに時間がかかってしまうタイプなんですけど、たぶん佐藤さんだからすぐに心もオープンにできたんだと思います。

― お互いに支え合える、素敵な関係性ですね。それぞれの役にはどのように向き合って演じましたか?

渡邉:私たちの役は17歳の設定だったので、7個、8個下を演じたんですけど。

佐藤:ドキドキしたね。久々に制服を着られたのがうれしくて。

渡邉:気持ちがシャキッとしましたね。

佐藤:(佐藤さんが演じた)聖は高校のときの自分と重なる部分が多い子でした。1人の友だちのことについてすごく悩んだり、ちょっと一匹狼な感じがあったり。学生時代の自分とも照らし合わせながら演じました。

― 演じるにあたって準備したことはありますか?

佐藤:まず筋トレで筋肉をちょっと大きくしました。僕、けっこう痩せ型なので。

― 聖は水泳部だから。

佐藤:そうなんですよ。メンバーに筋トレマスターがいるので指示を受けながら、リハの合間にやったり、寝る前にもやったり。やれることはやったかなと。

― 渡邉さんはいかがでしょう?

渡邉:私も(渡邉さんが演じた)朝葉と似ている部分が多いなと思いました。バスケ部というのも同じでしたし、チームの中で本音を出せないタイプだというのも自分と重なって。朝葉が自分の考えをグッと飲み込むシーンも多く、私にもこういう感覚があったなと懐かしく思いながら演じさせていただきました。

演じる際に大切にしたことはありますか?

渡邉:朝葉は「青年期失顔症」を発症し、それを知られるとみんなから失望されてしまうんじゃないかと、周囲に悟られないように取り繕いながら過ごしていきます。そんな葛藤を常に抱えながらも、もがいて戦う姿を大切にしたいと考えながら演じていました。

― 青春時代には多かれ少なかれ、誰もが人に言えない悩みを抱えているものですよね。

佐藤:一番揺らぎやすいときですから。

渡邉:繊細だったんだなと思います。

― おふたりも高校時代は繊細でしたか?

渡邉:ガラスのハートだよね(笑)。

佐藤:この仕事ができるとは思えないメンタルでしたね。

渡邉:でも今はこんなに逞しくなっちゃって。

佐藤:強くなりました。

― 社会で生きていくうえで強くあることは必要だと思いますが、おふたりが本来の自分らしく生きていくために大切にしていることはありますか?

渡邉:最近気づけたことなんですが、まわりの人って自分が思っているほど自分のことを気にしてないんだなって。自分が「やばい、やっちゃった」ってミスをしても、意外とみんな覚えていない。もちろん反省はするんですけど、あまり引きずらなくなって、私はだいぶ生きやすくなりました。

あとは20代になってから、「世界はこんなに広いんだ」ということもわかってきて。この作品を観てくれる若い方にも伝えたいんですけど、必ずしも今あなたが置かれている場所がすべてじゃないんだよと。世界は広くて、他にも選択肢があって、自分の人生においての運命的な出会いがこれからいっぱいある。もっと広い視野を持って生きていくと心が楽になると思います。

― 本作でもまさに学校、そして部活という狭い世界の中での悩みが描かれていました。

渡邉:でも今思うと、10代のころは私も学校がすべてではあったんですけど。

佐藤:僕も同じで、すごく落ち込んで、考え込んでいたときに、「まわりは思った以上に考えていないから気にするな」と言ってもらったことがあって。それからは何かミスをしてしまってもすぐに落ち込まず、「昔に比べて今はここまでできているし、別に気にしなくていいよね」と冷静に受け止められるようなりました。客観視することを大切にしています。

― とはいえ表に出る職業だから、切り替えるのは難しそうです。

渡邉:極論、死ぬわけじゃないしなって。ほどよく楽観的って大事です。

佐藤:そうだね。自分の芯が崩れなければ大丈夫。

 

葛藤も糧に変えて歩む、俳優としての今とこれから

― 本作でのW主演など、俳優として目覚ましいキャリアを築かれていますが、お芝居自体に楽しさは感じていますか?

渡邉:はい。大好きです。

佐藤:僕も大好きです。ただ、デビュー前はがむしゃらにお芝居を楽しんでいたんですけど、今はようやくお芝居の難しさに気づき始めて、いい意味で壁にぶつかっている感覚があります。もっと上手くなりたい、もっと感情を理解できるようになりたい。そのためにはどうすればいいんだろうって、めちゃくちゃ考えている時期ですね。

― 渡邉さんは壁にぶつかったと感じたことはありますか?

