国内先鋭ショップ注目のP.L.N.、2026年春夏コレクションで提示した“ラベルを外す”という思想

<P.L.N.>は、デザイナーのピーター・ルンドバル・ニールセン(Peter Lundvald Nielsen)によって立ち上げられた個人的なプロジェクトで、ファッションを通じて現代社会への疑問や違和感を鋭く提示する存在だ。アンダーグラウンドな美意識、クラフトへのこだわり、そして強い政治的・文化的メッセージを併せ持つその姿勢は、ファッションの枠を超えた行動として評価されている。
日本ではまだ一般的な知名度は高くないものの、NUBIAN、DOMICILE TOKYO、RADD LOUNGEといった先鋭的なセレクトショップではすでに取り扱いがあり、ストリートと前衛性の狭間を行き来する感度の高い層の間で確実に注目が集まり始めている。

そんな<P.L.N.>の今シーズンのコレクションタイトル「SNIT」は、デンマーク語で「切れ目」「切断」を意味する言葉。<P.L.N.>はこの言葉を通して、“見慣れた世界”に切れ目を入れ、その奥に潜むものを露わにしようとしている。
プレスリリースにはこんな一節がある。
“これはパフォーマンスではない。破壊だ。”
“すべてのアクションは精密なカット。傷つけるためではなく、さらけ出すため。”
“これは反抗ではない。拒絶だ。”
<P.L.N.>の提案する「拒絶」は、単なる反抗的なスタイルや見た目での“強さ”ではなく、社会の中で無意識に受け入れている役割やラベルを手放すことを提示している。
ブランドが伝えたいのは、「服を選ぶことは、自分がどんな存在でありたいかを選ぶこと」だという思想。その選択が、ルーティンに麻痺した感覚を呼び覚まし、従属からの一歩を踏み出す手がかりになるという信念が、「SNIT」というテーマに込められている。

たとえば男性モデルがエプロンを着用したルックは象徴的だ。ケアや家庭を連想させるそのアイテムを、従来とは異なる文脈で纏わせることで、「誰が、何のために服を着るのか」という問いが浮かび上がる。そこには、ジェンダーや社会的役割に対する“ラベルを外す”という思想がにじんでいる。

全体的に、ブラック、グレー、ホワイトなど、色味はミニマルに抑えられ、ディテールの存在感が際立つ構成も印象的だった。視覚的な“ノイズ”を排除することで、見る者の感覚を研ぎ澄ませ、服そのものが問いを発してくるような感覚を覚える。
「SNIT=切れ目」は、装飾でもギミックでもない。衣服というメディアを通して現実社会の“見えない構造”にメスを入れ、自らの生き方を見つめ直すきっかけとして機能している。
<P.L.N.>の服は、ただ“着るもの”ではなく、“自分の在り方を見直すための道具”だ。華やかさでも、流行でもなく、「あなたはその役割を拒否できるか?」という静かな問いを、服というかたちで投げかけてくる。
“これは沈黙の前のスタンピード(暴走)だ。”
社会の中で無意識に歩かされているレールを、一度立ち止まって見つめ直す。その契機となる一着を、<P.L.N>は確かに作り続けている。
P.L.N.(ピー・エル・エヌ)
デザイナー Peter Lundvald Nielsen による、妥協のないビジュアル表現を追求するパーソナルプロジェクト。
異なるサブカルチャーの感情やその奔放なアティチュードを出発点に、クラフトマンシップを通してシルエットやプロポーションを実験的に再構築しているのが特徴。
一つひとつの衣服は、直感的に纏い、着ることを通じて自己表現を探るための「体験」として設計されている。
人間中心の視点から、身体と対話するような服づくりを続けている。
