コペンハーゲン・ファッションウィーク 2026年春夏コレクションガイド — 伝統と未来を架ける造形実験
OpéraSPORT®/オペラスポーツ
<OpéraSPORT>は、ソウルの伝統と都市的モダニティを融合させ、文化的調和と柔らかな現代性をテーマに発表した。セージグリーンやバターイエローなど淡く軽やかな色を基調に、ハイビスカスのカスタムプリントや3Dフラワーを視覚的象徴として配している。彫刻的ドレスや3Dレースのセットアップ、韓服を再解釈したトレンチコートなど、多様な素材と構造を駆使したアイテムが並んだ。伝統と革新を精緻に組み合わせ、文化背景を現代のワードローブへ昇華するブランドの美学を鮮明に示したコレクションだった。
OpéraSPORT 2026SS COLLECTION RUNWAY
The Swedish School of Textiles/スウェーデン国立テキスタイル学校
スウェーデン国立テキスタイル学校は、ファッションを研究と実験の場として再定義する姿勢を前面に打ち出した。循環型デザインや文化的再解釈、素材の生命性などを学生ごとに深く探求している。モジュール式衣服や偶発形態のレザーガーメント、文化背景を織り込んだテキスタイルなど、完成形よりも制作過程を強く残すアイテムが発表された。素材や技法との対話を優先し、服を“変化と関係性を生む媒介”として提示する教育的実践が際立った。
Swedish School of Textiles 2026SS COLLECTION RUNWAY
P.L.N/ピー エル エヌ
<P.L.N.>は、「SNIT」をテーマに、日常の表層を切り開き社会的ラベルや役割を解体する思想を提示した。黒・灰・白のミニマルな配色で、装飾を排しディテールに焦点を当てている。男性モデルにエプロンを着せるなど、ジェンダーや役割の固定観念を揺さぶるアイテムが並んだ。衣服を通して社会の“見えない構造”に切り込み、自己の在り方を再構築する契機を与える知的なアプローチが光った。
P.L.N. 2026SS COLLECTION RUNWAY
Rave Rvw/レイヴ レビュー
<Rave Rvw>は、「Blommornas Makt(花の力)」を掲げ、花を文化的記憶と社会的メッセージの象徴として再構築した。1960年代のフェミニスト集団や世界各地の花祭り、オランダの民族衣装から構造を着想している。デッドストックのベッドリネン製スーツ、曲線を強調したパンティシルエット、透け感を重ねたドレスなどが並び、<PUMA>とのカスタムスニーカーや「Speedcat Ballet」が都市的な要素を添えた。歴史と現代性を行き来しながら、花を通じて抵抗と持続性を表現するブランドの核を強調したコレクションだった。
Rave Rvw 2026SS COLLECTION RUNWAY
Han Kjøbenhavn/ハン コペンハーゲン
<Han Kjøbenhavn>は、「Another Day」をテーマに、デザイナーの少年期を過ごしたコペンハーゲン郊外の日常を再構築した。サッカー中継の光や深夜のケバブ店といった記憶を、誇張されたシルエットや素材感に落とし込んでいる。郊外の鎧のようなフェイクレザーボンバー、儀式性を帯びたメッシュトラックスーツ、人工フェザーで縁取ったトップスなどが登場。繰り返される日常の静かなドラマを現代のデザイン言語に変換したコレクションだった。
Han Kjøbenhavn 2026SS COLLECTION RUNWAY
Rolf Ekroth/ロルフ エクロス
<ROLF EKROTH>は、「189 DAYS LATER – ENCORE」と題し、過去の作品や廃材を素材として再編集し、新たな価値を加える“進化のための再上演”を提示した。90年代カルチャーやホラー映画など、多様なインスピレーションを重ね合わせている。廃棄ジーンズを6本組み合わせた再構築パンツや炎のように揺れる1,000本のピン装飾、パール刺繍など、緻密な手仕事と高機能素材を融合させたアイテムが並んだ。過去の記憶や造形をそのまま懐古するのではなく、未来へと接続する新たな形へと再構築し、持続可能性と詩的表現を共存させたコレクションだった。
ROLF EKROTH 2026SS COLLECTION RUNWAY
Henrik Vibskov/ヘンリック ヴィブスコフ
<Henrik Vibskov>は、「Everything cracks eventually – I’ll be gentle」をテーマに、“保護”の概念とその矛盾を探求した。黒い卵と黄色い移動型シェルターが行き交う舞台で、儀式的パフォーマンスを展開。楽器ケースや家具カバーに着想したコートやドレス、護符柄コットンなど、多様な保護モチーフのアイテムが発表された。未知の存在にも寄り添うという倫理観を、素材選択や舞台美術の再利用を通じて視覚化した。
HENRIK VIBSKOV 2026SS COLLECTION RUNWAY
CMMN SWDN/コモン スウェーデン
<CMMN SWDN>は、「Shifting Light」をテーマに、移ろう光を通してアイデンティティや感情の変化を描いた。夏の光と影を思わせる柔らかな色調にくすみのあるメタリックを差し込んでいる。流れるコートや可変的なロングスカートなど、軽やかで締め付けないアイテムが中心だった。過剰を削ぎ落とし、自然体でいられる時間と空間を服として纏わせる構成が印象的だった。
CMMN SWDN 2026SS COLLECTION RUNWAY
FINE CHAOS/ファイン カオス
<FINE CHAOS>は、「POST MORT3M」をテーマに、地中の架空ナイトクラブを舞台とした地下世界を描いた。油膜や結露を思わせる素材と、神殿的シルエットが対比的に構成されている。オイルディテールのアウターや摩耗加工のニット、ローブ調ドレスなどが並び、コレクションの随所には高橋和希の漫画『遊☆戯☆王』へのオマージュも潜ませた。荒廃と神聖を併置し、ナイトクラブを共同体の再生の場として提示するブランドの包括的ビジョンを深化させた。