渡邉:常に自分に絶望していますよ。明るく絶望している(笑)。

佐藤:それが表に出ないからすごいと思うよ。

渡邉:もちろん現場では自分のベストを出せるように頑張っているんですけど、いざオンエアされたドラマを客観的に観たら、「もっとできたな」「こうすればよかったな」と思ってしまうことも多くて。

でも最近、自分が変わったなと思うのが、同世代の方のお芝居をいっぱい観るようになったこと。今までは悔しさや嫉妬もあって、なかなか目を向けられなかったんですけど、盗めるものは盗んでいけばいいんだと。もちろん誰かを模倣するだけではいけないですけど、引き出しを増やしていく作業ってすごく楽しいなと思えるようになりました。

― 理想の俳優像などのビジョンはありますか?

渡邉:本作のように主演という形でやらせていただくこともあるんですけど、どこに置いてもいい歯車になるよねと思ってもらえる役者になることが、今の自分の目標です。出るべきところは出て、引くところはちゃんと引いてまわりを立てるお芝居ができると、役や作品の幅がもっと広がるのかなと。どんな現場にもいてほしいと思われる役者になりたいですね。

佐藤:僕も似た感じになっちゃうんですけど、どこに行ってもスッと馴染めるようになりたいです。今はお芝居をもっと頑張りたくて、もっと勉強しなきゃいけないと思っている最中なので、自分が俳優としてさらに成長できたら具体的なビジョンが見えてくるのかなと思っています。

― そのときがすごく楽しみです。

佐藤:期待していただけたらうれしいです。

― 最後に、これから『青春ゲシュタルト崩壊』をご覧になる方へのメッセージをお願いします。

佐藤:朝葉と同じような悩みを抱えた方たちに、選択肢ってひとつじゃないよということが伝わればいいなと思っています。この作品を観て、ちょっとでも気持ちが楽になってくれたらうれしいです。

渡邉:私は撮影させていただく中で、自分の意識が外側にばかり向いていたんだなって気付かされました。最終的には自分で決めなきゃいけないところも、他人の声やその場の雰囲気に委ねてしまっていた部分がたくさんあったなと。

本当に大事なのは、自分がどうありたいかということなんですよね。自分が何を好きで、何をやりたくて、誰と一緒にいたいのか。この作品を通して、生きていくうえでの本質を改めて感じることができました。みなさんも何かに悩んだときには、今の自分の心に従って生きていくことの大切さを思い出してもらえたらいいんじゃないかなと思います。

佐藤:言語化がすごすぎる……。コメントの半分、僕にください(笑)。

 

Profile _ 佐藤新(さとう・あらた)
2000年9月1日生まれ、東京都出身。デジタルシングル「CRUISIN’」で世界同時配信デビューを果たしたIMP.のメンバーでありセンター。近年の出演作に「春の香り」がある。6月23日にはTBSドラマストリーム「三人夫婦」の主題歌「Cheek to Cheek」がリリース予定。

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Profile _ 渡邉美穂(わたなべ・みほ)
2000年2月24日、埼玉県生まれ。ドラマ「SHUT UP」(TX/23年)、「あなたの恋人、強奪します。」(ABC/24年)、連続テレビ小説「虎に翼」(NHK/24年)、「ラブライブ!スクールアイドルミュージカル the DRAMA」(MBS/24年)など女優として活躍。映画『あたしの!』(24年)では初W主演となった。

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blouse ¥44,000・layered pants ¥52,800 / MUVEIL (MUVEIL 03-5615-8605), earrings ¥12,100 / ABISTE (ABISTE 03-3401-7124), right hand ring [reference product]・left hand ring ¥35,200 / GiN (GiN http://ginjewelrytokyo.com), sandals ¥26,400 / GINZA Kanematsu (Ginza Kanematsu 6-chome Main Store 03-3573-0077)

 


 

Information

映画『青春ゲシュタルト崩壊』

2025年6月13日(金)全国公開

出演:佐藤新(IMP.)、渡邉美穂、田辺桃子、新井美羽、水橋研二、濱田龍臣、藤本洸大、河村ここあ、福室莉音、愛来、戸田菜穂 / 瀬戸朝香
原作:丸井とまと「青春ゲシュタルト崩壊」(スターツ出版刊)
主題歌:「青空」マルシィ(UNIVERSAL SIGMA)
脚本:三浦希紗
音楽:牧戸太郎
監督:鯨岡弘識
企画・プロデュース:横山祐子
プロデューサー:伊藤聖
配給:NAKACHIKA PICTURES
制作プロダクション:AX-ON

映画『青春ゲシュタルト崩壊』公式サイト

©映画「青春ゲシュタルト崩壊」製作委員会

  • Photography : Shunto Sato
  • Styling for Arata Sato : Takashi Yamamoto(style3)
  • Hair&Make-up for Arata Sato : Sota Omori(IKEDAYA TOKYO)
  • Styling for Miho Watanabe : Mana Kogiso(io)
  • Hair&Make-up for Miho Watanabe : Madoka Ban
  • Edit&Text : Yusuke Takayama(QUI)