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Dries Van Noten 2026年秋冬メンズコレクション、原点がくれる安心感とまだ見ぬ世界への期待

Feb 2, 2026
2026年1月22日、<Dries Van Noten(ドリス ヴァン ノッテン)>はパリ・ファッションウィークにて2026年秋冬メンズコレクションを発表した。

Dries Van Noten 2026年秋冬メンズコレクション、原点がくれる安心感とまだ見ぬ世界への期待

Feb 2, 2026 - FASHION
2026年1月22日、<Dries Van Noten(ドリス ヴァン ノッテン)>はパリ・ファッションウィークにて2026年秋冬メンズコレクションを発表した。

ジュリアン・クロスナーが手掛ける2シーズン目のメンズコレクションでは、「成長する」「大人になる」という普遍的な概念を探究したという。可能性が無限に広がる瞬間、住み慣れた居心地の良い領域を離れ、初めて自分自身と向き合う若者の姿。そこにある純真さと誠実さに焦点を当て、ブランドの新たな章を力強く歩み出した。コレクションが始まり、モデルが歩き出すと、聞き慣れた日本語が流れ始めた。気になってプレスリリースを確認すると、BGMには浅川マキの「夜が明けたら」が起用されている。ジュリアンは10月に日本を訪れており、そのとき耳にした異質な日本語が、このコレクションにも反映されているのだと思うと、洋服を見る前から、予期せぬ親近感に心が動いた。

今季のシルエットは折衷的であり、成長過程にある若者の身体と衣服の関係性を象徴するかのようなプロポーションの遊びが見られた。衣服は全体的にアンバランスなスタイルで構成され、「タイトすぎる」「大きすぎる」「長すぎる」「少し短い」といった一見すると不均衡なサイズ感が印象的。成長して着られなくなったスクールジャケットや、愛着のあるセーターを無理に、あるいは大切に着続ける若者の姿を想起させた。

コレクションを構成するアイテムは、特定の服への愛着や、それらを自然に身に纏う方法についての考察から生まれ、心地よさや安心感、思い出、そしてそれぞれのルーツから集められた「温もりのある親しみやすい服」が核となった。家族や過去の記憶と結びついたアイテムがワードローブのピースとして自由に使用され、威厳と保護を象徴する父のコート、優しさと記憶を呼び覚ます母のフローラル柄、そして家族の絆を感じさせる兄弟のスカーフなどが登場。また、再解釈された紋章、ロングペンシルコート、パーカー、ケープおよびケープレットといったスクールユニフォームの要素も随所に落とし込まれている。

ボトムスにおいては、キルトの伝統的な要素とランニングシューズの現代的な機能性の対比が描かれていて、新しい服でありながら、まるで古くからそこにあったかのような親密さを持ち、自己表現の探求の過程として「ここにあるものを取り、そこへ運ぶ」という行為を具現化している。足元は、スニーカー、ハイトップ・ボクシングシューズ、そしてブローグ・ディテールを施したホールカットのオックスフォードなどが登場した。

スタイリングでは、スクールユニフォームの厳格な仕立てをベースにしながらも、それを再解釈した崩しが加えられている。一気にブランドの世界観へと引き込むのは、どこかで見たことがある、そんな記憶の断片から組み立てられたような、実験的な小物使い。たとえば、きつく締めたスカーフや緩めたネクタイ。結び目にあえて動きを与えることで、着る人の感情や置かれた状況が浮かび上がってくるかのよう。意図的に差し込まれた遊び心に、ジュリアンが思い描く男性像が色濃く宿っている。

素材使いは、<Dries Van Noten>らしい重層的で豊かなテキスタイルが採用された。ウール、シェトランド、ワックスド・コットン、オーバーダイ・コットン、シルク、ジャカードなど、経年変化や温かみを感じさせる素材が多用されており、伝統的なプレイドやチェックのフランネル、グレーメランジュのジャージー素材もコレクションのベースを支えている。

特にニットは、フェアアイル柄、アーガイル、ストライプ、ケーブル編み、刺繍などが、服全体に、あるいはディテールや部分使いとして至る所に存在し、手仕事の温もりを伝える。プリントで特徴的なのは、ポラロイド写真からプリントされたという「ぼやけた花柄」。鮮明なデジタルプリントではなく、記憶の中で淡く滲んだような花柄が全体に広がり、ノスタルジックなムードを醸成していた。カラーパレットは、落ち着いたトーンとポップな色彩の対比で構成され、ブルー、グレー、そしてニュートラルカラーといった色調をベースに「Fruittella(ソフトキャンディ)」を思わせるパステルカラーがアクセントとして加わった。この甘く淡い色彩が、厳格なユニフォームや重厚な素材の中に、若々しさと遊び心を彩りとして添えている。

ルーツや家族、これまでの思い出といった過去を大切に抱えながら、これから始まるまだ見ぬ未来へと踏み出す瞬間の感情を込めたコレクション。「夜が明けたら」、彼らは荷物をまとめて列車に乗り、新しい自分に出会う旅に出る。本コレクションは、その通過儀礼を美しく、誠実に彩るワードローブとして提示されていた。

 


 

Dries Van Noten

伝説的な「アントワープの6人」の一人、ドリス・ヴァン・ノッテンが設立したベルギーを代表するラグジュアリーブランド。「色彩の魔術師」と称される類稀なカラーパレット、庭園の花々を写し取ったような芸術的なプリント、そして精緻な刺繍がシグネチャーだ。エスニックやフォークロアな要素を伝統的なテーラリングと大胆に融合させ、モダンで詩的なスタイルへと昇華させている。流行に迎合せず、着る人の知性と個性を引き立てる「ウェアラブル・アート(着られる芸術)」として、世界中で愛され続けている。

Dries Van Noten 2026AW COLLECTION RUNWAY はこちら

  • Editor : Miwa Sato(QUI)

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